親戚からも勘当されて「もう結構つら過ぎて、記憶を忘れているんですけど」
「多分、あと1ヶ月はもっていなかったんで」と清水氏。当時、間一髪の状況を次のように語ります。
- 清水
- 報告持って行っても通る見込みないですし、システム変更するお金もうちはなかったんで。もう借金マックスじゃないですか。親戚とかからも片っ端から頭を下げてお金を借りていたので、僕、親戚からも勘当されて。
当時付き合っていた彼女があまりに不憫に思って、クレジットカードを貸してくれて。それを使わざるを得ない日々が続いて、もう何かもういたたまれなかったですね。
「1ヶ月ぶりに自宅に帰った」ときのエピソードは、本当に忘れてしまいたいほど壮絶なものでした。
- 清水
- そのとき、その彼女と一緒に住んでいたんですけど、テレビがあるはずの場所にないんですよ。家具が全部なくて、「えっ?」みたいな。お風呂入ろうと思って裸になったものの、水も出ない、バスタオルもないんで。もう1回服着てみたいな。もう涙出そうで。
ただでさえつらすぎるのに医師会から呼び出しくらって、理事の先生から「訴訟を起こすから準備をしておいて」と。理事会とかで重鎮に並ばれて詰められて。その7、8月が一番どん底でした。
そんな中での厚労省から出た「通った」の一声には、「その日、夜泣いていましたね、多分(笑)」と清水氏は言います。しかし、本当にうれしかったのは「医師会に対して請求書を発行したとき」でした。
- 清水
- 1万円使うのは超簡単ですけど、1万円稼ぐのってこんなに難しいんだって。通ったのももちろん嬉しかったんですけど、その倍以上、お金が入ってきたっていうのが「うわぁ!」みたいな。
おかげさまで5億円調達できそうで、今でこそようやく、良くなりました
「もうソフトバンク超えなきゃとかの意識がすごくて」と語る清水氏。“てっぺんを取る”というお父さまの言葉は、今も心に刻まれています。
- 清水
- 孫さん(ソフトバンクの孫社長)、僕と同じ歳のときにもう既に160億超えていたのに、うち、まだようやく10億だ、みたいな。「うわー、ダサー」って、日々葛藤ですね。
独立採算制をとる中で、「絶対に譲らないのは、年間の計画ですね、数字です」と語ります。
- 清水
- 毎月、実績報告会って結構シビアにやるんですけど、年間の予算をその事業の最初に出してもらって、それをかなり時間をかけてディスカッションをするんですね。僕も僕で見ている事業があるので、みんなに報告をちゃんとして、他の役員も役員で見ている数字を報告して、全員で詰め合うみたいな(笑)
同じお金の使い方でも、それがコストか、あるいは投資になるのかって、本当の支出と投資に分けられると思うので。本当に必要だったら、もう目をつぶってやろうとか言うんですけど。
苦闘に次ぐ苦闘の末、「上場に向けて今、VCの資金調達というのもまさに佳境」と語る清水氏。
- 清水
- 今、5億円調達しようとしているんですけど、おかげさまで出来そうで、今でこそようやく良くなりました。
「人として当たり前」なことって、「ありがとう」って言えてますかとか
「医療という分野で、世界に対してチャレンジしたい」と語る清水氏。そのために必要なのは土台作りだそうです。
- 清水
- 医療機関のネットワークをどれだけ持っているかというのが、医療のベンチャーで成功できる会社の最終的な要因になると思っているんですよ。
今、医療情報の電子化だけで8000、「エストドック」という病院検索予約サイトで3000の登録になりまして。全国には医療機関が16万施設あって、ここのサイトだけでそれを取りにいこうと。
日本の病院の問題点として、清水氏は「IT化が全然進んでない」点を挙げます。
- 清水
- 先進国は医療のIT化がすっごい進んでるんですよ。医師といつでも24時間スマホで相談できますし。で、なおかつ先進国では病院に対して予約を入れて行くって当たり前、スタンダードですけど、日本ってウチがようやく頑張って展開するぐらいです。
日本では個人のカルテも病院間で共有されていないんで、新しい病院に行くと「すいません、あなたのカルテがないんで、もう1回血液検査からやりましょう」と。でも、先進国ではカルテの共有が当たり前なんで「あ、○○さんカルテちょっと調べますね」「じゃあ同じような診察だけしますね」っていうように、すぐに出されるんですけど。もろもろ全部、インフラの構築をしていこう、っていうのがウチのゴールですね。
「成功するか否かを決めるのはやっぱり人のよさ」ということを、「地獄のような日々」から学んだと語る清水氏。それは社員育成・採用にも徹底されています。
- 清水
- うちのメンバーには「人間力がすべてだからさ、人を良くしていこうぜ」とか、そういうのを大事にさせようって思いが人一倍強いんで。人が良くて、目標が大きい、そういう思いがある人は僕の中でほぼ採用なんですけど。「ありがとう」って言えてますとか、当たり前のことが当たり前にできている人がリーダーに上がってます。
新卒の研修では「ああ、こういう人、嫌だなっていう人の特徴を書き出して」と指示して、「よーし、書いたか。じゃあその反対のタイプの人を書いて」ってまた書かせて、「じゃあ、そういう人になれたら、うちではもう幹部候補」って言ってます。
聞く人が思わず感嘆の声を上げるほど、決して大げさでない「地獄の日々」を過ごした清水氏。そのどこまでいっても諦めない気持ちの根底には、お父さまの「てっぺんを取れ」という言葉と、学生時代から揺るがない「医療しかない」という確信がありました。その圧倒的な人間力が、エストコーポレーションの発展を支えているのではないかと思います。