3人の音楽系クリエイターに聴く“ヒットコンテンツ”を生み出す5つの法則

常時系


3人の音楽系クリエイターに聴く“ヒットコンテンツ”を生み出す5つの法則

はじめまして、フリーライターの常時系です。
ライターという仕事にたどりつくまでに、30種以上の職種を渡り歩いてきました。その中で、学んだことのひとつが、職種が違えど仕事における成功法則には共通点が多く見られるということ。

特にクリエイティブの現場では、手がけるプロダクトは違えど、その仕事の流儀には他のジャンルにも活かせる多くのヒントが隠れています。

今回はそのヒントを得るため、音楽制作の現場から音楽プロデューサー、作詞家、そして彼らが手がけるアーティストの3人を招き、それぞれの仕事におけるメソッドとヒットの法則、また3人による最新のコラボについて話を伺ってきました。

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あさだ120 人物紹介:浅田祐介
91年にCHARAのサウンド・プロデューサーとしてプロ・デビュー。94年にフォーライフ・レコードからソロ・デビュー。テレビ番組・日本テレビ系『歌スタ!! 』のウタイビトハンターとしても活躍。音楽プロデューサーとして、Crystal Kay、CHEMISTRY、キマグレンなど数多くのトップ・アーティストを手がける。YUMA KOSHINOの15年春夏コレクションの音楽などさまざまなシーンに応じたクロスオーバーな活動を展開している。
hink120 人物紹介:カワムラユキ
DJ、作詞家。水曜日のカンパネラやナマコプリなどの個性的なアーティストへの歌詞提供などから、クリス・ハート、Ms.OOJA、Chageの歌ったサム・スミス原曲の「ステイ・ウィズ・ミー」の日本語詞などマルチに手がける。また飲食店のコンセプト・プロデューサーとして「しぶや花魁」「代々木カリー」などもプロデュース。block.fmや神戸Kiss FMなどでレギュラー番組も持っている。
kawa120 人物紹介:Hink
トゥシューズを履いたダンス&ヴォーカル・グループ「カラーポワント」のリーダー。クラシックバレエとPOPミュージックを融合した新しいスタイルのガールズグループを率いる。過去にはニコニコ超パーティー二代目メインピエロを務め、モデルやバレエ講師、振付師など活動は多岐に渡る。

1. 制作現場は1人で担いすぎるのはNG

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― みなさんはそれぞれ音楽を軸に制作される現場にいますが、その中で気をつけていることはありますか?

浅田:〆切とホウレンソウ(報告・連絡・相談)……というのは全く嘘で、決められた〆切を守って誰もを屈服させるものを作ってくるのが理想だけど、それはそこまで重要じゃない。
 
― 具体的には何が重要なのでしょうか?

浅田:サディスティックミカ・バンドのミカさんに『曲ってそんなにポンポン出来るものじゃない』と言われたことがあって、待たせても仕方ないけど、待たせたら待たせた分だけ、誰が聴いても本能的にいい曲だと思えるものを出すことが重要だと思います。音楽をやっていない聴き手の人こそ残酷で、そういった人がとにかく感動するものを作らなければいけない。
一番大事なのは、作品を待っている人を不幸にしないことですね。
 
― 作詞家さんはどうでしょうか?

カワムラ:作詞家は、シンガーソングライターには作れないものを作るし、そうでなければいけない。シンガーソングライターはメロディと歌詞が一緒に出てくるから、気持ちが優先します。
作詞家は脚本家であり、監督であり、助監督であり、コピーライター。作曲家、歌手、音楽プロデューサーなどのさまざまな方と作る総合芸術。

負荷がかかると絶対面白いものになるはず。(カワムラ)

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― つまり発注者の希望に沿って作ることが必要ということでしょうか?

カワムラ:プロデューサーの方が出すリクエストを気にし過ぎたら良い作品は作れないと思います。音楽作品はまず詞の世界が完成していることが重要。
まずは、詞の世界が脚本として素晴らしいものに仕上がって、そこから訂正があれば応じればいい。そうした負荷がかかると絶対面白いものになるはずですから。
 
― Hinkさんは振り付けも担当されていますが、振り付けではいかがですか?

hink:私は4歳からクラシックバレエをずっと続けています。クラシックバレエってすごい閉鎖された世界で、色んなカルチャーがポップになっているのに、クラシックバレエだけはそうなっていない。お金を1万以上払って劇場にこないとその面白さがわからないのが、もったいないと思っています。
だからカラーポワントをはじめました。それで、私が大切にしていることは“伝わる”ということです。
 
