こんにちは、デザイナー兼イラストレーターのもりたです。
みなさんご存知の通り、LIGでもスタンプを制作しました。
自称イラストレーターの私もスタンプ制作に関わったのですが、実はいまだにガラケー族のため、一度もLINEスタンプを使ったことがありません。
そういう事情で、制作にあたってLINEスタンプに適した絵柄はなんだろう?といろんな絵柄やスタンプを調査・分析してみました。
制作の過程で実際にいろいろな絵柄で描いてみたものも載せています。ぜひ、みなさんがLINEスタンプを作るときの参考にしてみてください。
準備:ターゲットユーザーを考える
絵柄を決める前に、まずはどんなユーザーにどうやって使ってもらいたいかを考えましょう。
LINEスタンプのネタ監修をすることになったメディア事業部部長のそめひこと、他の制作メンバーでスタンプのコンセプトを話し合います。
「LIGを知ってる人しか楽しめないスランプだとつまらないじゃないっすか」
「普通に面白くて使ってもらえることが一番大切だと思うんすよ」
「LIGブログのユーザーはウェブ業界に勤めてる人が多いと思うので、そういう人たちに刺さって、面白いから拡散されるみたいなスタンプを目指したいっす」
というわけで、LINEを使ってる人の印象に残っているであろう「面白い」もしくは「使いやすい」スタンプを参考にし、候補に選んだ絵柄は以下のようになりました。
- 昔の少女漫画風
- 脱力シュール系
- かわいい系三頭身
- かわいい系二頭身
絵柄を分析して描いてみた
企画段階では、CTOのづやさんとメディア事業部のまゆさんの2人を登場させる予定だったため、絵柄の案出しではまゆさんを主に描いていました。
参考用に取らせてもらった写真がこちら。
貴重なメガネなし写真です。
変なことに付きあわせてすみません。
すみません!
づやさんも撮らせてもらいました。
顔色が優れないのは忙しい時に声をかけてしまったせいです。
リアリティがありますね。
1. 昔の少女漫画風
便利に昔の少女漫画風と書いてますが、共通認識として想定できるのは『ベルサイユのばら』もしくは『ガラスの仮面』初期だと思います。
https://store.line.me/stickershop/product/1298/ja
https://store.line.me/stickershop/product/833/ja
この2作品が少女漫画の代表作というわけではなく、「昔の少女漫画」から想起されるものとしてシンボライズされていると考えて差し支えないという意味です。
黒電話を見たことのない人にも黒電話マークが電話だと通じるようなものですね。
『ベルサイユのばら』『ガラスの仮面』について、今の少女漫画との違いを重点に、共通点を上げるならこんな感じです。
- 強弱のふれ幅が大きい線
- 書き込みの多い画面
- 大仰なリアクション・ポーズ
これらに対して今の私たちが抱くイメージは「大げささ」じゃないでしょうか。大げさでうやうやしい。
漫画やお笑いでもそうですが、通常ではないほどの極端な表現はギャグとして捉えられやすくなります。
『ベルサイユのばら』や『ガラスの仮面』の表現は、1980年代当時には一般的な表現でしたが、時代の流れによって極端すぎる表現として受け止められるようになり、結果2010年代現在ギャグ表現のひとつとして使われています。
また、ギャグの表現としてよく使われる手法は「落差」です。
きれいな絵柄が突然崩れる、静かなシーンの後突然大きなアクションが起きる、なども落差を生み出すための方法です。
「おごそか」「うやうやしい」「華美」そんな雰囲気のある昔の少女漫画風絵柄は、社畜や徹夜という言葉から連想される「つらい」「苦しい」「(風呂に入ってないから)汚い」というイメージととても落差があるので、「面白い」というコンセプトにピッタリかなと思ったんですが!
