PXCフェザー級世界チャンピオン・矢地祐介流 勝ち癖のつけ方【後編】

PXCフェザー級世界チャンピオン・矢地祐介流 勝ち癖のつけ方【後編】

ケン

ケン

こんにちは、LIGMOチーム・編集者のケンです。

世界チャンピオンでプロ格闘家の矢地祐介選手に聞く、ビジネスにも役に立つ勝ち癖のつけ方の後編です。
(前編はこちらから)

ヤジ 人物紹介:矢地祐介
25歳。職業、プロ格闘家。18歳にして、日本の格闘技「修斗」のプロ格闘家となり、新人王とMVPを獲得。その後第5代ライト級修斗環太平洋チャンピオンを獲得。

負けてマイナスをプラスに変えるただ唯一の方法

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ー修斗環太平洋チャンピオン決定戦の話が来たときはどういう思いがありましたか? 矢地選手的には話が来るタイミングは早かった? それとも遅かった?

早かったかもしれないです。結構ランキングが上位の選手がいたので。なんかめぐりが良くて(笑)

“あ、ラッキー!”っていう話が舞い込んできたりとか。タイトルマッチもそうですけど。そのタイトルマッチだって、たまたま流れで「矢地くんどう?」「やります!」って。本当にラッキーでした。“俺にチャンピオン決定戦の話が来たんだ”って。

 
ーそのオファーは修斗協会から来るんですか?

マッチメーカーがいるんです。協会じゃなく提携している会社のマッチメーカーがいて。その人からくるんですけど、本当にラッキーでしたね(笑)

 
ー環太平洋チャンピオンと世界チャンピオンの違いってなんですか?

曖昧なんですけど、世界ランキングと環太平洋ランキングがあって、簡単に言うと世界の一歩手前みたいな感じですね。修斗自体が日本チャンピオンという感じなんですけどね。

 
ー環太平洋チャンピオン決定戦はどんな感じだったんですか?

俺のときは、rootsの土屋大喜選手が世界タイトルに挑戦することになって、環太平洋のベルトを返上したんです。環太平洋チャンピオンが空位になったことで、チャンピオン決定戦をやったんです。

 
ーチャンピオン決定戦はどうでしたか? 当日の決定戦の舞台も含めてですけど。

いつもと変わらないなって感じでしたね。でも、チャンピオン決定戦なだけに、いつもより目立てるなって(笑)

 
ーははははは。やっぱりそこなんだね(笑)

そうそう。ベルトがかかっているとかかかっていないとか、そこはあんまり気にしなかったです。とりあえず相手に勝とうって。目の前の相手に集中してました。

 
ーチャンピオン決定戦で、対戦相手を倒してベルトを巻いた瞬間はどんな思いでしたか?

そこまで「やったー!」っていうほどでもなかったですね。練習してきているから。自分がやってきたことに対しての結果なんだなって。ベルトというよりも、相手に勝ったということの方が嬉しかったですね。

勝って、ベルトももらえるんだ、ラッキー!みたいな感じです。そこまでベルトに固執してなかったです。それこそ環太平洋チャンピオンのベルトが欲しいっていうのもなかったです。
ベルトは目指してましたけど、それは世界チャンピオンのベルトだったので、環太平洋のベルトは通過点ですね。涙が出るぜ!みたいなことはなかったです。獲るものは獲っておこうっていう感じです。 

 
ーそこから世界チャンピオンへの挑戦権はないんですか?

もちろんあります。環太平洋チャンピオンになると、世界ランキングも2位とか3位とか上位に行くので、あるんですけどもその世界チャンピオンも空位だったんです。チャンピオンがリオン武選手から日沖発選手になって、日沖選手がUFCに挑戦して、そこで空位になってしまったんです。

 
ーそうなんですね。

そのころからあまり修斗の興行自体も回っていない印象があって、長らく試合をしていない選手や他の団体にいってしまっているのに、ランキングが上位にいる選手がいて回っていなかったんです。それでタイトルマッチがなかなか決まらず、とりあえず環太平洋のベルトを持っていて、環太平洋の方で防衛戦の話が来て、防衛してっていう。

 
ー修斗で早く試合をするか、世界へ行くかの選択をしたいのにできない?

俺は世界に行きたかったんですけど、話が来なくて。環太平洋チャンピオンを防衛したんですけど、修斗自体が回っていないので、対戦相手もなかなか決まらないし、どうしようかなって。

 
ーじゃあ、環太平洋を防衛してからは、しばらく時間が空いていました?