― “伝わる”ですか?

hink:『よく分からないけど凄いよね』という芸術よりじゃなくて、ハッキリとわかりやすいとか面白いとかを大事にしています。素晴らしさが“伝わる”ことです。
その上で、全部を押し付けるのではなく、ライブを見て楽しかったと思わせるのは8割でよくて、後の2割は受ける側が自分自身に置き換えたりとか、人に考える隙を与える振り幅のあるものになるよう意識しています。

2. 不快なコンテンツこそ刺さる

 
― それでは、クリエイティブな現場ではよく聴く『刺さるコンテンツ』というものはどういうものだと思われますか?

浅田:共感できるということだと思います。今日もずっと音楽を聴きながら歩いていたんですが、震災以降に渋谷で何を聴いてもしっくりこなかったんです。色んな悲しみで溢れている中で、自分の目から入ってくる渋谷の風景と、耳から入ってくるものが合わなかった。
歩きながら見えている風景に合うものを作れば、みんな“共感”してくれるんじゃないかなと。音楽は携えるものだと思うので、今いる中でどういう音楽が似合うのかということが“刺さる”になるんだと思います。

カワムラ:私が思うのは、ムラムラとかゾクゾクとかドキドキとかそういった感情を引き起こせるもの。普通に生活しても感じられない感情が芽生えるようなものと言えばいいでしょうか。

hink:カラーポワントでは『ちょいゾワ』というものを意識しています。

かならず少し気持ち悪いなと感じる『ちょいゾワ』ポイントを作るようにしているんです。(hink)

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― ちょいゾワ……?

hink:『今の何?』と引っかかるところです。振り付けしたものを見てもらったときに『綺麗にまとまっている』と言われると、かならず少し気持ち悪いなと感じる『ちょいゾワ』ポイントを作るようにしているんです。
けれど、ただ気持ち悪いポイントを作ると、ダサくなる危険性もあって。そうならない絶妙なバランスが『ちょいゾワ』だと思います。自分も普段気になるものは、そういった引っかかる『ちょいゾワ』があるものなので。
 
― つまり、気持ち悪いなと思う不快感があるものが『刺さる』ということでしょうか?

hink:そう思います。

浅田:そういった“不快”なのか“快感”なのかという感覚って拡大していると思うんです。たまたま昨日『時計じかけのオレンジ』を観たんですが、あの作品が公開された70年代。当時は、性表現や暴力表現が酷いと散々言われてきたんだけど、今観るとそこまで酷いと思わない。乳輪が見えているからNGみたいな。でも、あの時代はあれがギリギリだった。
その時代時代で“ギリギリ”なところを押し進める“本能的な衝動”で作られたものこそ『刺さる』んだと思います。

3. 発明とは0から創ることではない

 
― それではもっと具体的に『ヒットするもの』とはどういったものだと思いますか?

浅田:発明がなされているものです。例えばマドンナ。出世作の『Like a virgin』のビジュアルはショートのブロンドヘアーで、まさにマリリン・モンローをトレースしたものだった。マリリン・モンローといえば、アメリカのセックスシンボル。けれど、それは多くの女優やミュージシャンがやってきたこと。
マドンナの何が違ったかというと、ナイル・ロジャースというプロデューサーが“ダンス・ミュージック”と“マリリン・モンロー”を合体させることで“イノベーション”が生まれたからなんだと思います。
 
― つまり模倣だけではヒットは生まれないということでしょうか?

浅田:模倣って気持ちがいいんです。今流行っている音楽を模倣したものを作ると、それっぽいのが出来たと気持ちが良くなるんです。けれど、そこで満足しちゃうと駄目。そこに何かしらのイノベーションがないと駄目なんです。

「0から作れる」は欺瞞。人が“面白い”と思うものは、周知のものの組み合わせ。(浅田)

 
― では模倣でなくて、0から新しいものを作りだせば更に良いのではないでしょうか?

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浅田:この年齢になると、もはや「0から作れる」は欺瞞だと思っています。過去の先人たちが作ってきたものの列の中に自分も並べられたらいいなと誰しもが思うはずなので、そういった意味でも今までのものを抜きにして考えるのは無理なこと。プロモーショントークとして『全く新しいもの』というのはありですが、実際にはそうじゃないと思うんです。
時代を変えるものって常にそうで、例えばエジソン。彼はレコードを作ったけれど、そこに乗っけるものは、それまで世の中に溢れていた音楽。クリエイターの中には全く新しいものを生み出した。と言う人がいますが、僕はそれを聴くととんでもない嘘つきだと思います。
 
― つまり既にあるものを知っていることが大切だと?

