社内ナレッジベースができるまで~忘却への抵抗~

社内ナレッジベースができるまで~忘却への抵抗~

Yuka Inaba

Yuka Inaba

テクニカルディレクターのイナッチです。

Webディレクターとしてキャリアを開始して14年ほどになりますが、ここ数年はテクニカルディレクターやPMと名乗ることが多くなってきました。LIG歴はまもなく6年となります。

今回は、私がディレクターとしての業務の傍らで取り組んできた「社内ナレッジベースの構築・運用」についてご紹介いたします。

社内でのナレッジ共有や業務の標準化に課題を抱えている方の参考になれば嬉しいです。

ナレッジベース(通称ナレベ)とは

現在、弊社DX事業本部全体で、「ナレッジベース(通称ナレベ)」と呼ばれる社内ナレッジ共有のためのポータルサイトを運営しています。

※DX事業本部は、約60名規模のWeb制作・システム開発を行う部署です。

具体的な画面は社外秘のためお見せできないのですが、大きく分けて以下の4つのコンテンツが掲載されています。

  • 公式ドキュメント
  • お役立ち情報
  • PJ実績・成果
  • 人材情報

掲載コンテンツは事業本部内の誰でも追加・編集でき、業務に活用できるようにしています(一部コンテンツは掲載までに承認フローあり)。

これらのコンテンツは一つひとつがデータベースとして構築されており、関連するコンテンツ同士が相互にリレーションされていることにより、ポータルサイトとして回遊しやすく設計されています。たとえば各メンバーページからは、そのメンバーが書いたコンテンツや参画したプロジェクト実績が参照できるようになっています。

加えて、これらのコンテンツをさまざまな切り口で横断検索できるような機能を実装しています。

  • 業務工程から探す
  • ツールから探す
  • シチュエーションから探す
  • 職種から探す などなど

さらに最近、掲載コンテンツを元にAIが質問に応えてくれる機能も追加しました!

こうした環境整備を行う中で、日々社員同士のナレッジの共有や、社内教育・標準化のためのコンテンツ掲載が活発に行われるようになってきました。

しかし、ここまで整備するまでの道のりは、平たんではありませんでした。

標準化・ナレッジ共有の意義はみんな理解しているけど、継続が難しい

「これってルール化したほうがいいよね」「これのマニュアルって誰か作ってないの?」「テンプレートがあればもっとスムーズに作れるのに」……日々の業務でそんなふうに感じたことありませんか?

あるいは「これについて詳しい人に相談したいけど、社内の誰に訊けばいいかわからない……」、「これについて毎回いろんな人に説明しているけど、これ見といて! っていう資料作って説明地獄から解放されたい……」などなど。

標準化やナレッジ共有に関する課題は、多かれ少なかれみなさん日々感じているのではないかと思います。

弊社内でもそういう課題を感じては、一念発起して自らルール・マニュアル・テンプレートなどを整備して、社内で共有・浸透させようするメンバーが、これまでもたくさんいました(それこそ私が入社する前からずっと……そういう形跡を、過去のチャット履歴などから見かけたりします)。また、学んだことを共有しあう勉強会も有志同士で活発におこなわれていました。

しかし、どうしても共有・影響範囲が小規模に留まってしまったり、実務が忙しくなってきたり人事異動・組織変更が発生したりするうちに、気づいたら忘れ去られてしまうことがとても多かったのです。

弊社の受託DX支援事業の特性として、忙しさに波ができやすいこと、技術がすぐに新しくなること、必要な専門知識が多岐にわたり目下直面している課題が各自バラバラであることなどが、こうした活動の「普及」や「継続」の難しさにつながっていると感じます。

せっかく整備したものが一度忘れ去られてしまうと、たとえ社内の共有ドライブに「誰かが作った汎用的で実用的なファイル」が存在しても、それが一部のメンバーしか見えない場所にあったり、他の議事録や一時的な作業ファイル、作りかけて放置したファイル、もう使えない古いファイルなどの有象無象に埋もれて見つけにくくなってしまいます。

