「上昇負荷」の制約によって構築された、独特の世界観
『メイドインアビス』の世界設定は、非常に詳細で独特のものとなっています。
まず前提として、推定20,000メートル以上もの地下深くに位置する「奈落の底」に至るまでの道中は計7つの「層」に分割されており、それぞれに全く異なる生態系を持っているという点。森林あり、断崖絶壁あり、大海原ありと、もはやなんでもあり状態。わけがわからないよ!
そして本作品最大の特徴であり、世界観や物語展開に独自性を生み出す魅力となっているのが、「上昇負荷」の存在です。
作中では「アビスの呪い」と称されているこの現象を一口で言えば、究極の「行きはよいよい帰りはこわい」システム。
普通に地下へと「下がる」分には問題ありません。物理法則に従って潜るだけ。しかしアビス空間内で上へ戻ろうとすると、途端に謎の現象が「呪い」として振りかかるのです。
少し上昇するだけで吐き気を感じたり、頭痛に苛まれたり。各階層ごとにその「負荷」の大きさは異なり……最悪の場合、死に至る。
- 各階層ごとの上昇負荷
深界一層:軽い目眩と吐き気
深界二層:重い吐き気、頭痛、末端の痺れ
深界三層:平衡感覚に異常、幻覚や幻聴
深界四層:全身に激痛、穴という穴から流血
深界五層:全感覚の喪失、意識混濁、自傷行為
深界六層:人間性の喪失、もしくは死に至る
深界七層:確実な死
しかもこの呪い、ゲームでたまに見る「前の階層に戻ったらペナルティで状態異常にしちゃうよ☆」といった生ぬるいものではなく、「アビス空間において少しでも相対位置が『上』になるだけでも振りかかる」という鬼畜具合。木登りしただけで身体に負荷がかかるレベルです。
つまり「ヤバいモンスターからの攻撃を避けるために上方へ回避行動を取る」だけでも、それが致命的になりかねない世界。言い換えれば、Aボタンでジャンプしただけでダメージ判定が出るマリオ。なんだこのむちゃくちゃな無理ゲー感。
だがしかし、それゆえにおもしろいのです。
それこそ呪いを「攻略」するような立ち回りが必要とされるし、「潜りすぎると帰れない」ことによって際立つ各キャラクターの魅力と、可視化される関係性もあります。
物語に大きく関わる要素のほぼ全てがこの「上昇負荷」という設定ひとつに集約されているようにも見えて、あれこれ考えるのも楽しいんですよね。
ナナチかわいいよナナチぃんなぁーっ!
「上昇負荷」と並ぶもう一つの魅力が、つくしあきひとさんの絵柄。
表紙のキャラクターと背景絵を見てもわかるように、ものすごく緻密でありながらもかわいらしいのです。もちろん大人は相応にゴツく描かれているのですが、全体的に「かわいい」という表現がしっくりくる印象。……モンスターはエグいけど。
その中でも際立つのがモフモフこと、ナナチというキャラクター。「呪い」によってモフモフとした姿「成れ果て」になってしまった彼(彼女?)は、見た目の愛くるしいデザインと「んなぁー」という口癖から、巷で大人気のキャラクターでございます(※けいろー調べ)。
度し難きは、このとんでもないモフモフふわふわ具合よ……モフりたい……全力でなでなでしながらモフりたい……ウオオオオオアアアーーーーッ!!!\( ‘ω’)/
ですが、このナナチを取り巻く状況とエピソードが、これまたエグいのです。切ない。つらい。苦しい。やるせない。「こんなかわいい絵柄でそんなあばばばばー!!」と叫びながら寒中水泳に挑み始めるレベルでござる。ちくしょう……ナナチかわいいよナナチ……。
まとめ
そんなナナチが登場するのは、2015年12月現在、最新刊となっている第3巻。冒頭にも書きましたとおり、個人的には全力で自信を持ってオススメできる作品ですので、気になった方はぜひぜひ。
また、第4話までは「まんがライフWIN」のサイトで試し読みすることもできるので、よかったらどうぞ!
それでは!
ライター紹介:けいろー ライター見習い。1989年生まれ。ゆとり世代のぬるオタ。大学卒業後、入社した大手メーカーを1年半で退職。ブログで好き勝手に書き散らしていたらお仕事をいただけるようになったので、ノリで独立。インターネットらぶ。ボクっ娘が好きです。 ブログ「ぐるりみち。」 |