映画ってなんで何十億もお金が必要なの?映画監督・金子修介に聞く

菊池良


映画ってなんで何十億もお金が必要なの?映画監督・金子修介に聞く

こんにちは、ライターの菊池(@kossetsu)です。

k_ico 人物紹介:菊池良
株式会社LIGに所属するライター。ブログ記事の企画・執筆を担当している。

今、映画やドラマの制作費がインフレしていて、すごいことになっているそうです。

そこで今回は現役の映画監督の方に、なぜ映像制作はそこまでお金がかかるのか聞きたいと思います。

 

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突然ですが、『ザ・ラストシップ』という海外ドラマの PRをさせてください。

海外ドラマ『ザ・ラストシップ』とは?

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あの『アルマゲドン』『トランスフォーマー』で有名なマイケル・ベイが製作総指揮をした海外ドラマ。

あらすじ

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人類が絶滅するほどの伝染病が猛威をふるい、人類の80%が死滅してしまった。

 

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ウイルスから隔絶された場所にいた216人の戦艦の乗組員たちは、人類を救うために立ち上がる……。

 

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アメリカ海軍全面協力。マイケル・ベイが手掛けるミリタリー・パンデミック・アクション巨編。

予告編

 

……という海外ドラマです。こちらの作品、映画なみに予算がかかっており、第1話には10億円かけているのだそうです。

お金、かかりすぎじゃないですか?

よく映画のCMなんかでも「○億円かけた」と宣伝されますが、なぜそれほどの大金を1つの映像作品で使い切ってしまうんでしょうか。

映像制作にはなぜそんなにお金がかかるのか、現役の映画監督に聞いてみました。

この人に聞きました

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映画監督の金子修介さんです。

『1999年の夏休み』『ガメラ』シリーズ、『デスノート』前後編、『少女は異世界で戦った』など、話題作を次々と制作。2016年ゴールデンウィークには『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』が公開されます。

現役バリバリの映画監督に、なぜお金がかかるのか聞いてみました!

映像制作は、人件費がたくさんかかる

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─ なんで映画はたくさんのお金がかかるんでしょうか? あまりピンと来ません。

人件費やギャラが大きいですね。たくさんの人が関わっていますから。

僕もドラマ1話で10億の予算なんて想像つかないけれど、1000万とか1億なら理不尽なお金のかかり方ではないと思いますね。

 

─ まぁ、1000万ならわかります。制作費って、作る前に決めているんでしょうか。結果として何億ってなるんですか。

ケースにもよりますけど、結果としてこうなった、という方が多いと思いますよ。想像となってしまいますが、アメリカはそういう感じでやっていると思います。

 

─ 監督には、制作の前に予算額が提示されるんですか?

日活で社員監督をやっていたときは、「想定予算」というものがあって、それに従って作っていました。1200万円で1週間撮影とか、2000万円で2週間とか。だいたい同じような上映時間で、登場人物の数も似ているプログラムピクチャーでしたから、生産ラインのようなものが考えられたのです。

でも、フリーになってからは、もうケースごと。『ガメラ』は想定5億でやりたい、というところからスタートしていたけれど、僕の直感的には15億ぐらいかかるだろうな、と思っていました。それをいろいろ縮小して5億に納めましたね。

 

─ 1/3にしたんですね。先にやりたいこと決めて、そこから削る感じですか?

どれぐらいのお金が全体にかかるかというのを、お金のかかりそうなシーンをあげてプロデューサーと相談して具体化、つまり「予算」にします。会社からくる場合は先に予算いくらというのが決まっているので、それに従おうという姿勢になります。

まぁ、もちろんお互いコンピューターではないので、アバウトにやりとりしつつ。その話し合いの期間がどれぐらいかかるかによっても変わってきますね。

予算が少ないからって、人を削ればいいものではない

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─ 予算の中で一番かかるのが人件費ですか?

そうですね。iPhoneとかでも映画撮れたりなど技術的な進歩はすごいけれど、人件費はやっぱり削れません。人が見たいと思う映像は、やっぱりお金がかかります。それが原理原則ですね。

 

─ では、予算が少ない場合、スタッフを削るのでしょうか?

スタッフの数を削れば、一人分の仕事が増え、その分日数がかかり、よりお金がかかることになると、プロデューサーが理解していればいいけれど、理解できないふりをして一人分の仕事量を増やしてもお金を増やさず、逆に全体を縮小させていくというプロデューサーが多くて困ってます。東映の人はそんなことはありませんけれど。

 

─ 一概に人数で決まるわけじゃないんですね。予算の残額って共有されるんですか?

お互いのやり取りの中で、共有はしています。プロデューサーの「ここを削ってほしい」に対して、監督が「ここを削ったらこうなってマズいから、こっちの方がいいんじゃない?」みたいな、肉を切らせて骨を断つようなせめぎ合いをしながら作っていきます。

でも、『ザ・ラストシップ』ぐらいの予算規模になると、そうではない気がしますね。

 

─ プロデューサーは映画の内容にも口を挟むものですか?

たくさん口を挟みますよ。「こういう風にしたい」っていうビジョンがプロデューサーにはあります。監督はそれを汲みつつ、演出を加え、なおかつ自分の世界を表現するんです。

作品が破綻しないように、監督は瞬間で判断していく

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─ なるほど。予算を使い切ってしまいそうなときはどうするんですか?

ある部分に予算を突っ込みすぎると全体が破綻する、というようなことは当然避けなきゃいけません。

そういうとき、どう対処するかを監督は瞬間瞬間で判断していきます。目の前の撮らなきゃいけないシーンに対し、このシーンがどういう意味を持っているのかを判断しながら。

 

─ 予算が途中で大幅に変更されることってありますか?