結果として、また聞こえてくるのです。「これってルール化したほうがいいよね」「これのマニュアルって誰か作ってないの?」「テンプレートがあればもっとスムーズに作れるのに」……

本当はあるんだけど、みんなないと思っているんです。

このことが個人的にとても悲しく、実務が行われている環境とは切り離した場所に、資産的な情報を抽出して蓄積する必要があると考えました。そうして、ナレッジベースの構想が始まりました。

事業本部全体で運用するまでの道のり

初代ナレッジベースの誕生

思えば本格的にナレッジベースの構築を始めたのは2022年の2月ごろでした。自分が作った研修資料やテンプレート、社内で見かけた有益な情報をかき集め、それだけが載っているポータルサイトを作成しました。

最初は非常に小規模なメンバーでこれを共有・運用し、徐々に社内での認知を広めていきました。

業務に追われ度々放置

しかし私自身、納品案件をたくさん抱えている時期や、管理職を任されて業務に追われている時期が何度もあり、そのたびに「ナレッジベースについて何もしていないや……」という期間が数ヶ月単位で発生していました。

そのうちに、当初一緒に取り組んでいたメンバーや使ってくれていたメンバーが退職してしまったり、ナレッジベースとは関係ない場面で、そもそも私自身がLIGはおろかディレクター職自体をやめてしまいたいくらい追い詰められることもありました。

「やらなくても戻ってくる」を自分ルールに

このように途中でやめてしまう理由はいくらでもあったのですが、そのたびにナレッジベース構築に至ったきっかけ「みんなの(ひいては自分の)貴重な資産が忘れ去られてしまうのが悲しい」を思い出して、また取り組みに戻ってくるようにしました(もちろんヤバいときはしっかり休んで、自分の心身をケアしながら)。

やめてしまうこともできるけど、なんか面白くない、とずっと思っています。

すぐに結果が出ること、完ぺきで使いやすいサイトであること、毎日ちゃんと更新できていること、などは求めずに、ただただ「やらなくなっても戻ってくること」だけが私にとっての継続のルールでした。

CTOを巻き込んで事業本部全体導入へ

その後、いろいろな出会いや経緯があって、2024年の夏ごろからは、弊社CTOのづやさんと協働してナレッジベースを事業本部全体で運用しようという取り組みが始まりました。

利用規模拡大に向けてこだわった点のひとつは、コンテンツを事業本部内の組織単位(グループやチーム)で分類しないこと。これは「組織変更のたびに忘れ去られる」への対策です。代わりに、「職種」や「業務工程」など、組織体制が変化しても変わらない概念を元にコンテンツを分類する設計にしました。

加えて、ルール・マニュアル・テンプレートなどの陳腐化してはいけないコンテンツについては管理者の明示を必須化し、人事異動や組織変更、退職などの際に必ず管理者の引継ぎを行うようにルール化しました。これも「忘れ去られる」への対策です。

定期的に打ち合わせと改善を行い、ある程度コンテンツを整理できた半年後の2025年1月、ついに事業本部全体へお披露目となりました。

事業本部全体での利用開始を機に、CTOと2人だけでは考慮すべきことや対処すべき課題が多くなることが見込まれたため、お披露目と同時に「ナレッジベース推進委員」を組織することにしました。

づやさん▲CTOづやさんに見つけてもらえたのが勝利要因

推進委員の発足と着実な改善

「ナレッジベース推進委員」の目的は、ナレッジベースのコンテンツが広く活用され追加・更新され続けるために必要な課題の洗い出しと解決です。

事業本部内の各グループから最低1名ずつの参画者を募り、十数名程度のチームが生まれました。基本は希望制で、希望者がいないグループからは上長から指名されたメンバーが参画しました。

