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近年、日本でもリスキリングという言葉が一般的になってきました。
弊スクールにも最近は、企業契約で従業員が受講し、新しい業務に必要な技術を身につける方が増えてきています。
いったいなぜそこまで注目されているのでしょうか。
また、企業が導入する際はどういう点に気をつけるべきでしょうか。
この記事ではリスキリングの定義から、実際の超!成功事例。また、企業が導入する際の注意点や導入ステップを解説します。
「一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ」の代表理事、後藤宗明さんにお話をうかがい、後藤さんのコメントも併せてご紹介していきます。
後藤 宗明(ごとう むねあき)さん 一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事。 2016年から政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援をおこなう。著書に『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』。 |
目次
リスキリングとは? 意味を解説
リスキリングとはDX化など、ビジネスモデルの変化に対応するために「企業が従業員に対して、職業能力の再開発をおこなう」ことを指します。
こちらは経済産業省の定義では
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
※参考リンク:経済産業省 「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」
とされています。リスキリングは企業がおこなうものですが、「する・させる」という双方の視点が書かれているのは、学ぶ本人も主体性を持つ必要があるからですね。
しかし今は、リスキリングという言葉自体が少し一人歩きしているような印象を受けます。
リカレント教育やスキルアップなど似たような意味の言葉と混同されていたり、間違った使われ方をしている例もよく見かけます。
リカレント教育などとの違い
学び直しに近い意味を持つ言葉は、リスキリングと混同されやすくなります。
例えば以下の4点などが混同されやすい単語になっています。
- リカレント教育
- アンラーニング
- 生涯学習
- スキルアップ
それぞれを意味を簡単に解説いたします。
リカレント教育(学び直し)
リカレント(recurrent)は「循環・繰り返す」といった意味を持ち、教育機関などで学び直してまた仕事に戻る、といった繰り返す仕組みを指します。
リスキリングとの違いは業務と並行せずに教育を受けていくこと、個人の学びに主観が置かれていることになります。
アンラーニング
アンラーニング(unlearning)は学習棄却とも言われ、既存の仕事のやり方や価値観などから、有効でなくなったものを使わなくして、新しいスタイルや知識を取り入れる動きを指します。
どちらかと言うと「捨てる」ことに重点が置かれた言葉になります。
生涯学習
生涯学習は、文部科学省によると「生涯におこなうあらゆる学習」を指します。
学びの対象は社会教育などからスポーツや趣味まで幅広く、リスキリングとは大きく異なります。
スキルアップ
今のスキルをさらに向上させたり、新たな技術を習得することです。
訓練や教育、OJTなどを通して、自分の能力を向上させることを指します。
これらの単語はいずれも、個人を主体とした言葉です。
リスキリングとの最大の違いは、リスキリングは「企業が主体」であることと言えます。
リスキリングが注目されている理由は?
岸田総理の「5年で1兆円を投じる」などの発表でリスキリングを知った方もいらっしゃるかもしれません。
参考リンク:リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明-日本経済新聞
いったいなぜここまで注目されているのでしょうか?
また、どうして国がそこまで経済的な支援をおこなうのでしょうか。
ここからはジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事である後藤 宗明(ごとう むねあき)さんの意見と併せて紹介していきます。
技術的失業を防ぐため、成長分野に労働移動させたいという意図や背景があります。労働者がちゃんと成長事業や、新しく生まれてる事業で働けるようにならなきゃいけない。その必要があるため、このように国をあげて支援していくという姿勢となっているんですね。
ちなみに補助金など支援、改革の指針は2023年6月までにまとめる方針だと発表されています。これからですね
リスキリングにおける、日本と海外の現状は?
