こんにちは、メディア事業部の紳さんです。
会社で僕は「企画のアイディアを出すこと」、そして「出たアイディアを形にすること」を主な仕事としています。
ちなみに、過去にLIGでおこなってきた企画の中でも飛び抜けて尖っていたのが
秒速結婚です。
自分にとって必要なライフイベントでしたが、世間からは賛否両論、2人の親からはものすごく怒られ、反省すべきポイントが多々ある企画でした。
とはいえ、あれからたくさんの方に祝福の言葉をいただき、今となっては夫婦円満、親戚付き合いも良好、ひたすら幸せな毎日を過ごしています。これも、秒速結婚というアイディアを思いつくことができたからです。
そして結婚してからというもの、出会う人には「どうしたら、あんなアイディアを思いつくんですか?」と聞かれることが多くなりました。
それまで自分でもちゃんと考えたことはなかったのですが、それをきっかけに「アイディアを生むための原理」をまとめるようになりました。そこで本日は、そのまとめを紹介していきたいと思います。
アイディアが生まれる原理とは
そもそも、アイディアというものはなぜ生まれてくるのでしょうか?
まずは、その原理について考えてみたいと思います。
アイディアの作り方
1940年にアメリカの広告代理店に勤める超有能なアイディアマン、“ジェームス・ウェブ・ヤング”が「アイデアのつくり方」という本を出版しました。
この本はたちまちベストセラーとなり、世界中でたくさんの方々に読まれ、今なお広告クリエーターたちのバイブルとして定着しております。
この本の中で、ジェームス氏は素晴らしい名言を残しています。
アイディアとは、
既存の要素の新しい組み合わせ以外の
何ものでもない。
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この言葉を初めて聞いたとき、濡れた手でドライヤーのコンセントを差し込んでいた僕の体に衝撃が走りました。
それまでは「優れたアイディアとは、センスのある人間が気まぐれで思いつくもの」と考えていたからです。
ジェームス氏は「アイディアは既存の要素(知識)の組み合わせによって生まれる」と、「発案の原理」について簡潔に説明しており、それを大勢の人が納得できるレベルの論理に落とし込んでいます。
また、同著の中で
アイディアを出すためには明確な順序があり、それを理解し、意識することで質を高めることができる
とも述べています。
これは「誰でも努力次第で良いアイディアを生むことができる。」という解釈をすることもできます。
「秒速結婚」の発案について
日頃から僕が思いつく企画も、厳密には「ゼロから生まれた」と言えないものばかりです。
たとえばお見合いサイトをはじめ、「自己紹介しつつ、結婚相手をインターネットで募集する」というアイディアはかなり以前に誰かが思いつき、実行されていることです。
また、「サプライズプロポーズ」はテレビのバラエティ番組で何度も放送されていますし、「秒速」についても、当時話題だった与沢翼氏の「秒速で1億円稼ぐ男」からヒントを得たものです。
そう、秒速結婚に含まれる要素は、全て過去に誰かがやっていたことなのです。
つまり、
「誰かがやっていたこと、教えてくれたことを知識として持ち、それらを組み合わせて新しいアイディアを生み出す」
これこそがアイディアを生むための原理となるのです。言い換えれば、本当の意味でゼロから生まれるアイディアなどないのです。
どんなに優れたアイディアも、既存要素の組み合わせであって、
100%オリジナルの力だけで、
優れたアイディアを生み出せる人間などいないのです!
