「要件定義」という言葉、耳にしたことがあるという人は多いと思います。では、要件定義とはそもそも何か、具体的にどうすればいいか答えられますか? 本連載では、Webサイト制作の要ともいうべき要件定義について掘り下げていきます。LIGブログでは制作サイドの視点から解説します(発注サイドの視点でまとめた記事はつなweBで公開中)。
本記事の監修者
株式会社LIG Webディレクター 因幡 祐香(Yuka_Inaba) Webディレクター歴12年。システム開発を伴うプロジェクトの要件定義やディレクション、長期にわたる安定運用と事業展開を想定した情報管理や体制構築を得意とする。Webディレクター・PM向けのセミナーも実施するなど、メンバー教育にも力を入れている。 |
株式会社LIG Webディレクター 平山 梨佳(Rika_Hirayama) 1987年福岡県生まれ。2011年よりWeb業界のキャリアをスタートし、IT事業会社や制作会社でのWebディレクター・ライターのキャリアを経てLIGに入社。Webサービスの企画立案からサイト制作のディレクション、ライティングまで幅広く従事。顧客ニーズに合わせたコミュニケーション戦略を得意とする。 新日本プロレスが好き。 |
要件定義って何をやるの?
要件定義にどんな項目が含まれるのかを把握しよう
LIGが制作している要件定義書のフォーマット。小項目は案件によって変わります
現在LIGでは、要件定義書の構成を「❶業務要件」「❷機能要件」「❸非機能要件」「❹プロジェクト計画」の4項目に分けて作成しています。上の図では、各項目内にいくつかの小項目が並んでいますが、これはあくまで例でありケースバイケースで変わります(今回は小項目についての詳しい解説は行いません)。
「❶業務要件」では、そのプロジェクトでどんなことを実現したいかといった内容をまとめます。「❷機能要件」ではWebサイトのページ構成や実装する機能について、「❸非機能要件」では表示のパフォーマンスやセキュリティ、対応環境など、目に見えない部分の仕様について明らかにしていきます。最後の「❹プロジェクト計画」は、このプロジェクトをどのように制作・納品・運用していくかを図式化・文章化していきます。
要件定義と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「機能要件」や「非機能要件」あるいは「プロジェクト計画」の部分だと思います。しかし、最初の「業務要件」部分を文書化しておくことは、とても重要なことです。制作途中で仕様やコンテンツに変更があったとき、最初に決めた目的に対してブレていないかどうかを振り返ることができるからです。
費用や時間まで含めてプロジェクトの実現可能性を考えよう
制作会社は「現実可能性」を考えることが重要。費用や時間も含め、できるかどうか、コストに見合うかどうかを判断し、発注側に説明する必要があるでしょう
完全な要件定義書を一発でつくりあげられるケースは、ほとんどないでしょう。初校、再校、三校と、何度かのステップを踏んでいくことになるはずです。ヒアリングできていない項目もあったりするので、埋められるところを埋めたら再度ヒアリングを行い、それを何度か繰り返して完成させていくイメージです。
要件定義書を作成するときに制作会社が気をつけるべきポイントは、「実現可能性」です。発注先の会社と話をしていると、いろいろな要望やアイデアが出てくるかもしれません。制作会社側は、その要望を受け止めながらも、それが実現できることかどうかを冷静に判断する必要があります。
どんなに素晴らしいことが書いてあっても、実現できなければ意味がありません。コストや費用をかければできるのか、そもそも膨大な費用をかけて実現すべき要望なのかどうかなど、プロの知識で判断していきます。
社内のエンジニアに相談したり、場合によっては社外の協力会社に確認したり、見積もりをとったりする必要も出てくるでしょう。要件定義書の作成はなにかと手間がかかりますが、それ作成こそがディレクターの腕の見せ所なのです。
本記事は、マイナビ出版が発行する雑誌「Web Designing 2023年6月号(4月18日発売)」を元にしています(編集・執筆:小平淳一)。本誌では、2人のキャラクターが登場し、発注側と制作側の双方の視点でノウハウを解説。Web Designing編集部が運営する『つなweB』では、「発注側の視点」の記事を公開中です!