こんにちは、ライターの菊池(@kossetsu)です。国友やすゆきと僕について、書きたいと思います。
僕は国友やすゆきと会ったことはありません。でも、彼と一緒に生きている。僕だけじゃない。あなたも。
国友やすゆきがいる世界
飲み会の席だ。
知り合ったばかりの女性に、「好きな漫画家は?」と聞かれた。
僕は答えに窮した。何も思い浮かばなかったんじゃない。たったひとつの名前が、パッと頭に浮かんでいた。
「国友やすゆき」
少し躊躇して、その名前を出した。勇気がいった。他の名前を出してもよかった。でも、自分には嘘をつけなかった。
彼女はその名前を知らなかった。ひょっとしたら、今これを読んでいるあなたも知らないかもしれない。
国友やすゆきはベテランの漫画家だ。キャリアは30年以上になる。青年マンガ誌を中心にコンスタントにヒット作品を発表し、アニメ化、ドラマ化した作品もある。
でも、その名前はあまり浸透していない。
「どんなマンガを描いているの?」
そう言った彼女に、僕は何も答えられなかった。説明がとても難しいマンガを描いている。それゆえ、爆発的な名声を獲得しないんだと思う。
それから僕と彼女は特に仲良くなることもなかった。彼女は今でも国友やすゆきがどんな漫画家か知らないと思う。
これから、国友やすゆきについて書こうと思う。彼女に手紙を書くように。Tさん、国友やすゆきってこんな漫画家なんですよ。
2005年、ニッポン放送が買収されようとしていた頃
今から10年前。2005年だった。その頃、ライブドアの躍進により、「M&A」(企業買収)という手法が注目されていた。外資系金融機関が日本企業を買収することを「ハゲタカ」と呼び、同名の経済小説も書かれた。
『社買い人岬悟』はそんな時代に描かれた。
社買い人 岬悟(1) (ビッグコミックス)
- 著者国友やすゆき
- 出版日2005/12/26
- 商品ランキング81,257位
- Kindle版ページ
- 出版社小学館
彼が勤める商社「丸綿」はアメリカの投資会社S&HCに買収されてしまう。S&HCの人間が社長として就任すると、岬は企業買収を専門とする部署に配属される。
岬はどこか気弱そうな「草食系」の男だ。妻と娘もいる。岬は優しい男だ。だから、融資の中止を命令されても何とかしようとする。合理よりも人情を優先してしまう。求められると女性とセックスしてしまう。
そう、女性とセックスしてしまう。
岬は妻に悪いと思いながらも、求められるままに女性とセックスしまくる。
上司と。取引先の社長の妻と。投資した映画の主演女優と。外国の国会議員と。取引先の次期社長候補の愛人と。ライバル会社の社長と。そして、たまに妻と。
優しすぎるセックスの男、岬悟
岬の特徴は、情報を引き出すためとか、状況を有利にするためとか、そういうスパイ映画的なミッションとしてセックスするわけじゃないところだ。
仕事の途中で、関わっている人間が岬のことを好きになり、セックスする。ただセックスする。優しさゆえに、全員とセックスする。ストーリーとは関係ない。ただセックスする。
岬はそんな男だ。そして、仕事もできる。セックスの合間に問題を解決していく。