「あー……ちょっと違うよね」
特にコメントなく却下されました。
似顔絵なのに似てなかったのが敗因かもしれません。
結論
昔の少女漫画風の絵柄は似顔絵にはそれほど適さない。驚いている顔以外をどう使うかが面白くなるかどうかの鍵。
他の昔の少女漫画風なLINEスタンプ
2. 脱力シュール系
個人的な希望でまゆさんのスタンプで「呪ってやる…」と言わせたかったので(今回は描いてないけど)シュール系は外せませんでした。
よくみかけるのはシュール系の中でも脱力系の「地獄のミサワ」「タイツくん」、最近話題の「山崎シゲル」や、かつてJTで連載されていた『大人たばこ養成講座』で有名な寄藤文平さんが描くイラストのような雰囲気でしょうか。
これらのイラストを並べてみるとわかる通り、地獄のミサワ以外は基本的に白目と黒目の区別がありません。
https://store.line.me/stickershop/product/542/ja
https://store.line.me/stickershop/product/598/ja
https://twitter.com/hikaru_illust
https://www.jti.co.jp/tobacco-world/torikumi/otonatobacco/backnumber/kouza105/index.html(※現在はサービスを終了しています。)
脱力シュール系のイラストは、淡々とした表現が基調なので、感情の起伏を極力抑えるよう、目が簡略化されていることが多いです。
地獄のミサワもムカつく感じは強烈に伝わりながらも、あまり表情自体の変化は大きくありません。先の「昔の少女漫画風」と真逆ですね。
さすがに似顔絵で白目と黒目の区別がないのは描きづらいので、黒目と白目は分けつつ、なるべく脱力感を意識して描きました。
呪ってやるスタンプを作っていたらこんな感じになっていたでしょう。
…まぁ描いてみてやっぱり表情の変化がつけづらいなと感じたので、脱力系から離れてやや古谷実っぽい絵柄も描いてみました。
脱力系は絵自体のパンチが弱かったため、あえなく没に。
2枚目のややリアルな方はそこそこ評判が良かったものの、「毒が強すぎる」「かわいくない」というコメントをもらいました。
LINEスタンプで売れているのはやっぱりかわいいスタンプで、あんまり毒が強すぎると女性が使いづらいのではないかとのこと。
なるほど…。
結論
シュール系のスタンプはネタ勝負。イラストを活用したよりシュールなネタが出せるかどうかが肝。
クリエイターズスタンプの人気順を見ると使えるかどうかは二の次っぽい。
かわいさがなくなると不評なので、かわいくしないなら突き抜ける必要がありそう。
他のシュール系なLINEスタンプ
3. 三頭身
LINEスタンプを作ることになって、改めてLINE公式スタンプを見たとき、これを作ったイラストレーターさんは本当に上手い…!と驚きました。
単純な線でキャラクター性をだした上で感情をストレートに表現していて、LINE公式スタンプが使いやすいとみんなが言うのも納得です。
そんなわけで「線のテイストは公式のスタンプっぽく」という注文もあり、LINE公式スタンプの頭身に一番近い三頭身も描いてみました。
いま見ると三頭身よりもちょっと体が長いですね。
少女漫画の顔の半分くらいの面積を目が占めているような絵柄でも、それが人の顔だと認識できるように、人間のデフォルメに対する認識の許容値はけっこう広いと感じます。
日本人の体型はだいたい五〜六頭身なんですが、三〜三.五頭身くらいが、絵にした時「人間らしい身体」だと認識される限界かなと私は考えています。
おそらくこれ以上頭身を縮めると、「真っすぐ立った状態で開かれた足の幅」より「顔の幅」が大きくなるためではないでしょうか。
例外はありますが、顔の幅より足の幅が狭くなると一気に自力で立てなそうに見えてきます。
なので、キャラクターにデフォルメされた演技ではないく、人間臭い細やかな演技をさせるなら三頭身が限界というのが個人的な見解です。
結論
でも考えてみたらLINEスタンプってイラストが小さくなるし、身振り手振りの大きなデフォルメされた演技のほうが適してそうだし、三頭身にこだわる必要はなかった。
公式のように個々のスタンプでバランスを変える時の選択肢のひとつ。
4. 二頭身
二頭身は三頭身よりさらに顔の占める割合が大きくなり、体がちいさくなります。
表情を出すには最適ですが、ポーズに制限がかかります。
例えば、二頭身の体では手が頭の上に届きません。
ドラえもんを想像してみるとわかると思います。
ドラえもんができないポーズは、基本的に二頭身の体では不可能です。
だけどLINEスタンプには二〜二.五頭身の絵柄がとても多いですね。
