昨年 7 月に天皇の生前退位が話題となり、先日の報道によると平成 31 年( 2019 年)元日から新元号になる可能性が浮上しています。
もしも天皇が生前退位された場合、 1817 年 5 月 7 日に光格天皇が生前退位されて以来の、実に 202 年振りの出来事となります。
これまでの歴代天皇のうち 59 名が生前退位されて上皇になっているため、長い歴史で見ると珍しいことではありませんが、近現代では初なのでニュースで大きく取り上げられているのでしょうね。
そこで気になるのは、「元号は誰がどうやって決めるの ?」ということ。今回は元号の決め方について調べてみました。
明治以降、生前退位は認められてこなかった
大化の改新で、女性の天皇であった皇極天皇が弟に地位を譲ったのが初の生前退位と言われています。平安時代になると生前退位は一般的になり、退位した天皇は上皇、出家すれば法皇と呼ばれていました。社会科の授業では、息子などに天皇の地位を譲って政治の実権を握った政治体制を「院政」と習いましたよね。
明治時代に皇室制度を定める皇室典範がつくられ、天皇は一度天皇になると亡くなるまでその地位にある「終身制」となりました。以降、生前退位は認められていません。
元号は誰がどうやって決めるの?
もともと元号は中国・漢の武帝の時代にできた制度であり、朝鮮半島から日本へ伝わってきました。しかし現在では、元号を使用しているのは日本のみです。
日本には元号法という法律があり、元号は皇位継承があった場合に適用され、新たな元号に変わります。今回のように天皇陛下が生前退位し、皇位継承をなさるかもしれない場合も例外ではありません。
明治以降は天皇一代につき元号一つという「一世一元の制」が適用されてきましたが、明治以前はめでたい動物が見つかったり大震災が起こった後など、吉事凶事によって元号が変わることもあったそうです。
現在の元号「平成」は陽明学者が考案し、閣議決定された
年号は誰がどのように決めるのでしょうか? 元号法では元号を政令で定めるとしているだけで、実は具体的な決定方法は定められていません。「平成」の元号が決まる際は下記の手順で決まりました。
- 漢文学や国文学関連の大学教授ら有識者が候補を考案
- 内閣官房長官が選定
- 閣議で協議
- 国民を代表する形で衆参両院議長の意見を聞く
- 閣議で決定
「平成」という元号は安岡正篤という陽明学者が考案したもの。「内外、天地とも平和が達成される」という意味だそうです。皇位継承が正式に決まった場合、また有識者たちが集められることとなるでしょう。
元号の選定条件は 6 つある
『年号の歴史』( 1996 年雄山館発行)によると、元号の選定条件は 6 つだそう。
- 国民の理想としてふさわしいような、よい意味を持つものであること。
- 漢字2文字であること。
- 書きやすいこと。
- 読みやすいこと。
- これまでに元号または送り仮名として用いられたものでないこと。
- 俗用されているものでないこと。
現在の元号を決める際は、「平成」のほかに「修文」と「正化」という候補が出ており、ローマ字表記の頭文字が昭和と同じ「 S 」で不都合なのではないかという意見が出たため、全員一致で「平成」に決まったそうです。
元号は中国の古典からとっている
元号という文化は中国から渡ってきたものなので、元号の名称は中国の古典から引用されています。
「昭和」の由来は、四書五経の一つである『書経尭典』の「百姓昭明、協和萬邦」によるものです。一言で表すならば「心合わせて仲良くしよう」という意味であり、国民の平和と世界各国の共存繁栄を願って付けられたそうです。
「平成」の由来は、『史記』五帝本紀の「内平外成(内平かに外成る)」、『書経』大禹謨の「地平天成(地平かに天成る)」に由来します。天地、内外とも平和が達成されるという意味を持っています。
さて、新元号は何になる?
まだ何も決まっていないであろう新元号ですが、どのような元号があり得るのでしょうか?
可能性が低いのは「M」「T」「S」「H」から始まるもの
「平成」の元号が決まるときに、 S から始まるものは昭和と重なるため除外されたことから、
明治の「M」
大正の「T」
昭和の「S」
平成の「H」
この 4 つのアルファベットで始まる元号は可能性が非常に低いと言えます。
使われる可能性が高い漢字は「永」「元」「治」など?
これまでの元号でよく使われた漢字をランキングにすると、
第 1 位 「永」 29回
第 2 位 「元」「天」 27回
第 3 位 「治」 21回
第 4 位 「応」 20回
第 5 位 「正」「長」「文」「和」 19回
となります。いくつもの条件をクリアし、元号に使われる漢字はそれほど多くないため、この中のいずれかの漢字が再び使われる可能性が高いかもしれません。
おわりに
新元号がどんな元号であろうと、時代を抱きしめ、愛していきたいですね。
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