空いていたかもしれないです。試合をしていないときに、今参戦しているPXC(Pacific X-treme Combat)から試合のオファーが来たんです。

 
ーついに念願の海外オファーが!

PXCの日本担当も、修斗をすごくチェックしていたみたいで「この選手、強いのに全然試合できてないな」ってことで、俺に声かけてきてくれたみたいです。それでPXCに行く流れになりました。

 
ー環太平洋チャンピオンを防衛して、すでに海外に出たいという気持ちはあったんですか?

ありました。環太平洋チャンピオンのベルトを獲得したあたりから、さらに目標がしっかりしてきたんです。UFC(Ultimate Fighting Championship:世界最高峰の格闘団体)で戦いたい、UFCでチャンピオンになりたいっていう目標ができてきて。UFCに出るなら世界に出て、海外の選手と戦いたいなと。

 
ー1度修斗でガイ・デルモ選手と戦ってますよね?

そうですね。それもそうなんですけど、日本のフィールド以外でも戦いたいというのがありました。UFCは海外で試合をするので、海外で試合するっていう感じも味わいたかったし、日本の修斗もパッとしないので、PXCへの参戦を決めました。

 
ー実際にPXCに参戦してみてどうですか?

やっぱり海外の会場の雰囲気は日本とは全然違いますね。

 
ーPXCはホームがグアムですよね?

グアムとフィリピンです。観客のリアクションは全然違うし、ファイターへのリスペクトも違いますし、すごい良い環境ですね。

日本は、試合を見るのもちょっと斜に構えて見るじゃないですか。マニアになればなるほど、「いや〜、アレはダメだよ。あそこでバックを取らなきゃ、あそこでもっと攻めなきゃ」という感じで見る人が多いんです。
でも海外は、一つのパンチが当たるだけでも「うわー! やべーぜ!」「いいぞ! いいぞ!」って。ファイターに対して「頑張ってくれよ」とか「一緒に写真撮ってくれ」とかすごい格闘家の地位が高いんです。だから、ファイターへのリスペクトもすごいんだと思います。

 
ーキャリア初の海外団体PXCに参戦して、最初の試合はどうでしたか?

KO負けしました。

 
ー油断してました?

心に油断がありましたね。多少なりとも油断してたところはありますね。

 
ーどういったところで油断してたんでしょう?

相手の戦い方や戦績もあったと思いますが、調子に乗っていたんだと思います。日本のベルトも持っていて、初めて海外で試合するってことで調子に乗っていたところはありますね。やっぱりまだマシになったとはいえ、目立てると思って試合に臨んでいたから。

 
ーそれは、いつもじゃないですか(笑)?

試合に集中できてなかったんですよね、結局。異国の地で、環境も違ってすべてが違う中で注意散漫になっていたんです。相手より周りに集中しちゃうっていうか、セコンドの声ばかり聞こえちゃう、観客の声ばかり聞こえちゃうみたいなそういう気持ちになってましたね。相手を見れていない。そうやって浮ついているところに、やられちゃいましたね。

言い訳っぽくなりますけど、そこまでパンチは効いてないんです。でもパンチはもらったから、負けは負けなので。やっぱり集中できてなかったっていうのが、大きな要因ですね。

 
ー海外の試合は、環境は違いますけど、日本の試合と何が決定的に違いますか?

海外というかPXCだけだと思うんですけど、すごく時間にルーズなんですよ。島国タイム(笑)

最初はそこが嫌でしたね。日本だと「あと何分で試合だよ」と自分の試合まであと何試合目だから、これくらいの時間で試合かなって思っていたら、3時間後だったり。

すごく時間が押すんですよ。ビールを売る時間だとか言ってスポンサーがビール売るんですけど、ビールを売りたいから販売時間15分のところを1時間とか1時間半とかで売るんですよ。

 
ー選手は早くしてほしいですよね。

はい。最初はその時間が慣れなくて、すごい嫌でした。でも、俺も結構ルーズなタイプだからすぐ順応したんですけどね。

 
ーなるほど。その敗戦から2戦目、3戦目と試合を重ねていくわけですけど。

1戦目で負けたことで、また変わりましたね。

 
ーどんなところで変わりましたか?