…ということで、今回のブログで一番伝えたかったことは以上です。
しかしそれだけでは、誰もアイディアなど生み出せなくなってしまいます。というわけで、ここからは応用編として、どうすれば効率よくアイディアを生み出せるかについて考えていきたいと思います。
アイディアを生むために必要な準備とは
ジェームス氏のおかげで、アイディアを生む原理については理解できました。
あとは、その原理を信じてひたすら突き進むだけです。
まずは原理に沿って、アイディアを生むために必要な要素をリストアップしました。
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- 豊富な知識 → アイディアの源となるもの
- 発想の豊かさ → 知識を組み合わせてアイディアとする原動力になるもの
- 見直し(レビュー)能力 → アイディアの質の良し悪しを見極めるもの
他にも色々とありそうなのですが、要点は上記の3点だと考えられます。では、その3点についてそれぞれ考えていきましょう。
豊富な知識を蓄えるための準備
アイディアはゼロからは生まれません。知識を源として生まれます。
つまり、博識であればあるほど、新しいアイディアが生まれる可能性が高くなるのです。
どんな分野であっても、知識は必ずあなたを助けてくれます。ひたすら勉強して、経験して、自分の脳と感性を鍛え上げることが大切です。例えば今思いつくだけでも
- 仕事、勉強、食事、睡眠、商売、読書、釣り、野球、カードゲーム、お祭り、料理、ファッション、水泳、パーティー、格闘技、音楽ライブ、登山、人形遊び、農業、テニス、合コン、アルバイト、演奏、事件、資料作成、プロレス観戦、ダーツ、油絵、聖地巡礼、マレットゴルフ、川下り、結婚式、ボードゲーム、満員電車、茶道、トランプ、海外旅行、バレーボール、失恋、パチンコ、天体観測、プレゼント、散髪、美術館、デート、書道、フットサル、剣道、工場見学、カラオケ、ニュース、文化祭、入院、プラモデル、遊園地、ダイエット、花見、ボランティア、家庭菜園、ドライブ、写真撮影、雪遊び、サッカーW杯、ビリヤード、葬式、スノーボード、漫画、ボーカロイド、地引き網、セミナー、墓参り、バスケットボール、恋愛小説、マッサージ、プレゼンテーション、紅葉狩り、アニメ、裁判、ショッピングモール、運動会、クリスマス、野宿、トレイルラン、バンジージャンプ、記者会見、映画鑑賞、オーケストラ、外科手術、アロマセラピー、花火大会、温泉、コンテスト、生け花、かくれんぼ、オーディション、柔道、ボウリング、アプリ制作、スカイダイビング、出産、チアリーディング、おにごっこ、歌舞伎、鉄道、チャット、海水浴、卓球、オンラインゲーム、握手会、トレーニング、水族館、オフ会、競馬、らせん階段、カブト虫、廃墟の街、イチジクのタルト、カブト虫、ドロローサへの道、カブト虫、特異点、ジョット、天使(エンジェル)、紫陽花、カブト虫、特異点、秘密の皇帝。
世の中は、これだけのアクティビティに溢れています。
人生は長いようで短いものです。とにかく「広く浅く」、色んな経験をすることが効率よく知識を蓄えるコツだと僕は考えています。
特に自分にとって興味のないことは一度体験する価値があると思います。新しい知識を仕入れるのに、それほど有効な方法は他にないからです。
豊かな発想をするための準備
人生、毎日が勉強です。知識が十分になることなど永遠にないのですが、アイディアを生むためには、未熟ながらも蓄えた知識をアウトプットする必要があります。
では、新しいアイディアを生み出すためにどのように知識を組み合わせていくのか、具体的な方法について考えたいと思います。
※ちなみに、アイディアを出すためには「ブレインストーミング」という手法がオススメだとよく言われますが、レイヤーとしてはそれより1つ前の個人の頭の中で行う作業の話になります。(ブレインストーミングについてはこちらの記事「おもしろ企画を生む「ブレインストーミング」の進め方」をご参照ください。)
連想
まず最初にキーワードを決め、そこから思い起こされるものを集めて組み合わせていく発想方法です。
例えば、トマトのPR企画だったらキーワードは「トマト」にしても良いかも知れません。
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例)
トマト→赤い→ポスト→郵便屋さん→手紙→切っ手→見返り美人→すごい美人
↓“美人郵便局員の美しさの秘密はトマト中心の食生活にあった”
などなど。「しりとり」でもやってみましょう。
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例)
トマト→とっくり→りんご→ゴリラ→ラジオ→おじさん
↓“ゴリラに育てられた!恐怖の怪人トマトおじさん”
特に苦労せずとも組み合わせが無限に生まれてくるのが、このやり方のすごいところです。
ランダム発想
アイディア出しがものすごく行き詰まったときにやる方法です。
メジャーなところでは
- “誰が” + “どこで” + “誰と” + “○○をする”
の方式に当てはめ、無理矢理アイディアを生み出すというやり方があります。
例えば箱を4つ用意して、それぞれに適当に思いついた単語を書いた紙を入れ、くじ引きのように引き当てたものを組み合わせていきます。
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例)
