こんにちは! Webディレクターのゆきのです。
LIGのWebディレクターとして働き始めて半年。日々運用保守や新規提案に携わるなかで、私がずっと感じていた悩みがあります。
「この進め方、本当に合っているのかな? 判断に迷ったとき、どう決めればいいんだろう?」
そこで今回は、多彩なキャリアを持ち、ジャンル問わずの知識が豊富なことから「歩くAI」と言っても過言ではない、LIGの先輩ディレクター・ミケロンさんに、思いきっていろいろ聞いてみました!
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先輩ディレクター:株式会社LIG Webディレクター ミケロン LIGのWebディレクターとして、コーポレートサイト・採用サイト・会員サイト・ECサイトなど、幅広いサイト制作を担当。システムエンジニアとして培った論理的思考と、現役プロフォトグラファーとしての表現力を強みに、ロジカルとクリエイティブの両面から本質的な課題にアプローチ。課題解決のご提案や継続的な運用のご支援まで、お客様のWeb部門として成果を追求している。 👉️ミケロンさんの多彩なキャリアに迫った、前回のインタビューはこちら! |
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インタビュアー:株式会社LIG Webディレクター ゆきの 医療相談員・営業・接客などを経験した後、デジタルハリウッドSTUDIO by LIGでWebデザインを学び、学習と並行してLIGで人事アシスタントのアルバイトを経験。2025年よりWebディレクターとして本格的に業務に従事し、現在は保守運用を中心に、より良いWebサイト制作を目指して日々取り組んでいる。 |
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プロジェクトの「見通し」を立てる技術
ゆきの:本日はよろしくお願いします! たくさん学ばせていただきます!
さっそくですが、プロジェクトが始まるときにミケロンさんが必ずやっていることを、教えていただけますか?

ミケロン:必ずやっていることで言うと、どんなプロジェクトでも、最初にやるのは「全体を俯瞰して、プロジェクト完了までの見通しを立てること」だね。
ただ、複雑なプロジェクトだと全体像が見えづらいこともある。そういうときは考えやすいように、徹底的に細分化するようにしているよ。
ゆきの:細分化! ミケロンさんからよく耳にする言葉ですね。
ミケロン:たしかに、よく言ってるかも。いつも以下の情報を整理して、お客様やPM、デザイナー・コーダーなどの制作メンバー全員に共有できるくらいの状態まで落とし込むようにしてる。
- プロジェクトを通して、お客様の目指す姿、あるべき姿を把握する。
- 1に対する現状を把握する。
- 1と2の差を埋めるための施策や工程を検討する。
ゆきの:あるべき姿と現状、そしてその差を埋めるための工程ですね。
ミケロン:そう。特にこの3番目を、要件定義フェーズでなるべく細分化して、ゴールまでの見通しを立てるのが大事なんだ。
たとえば、ゴールが「10」で、現状が「1」だったとする。
1からいきなり10を目指そうとすると、その差があまりに大きくて「難しそうだ……」と途方に暮れてしまうよね。
でも、「まずは2へ、次は3へ」と着実に10に近づくためのステップが見えていれば、自分たちでも扱える気がしてくるし、安心して取り組むことができると思うんだ。
ゆきの:途方もなく難しそうに感じることでも、そうやって分解することで「これなら実現できる」と目星をつけているんですね!
ミケロン:そうだね。だから僕のなかでは、プロジェクトの細部まで俯瞰して見るために、細分化するというイメージかな。
そうやってゴールまでの見通しを立てて、それをステークホルダー全員に共有していく。これを徹底するようにしているよ。
ゆきの:なるほど……。今後は何ごとも、その流れを意識して見通しを立てて進めます!
迷ったとき、どう判断する?
ゆきの:提案書を作るときなど判断に迷うことがあるんですが、ミケロンさんはどうしていますか?
