コンプライアンスとは?意味や違法事例、企業が気をつけるべきことを社労士に聞きました

コンプライアンスとは?意味や違法事例、企業が気をつけるべきことを社労士に聞きました

Yurie Sasaki

Yurie Sasaki

こんにちは、管理部のゆりえです。

みなさん、「コンプライアンス違反」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
しかし、残業代目当てでわざと会社に残る社員がいることで、企業がコンプライアンス違反をしていることになるのはご存知でしょうか?
違反することで企業としての信頼を失いかねない、コンプライアンス。

今回はコンプライアンスの意味やコンプライアンス違反をしないために企業が気をつけたいことについて、勤怠管理システム「インターネットタイムレコーダー」さんのご紹介で、社労士の勝山竜矢さんにお話を伺いました。そのお話をもとに解説をしていきます。

社会保険労務士事務所「株式会社リーガルネットワークス」総務部人事課の勝山竜矢さんの写真 人物紹介:勝山竜矢

企業の総務部人事課、営業で実際の現場を経験したのち、社労士として独立。長年現場で培った経験と実績を強みとして、“日本一お客様に愛される社会保険労務士事務所”をめざし、中小企業の経営者の立場に立ったサポートを行なっている。



コンプライアンスとは?

そもそも、コンプライアンスとはどういう意味なのでしょうか?

法令遵守ってよく聞くけど・・・

一般に「企業コンプライアンス」と言う場合、企業がルールに従って公正・公平に業務を遂行する法令遵守を指します。

この“法令遵守”とはコンプライアンスを直訳した言葉ですから、見聞きすることが多いかと思います。そして、この“法令”という言葉にしばしば惑わされがちなのですが、実はこの法令が指すものは法律だけではないんです。

どんなルールを守る必要があるの?

法律だけでないのなら、他にどんなことを守る必要があるのでしょうか? コンプライアンスとして守るべき範囲は、下記の3つです。

法規範
行政で決められた法律や条例など、法としての拘束力のある規則社内規範
社内で決められたルールや業務マニュアルなどの規則倫理規範
職務上守らねばいけない企業倫理や人として守らねばいけない社会的な倫理

つまり、コンプライアンスとして守るべき範囲は“法律や会社のルール”はもちろん、一般道徳で考えられている“するべきこと・してはならないもの”も含まれるということ。

なぜコンプライアンスが重要視されているの?

コンプライアンスについて砕けた説明をすると、“悪いことせず一般常識のルールを守って働く”ということになります。しかし、これってわざわざ重要視することなの?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、コンプライアンスが重要視されるようになった理由に、下記のような社会的要素が関わっているんです。

  1. 業績拡大や短期的な利益の優先
  2. 職場内問題の増加と多様化
  3. 企業に社会的責任が求められる

こういったことが起因して、コンプライアンスはリスクマネジメントの1つとして捉えられることが多くなりました。
では、なぜコンプライアンスを守ることがリスクマネジメントにつながるのかを説明します。

1. 業績の拡大や短期的な利益の優先

業績の拡大や短期的な利益を優先しすぎることにより、労働者を不当に扱うなどの違法行為をおこなったり、衛生面などの管理を怠り消費者から信用を失ったりするなどのトラブルにつながりやすくなります。
また、それがニュースになって信用を失ってしまうと、事業の継続が困難になっていきます。そうならないために、社内規範の見直しを求める声が高まっていると考えられます。

2. 職場内問題の増加と多様化

以前の労働トラブルは、残業代の未払いや不当解雇などがそのほとんどを占めていました。しかし、年々件数が増加するとともに過度な労働による健康障害やハラスメントなどによる精神的な不調など、その内容も多様化しているという背景があります。
そういった労働トラブルは企業の社会的信用を損ねたり、採用活動へ悪影響を与えたりします。こうしたトラブルを避けるため、法規範に準じた労働環境を整える必要があると言えます。

3. 企業に社会的責任が求められる

社会的責任とは、CSR(corporate social responsibility)のことで、代表的なものとしてはeco対策などが挙げられます。
CSRによって企業イメージが向上し、株主や消費者などと良好な関係を築けたり、省エネ活動によって経費の削減になったりするなど、多方面のメリットがあります。
そうした理由から近年では注目が高まっていて、同時に社会的な倫理である倫理規範も見直され始めています。

コンプライアンス違反の原因は内部にある?

