3. 曖昧性とのたたかい(名内泰蔵 翔泳社)
元日立のエンジニアで、「みどりの窓口の予約システム」のプロマネの経験もある名内氏の著作。
個人的にはかなりの名作です。上の2つの本はどちらかと言えば「理論」が重視されていますが、この本はひたすら「現場で何が起きたか・何をしたか」に焦点が当てられています。
実践的な知恵が数々紹介されており、例えば、
「新人には、重要な部分を任せよ」
というノウハウなどが紹介されています。これは、周辺部のマイナーな部分は誰も見ていないためベテランが行い、新人は重要な部分を担当させ、みんなが見張るようにせよ、と言う趣旨です。まさに現場の知恵と言えます。
現場のTipsが欲しい人にはオススメです。
4. ソフトウェア見積り(スティーブ・マコネル 日経BPソフトプレス)
見積りはもっとも難しい仕事の1つですが、残念ながらやり方が確立していない仕事の1つでもあります。そんなときにオススメなのがこの本。著者のスティーブ・マコネル氏はソフトウェア工学の第一人者でもあります。
この著作で最も著者が訴えたかったことは、
「見積もりとは、幅である」
ということでしょう。
例えば、現在1つのプロジェクトが始まろうとしており、カットオーバーを12ヵ月後とします。プロジェクト責任者を呼び、製品完成までの納期を見積らせたところ、責任者は、「11ヵ月で製品開発終了しますので、1ヵ月程度の余裕があります」と言いました。
本当にこのプロジェクトは11ヵ月で終わるでしょうか?
IBMのプレゼンテーションによれば、12ヵ月後であっても予定通り顧客に納品できる確率は50%程度です。
これは、11月をターゲットとしてプロジェクトを進めた場合、不測の事態によってプロジェクトは遅延を起こし、実際には14ヵ月、15ヵ月かかるかもしれない、ということです。
見積りとは幅を提示することであり、「いつまでにやります」というコミットはリスク管理との兼ね合いで調節せよ、というのが著者の主張です。
この他にも統計に基づくスケジュールの基本公式
- スケジュール(月)=3.0×人月^1/3
などが載っており、基本的な見積の計算式の基礎を学ぶのに良い本です。
5. ピープルウェア(トム・デマルコ 日経BP社)
マネジメントコンサルタントの第一人者である、トム・デマルコ氏の著作。彼のエッセイをまとめたもので、柔らかい文体と、鋭い分析で引き込まれます。
主題は「メンバーのやる気」。
体系的、というよりは現場での経験に基づく法則を集めたもので、最近の言葉で言えば、「ライフハック集」と言って良いと思います。
元祖ライフハックを読んでみたいという方には、オススメです。
6. ソフトウェアメトリクス調査(日本システムユーザー協会)
最後はすこし変わった本です。これはいわゆる「読み物」ではなく、いわゆる「統計データ集」です。
日本システムユーザー協会という団体が毎年発行しており、日本におけるユーザー企業の開発の実体をデータ化し、統計数値として紹介しています。どのようなデータが含まれるか、少し紹介すると、
- 主要な開発言語は何が多いか
- 非機能要求項目の提示項目毎の比率は
- 全体工数と全体工期の相関は
- システム規模別の納期遅延度は
といったさまざまなプロジェクトに関する統計値を入手できます。
これらのデータは非常に有用で、今まで勘に頼っていた「どの程度の期間で開発するべきか?」であったり、「どの程度バグを出せば正常値といえるのか?」などについての標準値を手にすることができます。
もちろん参考情報ではありますが、手元に置いておきたい一冊です。ただしちょっと高価(5,000円以上する)なので、個人で買うよりも会社で買って共有するのが良いかもしれません。
まとめ
以上で、プロジェクトマネージャーが読んでおくべき6冊の紹介は終わりです。
「プロジェクトマネジメント」に関する本は数多くありますので、上に挙げた本よりも良い本がたくさんあるとは思いますが、普遍的なことについて書かれた「名著」は抑えておいても良いのではないかと思います。
【マネージャーのためのお役立ち情報】
※ チームの成長が鈍化した時に考えたい「選択と集中」の事業戦略
※ 部下を指導・育成するマネージャーの5つの役割とケーススタディ
※ 「聞く」から「確認」へ。初アポ15分のヒアリング後に上質な提案をする方法