「言葉オタクなんです、私」大きなフィクションのためには小さなリアルが必要 | 脚本家・舘そらみ氏インタビュー #私たちのハァハァ

「言葉オタクなんです、私」大きなフィクションのためには小さなリアルが必要 | 脚本家・舘そらみ氏インタビュー #私たちのハァハァ

ナッツ

ナッツ

こんにちは、ナッツ(@nuts612)です。
先日、新宿テアトルで『私たちのハァハァ』という映画を観てきました。Vineで有名な大関れいかさんなど、女子高生4人が自転車で福岡から東京へ旅をするロードムービーなのですが、正直「これ、脚本あるのかな?」と疑ってしまうくらい、一つひとつの台詞がリアルなんですね。

そんな話をLIG社内でしていたら、ディレクター・パーヤンが「脚本書いている舘そらみ、知り合いっすよ」ということで、そらみさんにお話をお伺いしてきました!
「 “リアルっぽい” だけでは世の中に問題提起できない」と語るそらみさんのお話は、文章に携わる方、表現に携わる方、必見です。

そらみさん(@_sorami) 舘 そらみ
脚本家。劇団ガレキの太鼓を主宰、青年団演出部所属。現在は執筆活動のかたわら、全国の小中学校などでワークショップを行っている。
Twitter:@_sorami

 

いかに少ない言葉、直接的でない言葉でリアルなキャラクターを描くか

— 映画面白かったです! Vineで有名な女子高生・大関れいかさんも、彼女らしさがすごい出ている台詞でしたね。

Twitterとかめっちゃ検索するんですけど、「アドリブなんじゃないか」って言われてムカついたりしてます、私が書いたんだぞと(笑)
出演者も後から決まったんですよ。だから大関れいかちゃんが出るなんて私知らずに脚本を書いていて。難しかったですけど、リアルっぽく見せることに成功していたなぁと思いますね。

 
— リアルっぽく見せるために意識していることはありますか?

実はここ7〜8年、ずっと模索してきてたんですよ。リアルとは何かって。だけど、「リアルって突き詰めると評価されないなぁ」と思ってます(笑)
本当のリアルなんて物語にならないんですよ、リアルじゃないものをいかにリアルに見せるかが大事で。「リアルなシーンを切り取っただけじゃない?」って言われたりしますけど、実は技術で塗り固められている。
たとえば本作でも喧嘩するシーンがあるんですけど、「喧嘩やめようよ」という台詞にしたらつまらない。「みなさーん、ここ道路ですよー」という台詞にしていたりして、「喧嘩やめようよ」って言ってないのにそう聞こえてくるし、キャラクターが見えてくるんです。
削って削って、できるだけ少ない言葉で、かつ直接的でない台詞でどうやってキャラクターらしさを見せるか、なんですよね。

脚本家・舘そらみインタビュー

— 今回は、どうやって女子高生のリアルを描いたのですか?

やっぱり主人公と同じ境遇の人、つまり今回でいえば女子高生がリアルだと感じないとダメだと思うんです。なので女子高生を書くって決まってから数ヶ月は、ずっと女子高生のことを考えたり、電車の中でおしゃべりしてる女子高生を観察したりするんです。そして、聞いた言葉をそのまま使うのではなく、「なんで、この子はその言葉選びをしたんだろう?」と考えて。
同じ言葉を繰り返す子は自信なさげだけど自己顕示欲強そうだなとか、手振りを使う子ってあまり美人な子いないなとか(笑)
そういうのをいろいろ見ながら妄想をしていくと、その子のコンプレックスはこれだから、こういう言葉使うんだろうなとかが見えてくるなと。

「死のうと思った」理想と違った日本という国

『私たちのハァハァ』主題歌「わすれもの」MUSIC VIDEO

— 舘そらみさんはどういった女子高生でしたか?

高校生のときはデモ行ったりとか、9.11のときも校長室に行って「授業なんてやってる場合じゃない! なぜ9.11が起こったのか研究する時間をください」とか言ったりして、すごい気持ち悪い高校生でしたよ。
あとX JAPANが好きで、毎週末はXファンと原宿に集まって円陣組んでましたね(笑)

 
— すごい思春期MAXな高校生ですね(笑)

そもそも幼少期は私、トルコとコスタリカで育ったんです。そして当時は日本のことを超かっこいい国だと思ってた。戦争もすごい身近な環境だったので、まわりからも「日本は平和な国だよね」と言われてきて。
だけど小学校6年生のときに日本に戻ってきて、「あれ? あんだけ理想としていた国がここ?」みたいな。そういった想いから活動的な10代を過ごしていました。

 
— 小学生の頃に、理想と現実が違うことを目の当たりするのは相当ショックだったんじゃないでしょうか?

そうですね。しかも帰国子女だからというのもあって、いじめられたりして。なので……死のうと思ったことがあったんです。
そのときになんとなく流した音楽がX JAPANで、「なんていい歌なんだ!」って涙流したんです。すべてが敵だと思ってたときだったので、「Xだけが私の心を支えてくれてる!」と思っちゃったんですよ(笑) それからXファンになりました。

 
— そらみさんのWikipediaを拝見したんですけど、暴走族だったんですか?

ちょっとだけ横須賀を中心に活動するレディースにお世話になったことがありまして。ほんとにちょっとだけですよ!(笑)
勉強に困ったことがなかったんですね。それでエリートコンプレックスというか、「恵まれているからこその経験の乏しさ」への危機感がずっとあって。だから「今の自分には見えてない世界に飛び込みたい」そんな欲求がありまして。生徒会長もやりながら、出入りしてましたね。

 
— 普通の高校生だと、そう思ってもなかなか行動には移せないですよね。

「なんか、ここじゃない感」みたいなのがずっとあったんですよね。「どこかに行けばユートピアがあるはず! どこかに行けば自分と同じような人がいるはず!」と思って、ずっと動き続けていて。だから大学のときも世界一周の旅に出たり。ずっと自分の居場所というものを探し続けていました。

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北海道生まれ、ナッツです。文章書いたり、写真撮ったり、撮られたりしています。好きな映画監督はウディ・アレン。がんばります。■ 個人ブログもやってます。

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