どうも、外部ライターのほあし(@hoasissimo)です。
心に残る「名ゼリフ」から『ワールドトリガー』の魅力を紐解いていくシリーズ。今回は、ボーダーA級3位部隊「風間隊」隊長・風間蒼也(かざま そうや)のセリフに焦点を当ててみます。
(以下、一部ネタバレを含みます)
修の努力と惨敗
前回の太刀川さんの記事で取りあげた「B級ランク戦第3戦」で、修が率いる「玉狛第2」は辛くも勝利をおさめました。しかし、得点の大半は遊真一人に頼りきりだと浮き彫りになったこともあり、修は「自分自身も実戦面で得点に貢献できるようになりたい」と強く意識するようになります。
A級部隊の先輩隊員らに相談し、個人的な戦闘訓練をおこなってもらうなど、それなりの手応えを得た修。これまでにない自信を持って「B級ランク戦第4戦」に挑みます。
修は、訓練で得たさまざまな戦法を駆使し、なんとか相手の隙を突こうとします。しかし、攻勢に移ろうとした瞬間、隠れていた相手狙撃手に撃ち抜かれ1点もあげられないまま無惨に敗れ去ってしまいます。結果、「玉狛第2」は、遊真が1点獲得しただけという完全敗北の形で第4戦を終えてしまいました。
「自分の成長=不確かな要素」という思想
風間さんは、解説役としてこのB級ランク戦第4戦を観戦していました。そして試合後、修の戦い方に対して風間さんが下した総評が、今回の「名ゼリフ」となります。
「新しいことをやろうとする姿勢は見えたし、鍛錬による成長も感じられた」
「だが当然、三雲以外の人間も日々鍛錬を積んでいる」
「当たり前のことをやっていては先を行く人間には追いつけない」
「本当に部隊を勝たせたいなら、「自分の成長」という不確かな要素だけじゃなく、もっと具体性のある手立てを用意する必要があった」
これらのセリフ、実はちょっととんでもないことを言っているんですよね。
少年漫画において絶対に外せないテーマのひとつである「主人公の成長」という概念を、ここでは「不確かな要素」や「具体性に欠ける」と言い切っているんです。しかも「努力すること」対する考え方も大変シビア。主人公以外の人間も努力しているというのが当然の前提になっているため、「あたり前の範囲内の努力」では、結果なんか出ないぞと宣言しちゃってるわけです。(耳が痛い……。)
この辺りのいかにも「アンチ少年漫画」的な、ちょっと残酷とすら思えるくらいシビアなバランス感覚は、個人的には非常に好みです。しかし、修のような「持たざるもの」が生き残るには、とにかく厳しい世界なんですよね本作は。
ただし、風間さんは修をいじめようと思ってこんなことを言ったわけではないんです。むしろ風間さんは修のことをかなり高く買っています。
では、なぜこんなにも厳しい言葉を風間さんは投げかけたのか。それについては、次回くわしくお話ししたいと思います。
まとめ
この非常にシビアな「才能と努力」のバランス感覚なんですが、逆に考えれば、「主人公以外のサブキャラクターに優しい」という考え方もできるかと思います。
主人公以外のキャラクターの努力や信念が決して蔑ろにされず、きちんと報われる世界なわけですから。「イイ奴だろうがイヤな奴だろうが強い奴は強い」というバランス感は、作者である葦原先生が強く意識しているポイントでもあるようですしね。
それでは以上、今回もお読みくださり、ありがとうございました。
風間さんの名セリフ考察は次回に続きます。