やっぱり1対1の勝負だから、相手に集中しなきゃっていうところです。周りに集中するんじゃなくて、相手に集中しなきゃっていうところですかね。

 
ー負けを重ねるにつれて一つ一つ課題が見えていく感じですね。

そうですね。浮かれちゃいけないとか、目の前に集中するとか。結構言われないとわからないタイプなんで。失敗しないと結構わからないタイプ。だから負けたら何かしら得ないとダメですよね。そうじゃないと負けがプラスにならないじゃないですか。負けっていうだけでマイナスだから。何かを得るものを得ないと。

 
ー負けをいかにプラスに変えていくかってことですよね。

そうです。でも、絶対プラスには変わらないんですよ。その時点では絶対にプラスに変わらないので、次に向けてどれだけ練習してプラスに変えられるかっていうところですね。

練習量の裏には、自分に対する自信と入念な準備が必要

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ー敗戦を乗り越えて2試合経て、タイトルマッチですよね。

そうですね。
修斗の環太平洋チャンピオンということで、PXCも実力を買ってくれていたので、次の試合次の試合で良い動きを見せられたのもあるし。PXC自体もそこまで多くの選手を抱えているわけでもないから、タイトルマッチの話がきました。

 
ーなるほど。タイトルマッチ試合当日、心境の変化はありましたか?

PXC1戦目でKO負けしてから、試合前に多少緊張するようになったんですよね。
もちろん前の日はぐっすり寝れるし、直前まではヘラヘラしてるんですけど、入場の待ち時間とかすごく緊張するようになったんです。

自分で緊張するようにしているっていうのもありますし、相手に集中しなきゃっていうので、気持ち整えて集中する過程で緊張もするようになってたんです。だからタイトルマッチの前も結構緊張してました。だけど、すごく練習しているから自信はあったんですよ。

 
ー1戦1戦そうだと思うんですけど、自分が練習してきたことに対して、自信や間違ったことはやってきてないぞ、と自分自身を信じないと試合には勝てないものですか?

そうですね。やっぱりいかに練習してきたか、俺はこれだけ練習をやってきたし、これだけ強い人たちとやってきたから大丈夫だ、みたいな。それがやっぱり自信に繋がりますよね。

 
ー試合のたびに、常にそういうことを思い続けていますか?

思い続けているというか、思えるように練習をいっぱいするというか。悔いのないように練習して、試合前に自信を持てるように。いっぱい事前に準備してっていう感じですね。

 
ー自信を持ちながらも、事前に準備することは簡単なことではないですもんね。

とは言いつつも、そのときになってみないとわからないですよね(笑)“あーもっと練習しておけばよかった”ってなっちゃうこともあるかもしれないし、そうならないために必死で練習してます。

 
ーなるほど。タイトルマッチを戦っていてどの瞬間にチャンピオンになれるって思いましたか?

ははははは。それは終わるまでわからないですよ。

 
ーチャンピオンを獲った瞬間はどんな気持ちでしたか?

ベルトを獲って、はじめてすごく嬉しかったです。

 
ーはじめて勝ってベルトを獲ったぞ!っていう感じはありましたか?

ありました。というのも、だんだんUFCへの挑戦が現実味を帯びてきて、これに勝ったらあるかもって。あんまりそういう風に考えるのも良くないですけど、実際に目の前に近づいてきたので、そういう意味でベルト獲ったからまた一歩UFCに近づけたっていう嬉しさはありました。

 
ー海外でのベルトは、UFC挑戦への大きな意味を持ちますもんね。

また自分の夢に一歩近づけたっていうのがあったから、ベルトっていうことよりもUFCに近づけたのかなっていうのですごく嬉しかったです。その意味でのベルト、やったぜ!っていうところです。箔がついたし、単純にすごい嬉しかったですね。

 
ー修斗の環太平洋チャンピオンのベルトは、そこまでUFCへの現実味がなかったけど、海外で実績を積むことで近づいてきていると。

そうですね。視界がクリアになってきた分、夢がより現実に近づいてきているっていうのはあったですね。すごく嬉しかった(笑)

 
ー試合を見ていても、それはすごく伝わってました。

うん。すごい嬉しかった。

目標を持つことで、視界をクリアにする

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ー矢地くんの格闘技人生で、最終目標って何ですか?

最終目標? いろいろあるんです。近々の目標と数年後の目標と将来の目標があるんですけど、最終的には現役中に稼いだお金で遊んで暮したいっていうのが最終目標です(笑)

 
ーははははは。

それが、本当の最終目標です(笑)で、近々の夢はやっぱりUFCに出て、UFCのベルトを獲って、いっぱいお金を稼ぎたい。数年後の目標がボクシングでWBCのベルトを獲りたい。

 
ーえ? ボクシングですか!?