アメリカでは2013年にオックスフォード大学で「20年以内に機械によってアメリカの雇用者の47%が失業する」という内容の論文が発表され、リスキリングの考え方も2016年に頃から広まっていきました。
アジアでも、シンガポールにはリスキリングの専門組織が政府の傘下にあります。
日本ではリスキリングという言葉の広まりを最近になってようやく感じますが、それはどうしてなのでしょうか。
今になってChatGPTでやっと問題提起されているくらいですので。実際、元々私がリスキリングを広めようと活動した2018年には、全く重要性が伝わらず、ほとんど理解されませんでした。
転換点があったとすれば新型コロナウイルスですね。「今までの働き方では難しい」「デジタル分野のビジネスを進めないといけない」というところから、本気でDXしていかないといけないという文化に、ようやく日本もなったわけです。
リスキリングの超!成功事例2選
リスキリングについてご理解いただいたところで、いよいよ企業の導入ステップについて解説していければと思いますが、まずは中小企業の実際の成功事例を見ていきましょう。
富士通や日立製作所のリスキリング導入は有名ですが、もう少し規模の小さい会社の事例を見ていければと思います。こちらは後藤さんにイチオシの成功事例を伺いました。
西川コミュニケーションズ株式会社の成功事例
名古屋にある1906年創業の老舗の印刷会社。もともとは電話帳の印刷などを請け負い、売上高の9割が紙に関わる仕事でした。
2013年からリスキリングを開始し、デジタルマーケティングや、3DCGの導入支援などをおこなう企業に変貌。
社長が自らG検定(AIに関する検定試験)に合格をして、現在は約400人の社員数に対して80人がG検定に合格している。資格習得だけではなく、実際に事業になっているのも大きなポイント。
「学びを止めると収入が下がるぞ」という合言葉で、課題図書を配るなどはもちろん、業務時間の20%をリスキリングに当てていいという制度も。
石川樹脂工業株式会社の成功事例
石川県加賀市の会社。食器や雑貨を、OEMで販売する事業をおこなっていた。
AIやロボット導入により生産性が以前に比べ1.87倍になり、さらにこのロボットを動かすためのプログラミングを社員が自分たちでやっている。
形が少しいびつになった樹脂製品などをAmazonで販売することになった際は、全くデジタルをやったことのない20代の女性社員を抜擢。
リスキリングをして3ヶ月間でAmazonでの売り上げが倍になり、今では全社売り上げの10%を超える。
また、3Dスキャンなどデジタル技術を使った食器の自社ブランド「ARAS」が人気を博し、2023年3月現在Instagramのフォロワーが10万人を突破。
企業がリスキリングを導入するステップと、1番大切なこと
よくリスキリングのデメリットとして「DXのスキルをつけた社員が転職してしまう」というものが挙げられますが、海外の調査によると、リスキリングの環境を整えている企業は従業員の離職率が低い傾向があるそうです。
ただし、導入の仕方を間違えると社員が転職してしまったり、逆に社員のモチベーションの低下に繋がることもあります。
企業でリスキリングを実際に導入する際の、ステップと重要なポイントを見ていきましょう。
①自社のビジョンを伝える
ここがちゃんと決まっていないと、自分の仕事でどう関わるかもわからず、社員も自分ごとにもならないのでモチベーションが上がるはずもありません。リスキリングの内容を考えるとかは全部、ここをちゃんとやった後です。 なので、まずはとにかく自社の新しい方向性をちゃんと決めて、そこに対してどんなスキルが必要なのかっていうことを必ず明らかにすること。これがめちゃくちゃ重要ですね。
②リスキリングのカリキュラムを考える
講座などを渡して丸投げするのではなく、効率よくリスキリングしていけるような工程を考えることも大切です。
リスキリングで学ぶDXなどの内容は専門性が高いものが多いため、外部の教育コンテンツなども視野に入れ策定していきましょう。
③学習環境を整える
リスキリングは「働きながら学習する」ことになるので、ちゃんと終業時間内に無理のないよう組み込むなど、社員の負担にならない環境の整備も必要になります。
社員がリスキリングにより取り組みやすくするため、企業が社員に寄り添い、伴走する姿勢も重要になります。
④習得したスキルを活用する場を用意する
実際にリスキリングでスキルを得ても、それを活用する場がなければ社員の不満は高まります。
ただ、先行投資としてリスキリングをしてもらい、まだDXやGXに関わる新しい業務が社内にないケースもあることでしょう。
その場合でもステップ①で説明した、想定している新しい事業を調査、もしくは試験的に一部導入してみるなど、実践に近い環境で経験を積ませていくことが大切です。
2社がリスキリングに成功したポイントは?
自ら新しいスキルを身につけ、身をもってビジョンを示す。この第1ステップを作れたことに非常に価値があると思いますね。
まとめ
ChatGPTなどの登場で、AIによって失われていく業務が増えていく一方、デジタルを活用し新たに生まれる業務もあります。
社内に正しくリスキリングを取り入れて、時代にマッチしたスキルを持った社員を増やしていくことで、企業・従業員ともにメリットのある形となっていきます。
デジLIGでは企業契約による従業員の受講も可能です。Webデザインや動画編集でのリスキリングをお考えの企業は、ぜひお気軽にご相談ください!
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自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング 後藤宗明 著