ミケロン:一番大事にしているのは、「主観ではなく、事実を集めて客観的に決めること」。
たとえば方向性を決めるときは、これは本当にお客様の課題解決につながるか、想定ユーザーの行動と合っているか、類似事例の「どこが」今回に応用できそうか。こういった事実ベースの材料をチェックしてる。
ゆきの:よく「ファクトを集めろ!」って言いますよね。

ミケロン:実はそれ、僕の師匠であるWebディレクター・まさしさんの受け売りなんだ(笑)。ちなみによくあるNGパターンは、「前にこれでうまくいったから、今回もこれでいきましょう」という判断だね。
過去のプロジェクトで得た経験はファクト(事実)ではあるんだけど、それが今回にも通用するとは限らない。
プロジェクトごとに環境要因は違うはずなのに、自分の主観で安易に結びつけてしまうのは良くないんだ。
ゆきの:なるほど……。過去の経験を安易に結びつけてしまうのは、主観的な判断になってしまうんですね。
ミケロン:そう。だから、まずはそのプロジェクトを取り巻く事実ベースの情報を集める。そのうえで、「この経験は今回も活かせそうだ」と取捨選択して活用するのが正しいアプローチだね。
ゆきの:そうですよね……。客観的な情報をもとに判断します!
ちなみにそうなってくると、どこからが事実でどこからが主観になるんでしょうか?
ミケロン:難しい質問だね。お客様からのヒアリングは多くの事実に基づいた情報が得られるので、とても大事にしているよ。
企業情報や事業内容、いろいろなデータ、競合、エンドユーザーの特徴など。社風やカルチャーみたいな曖昧な印象をヒアリングするときは、個人の偏った意見が含まれる場合があるので、なるべく多くの人にヒアリングして共通項を事実として扱うようにしているよ。
ゆきの:なるほど、複数の声を集めることで、事実に近づけるんですね。
ミケロン:そう。直接エンドユーザーの声が聞けると、ユーザー像の解像度が上がって、具体的に方向性の検討がしやすかったりもするよ。
あとは「複数の研究や事例である程度再現性が確認されているもの」とかかな。
たとえば、Web制作と親和性が高いところでいうと、色やフォントが与える印象だね。
ゆきの:色やフォント、ですか?
ミケロン:うん。色なら、「黒は引き締まって見えたり、高級感や威圧感がある」「白は明るく広く見せて、清潔感がある」とか。
フォントなら、「ゴシック体はモダンでカジュアル、冷静な印象につながりやすい」「明朝体は知的だったり、上品さや伝統を感じやすい」とかね。
ゆきの:確かにそれは、多くの人が共通して感じる印象ですね。
ミケロン:そうそう。あとは音楽理論では「60bpm前後は落ち着きや安心感を与えやすい」と言われていたり、写真なら「三分割構図は見る人に安定感を与えやすいし、視線の流れからストーリー性を伝えやすい」と言われていたりする。
こういう法則を「事実」として扱うようにしてるよ。
ゆきの:すごく腑に落ちました……!
デザインの方向性を決めるとき、「このフォント、なんか良くないですか?」じゃなくて、「このフォントは◯◯な印象を与える傾向があるので、今回のターゲットに合っていると思います」と言えるほうが、納得感がぜんぜん違いますよね。
ミケロン:そうだね。「事実」を土台にすることで、チームもお客さまも納得しやすい判断につながると思うよ。
ゆきの:「主観ではなく、客観的に決める」。このスタンスがあるから、チームもお客様も安心してプロジェクトを進められるんですね。私も迷ったときは、まず事実を集めることを意識します!
サイト設計で大切なのは「優先度」
ゆきの:サイトマップを作るときも、たくさんの情報をどう整理するか迷うのですが、ミケロンさんは何を基準に判断していますか?
ミケロン:重視しているのは「優先度」だね。
構造設計って、実は取捨選択の連続で。たとえば、お客様の事業フェーズはどの段階で、Webサイトで何を一番訴求したいのか? 誰にどのような情報を届ける必要があるのか? こうした情報をもとに、「このコンテンツは上の階層へ」というふうに、情報の置き場所を決めていくよ。
ゆきの:事業フェーズやユーザー、訴求ポイントから逆算して決めていくんですね。ただ、お客様が優先度をうまく言語化できていないときは、どうされていますか?
