1000本突破
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第2回
スポットライトのうらがわ

「言葉オタクなんです、私」大きなフィクションのためには小さなリアルが必要 | 脚本家・舘そらみ氏インタビュー #私たちのハァハァ

ナッツ

「脚本家になるので辞めます」あと3年で死ぬとしたら自分は何をしたいか

脚本家・舘そらみインタビュー

— 大学では演劇サークルだったそうですが、卒業後は演劇の道ではなく一般企業に就職したのはなぜですか?

世界一周して欲がなくなっちゃったんです。「生きてるだけで幸せじゃん!」みたいに思って。それでも辛うじて保持できてた欲が「戦争の悲惨さと繋がっていたい」だったので、イラクに病院を建設している医療コンサルに入ったんですよ。
だけど、どうやら私は社会人生活ができないみたいだぞと気づいて。毎朝起きてちゃんと会社行くとか、敬語を使うとか、「本当にムリ〜!」と思っちゃったんですね(笑)
学生時代は夜の仕事などもやっていたのでお金に余裕があったんですけど、社会人になってからお金はないのに金銭感覚は変わらずで、借金つくっちゃったりもして、結構精神的にまいっちゃって。いろんなことが急激にうまくいかなくなり、急激に生きにくさを感じてしまいました。

 
— それで仕事を辞めて、演劇の道へと。

そうですね。そのとき、「あと3年で死ぬと思ったら、じゃあ自分は何をやりたいんだろう」と思ったんです。そうしたら「作品を生み出したい!」と思っちゃって。
それですぐ上司に「脚本家になりたいので、辞めます」と伝えました。1年経たずに辞めちゃいましたね。

 
— 当時はどういった脚本を書きたいとかはありましたか?

世界一周をしていたときも、途上国とか貧困国中心に回っていたんですね。その世界一周の経験って私の人生においてめちゃくちゃ影響力が強くて。世界には信じられない事柄がたくさんあるから、それを脚本で伝えたいと思ってました。
そして苦しんでいる人、社会的弱者のことを伝えたいなって。いまでも、作品によってもちろん違いますが、特に私が10代のころ接してきた人たちに伝えたいと思ってます。

「言葉オタクなんです、私」大きなフィクションのためには小さなリアル

脚本家・舘そらみインタビュー

— 「伝える」ということにおいて意識していることはなんでしょう?

書き手に嘘があると伝わらないんじゃないかって。先ほどお話したリアルに繋がるんですが、「大きなフィクションのためには小さなリアル」というのを掲げています。
そして物語をつくるためには、書き手が「もう、100%の力を作品に入れ込みました!」というのでないと、物語として成立しない、力を持った作品にならないんじゃないかと思っていて。作り手の力の加減って絶対バレるから、必ず熱量はさぼらずに入れたいなと思ってます。

 
— そのためにもご自身が経験した “リアル” を作品に込めていくイメージ?

そう。今まで自分が生きてきて経験した、「未だに忘れられない悔しさをこのシーンに入れよう」とか、「あのときの絶望感をこの役に託そう」とかはしていて。そこに込めているものはフィクションではなく、私にとって本物、リアルなんですよ。
なので経験してきていない感情は描かない、もしくは自分が捉えていない感情は書かないですね。

 
— 一方で、リアルっぽすぎてもいけない。

「リアルっぽいね」という感想はもったいないと思うんです。なぜリアルと感じたのか、あれがリアルだとしたら世の中どうなんだろうとかって思ってもらえて、作品に意義が出てくると思ってるので。
そもそも観客が「嘘くさいな」と思ったら自分の身とか世の中と照らし合わせてくれないんですし、一方で「これは作品だ」と思ってもらえないと、世の中に問題提起できないと思うんですよね。
だから「リアルだね」だけだとダメなんですよ。客観視してもらわないと。なので、いかにノンフィクションをフィクションにしていくかが大事ですね。

 
— 映像として伝える上で、「言葉」というのはどれほど重要性を持つものなのでしょうか。

脚本を書き始めた頃、どうやったら登場してくる人間がイキイキするかって考えていたんですが、やっぱり「人に放つ言葉」って存在感がものすごい大きい。もちろん表情とかも大事なんですけど、他人に投げかける言葉って影響力がすごいと思うんです。
それで私は「言葉を真剣に考えてみよう」と思うようになりましたね。まあ、もともと言葉オタクなんですよ、私。だから趣味嗜好とマッチしていた。基本ひとりでずっと妄想して、独り言をずっとしゃべってます(笑)

 
— さいごに、そらみさんの今後の展望を教えてください。

『私たちのハァハァ』もそうですが、ワークショップなどで中高生と会ったりすると、世の中には「彼女らが観るべき作品が少ないな」と思うんです。
やっぱり10代の頃って、私もそうでしたがどこかにユートピアがあると思ってるし、自分にコンプレックスを抱いている。
そんな中で、「こんな人間もいるんだぞ」という私自身の後ろ姿を見せられ続けたらいいなと思っています。そういった脚本を今後も作り続けられたら最高ですね。

おわりに

「こんな人もいるんだ」

もやもやとした思春期、僕自身も当時観た映画に救われたことがあります。映画だとわかっていても自分ごとのように感じられる、そして「自分はひとりじゃない」と気づく。そういった経験をされたことがある人は多いはず。

“リアルっぽさ” を持った作品をつくるためにも、僕自身「言葉」というものをもっと意識しようと改めて思いました。脚本家や小説家を目指されている方、文章に携わる方、そして表現に携わるすべての方の参考になれば幸いです。

まだまだ劇場にて公開中!
>>映画『私たちのハァハァ』オフィシャルサイト<<

(撮影協力:遊べるBAR fuga;fuga

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