やっぱり、体の動きといった細々した部分で伝えたい感情を表現するよりも、顔の表情のほうがストレートに伝わるためだと思います。
それを証明するように、有名なキャラクターやアニメの公式スタンプでも、有名なセリフなどを使ってるもの以外では二〜二.五頭身の絵柄を採用しているものが多くあります。
https://store.line.me/stickershop/product/1147/ja
https://store.line.me/stickershop/product/1026/ja
https://store.line.me/stickershop/product/706/ja
ちびまる子ちゃん、あらいぐまラスカル、サンリオキャラクターはどれももともと低めの頭身で描かれていますが、それよりもさらに縮んでいます。
キャラクターの動きそのものが小さくなるので、漫符(汗や怒ったマークなど、漫画で動きや感情を表現するために用いられる記号のこと)が大きめに描かれている点が共通していますね。
二頭身化、よく言うちびキャラ化の描き方にはいくつか種類があり、今回簡単ではありますがよくあるものを分類してみました。末端肥大型だけはアトムやロックマンのようなフォルムの通称として使われているのでそのまま載せましたが、それ以外は造語です。
末端肥大型・胴部肥大型・寸胴型の3つと、縮小型・巨大手足型の大きな違いは関節部の表現です。
関節部に強弱がついて表現されるとリアルに近づき、デフォルメされたかわいさは減ります。
その分手足の細かい演技をさせやすくなるので、場合によって使い分けが必要だと思います。
今回は他のイラストがあまりかわいくなかったので、かわいさを狙って末端肥大型で描いてみました。
が、「もうちょっと毒がほしい」と言われて没になりました。
加減が難しい…。
結論
二頭身にデフォルメしたキャラはかわいい。かわいいはみんな好き。でもある程度体に丸みと太さがないとかわいくならない。
5. そもそも似顔絵です
実際のところ、LINEスタンプには芸能人の似顔絵のスタンプも多くあります。
有名なところではザキヤマ、よしもと芸人などがありますが、リアルすぎる絵柄は社内のLINEユーザーに聞いたところあまり使わない・使いづらいという話だったので、リアル路線はなしということになりました。
主に参考にしたのはよしもと芸人とザキヤマのスタンプですが、改めて他の似顔絵スタンプも並べてみましょう。
https://store.line.me/stickershop/product/1575/ja
https://store.line.me/stickershop/product/1977/ja
https://store.line.me/stickershop/product/1921/ja
https://store.line.me/stickershop/product/1664/ja
個々のイラストによって頭身が変化することもありますが、概ね顔が大きく二〜二.五頭身で描かれています。
Google画像検索で「似顔絵」と検索した場合も、顔が大きく描かれたイラストが過半数を占めているので顔を大きくすることが似顔絵の定番のようです。
「顔を大きく」+「ちょっと毒のある顔」+「二頭身」という注文をもらい、シュール系の時に提案した顔と二頭身の身体を合体させて描いたのがこちら。
ちょっと…濃いな…と思って中和しようと描いたのがこちら。
似顔絵画家の似顔絵っぽくする場合は「肩」と「首」をちゃんと描くとそれっぽくなりますが、今回はイラストらしさを優先しました。
結論
似顔絵の場合は顔を大きく描ける絵柄がいい。あまり線や影を多くせず、デフォルメされていると使いやすそう。
他の似顔絵のLINEスタンプ
最終決定稿
最終的に「インパクトがある」「社畜というテーマの毒っぽさと合っている」などの理由から選ばれた絵柄はこちらになりました。
しかし私の描く体がかわいくないと絶不評だったので、頭身を合わせ、みぽりんの描いた体と合成して、下書きを作成。
他のデザイナーさんと手分けしてIllustratorで清書してもらうために、
修正指示などを、
出しつつ、完成…
しました!
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https://store.line.me/stickershop/product/1001848/ja
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もりたでした。
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