コンプライアンス違反の原因は大きく分けて2つ。
違反しやすい組織体制になっているか、あるいは啓蒙活動が不十分で浸透しておらず、社員にコンプライアンスが意識されていないかのどちらかです。

そうした環境になっている場合、

  • 会社への忠誠心がなく、仕事に対する責任感がなくなる
  • 過度の利益重視によって、顧客の安全や衛生管理などが無視される
  • なれあい主義によってルール違反が横行し、それらが暗黙の了解となる

など、コンプライアンス違反以外の面でもトラブルを招きやすい状況になっていると考えられます。

あなたの会社は大丈夫?コンプライアンス違反事例

それでは、実際にどのようなことがコンプライアンス違反にあたるのでしょうか。具体的な違反事例をいくつかご紹介します。

残業代目当ての故意な残業は違反

残業は、上司の管理の元によっておこなわれるものだと定められており、上司の知らないところで自主的に残業をおこなうことはコンプライアンス違反となります。
労働基準法では、労働者の労働時間が法定労働時間を超過した分の割増賃金を支払わなければならないと定められています。いわゆる残業代ですね。
残業代が正しく支払われなかったり、残業代を目的とした自主的な残業をしたりするのはコンプライアンス違反となり、加えてこれを管理する上司も責任が問われます。

消費者に不利益を与える行動は違反

開示すべき情報を開示しないことはコンプライアンス違反にあたります。
例えば、ある情報を開示することによって“販売に不利になる”ことが考えられても、その情報は開示しなければなりません。企業コンプライアンスは倫理規範に基づくものなので、消費者に不利益を与える行動は違反となります。
逆に、販売には不利な情報であっても消費者の判断に役立つようなものであれば、そこから信頼を得られる可能性もあります。

仕事への影響を目的とした接待は違反

民間の取引先や関係先への接待については社会常識の範囲内で認められていますが、過剰な接待はコンプライアンス違反となります。
しかし接待の度合いについては、接待される側が実際それをどう判断するのかがわかりづらいので、コンプライアンス違反だと断言できないケースも少なくありません。
取引額を増やしてもらったり他社から自社へ切り替えてもらったりするなど、第三者が見たときに明らかに仕事への影響を目的とした接待は互恵取引にあたるので、禁止や自粛するなどしている企業もあります。

企業が気をつけるべきこととは

コンプライアンス違反が起こりにくい環境にするためには、どのような対処・対策が必要なのでしょうか。企業がコンプライアンスを守るために気をつけるべきポイントをまとめました。

コンプライアンスにおける重要な6つのポイント

まず、コンプライアンスで徹底すべき要素は下記の6つです。

1. 社員の行動基準を作成すること

企業の基本方針や行動指針を定め、社員全員でそれを共有することがコンプライアンス体制をつくっていくための第一歩となります。
また、企業にとって守るべき法令や社内の規則、違反行為発見時の処罰などを明示するコンプライアンスマニュアルを作成することで、違反が起きないようにする意識啓発に生かせます。

2. 相談しやすい職場環境づくりをすること

コンプライアンスに対する行動を活性化させ、実効性のあるものにするために情報共有や意見交換をおこなえる職場環境づくりが必要になります。

具体的には、社員がコンプライアンスに関する報告や相談ができる窓口を設けるなどが挙げられます。他にも、「デュー・プロセス」と言う社内で問題が提起されたとき、中立的な責任者や委員会が公平公正に判断を下す制度の導入も効果的でしょう。

3. 起こり得るリスクを明確にし対策すること

企業の基本方針から現場レベルまで、徹底的に起こり得るリスクについて深堀りし、さまざまな危険性を明確化します。加えて各現場でのリスクとそれへの対応策を考えることで、コンプライアンスの活動がより身近なものとなります。

4. 社員に対して研修をおこなうこと

研修とは、企業コンプライアンスの啓蒙活動にあたります。コンプライアンス体制が整っても、きちんと研修・教育がおこなわなければ社員に浸透しないので、力を入れたい重要なポイントですね。

