こんにちは。システム開発部門でPM(プロジェクトマネージャー)を兼務している鎌です。
Webサービスやアプリ開発の見積もりをご覧になったお客様から、よくこのような驚きの声をいただきます。
「開発費が1,500万円で、そのうちテストに200万円? 開発だけで1,000万円以上かかるのに、テストに200万円も必要なのですか?」

お気持ち、痛いほどよくわかります!
目に見える機能をつくるわけではない「テスト」という項目に、数百万円単位のコストがかかるのは、直感的には納得しづらいですよね。弊社の見積もりにおいても、テスト費用はシステム開発全体の15〜20%を占める大きな項目です。
しかし、私たちプロの視点から言わせていただくと、この投資を削減することこそが、プロジェクト最大のリスクだと考えます。テストを軽視した結果、リリース後に当初の数倍のコストがかかるトラブルに見舞われる事例はたくさんあります。
今回は、マッチングサイト開発プロジェクトの見積もりを例に、「なぜテストに200万円もかかるのか」「そもそも200万円は何に使われているのか」を、発注者の方目線で徹底的に解説します!
目次
なぜテストに200万円もかかるのか?
テスト費用が200万円規模になる最大の理由は、「開発全体の約25%がテスト工程に割かれる」ことにあります。
たとえば、1,200時間の開発(プログラミング)が必要なプロジェクトでは、その4分の1にあたる300時間がテストに充てられます。ここには単体テスト・結合テスト・負荷テストなど、複数の工程が積み重なっており、それぞれが必要な作業と時間を伴います。
では具体的に、テスト費用200万円がどのような内訳で構成されているのでしょうか。「1,500万円規模のマッチングサイト開発」における、テスト費用の内訳を見てみましょう。
| テスト項目 | 費用 | 工数 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 単体テスト | 40万円 | 80時間 | 各機能(ボタン一つひとつ)の動作確認 |
| 結合テスト | 50万円 | 100時間 | 機能間の連携確認(申込〜通知など) |
| システムテスト | 40万円 | 80時間 | 本番同様の環境・条件での全体動作確認 |
| 負荷テスト | 30万円 | 40時間 | 同時アクセスの検証 |
| セキュリティテスト | 40万円 | – | 外部委託による脆弱性診断 |
| 合計 | 200万円 | 300時間 | 約1.5〜2.0人月相当の稼働 |
一口に「テスト」と言っても、実はこれだけの工程と工数が含まれています。
「テスト費用を削る」ということは、「開発工程の4分の1を削る」こととほぼ同義。家の建築に例えると、「柱や壁はつくったけど、雨漏りのチェックや耐震検査は省きます」と言っているようなものです。

これがいかに危険か、イメージいただけるでしょうか?
システム開発でテストがとくに重要な理由
コーポレートサイトやブログと違い、システムを含む開発においてテストが極めて重要な理由は、「複雑さ」と「責任」にあります。マッチングサイトを例に説明いたします。
複雑な機能の組み合わせ
マッチングサイトは、単機能のサイトではありません。
- ユーザー登録(一般・事業者・管理者) × 認証(メール・SNSなど)
- マッチングロジック × 通知 × 権限
- 検索条件の組み合わせ
このような機能が複雑に絡み合っているため、「ある箇所の修正が、まったく関係ない箇所のバグを引き起こす」ことが頻繁に起こります。
たとえば「決済手数料を修正したら、なぜか領収書発行機能が動かなくなった」といった連鎖反応です。これを防ぐには、網羅的なテストが不可欠です。
お金と個人情報を扱う責任
- 決済エラー = 直接的な金銭損失
- 個人情報漏洩 = 法的リスク + 信頼崩壊
- マッチング不成立 = ユーザー離脱 = 収益減
マッチングサイトのバグは、「表示が崩れている」程度では済みません。事業の根幹である「金銭」と「信用」に直結します。
テストではなにをしている?中身を解説

