こんにちは、LIGの岩上です。
先日、ヨーロッパ視察を兼ねてロンドンに行ってきました。
「TENT LONDON」というデザインフェスティバルに先輩のSHIFTBRAINさんが出展されるということで、それを見つつ、現地の制作会社にもお邪魔したりしてみよう…
というわけで、同世代のLIG、Letters、BEES&HONEYの3社・男5人でロンドンへ。
- ▼イベント&参加会社紹介
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- TENT LONDON
Tokyo designers weekのロンドン版。現地のレポートはまた次回。
- SHIFTBRAIN
国内外のデザイン賞を多々受賞しているお世話になっている会社。
- Letters
海外のデザイン賞を多々受賞しているイケてる会社。
- BEES&HONEY
ブランド設計を得意とするイケてるブランディング会社。
ザックリとロンドンってこんな場所
まずはロンドンの特徴について、僕個人の見解を交えながら簡単に説明をさせていただきます。
多人種、多文化な都市
ロンドンの人口は約800万人とEU内で最大の都市です。文化的にも多様性があり、300以上の言語が使われているとのこと。実際、街にはいろいろな人種の人たちが歩いており、数百年続く街並みと多様性が交じり合うバランスがとても刺激的でした。
物価は日本の1.5倍ぐらい(岩上感覚)
驚いたのは物価の高さです。1£=178円で、全体的に東京より若干高め。ペットボトルの飲料水180円、昼食1,500円という感じです。また、場所にもよりますが、家賃も東京渋谷の×1.3倍ぐらいの感覚でした。高い…
制作会社、デザインエージェンシーが多い
ヨーロッパ内の情報が一番集まってくる場所がロンドンです。情報が集まり、人が集まり、トレンドの発信地になるということで、世界的なクリエイティブスタジオが沢山あります。
ロンドン視察の特設サイト
- 「LLB London 2014」
http://letters-inc.jp/llblondon/
滞在中の写真をまとめた特設サイトです。是非、見てみて下さい。
世界でも指折りのCreative Studio「UNIT9」
今回は、ロンドンを本拠地にするカンヌ広告祭常連のクリエイティブスタジオ「UNIT9」を訪れ、同社で働く唯一の日本人でCreative Directorである岸本高由さんにお会いしてきました。
※Creative Directorは、とてもエライ役職です。
UNIT9とは
世界三大広告賞(カンヌ国際広告賞、クリオ賞、One Show)はもちろん、D&ADやSXSWなど多数の受賞歴を持ち、ロンドン(本社)、ストックホルム、ポーランド、サンフランシスコ、ニューヨークなどグローバルに展開するUNIT9さん。
デジタルマーケティングからインタラクティブデザイン、映像制作など幅広く、そして常に高いクオリティで制作をされています。
会議室の棚にはゴロゴロと、カンヌのライオンさんやトロフィーが無造作に置いてありました…。こんなに密集度の高いライオンさんたちは、初めて見ました。
UNIT9 Creative Directorの岸本さんから学んだこと
UNIT9で唯一の日本人である岸本さん。TYOインタラクティブデザインの創業メンバーとして事業を軌道に載せた後、9年前に当時社員数20人前後だったUNIT9に転籍。
デジタル部門のCreative Directorを1人で務めながら、UNIT9を全世界で100名規模にまで成長させたスゴイ人です。
とても気さくで話がオモシロく、過去に手がけたプロジェクトや企画書、考え方などもお話していただきました。
クオリテイがホントに高い。そしてロジックも素晴らしい…
今回は岸本さんのお話の中でも、特に印象に残った「働き方」「競争力」「日本と世界の差」の3点について、以下に紹介させていただきます。
【働き方】国、時差、人種、言語を超えたプロジェクトの進め方
UNIT9のプロジェクトの6割近くは、アメリカのクライアントからの発注になるそうです。制作に関わる企画やデザイン業務はロンドン、バックエンドやフロントエンドの開発はポーランド、といったように国を跨いだプロジェクトが多く、当然ながら各々に時差もあります。
加えて、母国語もバックグラウンドもバラバラなメンバー同士でプロジェクトを回していくという、僕からすると完全にカオスな状況にあります。
それらのプロジェクトの進め方については、基本的には国を跨ぐため日本のような対面での打合せをすることはほとんどありません。
クライアント含めたプロジェクトメンバーとのやり取りは、オンラインのコミュニケーションツールで完結させるそうです。