研修は各業種・企業によって方法やタイミングもさまざまですが、効果的なものは下記のとおり。

  • 責任範囲や実務経験などに応じて階層別におこなう
  • パネルディスカッションなどの参加型講義で周知をはかる
  • コンプライアンス問題が発生した(しそうになった)タイミングでおこなう
  • 業界内や社内でルールなどの大きな変更があったときにおこなう

企業の特色や仕事内容にあった方法で研修をおこないましょう。

5. コンプライアンスの文書を最新に保つこと

コンプライアンス体制の維持・運用のために、文書を常に最新版に保ち、それらを管理して関係者に必要な情報を適宜公開することも重要です。
また、行動基準やコンプライアンスマニュアルなどを新規で作成した場合、各文書それぞれに矛盾がないかも確認しなければなりません。

6. モニタリングや内部監査をおこなうこと

行動基準で定められた基本指針やコンプライアンスマニュアルなどが適切に実施されているか、また社内のコミュニケーションが円滑に機能しているかを継続的に検証します。
アンケートなどを配布して日常的にチェックしたり、問題が発覚した場合に是正措置がとられたのかを確認したりすることで、コンプライアンスが機能していることを検証し、違反防止に努めます。

社労士による労務監査もおすすめ

コンプライアンスを守るために企業が気をつけたいことをご紹介しましたが、社内でできることには限りがありますよね。そんなときは専門家に監査を依頼することも一つの手です。
労務監査とは、労働基準法などの法規範を中心に、労務が適切に遂行できているかどうかを社労士が調査し確認することです。

労働基準法については、下記をどうぞ。

なぜ労務監査が必要なのか?

労使・労働問題は、これからも増えていくことが容易に予想できます。また、今後さらに働き方が多様していく中で、企業の労働者への対応方法も問われてくるでしょう。
加えて労務問題の対策として毎年のように法改正や制定がおこなわれているので、それらをきちんと守れているのか確認するのはかなりのコストを要します。

そういった中でも、労務監査をおこなえば社員を守ることができ、コンプライアンス違反の防止にもつながります。

労務監査のチェック項目

では、具体的にどのようなことを確認するのか見ていきましょう。

  • 就業規則などの各種規程が整備されていて、労働基準監督署に提出されているか
  • 各種労使協定はきちんと締結されているか
  • 労働時間の管理はきちんとされているか
  • 休日出勤の対応がされているか
  • 雇入時の健康診断および定期健康診断が実施されているか
  • 適正に労働保険・社会保険に加入しているか

上記のように労働基準法まわりの細かいチェックをします。
コンプライアンスを守る上で重要な部分なので、第三者である専門家にチェックを依頼することで公平に判断してもらうことが有効です。




さいごに

いかがでしたか?
コンプライアンスについての基礎知識や違法事例、企業が気をつけたいことをまとめてみました。

今回ご協力いただいた社労士の勝山竜矢さんは、勤怠管理システム「インターネットタイムレコーダー」で専任の社労士としてサポートをしている方です。

勤怠管理システム「インターネットタイムレコーダー」

勤怠管理システム「インターネットタイムレコーダー」のサイト写真

「インターネットタイムレコーダー」は10年の歴史を持つ勤怠管理システムです。
今回の勝山竜矢さんのように、コンプライアンスに関して相談をすることもできます。経営者だけでなく社員の方も、企業コンプライアンスや労務関係についての悩みを専任の社労士さんに相談できるのは、とても心強いですよね。

>>他にはどんなサポートを受けられるの?<<

利益を追いかけるのも大事ですが、社員全員が仕事に誇りを持ち、法律はもちろん企業ルールを守って気持ち良く働ける環境をつくることも大事だと思います。そのためにも、まずはコンプライアンスを見直してみてはいかがでしょうか。

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千葉大学を卒業後、広告のコンサルティング企業にて広告システムの開発、新規事業の立ち上げ、メディアのディレクションなどを経て、2015年にLIGに入社。人事部の発足や、経理・総務・秘書などバックオフィス全般を担いながら、数々の新規事業の立ち上げに助力。現在は経営企画として、スムーズな経営活動がおこなえる環境づくりを目指している。

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