ミケロン:そこがまさにディレクターの腕の見せどころだと思ってる(笑)。
お客様から自発的に出てこない情報も多いので、競合のベンチマークやマーケ視点から、逆算して提案することがよくあるよ。たとえば、「ターゲット層に安心感を与えるために、会社概要や代表メッセージへの導線をトップページの目立つ位置に配置して、優先度を上げましょう」といった具合にね。
ゆきの:なるほど……! 優先度って、ただ決めるだけじゃなくて根拠を持って「導く」ものなんですね。
ミケロン:そうだね。ただし、競合やマーケの視点はあくまで仮説づくりの材料で、サイト設計をする際には、「①お客様が訴求する必要がある情報・訴求したい情報」「②ユーザーが求めている情報」の両軸で考えることが必要なんだ。
ゆきの:「企業が伝えたいこと」と「ユーザーが知りたいこと」、その両方を満たす接点を探るわけですね。
ミケロン:そのとおり。ただ、Webサイトには検索流入を狙うSEO、情報を正しく伝える 情報階層、ゴールへ案内する 導線設計 など、それぞれ独立して重要な要素があるよね。
これらを「SEOの観点で正しいか?」「情報の親子関係は適切か?」「導線は通っているか?」と、一つひとつの要素が機能する構造になっているか整理して決めていく必要があるよ。
公開後が本番——お客様と同じ速度で伴走する
ゆきの:サイトを作る段階のお話を伺いましたが、公開後はどうでしょう? ミケロンさんはよく「Webサイトは作ってからが本番」とおっしゃいますが、運用保守で大切にしていることを教えてください!
ミケロン:一番は「速度」を大事にしているかな。
ゆきの:速度……?
ミケロン:お客様の業務を止めないこと、事業戦略のスピードに合わせて動くこと。これは特に大事にしてる。
「自分たちは、お客様のWeb担当」という意識で動いてるよ。
ゆきの:外部パートナーではなく、チームの一員という意識なんですね!
だからミケロンさんが担当しているクライアント様は、「一緒により良くしていこう!」という雰囲気ができているんですね。
ミケロン:公開した瞬間から、サイトは「お客様の事業を推し進めるツール」になる。だから事業と同じ速度で伴走することを意識するといいと思う。
ゆきの:多数の保守運用を担当するなかで、スピード感を持って対応されているところ、本当にリスペクトです。私もお客様と同じスピードで伴走できるよう、日々のレスポンスから意識していきます!!
ディレクターの余裕が、チームに伝わる
ゆきの:実務のお話を伺いましたが、次はチームビルディングについても聞かせてください! ミケロンさんがいつも落ち着いて見える理由がわかってきました。見通しを立てることが、ディレクター自身の心の余裕につながっているんですね!
ミケロン:そうだね。僕のなかでは、「見通しが立っている → 大体は想定内だと思える → 自分に余裕ができる → チームにも伝播する」という流れがあると思ってる。
見通しが立っていないと、ちょっとしたトラブルで不安になってしまうけど、全体像とゴールまでの道すじが見えていれば、多少のイレギュラーも許容できる。その「余裕」は、「安心」となって制作メンバーにも伝わると思うんだ。

ゆきの:たしかに漠然とした不安があるときって、たいてい細分化ができてなくて、見通しが立っていないときかもしれません……。
ミケロン:そうだね。あとは、「楽しくないと、いいものはできない」これは本気でそう思ってる。
それに、楽しむ気持ちもチームに伝播するんだよね。
だからこそ、まずはディレクター自身が楽しむための余裕を作っておく必要があると意識しているよ。
ゆきの:その余裕が、現場の安心感につながっているんですね!
小さなゴールで、チームを前向きに保つ
ゆきの:チームのモチベーション維持の面で意識していることはありますか?
ミケロン:人はゴールが見えないと走れないから、プロジェクトのなかに小さなゴールを用意して、「ここまでいったら一旦一区切りです」「このページまで固まったら、次はこっちに移ります」と、区切りを細かく設定して共有するようにしてるよ。
だからこそ、「見通し」を立てることが大事だよね。
ゆきの:たしかに小さなゴールが決まっていれば、一息つくタイミングがわかりますし、盲目的に作業するよりも心構えができて頑張れる気がします!
ミケロン:そうだよね。そのときに大事なのが、お客様にも明確にスケジュールをお伝えして、ズルズルと進行させないこと。
そのために、制作部門が「信頼できるスケジュール管理」をすることも大事だね。そうすれば、制作メンバーも安心して走ることができるから。
ゆきの:「待つ」じゃなく「決める」仕組みをディレクターが作るんですね。すごく腹落ちしました!
具体的に「良い」を伝える
ゆきの:他にもチームの雰囲気を良くするために、意識していることはありますか?
ミケロン:意識しているのが、「具体的に良い部分を伝える」こと。
「ターゲットへの訴求を考えて、この配色にしてくれたんですね。とても効果的だと思います!」「表示速度を考慮して、画像の読み込み処理を工夫してくれました? 実装が綺麗で助かります!」
みたいに、どこがどう良かったのかを普段から言葉にするようにしてる。
ゆきの:たくさん考えてプロジェクトと向き合っているからこそ、頑張ったポイントに気づいてもらえて、それをポジティブに言語化してもらえるのは、チームの活力になりますね!