実際UNIT9の皆さんは、Hangoutやskype、Docsなどをフル活用されていました…
スレッドたくさん。コミュニケーションツールは1日中開きっぱなしにしてるので、時差があっても問題ないそうです。
【競争力】世界で戦う競争力
採用については、LinkedInやポートフォリオを見ての一本釣りが多いとのこと。国によっても得意、不得意があり、例えばポーランドにはディベロッパーが多く、人件費もロンドンの1/3程度らしいです。
仕事を発注するクライアントから見れば、どこの国のどの制作会社でもかまわないので、競合となる制作会社はたくさんあります。
また、働いているスタッフも同様です。世界中のクリエイターと常にパフォーマンスを比較されるという、シンプルで過酷な競争環境を垣間見ました。
世界で活躍するためには、企業もクリエイターも競争力をつけていかないと生き残れない環境だということを強く感じました。
【日本と世界の差】「10年前は日本のほうが進んでいたが、今は数年ぐらい遅れている」
制作現場における海外と日本の差について聞いてみたところ、「10年前、ネット環境は圧倒的に日本の方が進んでおり、表現の幅も広かった。しかし現在、デジタルやインタラクティブマーケティングの領域では日本は数年遅れている」という感覚があるそうです。
理由は3つで、「言語の壁」「スマートフォンの浸透率」「文化の差」のそれぞれに大きな差があるということでした。
言語の壁
ネットは集合知で技術革新が進んでいくため、英語がわかるかどうかの差はとても大きいとのこと。
世界中の新しい技術や取組み、試行錯誤した結果などの情報は、英語圏では次々とアップデートされます。しかし日本語への対応はどうしても1歩、2歩遅れてしまいます。その積み重ねが、トレンドや技術革新という面でとても大きな差になるそうです。
あわせて、日本語のpx数やWebフォントの問題もあるとのこと。px数は英語より日本語のほうが表示領域を取るため、デザインや表現の幅が狭くなってしまいます。
Webフォントについては、日本語でWebフォントをつくることに本来無理があるので仕方ない面もあるのですが、海外の流れから遅れてしまった1つの要素だと思うとのことでした。
スマートフォンの浸透率
日本ではガラケー文化が進んでいた分、スマートフォン化への対応が遅れました。
スマートフォンでできることは多いのに、まだまだ日本国内の浸透率は低いというのが現状です。
たしかにこの分野での表現は完全に乗り遅れてしまった印象がありますね…
文化の差
単一民族であることと国民性も相まり、「あうんの呼吸」という言葉に代表されるように、日本は暗黙の了解値(=共通認識)がとても広い国です。
そのため、世界と日本とでは共通認識のギャップがとても大きく、日本でいいと思われているものが海外では通用しない場合も多いとのこと。
デザインレベルなどは通用しても、相手との共通認識が違うということを把握したうえでの「企画を組み立てるチカラ」「ロジカルに説明するスキルや経験値」が圧倒的に低いというお話をお聞きしました。
うーん、どれもたしかに思い当たるところが…
まとめ
日本でTYOインタラクティブデザイン、ロンドンでUNIT9、というように、それぞれ国を代表する制作会社の中心メンバーとして活躍されていた岸本さんの言葉は1つ1つが刺激的でした。
良くも悪くも「日本の当たり前」が染み付いてしまっていた自分に、もう一度考え直すキッカケをいただきました。
例えば、打合せやプロジェクトの進行に関して、プロジェクトメンバーやクライアントとのコミュニケーションはとても重要です。
日本では顔を突き合わせた打合せが良しとされ、コミュニケーションの濃密度はクオリティに比例するという考え方もあります。僕自身、週に定例会議が何本もあります。
しかしその一方で、さまざまな賞を受賞しているUNIT9さんや海外のプロダクションはオンラインで完結しながら、非常に高いクオリティを担保しています。
より生産性を高め、自由な働き方を実現するためにも、今一度仕組みを考えようと思いました。
また、情報通信技術が整備されるほど海外との距離はドンドン縮まっていきます。クオリティ高くトップクラスのレイヤーで戦いたいと願えば願うほど、日本と世界を区切ることがナンセンスだと感じました。
5年先、10年先も競争力を維持しつづけるためには、世界基準のクオリティや働き方を研究しつつ、LIGとしての強みを国内外問わず表現できる準備を整えていきたいです。
他にも岸本さんからはいろいろ興味深いことを教えていただいたのですが、オフレコの内容も多く、今回はここまで!(すみません!)それでは、また。