浅田:人が“面白い”と思う一番のものって、誰もが知っている音や言葉だったりとか、きっと周知のものを組み合わせてやったものなのかなと。つまり、過去のことを知っていないと新しいことをやったつもり。でも、全然過去にやった人がいるなんてことになりかねないので知る。ということはすごく大事なことで、僕も意識してやっています。
 
― 作詞においてのイノベーションとはどんなことだと思いますか?

カワムラ:インターネット用語みたいに新しい造語が生まれることはあるけれど、言葉は基本的に既にあるもの。DJ的にさまざまな言葉を組み合わせて、新しい感触を作ることが作詞におけるイノベーションなのだと思います。
今だと、インターネットで流行っている言葉と、寺山修司さんとか中原中也さんとか、フランソワーズ・サガンとかそういう人たちの言葉の流れみたいなのを無茶苦茶にカットアンドペーストしてズタズタにしてシャッフルして出すみたいなことだと思います。
 
― 振り付けにおいてはいかがですか?

hink:私のルーツであるクラシックバレエをベースに振り付けを行うと、動きの数としては限界があるんです。振り付けを始めた頃は、絶対に他の曲と振りが被らないように意識してしてました。けれど、有名な振付師とかって“武器”みたいなのが1個あって、結構どの曲にも同じ振りを入れていたりするんですよね。それが、結果この人っぽい振り付けだよねってなるんです。
クラシックバレエをベースに、はっきりとポップな振り付けを生み出すことが、私の個性と考えていますね。バレエ以外のダンスと融合させたり、カワイイやカッコいいなど、今の空気も取り入れ、バレエの可能性も広げることで、新しいものを生み出したいと思っています。
 
― 音楽プロデューサーとして、浅田さんが手がけた中で印象深いイノベーションって何でしょうか?

浅田:一番最近だとキマグレンだと思う。レコーディングで『LIFE』という曲の歌詞カードを見たときに『泣きたくて 笑いたくて 本当の自分 我慢して伝わらなくて』って、これは駄目じゃないかと最初思ったんです。
 
― どうして駄目なのですか?

浅田:僕らの頃は『泣きなさい 笑いなさい いつの日か花を咲かそうよ』って必ずどこかに救いがあった。けれど、キマグレンの『LIFE』はそうじゃなかった。
 
― たしかに歌詞を見ると、どこにも救いがないですね

浅田:でも、それって全然救われない今の時代にもしかしたらマッチしてるのかなと。まさしく“刺さる”につながる。全然救われない歌詞が、4つ打ちでラテンの軽快なサウンドに乗ることによって『現代版ええじゃないか』になったんだと。僕らは必ず救われることが良しだと思ってたから、その組み合わせには、イノベーションがあったんだと思うです。だからヒットしたのかなと。

4. ギャップの中にイノベーションがある

 
― ここまでお話をお伺いしてきましたが、カラーポワントさんはガールズユニットですが、女性グループの今後についてどう思われますか?

浅田:動物界って女性は寝て待ってて『肉獲ってこれます!』とか『これだけ羽根が綺麗です!』とか男子がアピールするものなんです。
けれどアイドル文化のように、今は女子がアピールする時代になっている。出生死亡率も下がって、人口が大きくなって男性だけじゃなくて女性もアピールしないといけなくなったんだと思うんです。女の子もライバルが増えたから。

女子が戦うのは当然の時代。アイデンティティがないと、女子はモテない。(Hink)

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hink:今は女子が戦うのは当然の時代。例えば学生だったらクラスに1人はアイドルがいる時代だと思う。そう考えると、なにかしらアイデンティティがないと、女子は男子にモテないんです。昔は男子に3高とか求めていたけど、今は女子が選ばれる時代。アイドルやってますでもいいし、とにかく何かアイデンティティが必要だと思います。

カワムラ:個性というか、豊かさが必要なのかなって。薄い塩で繊細な味のスープのラーメンに、ものすごい大盛のチャーシューみたいな、そういう王道+ギャップこそこれからの時代に受けると思います。
 
― ギャップ萌えってやつですね

浅田:かつては、女性が男性にギャップを求めるのが普通だったと思うんです。普段はクールなのに2人きりだと優しいとか。
けれど今はツンデレ。みたいに、男性が女性にギャップを求めているところが大きく変わったところかなと。ものすごくカワイイ子がガジェットオタクとか。ただカワイイだけじゃ駄目って、そういう逆要素が必要になったんだということかと。
 
― 音楽の面でもそうだということでしょうか?

