カードゲームのプロって生きていけるの?業界を牽引する2人に聞いてみた。(後編)

カードゲームのプロって生きていけるの?業界を牽引する2人に聞いてみた。(後編)

紳さん

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こんにちは、ライターの紳さんです。

前回の記事ではマジック・ザ・ギャザリング(通称:マジック、MTG)というトレーディングカードゲーム(以下、TCG)のプロプレイヤーである行弘さんに、「競技としてTCGに携わること」について色々とお聞きしました。

 

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今回はアイアンワークス合同会社でCEOを務める若山 史郎さんに、ビジネスやエンターテイメントの視点から見たTCGの話を色々とお聞きしたいと思います!

 

人物紹介:若山 史郎さん
マジックの魅力に取り憑かれた人間の1人。高田馬場にある日本最大級のトーナメントセンター「晴れる屋」の立ち上げ、運用に深く関わった。現在は複数会社の役員として働きつつ、webメディア「Dig.cards」を立ち上げ、スポンサーとして行弘さんのプロ活動を支援している。

 

モバイルゲーム全盛の今、TCGは盛り上がるの?

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-いきなりですが、なぜ行弘さんをスポンサードしようと思ったのでしょうか

日本にも「カードゲームのプロ」と呼ばれる方はたくさんいらっしゃるのですが、僕は「ゲームが強いからプロ」「お金が貰えるからプロ」というのは少し違うと考えていて、僕の中にある「プロは、こうあって欲しい」と思う人物像に最も近いプレイヤーが行弘だったからです。

行弘は「紳士的で、常に見られることを意識して立ち居振る舞いができる」という、プロとしての基本的な素質を備えていましたし、ニコニコ生放送などで定期的に動画を配信したり、自分の取り組みを第三者に情報として発信する能力を持っている点も非常に魅力的でした。

Dig.cards」はあくまでメディアなので、本来であれば個人をスポンサードする立場に無いと思っています。しかし、このマジックというゲームの面白さ、熱狂を伝えるためには、行弘のようなプロは無くてはならない存在です。

業界的に考えると、まだまだゲーマーとして安定した収入を得るのは難しいと思います。だからこそ、プロゲーマーをスポンサードすることで、長く活動を続けられるような環境をつくりたかったんです。そうすれば、プロの名勝負をたくさん見ることができますし、業界全体を盛り上げる一助になると思いました。

 

-なるほど。今やスマホでプレイできるモバイルゲームが人気を集めていますが、TCGと市場を喰いあう不安はないのでしょうか

大前提として、「モバイルゲーム」と「TCG」の関連性を考えたら「市場は間違いなく喰いあってる」と思います。可処分時間を消費する為の選択肢という意味で、娯楽ジャンルにどちらも属する事は間違いないので。

ただ、それは「うどんとパスタは市場を喰いあっているの?」という質問に近いです。仮にこの世からパスタが無くなれば、うどんの需要は上がるでしょう。食事メニューの選択肢からパスタが消えるわけですからね。

だけど、「パスタのせいでうどんを食べる人がいなくなる」ということは考えづらいですよね。仮にパスタが、全てにおいてうどんよりも優れた食材ならば別ですけど。

モバイルゲームは確かに人気ですが、「TCGというゲームの面白さを全て内包しきっているコンテンツか?」といえば、全くそんなことありません。モバイルゲームにはソーシャルな機能が沢山ついていますが、アナログのTCGには「人と会ってコミュニケーションをする」ということが付随してくるんです。

手軽さの面ではモバイルゲームが圧倒的に優位だと思いますが、人とのコミュニケーションツールとしての側面を考えると、また別の意味を持ちます。これからも、TCGは多くの人々を魅了し続けることでしょう。

 

-なるほど。つまり、プロプレイヤーの未来は安泰というわけですか

行弘に対する質問で、「TCGのプロって生きていけるの?」という趣旨のものがあったかと思います。もし仮に、僕がその質問を受けたとしたら

「生きていくための舞台を僕が用意するんだ」と答えます。

 

実は、僕自身もマジックを競技として真剣に取り組んでいた時代がありましたし、プロになりたいと考えたこともあります。しかし、現在はトッププレイヤーとなった当時の仲間達を間近で見て、「自分はあの場所、あの高みまでいくことはできるか?」と考えた時、素直に無理だと感じたんです。

一方で、自分の得意なことを考えた時、「ビジネスとしてTCGやプレイヤーと関わり、発展させていく」という新たな夢が生まれました。

TCGを今よりもさらにエンターテイメントとして盛り上げることができれば、プロプレイヤー達の未来も明るくなるはずです。

 

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-それでは、TCGが今より盛り上がるためには何が必要だとお考えでしょうか

新しいファンを獲得するためには、「見る人のために視点を作る」ということがすごく大切だと感じています。

サッカーやラグビーのW杯を例に挙げますが、興行的に盛り上がるためには見る人が競技のルールを知っていることが、実は絶対条件ではないんです。

そのものに対する知識が無くても

「各国の代表選手がプライドを背負って戦っている」
「この国とこの国は、過去の対戦でこんな因縁があった」
「この選手は、この技術を習得するためにこんな努力をしてきた」
「こんな強豪国を相手に勝利するのは、歴史的快挙だ!」

などなど、試合の背景にある人間ドラマやストーリーを情報として見せてあげることで、人々は共感したり、夢中になったり、感動することができるんです。

カードゲームも根本的には変わらなくて、「このゲームをどうやって楽しんだらいいの?何に注目すればいいの?」という、「見る側の視点」を作ることがキーポイントになると考えています。

 

-大変、参考になります。最後に、若山さんが今後、挑戦したいことを教えてください

webでも、テレビでも。テキストでも、動画でも。あらゆる媒体、伝達手段を有効活用してマジックというゲームの面白さを皆さんに伝えていきたいと思います。

特に映像には力を入れていきたくて、動画コンテンツには大きな魅力を感じています。また、ゲームを映像として見せることの経済価値に関してもかなりの可能性があると考えているんです。

僕は今、映像制作会社や、e-sportsイベントの運営や企画に特化した会社の役員をやっています。TCG業界の中に入るでもなく、離れるでもない、かなり特殊な繋がり方をしているんです。特殊な立ち位置でTCGに関わっているからこそ、出来る事があると思っています。

これからは僕が一番大好きな「マジック:ザ・ギャザリング」だけにとどまらず、TCG、あるいは競技性の高いゲームのエンターテイメント性を引き出していくことに尽力していきたいです。

 

まとめ

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若山さん、素敵なお話、本当にありがとうございました!

今回の話を聞いて、これはもはやカードゲームだけの話ではなく、全てのエンターテイメントに通ずる真理だと思いました。

そして、若山さんの発する言葉の一つ一つから滲み出る、圧倒的なマジック愛。このゲームを誰よりも愛し、誰よりも理解し、真剣に夢を追いかけていらっしゃいます。

遊ぶだけじゃない、見るだけじゃない。自分が好きになったものとは、こんな関わり方もできるんだよ、と。そんなことを教えてくれました。

 

僕もマジックを含むTCGの一ファンとして、色んな関わり方ができたら良いな、と思います。

カードゲームの素晴らしさがもっと多くの人に伝わるように。

 

以上、紳さんでした。

それではまた。

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メディアクリエイターの紳さんです。 商品やサービスの宣伝、PRの為の効果的な企画、マーケティング手法を0ベースから考え、最良な予算の使い方をご提案するような人物に憧れています。 最近、Twitterを始めました。 クライアントに寄り添い、抱える悩みを自分ごとのように消化できるような、そんなクリエイターを目指しなさい、と母に言われて育ちました。

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