“ローソンの店員が” “南アルプスで” “関羽と” “走り幅跳びをする”“ドコモの社長が” “KDDIのビルで” “孫正義と” “セミナーを開く”
思いもよらないアイディアが、次々と生まれます。ただ、その精度の低さには頭がクラクラしますね。
時事絡み
その時に話題になっているものからヒントを得る方法で、これが一番簡単ですね。
今だったら、「アイスバケツチャレンジ」に何かを足すという発想が思い浮かびます。
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例)
“アイスバケツチャレンジをやった勢いで、火事の中に取り残された子供を助けに行く”“もしもアイスバケツチャレンジを氷水じゃなくてハチミツでやったら in 森の中”
流行っている映画やアニメ、漫画などのパロディも時事絡みではよく思い浮かびますね。
置き換え
あらゆるものを置き換えて考えることから、新しいアイディアを生み出します。
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例)
“砂時計の砂を納豆に置き換える → 糸をひく綺麗な時計。計れる時間が曖昧。”“回転寿司の寿司をレシーブに置き換える → 回転レシーブ屋さん。コンベアの上をグルグル回っている選手にバレーボールを投げると正確に返っててくる。”
既に存在するものを少し変えるだけなので発想がしやすいうえに、「想像すると結構面白い」というパターンのアイディアがよく生まれます。
昔話を足し算する
あらゆるキーワードに昔話を足し算するという発想方法です。
有名な昔話はユーザになじみが深く(そして、著作権がないというメリットもあり)ストーリーが組み立てやすいですね。
例)自動車 + さるかに合戦
↓ ↓ ↓
- あらすじ
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サルとカニが協力し、拾ってきた部品で新しい自動車を組み上げた。
しかし、サルはカニを裏切り、自動車に乗り込んでそのままカニを轢き殺す。
残されたカニの子供は栗、蜂、臼、牛糞に助太刀を頼み、非道なサルに復讐する。
具体的には高速道路を走行中のサルの車を牛糞でスリップさせ、事故ったところを栗、蜂、臼による「数の暴力」によって沈める。
昔話をモチーフにするとビジュアルも鮮明に浮かぶので、コンテンツが作りやすいです。
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このように、発想するためのやり方は無限にあると思いますので、是非参考にしていただければと思います。
自分の性格に合った、オリジナルの発想方法を考えてみるのも良いですね。
見直し(レビュー)をするための準備
最終的に出てきたアイディアの質が良いか悪いかの見極め…。これが一番、難しいことなんじゃないかと思います。
お笑い芸人のネタだとしたら、笑えるかどうか。
料理人の新メニューだとしたら、美味しいかどうか。
ビジネスマンのPR企画だとしたら、売上に反映されるかどうか。
芸術家の世界なら、「自分が良いと思ったアイディアが優れている」「自分が表現したいことができていればそれで良い」といった理屈も通じるかもしれません。
しかし、ビジネスの世界では一部の天才のみに許されることであって、世の中で結果を残すには「アイディアを客観的に見た人の好評」をたくさん集める必要があります。
どれだけ世の中に受け入れられるのか、そして良い反応が得られるのか。それ以外にアイディアの優劣を判断する要素はありません。
肝心なのは、それをどうやって事前に見極めるのかということですが、おすすめしたいのは「レビューをもらうこと」です。
世の中に発表する前に、家族、友人、恋人、職場の仲間などにアイディアを見てもらい、率直な意見をもらうという方法です。
そこで大多数から好評を得られたのなら、世の中に発表する価値のある可能性は高いといえます。
もちろん、100人中95人から好評だったとか、1000人中950人が認めてくれたとかだったら最高ですよね。
でも現実問題、1000人の一般人からレビューをもらうのはコストが掛かり過ぎます。
だから、必要十分な数とは言えないまでも、少しでも多くの知人にレビューを依頼することで、精度を高めていきましょう。
まとめ
今回の記事で僕が最も伝えたかったのは、「ゼロからアイディアは生まれない」、そして「全てのアイディアは蓄積された知識の組み合わせによるもの」ということです。
僕は、優秀なアイディアは「センス」によって生まれるものではなく、日々の努力の積み重ねによって生まれるものだと確信しております。
とにかく、何をやるにしても自身の経験を積むことが第一で、それは「アイディア出しの経験」よりも「人生における経験」がモノを言います。
ここまで読んでくださった方には、それは加齢によってのみ得られるものではないということを、既にご理解いただいていることでしょう。
あわせて、最終的にアイディアを世の中に発表する前には「客観的なレビューがものすごく大切」ということも忘れずに…。
以上、参考になりましたでしょうか。
周囲の人を大切にしながら、良いアイディアをたくさん生みだしてくださいね!
(※そのアイディアを実現できるかどうかはまた別の話になります。あしからず。)