多くのオンライン英会話サービスがある中で、誰もが知っているであろうDMM英会話サービス。2013年2月にサービスを開始し、業界では後発ながら今では「オンライン英会話学校 総合満足度 」で1位(※1)を獲得するなど、並々ならぬスピードで成長を遂げている。
※1 2015年3月25日 雑誌「PRESIDENTプレジデント」
英会話業界で後発だったDMM英会話が、どのようにして英会話市場への参入を決め、どうやって立ち上げメンバーを集めたのか、またユーザから信頼をどのように集めていったのか。
今回は、DMM英会話事業責任者でありフィリピン現地法人「 Bibo Global Opportunity」の最高経営責任者(CEO)でもある上澤貴生さんに話を聞いてきた。
海外はもちろんのこと、国内で事業の立ち上げを考えている方や実際に事業をおこなっている方にも参考になると思うので、ぜひ一読してほしい。
- DMM英会話とは
- Skypeを使ってマンツーマンでオンライン英会話レッスンができるサービス。いつでもどこでも、PCやスマホ、タブレットでレッスンが可能。世界60カ国以上の中から講師を選ぶことができ、フリートークや無料教材を使って、英会話を学べる。1レッスン99円から受けられるのがDMM英会話の強み。
業界で後発だったDMM英会話がわずか2年でトップになった3つのポイントとは
ポテンシャルのある市場とバリューのある商品だからこそ参入した
─当時の英会話ビジネス市場では後発だったと思いますが、具体的にどういったところに可能性を感じたんでしょうか?
- 上澤
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オンライン英会話って我々のサービスだけでなく、他社も含めてすごくバリューのあるサービスなんです。これまでは、英会話を習おうとすると駅前の英会話教室まで行かなければならなかった。そしてすごくお金がかかった。だけどオンライン英会話であれば、いつでもどこでも世界中の先生からレッスンを受けられる。しかも圧倒的に安く。
これはテクノロジー的なイノベーションではなく、価格のイノベーションなんです。
─それだけバリューのある商品なのに、当時オンライン英会話をビジネスとしている会社はなかったんでしょうか?
- 上澤
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我々はオンライン英会話としては後発の部類です。我々が参入したのは2013年2月ですが、そのときにはすでに100社を超える企業がこのサービスを提供していました。
しかし、当時は今ほどオンライン英会話自体がメジャーではなかったんです。オンライン英会話は価格イノベーションですごくバリューのあるサービスなのに、その割に思ったほど世の中に広がっていなかった。
そこで調査してみると、当時先行していた会社は中小企業がほとんど。みんな独自の資金で運営しており、一部外部から資金調達をして運営している会社も少ない資本で運営をしていました。
オンライン英会話自体の市場を広げようと思ったら、もっと資金が必要だと思ったんです。フィリピンでイチから立ち上げるのは大変そうだけど、資金力とオンラインサービスのバックグラウンドがあるDMMなら必ず市場はとれるし、市場は今の何倍にもなるのでチャンスがあると考えました。
─それだけのポテンシャルなら競合もたくさん参入してきそうですが……。
- 上澤
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大手企業が参入する可能性は低いだろうと考えていました。と言うのも、このビジネスモデルはとても利益率が低い。ある程度の規模になるまで利益はでないし、お金を投資すればすぐに大きくなるものでもない。
DMM英会話には現在3,000人以上の講師がいますが、はじめからこんなにいたわけではないんです。先生が多過ぎると生徒が足りなくなり先生たちから不満が出ますし、逆に先生が少ないと生徒から不満がでます。そういったバランスを見ながら地道に生徒も先生も増やさなければいけません。しかも、オンライン英会話では、先生を1人育てるのにコストも時間もかかるので急成長ができないんです。
それだけでなく、マーケティングについても月謝制のストックモデルです。これはコツコツ積み上げていくのにすごく時間がかかる。そう考えると大手の競合は簡単には参入してこないなと思ったんです。
人の採用に重要なのは、僕と気が合うかどうか
─立ち上げ時は特に人の採用が重要だと思うんですが、どういう基準で人を採用したんでしょうか?
- 上澤
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立ち上げ時の採用に関して言えば、完全に人柄で選びました。もっと言うと僕と気が合うかどうか。立ち上げのときは300人の応募者がいて、その中にはMIT(※2)卒業者や戦略コンサルティング出身の人など、優秀な人はたくさんいました。その300人全員と面接しましたが、最終的には人柄で15人を選びました。
最近では、タイでノキアのマーケティングマネージャーをやっていた非常に優秀な方と出会い入社寸前までいったのですが、フィリピンで数日間オリエンテーションをやった結果、他の社員や社風と合わず結局お断りしました。
※2 マサチューセッツ工科大学
─人柄ですか……。それは今までのご経験からですか?
- 上澤
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そうですね。特に海外での仕事は信頼関係が非常に重要です。これまで海外で仕事をしてきて、裏切りがあった事例やチームがバラバラになった事例をたくさん見てきたので、人柄を重視しますし、他の社員と合うかも重要視しています。
─話が少し前後しますが、最初に300人の応募ってかなりすごいことだと思うんです。どのよう方法で求人をしたんですか?
- 上澤
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僕の場合は運がよかったんです。まず有料の求人サイトは一切使いませんでした。Googleフォームで応募フォームを作って、SNSや人づてに拡散をお願いしたんです。社名は伏せていたので、わかるのは“IT大手のスタートアップ”ということだけだったんですよね。
─Googleフォームですか!?
- 上澤
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はい(笑)
いろいろな方にそんな怪しい求人で集まるわけないだろ! と言われました。ただ、太田さん(※3)や早さん(※4)をはじめ、影響力をもった方々が協力してくれたので、多くの方からご応募いただけました。
※3 太田 英基
School With代表。タダコピCo-Founder。サムライバックパッカー発起人。若者のグローバル志向底上げを使命にフィリピン留学後、2年の世界一周。『フィリピン「超」格安英語留学』『日本がヤバイではなく、世界がオモシロイから僕らは動く。』著者。ソーシャルアパートメント在住。特技は口笛。(出典:DMM英会話ブログ)
※4 早 剛史
有限会社カラーズコレクション設立(2007年に株式会社化)、2009年(平成21年)7月、㈱美人時計の代表取締役を経て、株式会社ファンアプリの代表取締役社長を務める。(出典:Wikipedia)
サービスが愛される理由は、講師と勉強しやすい環境
─立ち上げはマニラとセブ、ダバオの3拠点で同時におこなわれましたよね。拠点を最初から3つつくったのはなぜですか?
- 上澤
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リスクヘッジのためです。フィリピンは台風や地震などの自然災害が比較的多い地域なので、何かあったときに拠点が1つだけだとサービスが止まってしまうと考えたんです。3拠点あれば仮にどこかの拠点の機能が止まっても他の拠点がカバーに入れますから。