浅田:先日リリースしたカラーポワントの『ドガドガ』がまさにそう。今までもクイーンのようにロックとバレエの融合はあった。EDMとバレエもそこまで目新しさもない。けれど、ロックとEDMとバレエというのは観たことがないと思ったんです。
 
― つまりイノベーションということですね

浅田:コンピューターの演奏する打ち込み音楽が今は全盛。これが10年ぐらい続くと、ジャミロクワイのように演奏能力がないと世の中に出れない時代がまたやってくると思うので、打ち込みのみで完結しない音楽を作ろうと思ったんです。さらに、そこにバレエも加わって、これこそイノベーションではないかと思ったんです。
 
― 歌詞の面ではどうですか?

カワムラ:言葉遊びというか、2ch用語みたいに言語崩壊のエッセンスをいれてます。1つの言葉で3つ4つ5つといった意味があるような。サビ頭の『ドガドガ』というのは、いつもバレリーナの絵を描いていた画家のドガから来ているんですけど、彼がバレリーナを追いかけて描きつづけた衝動というのは、今だとインターネットで動画を探したり画像検索したりして1人の人を追っかける姿に似ているなと思ったんです。そうした“名前”“情景”などの複数の意味を込めていたり、後は漫画の『ドッドッドッ』っていうシーンもイメージしています。
さっきのラーメンの話のように、1つで色んな要素を入れることが大切だと思うので、それを意識しています。

hink:カラーポワントはそれまでミニスカートがこだわりだったんです。でも、周りを見ればアイドルの子たちがミニスカートばかりなので、まずはそこに埋もれてしまうのは避けようと思ったんです。そのパンツスタイルで、バレエの動作とバレエにないグルーヴとスピードをミックスして、ガールズグループとしてのカラーポワントの表現を進化させました。

5. 個性とは先天的なもの&積み重ねていくもの

 
― では、最後に才能というものに関してどう思われますか?

hink:これはクラシックバレエに関してですが、バレエに関してはまず生まれ持った骨組みで大きく行く末が変わります。100人いたらパーフェクトな子は1人か2人しかいない。残った中で10〜20人ぐらいは努力してなんとかなるぐらい。あとの80人近くはどんなに頑張ってもトップにはいけないんです。

浅田:マイケル・ジャクソンの『BAD』で日の丸をつけて踊っていたチャオ・メイというダンサーに以前聞いたことがあって、ダンサーは生まれたときの骨の可動域で決まるといっていた。彼はそれでバレエ・ダンサーを諦めたそうなんです。
あとは、そうやって突きつけられたアクシデントに、どうやって面白さを見いだせるかが、人生においてその後のイノベーションを生み出せるキッカケになるんだと思うです。
 
― 人生におけるイノベーションですか?

浅田:彼がバレエ・ダンサーをそのまま目指していたら、彼はマイケルとともに踊っていなかった。バレエで学んだこと、そしてバレエでは限界があることを察知して、新たなダンスの世界に挑んだからこそ、イノベーションが生まれ、彼という新たな個性が出来上がったんだと思います。

カワムラ:私も歌をやっていたんですが、売れなかったのは先天的な喉に才能がなかったから。けれど文章に関しては後天的な要素が大きいと思うんです。大失恋したりとか、不幸が積み重なったりとか、海外放浪したとか。
作詞とか小説家とか、文章を作る仕事は年を重ねるにつれていい仕事ができるような気がします。

作品作りは、足りないものを埋める作業に近い。(浅田)

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浅田:作品作りって、足りないものを埋める作業に近いと思うんです。だから何か充実していない、足りないってことに気づくことは大事な要素なのかもしれないと思います。

カワムラ:ある意味、リア充では作れないって思います。

hink:私もリア充だったら絶対無理だったと思います。

浅田:僕は家庭も持っているし、ちゃんとしていますよ(笑)

カワムラ:私はズタズタです(笑)

hink:だから、わざと自分自身をかき乱すことがあります。わざと自分の私生活に落とし穴をつくったり。

浅田:それ、女子がよくやるんだけど、男子がその落とし穴にハマるんだよね。男子的には迷惑だからなんとかしてほしい(笑)

まとめ

リア充ではクリエティブなものは作れない。まずは、落とし穴に落ちてみることから始めたいと思います。

常時系
この記事を書いた人
常時系

外部ライター 東京

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