今リスキリングが注目されている理由!取り組むべき企業と成功の秘訣

今リスキリングが注目されている理由!取り組むべき企業と成功の秘訣

Jumpei Hayashi

Jumpei Hayashi

こんにちは、Webクリエイタースクール「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG(通称:デジLIG)」運営責任者の林です!

デジタルハリウッドSTUDIO by LIGとは
株式会社LIGとデジタルハリウッドが業務提携をしてはじめたクリエイター養成スクール。Webデザイナーや動画クリエイターを目指す方向けのカリキュラムを展開。現在、上野・池袋・大宮・北千住・川崎・オンラインにて、無料説明会を毎日開催中!

デジLIGには仕事をしながら通っている受講生が多いのですが、最近は会社からの受講料を補助してもらい、業務に必要な技術を身につける方が増えてきたと感じます。

いわゆる「リスキリング(学び直し)」です。

「リスキリング」という言葉は最近よく聞きますが、なぜ今リスキリングが注目されているのでしょうか? どういう企業が始めるべきなのでしょうか?

そんな様々な疑問を、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブの代表理事、後藤宗明さんにオンラインでお話をうかがいました。

【登場人物】

ico 後藤 宗明(ごとう むねあき)さん
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。
政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援をおこなう。著書に『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』。
ico 林 隼平(はやし じゅんぺい)
「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG」運営責任者。テレビ、ラジオ、Webメディア、プロスポーツイベントなど、複数の媒体にてディレクター職を経験後LIGにジョイン。事業企画、運営を行い、クリエイター育成をミッションとしている。

後藤さんの著書はこちら

自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング 後藤宗明 著 

今「リスキリング」に注目が集まっている理由

林:はじめまして、本日はよろしくお願いします! まず簡単にジャパン・リスキリング・イニシアチブの活動内容ついて教えてください。

後藤さん:ジャパン・リスキリング・イニシアチブでは、主に政府や自治体向けの政策提言と、企業のリスキリング導入支援を行なっています。今は地方自治体における、官民連携のリスキリング支援の仕組みづくりのお手伝いをすることが多いですね。

林:リスキリングはここ数年で急速に広まったと感じるのですが、そもそもリスキリングという言葉はいつごろから使われるようになったのでしょうか。

後藤さん:海外では2016年ごろから、テクノロジーが進化したことで業務の自動化が進み、それまでその業務を担っていた労働者が仕事を失う、いわゆる「技術的失業」が増えるのではないかという議論が活発化しました。

そこで技術的失業への対策として考えられたのが、労働者に成長事業へと移ってもらうことであり、その手段がリスキリングだったのです。

林:6年以上前からリスキリングの取り組みが進んでいたのですね。でもどうして今になって日本でリスキリングが話題になっているのですか。

後藤さん:一番の理由は、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)人材の不足です。

アメリカでは2013年に英オックスフォード大のマイケル・オズボーン准教授らが「米国で10~20年以内に労働人口の47%が機械に代替される可能性がある」という衝撃的な内容の論文を発表したことをきっかけに、デジタル関連の産業が急成長しました。

一方で日本ではデジタル化があまり進みませんでした。そんな中、コロナ禍で国も企業もデジタル化の遅れに直面し、慌ててデジタル人材を確保しようとしたものの、人材が足りなかった。そこで2021年ごろから、デジタル人材育成の一手段としてリスキリングに注目が集まるようになったのです。

林:やはりコロナが一つのきっかけだったのですね。恥ずかしながら僕も最近までリスキリングという言葉を知りませんでした……。後藤さんはいつごろからご活動をされているのですか?