ミケロン:そう思ってもらえてたら嬉しいな。
抽象的に「良い」だけではなく、事実ベースで具体的に伝えるほうがしっかり想いが伝わるし、お互いにポジティブな気持ちでプロジェクトを進めていけるよね。
ゆきの:チームの良い部分に気づくためにも知識が必要だと感じるので、お客様のためにも、チームのためにも、知識を付けていきます!
ずばり、ディレクターの本質とは?

ゆきの:ここまで聞いて、ミケロンさんの仕事への向き合い方を知れて、とても勉強になりました! ずけずけと質問してきましたが、最後にさらに踏み込んだ質問をさせてください!
ミケロンさんが考える「ディレクターの本質」って何でしょうか?
ミケロン:本質か。まず、ディレクターは「全部の方向性を決める人」だと思う。
お客様の課題をどう解決するか、どのユーザーをメインターゲットにするか、デザインや機能はどう実装するか、最終的にAなのかBなのか。
「方向性」には大きなものもあれば小さなものもあって、その方向性の選択の連続が、いずれ結果にたどり着くのかもしれないね。
ゆきの:方向性の選択の連続が、結果につながる……。ディレクターってプロジェクトの舵を取る、本当に大事な役割だなと改めて実感します。
ミケロン:そうだね。その舵取りをするうえでの本質というと、「相手の立場に立って物事を考える」ことだと思うな。これはお客様でもチームメンバーでも変わらない。
ゆきの:実は「相手の立場に立って物事を考える」は、私も今までのキャリアのなかで大事にしてきた考えなので、ここで出てきて少し口元がゆるみました。
ただ、今の仕事でできているかというと、まだまだなので意識して身につけていきます。
ミケロン:お客様のふんわりしたお困りごとを要件に落とし込んで、各制作担当に連携し、プロジェクトの進行管理をしていくのがディレクターの主な仕事。
でも、お客様の立場になって根本的な問題にアプローチすれば、プロジェクトの価値を最大化する提案ができると思っているよ。
ゆきの:「お客様視点で価値を最大化する」……すごく納得しました。これはお客様だけでなく、制作メンバーとのやりとりでも、同じように意識できることですね!
ミケロン:そうだね。制作部門の立場になって気づける配慮やコミュニケーションが、プロジェクトのスムーズな進行につながるからね。
ゆきの:では、逆に「ここだけは絶対に譲れない!」というポイントはありますか?
ミケロン:目的意識だね。ディレクターが譲っちゃうと、制作部門が作りたいもの、作りやすいものができてしまうし、ゴールがぶれてしまう。だから目的意識は絶対に譲れない。
ゆきの:たしかに! 舵取りのディレクターが「目的地どこでもいいよね〜」って言いながら船を動かしていたら、ハワイ行きたかったのに北極ついちゃった、みたいな恐ろしいことになりかねませんね。
ミケロン:そうだね。アロハシャツで震えながらシロクマを見ることになっちゃうからね!
だから、この目的意識をチームにも持ってもらえるよう、作業の依頼をするときは、なぜ必要なのか根拠を必ず伝えるようにしてるよ。
ゆきの:作業の背景まで丁寧に伝えることで、チーム全員が目的を持って動けるようになり、この積み重ねがプロジェクトの成功につながるんですね。
私も今日学んだことを、ひとつずつ実践していきたいと思います!
今日は見通しの立て方から判断の仕方、チームの導き方まで、ディレクションの本質を教えていただき、本当に勉強になりました!
貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!
さいごに
ここまで話を聞いてみて、ミケロンさんのWebディレクターとしての考え方の根幹を知れた気がします!
「この進め方で合っているのかな?」という不安から始まった今回のインタビューでしたが、「見通しの立て方」「判断の仕方」「チームの導き方」など、たくさんのヒントをいただきました。
まだまだキャリアは浅いですが、学んだことを一つずつ実践して、いつか先輩方と同じ目線で話せるよう日々精進します!
ミケロンさん、この度は本当にありがとうございました!
「見通しを立てる」「事実ベースで判断する」「チームと楽しくものづくりをする」――今回ミケロンさんが語ったようなディレクションに共感した方、LIGで一緒に働きませんか?
今後のキャリアやLIGでの働き方について、まずはカジュアルにお話しする機会を設けています。お気軽にご連絡ください。