 
▲推進委員発足当初から5期連続参画中の3名。左からなごみんさん、せんさん、たにこさん

より多くのメンバーに当事者意識を持ってもらえるように、四半期ごとのメンバー入れ替え制としましたが、実際には複数の四半期にわたって継続して参画希望してくれるメンバーがたくさんいました。

メンバーごとにその四半期に取り組むべきミッションを設定しているわけですが、実務と並行して取り組んでいるため思うように達成できないまま3か月が経ってしまうことが多く、それを悔しく感じてくれた方が継続してくれているのかなと勝手に思っています(笑)。

一方で、中には「案件が忙しくてあまり成果が出せなかった」というメンバーもいました。ただあまり気にしないでほしいと思っています。私自身が、「ナレッジベースについて何もしていないや……」の期間を何度も経験しているためです。

四半期の始まりのキックオフで推進委員のメンバーに必ずお伝えしているのが、「いちばん大事なのは忘れ去らずに継続すること」「やらなくなって気まずくなっても気にせず戻ってくること」です。

そうして着実に改善活動と運用が行われ、2026年1月現在に至ります。

冒頭に紹介したコンテンツ構成や検索機能は、その成果となります。

2025年の総括

2025年の終わりに、ナレッジベースがどのように使われたかの集計を行いました。
(音楽ストリーミングサービスなどでこの1年でもっとも聴いた曲とかアーティストとかを特集してくれる、あれのノリを目指しました(笑))

まだまだ活用している人や掲載コンテンツに偏りがあったり、課題は多くあるのですが、ここまでの規模にすることは一人では成しえませんでした。

づやさんや各四半期で推進活動に参画してくれたメンバー、記事を書いてくれたメンバーに感謝です。

2026年の展望

2025年はコンテンツ更新フローの整備や記事の作成促進ができた年でしたが、一方で内容がどのくらい効果的に活用されているかはまだ十分に検証できていません。検証できていませんが体感として、今年取り組むべき大きな課題の一つであると感じています。

2026年からは、づやさんに代わるPOとして新たに強力な協力者・せーさんを迎え、さらなる活用に向けた取り組みがスタートしました!

またこれまでは私が推進活動のPMとして全体をまとめていたのですが、2026年からはそのポジションをなごみんさんに引き継ぎました。というのも、私が2月から産休・育休に入ってしまうためです。

なごみんさんは私の活動ポリシーをよく理解してくれている長期参画メンバーの一人なので、引き受けてもらえたのは本当に幸運です!!!

個人的にもまだまだやりたいことがあって、一度離れるのは残念ですが、新体制ですでに新しい風が吹いているのを感じています。「2026年の展望」と題しましたが、私は物理的に関われないため、実は私の口から語れることはあまりありません(泣)。続報にご期待ください。

それにしても、あれだけ継続を強調してきた私自身が、1年近くもブランクを作ってしまうことになるとは……。

もちろんいつだって「やらなくなっても戻ってくる」スタンスですので、矛盾しているつもりはないのですが。

最後にナレッジベースの入り口に掲載されているコンセプトを紹介します。

ナレッジベースのコンセプト
  • 🚴 即戦力への最短経路
    目標にしたい先輩がいますか?ここにある情報をどんどんインプットして、いますぐ先輩の隣に並びましょう!
  • 👻 もう一人の自分がほしいあなたに
    自分がもう何人かいてほしいほど忙しいですか?自分の業務内容を可視化して、属人化業務をどんどん減らしましょう!
  • 🚀 いつでもここがスタートライン
    このナレッジベースに精度の高い情報が蓄積・活用されることにより、私たちはいつでも同じスタートラインからさらなる高みを目指す仲間となります。私たちの組織力で、一人では成し得ない大きな成果を創出しましょう!

今後も末永くこの活動が続き、さらに組織力を高めていけますように……!

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Webディレクター歴12年。システム開発を伴うプロジェクトの要件定義やディレクション、長期にわたる安定運用と事業展開を想定した情報管理や体制構築を得意とする。Webディレクター・PM向けのセミナーも実施するなど、メンバー教育にも力を入れている。

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