編集者は指揮者
前章で、編集者の仕事は雑誌や書籍の根幹なんて言ったものの、結局編集者の仕事ってどこからどこまでなの?と思う人もいるでしょう。私が編集者として駆け出したときにも同じような疑問を抱えていました。
で、結局納得した答えが“編集者の仕事は、オーケストラの指揮者”です。オーケストラはさまざまな楽器によって役割が決まっていて、指揮者が指揮棒をもって指示をすることで演奏が成り立っていきます。つまり、演奏する楽曲(=企画)があって、演奏する人たち、例えばトランペットがライターで、バイオリンがカメラマンで、フルートがデザイナーで、コントラバスが印刷会社をしっかりと指示することで演奏=企画を記事にしていくのが編集者の仕事ということです。
編集者の魅力
ここまで聞くと編集者の仕事って、やることがありすぎて大変そう。そう思ったあなた! 正解です。編集者は常に校了の締め切りに追われながら、ページを絶対に開けてはならないプレッシャーと闘いながら仕事をしています。
しかし、それ以上にやりがいを感じる仕事であることは間違いないです。読者に何が受け入れられるのか、どんな企画をやれば読者にとって有意義な時間や知識を与えられるのかを考えながら企画を立て、そのときの世の中の流れやこれから流行るような物事をいち早くキャッチしていく。
もし仮にその企画が話題になったらどうでしょう? ふと電車に乗っているときに「この企画面白いよね」なんて自分が企画した記事が読まれていたら……胸高鳴りますよね。これほど刺激的で流れが早く、かつ面白い企画を立てることができるのは、編集者の醍醐味と言えます。
雑誌と書籍とWeb媒体の違い
私の編集者としてのキャリアは、雑誌の編集、書籍と電子書籍の編集を経て、現在はWeb編集者。良くも悪くも世の中の時流とともに貴重な経験をさせてもらってます。結局のところ、雑誌と書籍とWeb媒体(電子書籍も含めて)の違いって何なの? という人も多いでしょう。
結論から言うと、編集作業の根源は全く変わらないけど、企画立案が大きく違うんですね。既刊している雑誌であれば、その雑誌の編集方針やある程度の企画テーマが決まっているでしょうから、その中でどのような企画が読者にささるのかを探っていく。Webにおいては、Webの読者、つまりWebリテラシーの高い読者にはどのような企画が興味を引くのかを知る必要があります。紙とWebの読者の違いを理解することが非常に重要です。紙で展開した企画が、Webでうけるかといったらそうではないし、その逆も然り。
新創刊する雑誌なら、どのようなテーマで雑誌を作り上げていくのか、どのような読者層を想定するのかを決定していく。でもこれは基本的には編集長と呼ばれる方々がやる仕事ですね。編集長の媒体テーマに沿って、編集者は駒のように働きます。というのは言い過ぎだけれど。
書籍の編集は、企画を編集者が立てる場合もあれば、すでにでている連載などをまとめて書籍にする場合もあります。企画ものでも連載のまとめでも、著者がいてその著者の意志を書籍に落とし込むことが最終目的。書籍の判型や紙、表紙もすべて著者と編集者が相談して決めていきます。そういった意味でも、書籍は、編集者と著者の共作物と言えます。