基本はないと思います。有名な話で、黒澤明は『七人の侍』で、最後の決戦前までワクワクさせて撮った作品を会社に見せ、「この先見たいでしょ、もっとお金出さないとできませんよ」という交渉をしたらしいですが、今はもう無理だと思いますね。少なくとも日本では。

 

─ 日本とアメリカで、制作費がこんなに違うのはなぜなんでしょう。

アメリカのマーケットは10倍・20倍ですからね。たくさんお金かけても回収できるってことです。これも原理原則ですね。

 

─ 監督の場合、今までで最大の予算っていくらでしたか?

『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』(2001年)で10億。特撮は普通のドラマに比べてかかります。3倍はかかりますね。

『スターウォーズ』には勇気をもらった

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─ 最近見た映画で「お金かかっているなぁ」と思ったものはありましたか?

……『スター・ウォーズ フォースの覚醒』ですかねぇ。

お金がかかるというのは「欲しい映像がどれぐらいで撮れるか」に左右されるものです。例えば、人が崖やビルから落ちかけても落ちない映像を俯瞰で撮る、というのはサスペンスでいえば欲しい映像。でも、それを撮るのはすごく大変で、合成するにしてもグリーンバックの上に人物を浮かべないといけない。それをやろうとするとロープが必要で、それを吊るクレーンも必要になってくる。だから、予算が必要になります。

それをやらずに、見せ方の角度を変えて足が浮いているのを見せなかったり、顔のアップだけで頑張る表情で済ます場合もあります。それでも意味は変わらないので。

日本では「どうお金をかけないか工夫する」ことが多いですが、「お金をかけたほうが迫力が出て、お客がくる」という原理で動くのがアメリカです。だから、ちょっと心配にもなりますね。映画にどんどんお金をかけちゃうので。新作の『007』を見ても、面白いところが多すぎて心配になります。インフレになってきているなぁ、と。

でも、『スターウォーズ』の新しいやつは映像的にはお金がかかっているんですが、勇気ももらいました。作家の気持ちというか独創力というか、そういうところで面白くできるという部分を見せてもらいました。

どんどんお金かける大作ばかり見て疲れていたところで、こういうものが見れて良かったな、と。

 

─ 例えば、主観映像が中心の映画ってありますよね。こういうのは予算を抑える工夫で出てきたものですか?

『ブレアウィッチ・プロジェクト』は実際に予算がありませんでした。でも、J・J・エイブラムスが撮った『クローバー・フィールド』は、主観映像の怪獣映画なんですが、見せ方として学生が撮ったようにしつつ、お金はちゃんとかかっています。

20年ぐらい前は主観で撮ると手ブレしちゃうから、それ用のステディカムカメラが必要でした。逆にお金がかかってしまいましたね。

迫力ある映像はお金がかかる。でも、映像の価値はそれだけじゃない

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─ 最近の映画について、どう思うか聞かせてください。

去年は200本以上映画館で見たけれど、それでも見切れないぐらい新作が封切られています。

ちなみに菊池さんは、最近どんな映画を劇場で見ましたか。

 

─ 『ストレイト・アウタ・コンプトン』です。アメリカのラップグループの伝記映画ですね。

……わからない。年に200本見ていても、知らない映画があるほど制作されています。

一説には、2016年は600本ぐらい公開されるらしいです。もう1日1本でも見切れない状態です。昔はもうちょっと本数少なかったんですが、安く工夫して作ろうという映画も増えてきている現状がありますね。

迫力ある映像はお金かかります。でも、身近でリアルな映像に価値を感じる人もいる。そっちのほうが面白いと思って挑戦している人もいます。

 

─ 最後に、金子監督の新作について教えてください。

『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』という映画です。狂言師の野村萬斎さんが、初の現代劇に挑戦したもの。彼がモノの残留思念を読み取れる元芸人の役を演じています。相方は宮迫博之さん。

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原作がなく、映画オリジナルです。東映がオリジナルを作るのは、森田芳光さんの『僕達急行 A列車で行こう』以来、4年ぶり。『相棒』シリーズや『リーガル・ハイ』の脚本をやっている古沢良太さんと一緒に作っています。

面白いサスペンスができました。人間の業とかいろいろなドラマの面白さを感じることができるんじゃないか、と。4月29日公開です。

 

─ ありがとうございました。

結論:迫力ある映像を作るには、お金がかかる!

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金子監督の話を聞くと、迫力ある映像を撮るにはスタッフも機材も必要だということ。

技術は進歩しているけれど、緊迫感のある映像を作ろうとすると大金がかかってしまうんですね。

それにしてもドラマの1話に10億は、やっぱりかけすぎでは? マイケル・ベイが撮りたいものは、お金がかかるんですね。

映像にすごくお金をかけた『ザ・ラストシップ』

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マイケル・ベイ製作総指揮の『ザ・ラストシップ』は2月10日にDVD発売&レンタル開始。

潤沢な予算を使った映像が見られます! 「どこにそんなお金がかかっているんだ!?」と考えながら見ましょう。

ちなみに僕が見たところ、ロケーションと戦艦、アクションシーンにお金がかかってそうだなぁと思いました!

公式サイト

ザ・ラストシップ|ワーナー海外ドラマ 公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/kaidora/thelastship/

より詳しい情報はこちらから。カメラを構えたマイケル・ベイの写真がいかす!

第1話が無料公開中です!!

 
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【菊池の聞いてみたシリーズ】

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