では、具体的に200万円で何をしているのか、各テストの中身を解説します!
単体テスト(40万円・80時間)
部品ごとの品質チェックを行います。エンジニアがつくった機能一つひとつが、設計通り動くか確認します。
- テスト例
-
- プロフィール画像がアップロードできるか。指定の5種類のファイル形式に対応しているか。
- 入力フォームで不正な値を弾く(バリデーション)ことができるか。必須項目、文字数制限、不正な値など。
削減するとどうなる?
基本的なバグが大量に残り、使い物にならないシステムになります。
結合テスト(50万円・100時間)
機能同士の連携をチェックします。複数の機能を繋げて操作し、一連の流れが通るか確認します。
- テスト例
-
- Aさんが申請 → Bさんに通知 → Bさんが承認 → 決済処理 → チャット機能が使えるようになる、というフローが途切れないか。
削減するとどうなる?
「通知が来ない」「決済したのに機能が使えない」といった、サービスとして致命的な欠陥が残ります。
- 例:決済機能の致命的バグ(損失:350万円)
-
結合テストの工数を削減したところ、リリース後1週間で「特定の条件下で決済が失敗する」というエラーが87件発生しました。
- 原因:結合テスト不足による、決済連携を見逃す
- 結果:顧客への返金対応、お詫び、原因究明に追われる
- 損失額:補償や対応人件費を含め約350万円
50万円のテスト費用を惜しんだ結果、その7倍の350万円を失ってしまうケースです。
システムテスト(40万円・80時間)
本番想定の全体チェックを行います。本番環境に近い状態で、システム全体が正しく動作するかを確認します。
- テスト例
-
- スマホとPCで表示崩れはないか。
- 管理画面の設定変更が、ユーザー画面に即座に反映されるか。
削減するとどうなる?
リリース直後に予期せぬトラブルが多発し、運用が回らなくなります。
負荷テスト(30万円・40時間)
アクセス集中の耐久テストを行います。同時アクセスが増えたときにシステムが耐えられるかをテストします。
- テスト例
-
- 1,000人が同時に検索ボタンを押しても重くならないか。
- 決済が集中する場合に連携がダウンしないか。
削減するとどうなる?
ユーザー数が増えた瞬間にシステムがダウンし、せっかくのビジネスチャンスを逃します。
- 例:1万ユーザーで崩壊したシステム(修正費用:500万円)
- 負荷テストを実施せずリリースし、予想以上に人気が出たマッチングサイトになりました。ユーザー数が1万人を超えたタイミングで、システムダウンが頻発します。
- 原因:負荷テスト未実施による、スケーラビリティ検証不足
- 結果:全面的な設計見直し、改修(リファクタリング)が必要に
- 損失額:500万円
30万円の負荷テストを実施していれば、リリース前に回避できた問題でした。
セキュリティテスト(40万円)
システムの防犯診断を行います。ハッキングや情報漏洩のリスクがないか、専門ツールや専門家が診断します。
- テスト例
-
- SQLインジェクション、XSSなどの攻撃耐性チェック
- 個人情報の暗号化確認
- 権限管理の抜け穴チェック
削減するとどうなる?
個人情報保護法違反や損害賠償請求のリスクを抱えたまま運用することになります。
- 例:個人情報漏洩リスク(損失:計測不能)
-
「セキュリティ診断は高いから」と省略したところ、本番稼働2ヶ月後、悪意ある第三者がアクセス可能な脆弱性が発覚しました。
- 原因:セキュリティテストの未実施
- 結果:緊急のシステム停止、改修、ユーザーへの告知
- 損失額:サービスの信用失墜、ユーザー離脱(プライスレスな損失)
40万円の診断を削った代償は、「事業継続の危機」だったというケースです。
テストコストを抑える3つの方法
「テストの重要性はわかったけれど、どうしても予算が厳しい……」
そんな場合は、ただ闇雲に削るのではなく、戦略的にコストを抑える方法があります。
削れるテスト・削れないテストを見極める
❌ 絶対に削ってはいけないテスト
- 結合テスト:マッチングサイトの心臓部
- 決済関連のテスト:金銭トラブルに直結
- 個人情報保護のテスト:法的リスク
✅ 段階的にできるテスト(初期コストを抑える)
- 負荷テスト:初期ユーザー数少なければ、簡易版(10万円)にする
- セキュリティテスト:初回は簡易診断(20万円)にし、本格診断は半年後に行う
MVP(最小限の機能)から始める
全機能を一度につくろうとすると、それだけテスト費用も膨らみます。
「まずは検索とメッセージ機能だけ」など、機能を絞って段階的にリリースすれば、開発費もテスト費も圧縮できます。
自動テストの導入
初期構築に50万円ほどかかる場合がありますが、2回目以降のテストコストを大幅に下げられます。長期運用するサービスなら、トータルコストは安くなる可能性があります。
実際の見積もりを見るときのチェックポイント
ここまでで、テストの重要性と内容を理解いただけたと思います。
お手元の見積もりが適正かどうかをチェックするポイントを解説します。
- 「テスト一式:100万円」と書かれていないか?
何をするか不明確です。「単体・結合・負荷」など項目が分かれているか確認しましょう。 - セキュリティテストは含まれているか?
個人情報・決済を扱うなら必須です。 - バグ修正費用は含まれているか?
テストで見つかったバグを修正する費用が含まれているかも重要です。 - テスト費用の比率は適正か?
開発費に対して、15〜20%が目安です。- 危険信号
- 開発1,200万円・テスト50万円(テスト比率が4%)
→安く見えますが、バグだらけで納品されるリスクが高いです。
まとめ:テスト費用は「保険」ではなく「投資」
最後に、あらためてお伝えしたいのはテスト費用200万円は「何かあったときのための保険」ではなく、「数千万円の損失を防ぐための投資」だということです。
50万円削った結果、200万円のバグ修正がかかる。
30万円削った結果、500万円のシステム改修が必要になる。
こうした事態を避け、ユーザーに信頼されるサービスを長く運用するために、品質保証への投資は必要不可欠と考えます。
LIGでは、ご予算に応じた最適なテスト計画のご提案も可能です。
LIGのテスト・品質保証プロセス
弊社では、お客様のビジネスを守るため、3段階の品質チェック体制を敷いています。
- 開発チームによる単体テスト:自動テストツールも活用し、コードを書いたらチェックします。
- QAチームによる結合・システムテスト:開発者とは別のQA担当者がユーザー目線でテストします(PMやUIUXデザイナーが担当する場合もあります)。
- 外部の専門会社によるセキュリティテスト:第三者の視点での脆弱性診断を実施し、安全性を担保します。
また、週次定例では「現在テストの80%が完了」「重要度『高』のバグがあと3件」といった進捗を、透明性高くご報告し、安心してリリース日を迎えられるよう努めています。

「この予算内で、どこまで安全性を担保できるか相談したい」という場合も、ぜひお気軽にお問い合わせください。