後藤さん:僕がリスキリングを日本で広めようと活動を始めたのは2018年ですね。ただそのころは行政や企業にリスキリングの重要性を説いても、まったく聞く耳を持ってくれませんでしたね。ですがコロナ禍を経て、認知はかなり拡大したと感じます。

2022年冬にChatGPTが公開されて「ホワイトカラーの仕事がAIに奪われる」と大騒ぎになっていることも、拍車をかけているのかもしれません。

人手不足が深刻な地方、中小企業にリスキリングは必須


林:2022年に岸田首相が「リスキリング支援に5年で1兆円を投じる」と表明するなど、国が推進の旗を振っています。今、国はどういったリスキリング支援を行っているのでしょうか。

後藤さん:すでに運用されているものとしては、厚労省のリスキリングに関する助成金制度がありますね。政府も2023年6月までに労働移動円滑化の指針を策定する予定で、そこからリスキリング支援が本格化していくと思います。ただ、国が打ち出しているリスキリングは「個人が転職や副業のためにする勉強」という色が強いですね。

林:なるほど。一口にリスキリングと言っても、個人主体と企業主体で違うのですね。先ほど地方自治体のリスキリング支援の仕組みづくりに携わっているとお話されていましたが、地方でリスキリングが注目されている背景を教えてください。

後藤さん:地方の自治体や中小企業は、深刻な人手不足に悩まされています。地方では少子高齢化が進んでいるうえにデジタル化も遅れています。

そのため、業務効率化や新規事業開発、インバウンド需要の取り込みなどに力を入れていく必要があります。とはいえデジタル人材やグローバル人材は全国的に不足していて、確保は簡単ではない。そこで既存の従業員のリスキリングを進めることで、デジタル人材を育成しようとしているのです。

林:後藤さんはリスキリングを進めることで、地方の自治体や中小企業を支援しようと活動されているのですね。著書でも大企業・中小企業のリスキリングの方法を具体的に解説されていましたね。

後藤さん:はい。今は各地で講演をしたり、自治体と一緒にリスキリングの制度づくりをしたりしています。日々あちこち飛び回っていますよ。

リスキリング成功のポイントは事業戦略をきちんと示すこと

林:日立製作所や富士通など、大手企業がリスキリングに力を入れていて、デジLIGでも会社から受講料の補助を受けて通う受講生が増えてきています。やはり企業の関心も強くなっているのでしょうか。

後藤さん:「リスキリングに取り組んでいます」という企業は増えたと思いますね。ただこれらの企業がすべて本当の意味でリスキリングを進められているかというと、疑問です。

というのもリスキリングに前向きだと主張する企業の多くは、福利厚生の一環として社員が自由に受けられるオンライン講座などを用意し、それを“リスキリング”と呼んでいるのです。

ですがリスキリングは、会社が新規事業などを行う際に社員に新たなスキルを身につけてもらうためのものであり、勤務時間内に“業務として”学んでもらうべきものです。

社員のやる気任せ、かつ勤務時間外に無給で学ばせるのはリスキリングではないと思います。

企業のリスキリング導入について解説いただいた記事はこちら

林:社員が自主的にオンライン学習をするのは、今までもあったことですよね。一方で「流行だから」ではなく、本気でリスキリングを行なっているのはどういった企業なのでしょうか。

後藤さん:本業で苦戦している企業が多いですね。これは日本のみならず、海外でも同様の傾向があります。

たとえば銀行です。銀行はコロナ禍で一気にサービスのオンライン化が進み、店舗の統廃合も進みました。そこで店舗で働いていた従業員のリスキリングを進め、デジタル関連など別部署への異動を進めているのです。

林:リスキリングは企業が従業員を解雇せず、成長を目指す生き残り戦略として重要なのですね。これからリスキリングを頑張ろうという企業は、どういった点に気をつければいいのでしょうか。

後藤さん:リスキリングの成功には、2つのポイントがあると考えています。

1つは、事業の方向性や経営戦略を明確にし、それを従業員にきちんと示していること。

会社として今後どう歩んでいきたいのか。進みたい方向がわからなければ、そもそもどのジャンルのリスキリングを準備すればいいのかわかりません。「とりあえずデジLIG行ってこい」といった姿勢では、従業員も学習に本気になれないでしょう。

経営陣が「本業の成長が見込めないので、今後はWebマーケティングに力を入れていきます」と従業員に丁寧に説明し、理解を得られれば社内でリスキリングの機運は高まるでしょう。経営者が自らリスキリングに取り組み、その姿を従業員に示すことも効果的だと思います。