まだ淡い目標ですけど、ボクシングでベルトを獲りたいっていうのはありますね。

うまくいったら、総合格闘技でもチャンピオン獲って、ボクシングでもチャンピオン獲ってっていうのが、目標であり夢ですね。で、最終的には遊んで暮らすっていう(笑)

 
ーそれは格闘技を引退してからの人生で?

そうです。引退した後は遊んで暮したいっていうのがあります(笑)

 
ー矢地選手らしいですね(笑)プロになってから、チャンピオンになれればいいかなって思っていながらもチャンピオンになって、海外に出てチャンピオンにもなっていく過程でどんどん目標がクリアになっていくところが矢地選手らしいというか。

ははははは。だんだんクリアになっていくっていうね。

 
ーでは、矢地選手が例えば格闘技をやっていなかったら……いま現在何をやっていたと思いますか?

野球をあのままやっていたらどうなっていたかなっていうのはあります。どうなっていただろうって。ちょうど体もでかくなってきていた頃だし、今もこの体があるわけじゃないですか。この感じでずっと野球をやっていたら、どうなっていたのかなっていうのは気になりますね。プロ野球選手になっていたかなとか。そういうのはちょっと気になりますね。

どっちにしろ、根底には勉強したくないとか働きたくないっていうのがあって(笑)

結局どっちの道にいっても、いかにラクに稼ぐかっていうところになってなっていたといたと思います。野球ダメだったらちょっと俳優やってみようかなみたいな(笑)

 
ー格闘技以外で、他の分野に飛び込むことに対しての怖さみたいなものはないですか?

好きなことや興味があることに対しては、ポンと入れると思いますね。でも意外とビビりだから、慎重なのは慎重なんですけど、決めたらいくタイプですね。だから飛び込んでみるタイプかも。

 
ー矢地選手は、慎重にいって覚悟を決めたら飛び込む感じが格闘技の戦い方にも通じるようなところがありますね。

うん。ビビりで慎重すぎるところがあるんですよ。だから戦績も判定ばかりで渋いんですよね。でもそれじゃダメだってわかったから、やっぱりリスクを冒してでもすごい試合をしなきゃって思いはじめて、前回のPXCフェザー級タイトルマッチでやっとKOできたし、できるようになってきたかなって。

夢を、夢で終わらせないために

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ー矢地選手にとって強い男って何ですか?

PXCのチャンピオンでいることに関しては、ありきたりですけど、通過点ですよね。UFCという目標があっての、それに行くための通過点ですね。その道のりのことであったことなので、通過点としか考えてないですけど、UFCのチャンピオンになったら気持ちいいんでしょうね。お金もあるだろうし、チヤホヤもされるだろうし(笑)

 
ー基本がそこなんですね。

やっぱりそうですね。もちろん強くなりたいっていうのもありますが、プロとしてお金を稼ぎたいっていうのがありますし。やっぱりUFCのチャンピオンだったら達成感はあるんじゃないですかね。いままで味わったことのない、登りつめたぞ!っていうのは絶対あると思います。

その反面、意外とあっさりしているかなと思う自分もいます。わからないけど、意外と獲ってみたらこんなもんかっていう気持ちにもなると思うかもしれないですね。まだほど遠いですけど。

 
ー期待してます。最後になりますが、これから何かを始めたいと思う人にこういう風にしたら一歩踏み出せるよみたいなものがあれば、お願いします。

やっぱもう考えずに飛び込んで、まずやってみることが大事なのかなって思うんですよ。そこから判断すれば。ダメならダメだし、ダメでも好きなら続ければいいし、そこは自分の感性でやったらいいと思うんですけど、とりあえずやるのがいいんじゃないですか。

人生1回だけだし、やれることはやっちゃったほうがいいのかなって思うんですけどね。

 
ー怖がらずに、まずはやってみようと。

そうそう。ダメでも死ぬわけじゃないし、いろいろ経験したほうが振り返ったときに「ああ、いい人生だった」って思えるだろうし、守りに入るよりは攻めたほうがいいんじゃないですかね。だからとりあえずやってみるのがいいと思います。やってみちゃいなよって感じですね。

ユー、やっちゃいなよっていう(笑)

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LAMP豊後大野 支配人・エディターのケンです。 日本人とのハーフの日本人です。オカルトと柔術が好きです。 好きな食べ物は、チャーハンです。 目標は、フリーメイソンに認定されることです。

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