こんにちは、LIGのヨシキ(@moriri_nyo)です。
人物紹介:ヨシキ 株式会社LIGでライターをやったり編集をやったり企画をやったりしている。36歳のおっさん。 |
あなたは「歌ってみた」というジャンルをご存じですか?
既存のアーティストの曲やボーカロイドの曲を、文字通り歌ってみた様子を録音し、ネットにアップする行為のことですが……。
僕にはさっぱり面白味がわかりません!
歌いたいなら1人で歌えばいいんじゃないの? 何でネットにアップするの? 謎の若者文化の1つです。
そこで今回は「歌ってみた」の何が楽しいのかを知るべく、歌ってみた系アプリ『nana』のヘビーユーザーという女子大生にインタビューをします。
人物紹介:なつみさん 大学4年生。『nana』が好き過ぎて、運営会社のインターンになった。毎日1回は『nana』にログインしており、多いときは1日20時間やっていたことも。 |
歌ってみた系アプリの『nana』とは?
『nana』はユーザーが録音した歌や楽器の演奏を投稿したり、それを聴いたり、さらに他のユーザーがその音源に自分の歌や演奏を重ねたりすることができるアプリです。
月間のユニークユーザー数は100万人。そのうちの8割が20歳以下で、毎日たくさんの歌や演奏が投稿されているそうです。こんなアプリ、あったんですね。
例えば
こういうピアノ演奏だけの音源に
nana – 旅立ちの日に (合唱) / 合唱曲 ※現在このページは表示できません。
このように音や歌を重ねて録音していき、合唱にすることができます。
いったい何が楽しいの?
─ 早速ですが、教えてください。「歌ってみた」って何が楽しいのでしょうか?
やはり、いろんな人に聴いてもらえることでしょうか。
私はもともと歌うことが好きで、高校のときは合唱部に、大学でも少しアカペラサークルに入っていました。ネットにアップするのは『nana』が初めてですが、誰かに自分の歌を聴いてもらうのってすごく楽しいんですよ。
─ 歌を聴いてもらうだけならカラオケがありますが、なぜわざわざネットにアップを?
カラオケは直接その場所に出かけ、“身近な友達と盛り上がるもの”ですよね。でもネットなら、大勢の知らない人に聞いてもらえます。
そして『nana』の特徴として、「コラボ」という楽しみ方があります。他のユーザーがアップした音源に、自分の音を重ねて投稿できる機能です。例えばある曲をギターで演奏して投稿している人がいたら、そこにパーカッションを演奏した音源を重ねるなど、いろんな人と一緒に音楽ができるんです。知らない人とでもネット上なら気軽にセッションできるので、相手との距離が一瞬で縮まります。
こういう“音楽で分かり合う”みたいな感覚は、すごく素敵だと思います。
ネットならではの「コラボ」がある
─ なるほど。「コラボ」ですか。
はい。アカペラの歌をアップするだけで、誰かが後から楽器を演奏してくれたり、ハモってくれたり、楽曲にさまざまな変化が生じます。音楽の楽しみ方自体が広がりました。また、リアルでコラボをしようとすると場所や時間の調整が大変ですが、ネットならその点、相手に合わせる必要がないので簡単です。
─ 歌だけでなく、楽器の演奏をアップする人も多いんですね。
自分の好きな楽器で参加できるだけでなく、さまざまな楽器とセッションできる点も非常に魅力的です。ギターやベースなどはもちろん、バイオリンやフルートといった普段一緒に演奏する機会の少ない楽器同士で1つの曲が出来上がっていく過程は、聴いてるだけでも面白いですね。
最初はパーカッションだけだった曲に、歌がついたり、サックスパートが足されたり、何日もかけてどんどん重厚なものになっていくんですよ。
─ なるほど……。『nana』を知ったきっかけは何だったのでしょうか?
友達が『nana』のベータテスターをやっていて、その子がTwitterで音源をシェアしているのを聴いたのが最初です。2012年の9月ぐらいでしたね。
─ 音源はSNSでシェアできるんですね。
そうです。『nana』を知るキッカケは、シェアによる口コミが多いと思います。アプリ内でもFacebookの“いいね!”にあたる「拍手」という機能や、投稿に対するコメント機能も付いています。それらを使い、ユーザー同士でコミュニケーションを取るのが楽しいんですよ。
音楽でいろんな人と交流できるのが醍醐味
─ ユーザーはどういう層が多いんですか?
年齢でいえば、18歳以下が全体の8割ぐらいを占めています。中高生が多いですね。そのため、テスト期間中は利用者が少なくなる反面、夏休みや祝日はすごく盛り上がります。
─ ユーザー同士のリアルでの交流は、どんなきっかけで生まれるのでしょうか?
運営会社主催の公式オフ会が開催されています。多いときは週に1回とかのペースでやってますね。社長が全国を飛び回り、Twitterで呼びかけて参加者を募るみたいな。オフ会では、みんなで歌ったり、セッションしたり、お喋りしたりしています。
もちろんユーザー同士がメッセージをやり取りし、自主的に開催する非公式オフ会だってたくさんあります。私もオフ会で仲良くなった人とゴスペルに行ったり、誕生日ソングを送りあったりしています。
「バンドやろう」とはならないの?
─ アプリ内でのセッションでなく、実際にバンド組みたい、とかにはならないんですか?
たしかに「バンドやってみたいな」という気持ちはあります。でも、例えば私はいまギターを練習してるんですけど、リアルだと下手な演奏って披露しづらいじゃないですか。「一緒にやろう」とも言えない。それが『nana』なら、下手でも安心して参加できるんです。
相手に時間を合わせる必要もないし、曲選びや演奏ミスで揉めることもありません(笑) 固定のメンバーだけじゃなく、いろんな人とセッションができるのも魅力です。
……ところで、ヨシキさんは、歌ったりしないんですか? カラオケに行ったりは?
─ えっ?
なぜか逆に質問されることに……
─ カラオケに自分から行くことはありません。歌自体そんなに聞かないし、歌う楽しさがわからないですね。
好きなジャンルとかないんですか? このアーティストの曲なら聴いている、とかは?
─ そういうのも特にないですね。「よし、今から音楽を聴こう」って気にあまりならないんです。音楽を聴いていると、他のことができなくなってしまうタイプなので。
そうですかぁ。残念ですね……。音楽好きなら、絶対『nana』の楽しさがわかってもらえると思うんですけど……。
─ 話を伺っていて、それは感じました。でも、僕は歌わないので。
どうすれば、楽しんでもらえるんですかね……。でも、こうやってお喋りするのは上手ですよね。話すのは好きなんですか?
─ そうですね。歌うことよりは。
あ、『nana』には「朗読」っていうジャンルもあるんですよ。歌や演奏ではなく、「台本」を投稿するユーザーがいて、その台本を他のユーザーが演技を入れながら読み上げるんです。声優を目指していたり、声に自信があったりするユーザーが多く、聴き応えありますよ。歌ってみた、みたいな感覚で「CMのまねしてみた」なんかの投稿も面白いです。
私自身は恥ずかしくてやったことはないんですが、たまに聞いています。
─ なるほど、歌や演奏だけではないと。たしかに、それらを聴くのは楽しそうですね。
あと、『nana』は録音した音源を非公開に設定できるので、純粋にカラオケとして楽しむというやり方もあります。
うーん、ヨシキさんが歌う人なら絶対わかるんですが……何とかして、この楽しさを伝えたいですね……。そうだ、もう、やってみればわかりますよ!!!