もう1つは、リスキリングを勤務時間内に組み込むこと。

そもそもリスキリングは会社の事業戦略の一環です。学ぶことが業務であるため、勤務時間内にリスキリングの時間を設けるべきです。

どうしてもそれが難しいために、勤務時間外に取り組んでもらうケースはありますが、勤務後や休日にリスキリングをしてもらうのは体力的・精神的負担も大きい。やはり勤務時間内にリスキリングを組み込まなければ、成功は難しいと思います。

林:なるほど……。学ぶことが業務であるときちんと明示すれば、従業員の勉強へのモチベーションもアップしそうですね。

リスキリングは従業員の成長と外部の優秀な人材確保につながる

林:ただ本業がうまくいっている会社は「うちはリスキリングをする必要はない」と考えてしまいそうな気がします。

後藤さん:そうですね、事業が順調であれば、何かを変えようという気にはなりにくいかもしれません。ですが資金繰りが厳しくなってから人材育成をしようとしても、そこに投資する余裕はないと思います。

だから僕はよく企業担当者に「リスキリングは財務体力があるうちでなければできませんよ」とお伝えしています。

事業がうまくいっているときこそ、外部環境が変化したときに備えて手を打っていくことが大事です。特に製造業は今後DXだけでなくGXにも取り組まなければいけなくなります。今から準備をしておくのがいいと思います。

林:うまくいっているときに判断をするのも、とても勇気がいりますよね。ちなみに……、リスキリングのデメリットとして社員が辞めてしまったり、仕事へのモチベーションが低下してしまったりする可能性があると聞きます。

後藤さん:僕はそれは間違いだと思いますね。地方の企業経営者と話をしていると「リスキリングをすると従業員のやる気に火が付いて、うちを辞めてしまう気がする。寝た子を起こしたくない」と言われることがあります。

ですが、リスキリングをしたことで辞める従業員は何もしなくてもいずれ辞めたでしょう。それを心配してリスキリングの機会を提供しないというのは本末転倒なのではないでしょうか。

ここ数年、大学生の就活に関するアンケート調査では、就職先を決めた基準の1位は「自らの成長が期待できたから」でした。学びの機会が提供されていない企業には、若くて優秀な人材は入ってきにくい。それに既存の従業員のリスキリングが進まなければ、新しい事業アイディアも生まれにくいと思います。ジリ貧になってしまうおそれがあるのです。

林:リスキリングの機会をきちんとつくることで、新たな事業展開につなげられる。制度に魅力を感じた人材が外部から集まる。辞める従業員もでてくるかもしれませんが、結果的にはやる気のある社員が集まり、会社がいい方向に進んでいきそうですね。

後藤さん:海外の調査によると、リスキリングの環境を整えている企業は従業員の離職率が低い傾向があるそうです。学ぶ機会が提供されることで従業員は会社に感謝するようになる。それが従業員の定着にもつながるのでしょう。

林:興味深い話ですね。スクールを運営していると、今のリスキリングは個人が自分のスキルアップや転職のためにすることという傾向が強いと感じますが、企業が積極的に取り組むことで、事業成長や社員のロイヤリティを高めることにつながるのですね。とても勉強になりました。ありがとうございました!

まとめ

学び直しのためにデジLIGに通い始める方は多いのですが、なんとなく「リスキリング」の意味がきちんと理解されないままに、言葉が一人歩きしているように感じていました。

ですが今回後藤さんのお話を聞いて、コロナやAIの登場で大きく事業環境が変化する中で、企業が生き残っていくためにリスキリングは欠かせないと理解できました。

デジLIGでは企業契約による従業員の受講も可能です。Webデザインや動画編集でのリスキリングをお考えの企業は、ぜひお気軽にご相談ください!

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ライター:にしみねひろこ

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日本大学芸術学部卒業後、テレビ、ラジオ、Webメディア、プロスポーツイベント等、複数の媒体にてディレクター職を経験。2018年9月からLIGにセールスメンバーとして入社し、教育事業部に配属(現デジタルエデュケーション部)。自身がクリエイターを行なっていた経験を生かし、現在は部長としてWebクリエイタースクール事業「デジタルハリウッドSTUDIO by LIG」の事業企画、運営を行い、クリエイター育成をミッションとしている。

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