ーえ! それはどうして?
下から蹴り上げちゃって……。反則負け。でもそれは負けなんですけど、自分の中では負けた感じがしなくて。やっちまったな、みたいな感じで。
ーそれは無意識的やってしまった?
うん。相手が膝をついている状態で、下から蹴り上げちゃったんです。それで相手が伸びちゃって反則負けになっちゃいました。
で、仕切り直しのランカーが、元世界チャンピオンの門脇英基選手でした。門脇選手との試合もグラウンド(寝技の攻防)につけられて、負けちゃったのかな。打撃でいったんだけど、もうしつこくタックルされて倒されちゃって。なかなか立てなくてポイントを取られて。初めて“やられた!”っていうのはその試合です。反則負けのあとの門脇戦。
ー門脇英基選手は、経験も豊富で世界チャンピオンにもなっている選手ですね。
本当に“やられた!”って感じです。もう悔しくて。調子にのってたから「門脇くらい勝てるだろ」って思ってて。もう歳だし元世界チャンピオンだし、全然もう敵じゃないなと思ってナメていたんです。だけど、相手の執念っていうか、絶対に勝つっていう執念にやられて。
ーベテランの力を見せつけられた。
めちゃめちゃ悔しくて、試合終わって泣いたんです。みんなの前で人目もはばからず、泣いて。自分自身にがっかりだし、負けたっていう悔しさで。こんなところで負けちゃうんだって。修斗の世界チャンピオンなんて程遠いじゃんって。すごく落ち込んで。
で、その次の試合がガイ・デルモっていう寝技のうまい選手なんですよ。前回の門脇戦の敗戦を踏まえてやらなきゃなって思ったんですけど、そこでもやられるんですよ、寝技で。もうどん底ですよね。新人王取って、反則負けがあって、1試合を挟んでからの2連敗。
ー順調に勝ち進んでいただけに、2連敗は堪えますね。
初めての連敗。もう死ぬわと思って(苦笑)すごく落ち込みましたね。俺、格闘技をはじめたときから3連敗か、同じ相手に2回負けたら引退しようと思ってたんですよ。それは、俺の中で決めてて。
もう2連敗しているじゃないですか。次、引退がかかってるんですよね。でもやめたくないし。次の試合の相手が、やっぱり渋い相手で、向こうも瀬戸際の選手だったんですよ。何連敗かして次負けたらやばいでしょ、みたいな崖っぷち対決ですよ。
そこで、なんとか渋く勝って、そこからまた軌道にのっていったんです。
ー2連敗したときは、自信をなくしましたか?
自信をなくしたというよりは、自分の弱いところを露呈したっていう感じです。
ー2連敗した後の試合は、弱点を補おうとした?
2連敗から考え方が変わったんです。もう遊び感覚でやっていたら負けちゃうんだなって。
それまでは、学生ノリで目立てるからっていうのでやっていたんですけど、その2連敗から本気で格闘技をやらなきゃなって思いました。
練習しなきゃ勝てないし、本気でやらなければと意識が変わった1つのターニングポイントですね。
ープロとしての意識が芽生えた瞬間ですね。
そうです。負けたらメシ食えないし、練習をやらなきゃ勝てないんだなって真面目に取り組み始めたのが、2連敗後ですね。そこでだいぶ意識が変わりました。
ー3回負けたら引退って自分で決めているから、自然と意識も変わりますよね。2連敗を越えて、勝ち続けていったんですか?
2連敗のあとに渋く勝って、その次の相手も良い選手で、その相手にも勝って。その後に修斗環太平洋チャンピオン決定戦の話が来て。そこからまた勝ち始めることができたんです。まぁ渋い勝ち方でしたけどね。
あとがき 「PXCフェザー級世界チャンピオン・矢地祐介流 勝ち癖のつけ方」の後編は明日朝8時に公開します。 マイナスをプラスに変える方法や、格闘技人生における最終目標などを伺いました。 |
【後編が公開されました】 PXCフェザー級世界チャンピオン・矢地祐介流 勝ち癖のつけ方【後編】