学生と社会人の勉強はここが違う! まつもとゆきひろが語る、リスキリングの極意

学生と社会人の勉強はここが違う! まつもとゆきひろが語る、リスキリングの極意

Yu Mochizuki

Yu Mochizuki

広報室の望月です!
昨年より、LIGでは、Ruby開発者のまつもとゆきひろさん(以下、まつもとさん)を技術顧問にお迎えし、定期的に勉強会を開催しています。

第1回目の勉強会はこちら↓

先日、第2回目の勉強会が開催されました。今回のテーマは、「社会人の勉強方法について」。最近はリスキリングへの意識が高まり、学び直しをはじめている人が増えています。まつもとさん自身の経験をもとに、社会人が新しいことを勉強するときに大切な意識や思考についてお話いただきました!

本記事では、勉強会の様子をダイジェストでお届けしていきます!

まつもと ゆきひろ
Rubyアソシエーション理事長
プログラミング言語Rubyの生みの親であり、一般財団法人Rubyアソシエーション理事長。株式会社ZOZOやLinkers株式会社など複数社で技術顧問などを務めている。オープンソース、エンジニアのコミュニティ形成などを通じて、国内外のエンジニアの能力向上やモチベーションアップなどに貢献している。

学生と社会人の勉強は違う


まずはじめに、学生と社会人の勉強は違うことを理解しておく必要があります。それらを理解することで、やみくもに学ぶよりも効率的に知識を身に付けることができます。

学生と社会人の勉強の違いをさまざまな観点で見ていきましょう。

満点がある or 満点はない

学生は、勉強の習熟度を図るためにテストがあります。テストでは、全問正解すると100点満点が与えられますが、1つの教科で100点以上を取ることはできません。

社会人の仕事の成果は、100点満点が上限ではありません。たとえば、あるプロダクトを開発し、お客様の業務効率を改善したり、売り上げをUPさせるなど一定の成果を生み出したとします。「お客様の目標達成・課題解決をすること=満点」と設定できますが、場合によってはそれ以上の成果を生み出すこともあるでしょう。そのとき、お客様によっては「期待以上の成果をあげてくれたので、今回のプロダクトの点数は200点でした」という評価をいただけることもあります。このように、社会人においては、“満点“を目指すことが必ずしもゴールではありません。

苦手を克服する or 得意分野を伸ばす

学生のテストでは、満点以上の点数を取ることはできないため、得意教科の点数にも上限があります。そのため、自分の総合的な成績や評価を伸ばすには、苦手教科を勉強し、点数を上げることが必要になってきます。

社会人では、仕事に対して満点がないからこそ、得意分野・関連分野を勉強し続けることでさまざまな成果につなげることができ、自身の評価や市場価値を伸ばすことができる。それに、苦手分野は他の人に任せて得意分野に集中することで自分のモチベーションが上がり、パフォーマンスも向上するのです。

情報を記憶する or インデックスをつくる

学生時代の勉強では、授業や教材の内容をいかに記憶するかが、テストにおける高得点獲得のポイントになります。つまり、情報の記憶が重要です。

社会人の勉強では、記憶も重要ですが、それだけが仕事の成果に結びつくわけではありません。たとえば、プログラマーは記憶だけを頼りにプログラムを書くことはほとんどないと思います。オンライン上にあるさまざまな情報を活用したり、他者の知見を活用しながら課題や問題を解決するケースが多いでしょう。どこにどんな情報があるかを把握し、自分なりのインデックスをつくっておくことも重要です。

1次元で評価される or 多次元で評価される

学生の勉強は、1つの教科のなかにさまざまな単元があり、テストでは単元の総合理解が高得点獲得につながります。また、入試などでは、複数の教科の総合点で評価されますよね。つまり、単元や教科などさまざまな次元が集約され、1次元として評価されるのです。

社会人の仕事では、問題・課題解決が重要であり、そのためにさまざまな領域のスキルが求められます。プログラミングであれば、システム開発、Webアプリケーション、AI、など多数の領域に分かれており、それぞれに特化することで、問題・課題解決につながるでしょう。社会では、領域などの次元を集約せず、多次元で成果を出すことが求められます。

メイン活動か or サブ活動か

学生は、勉強することそのものが活動のメインになり、その成果がテストによって図られます。

社会人は、仕事での目標・ミッション達成が求められ、勉強は副次的な活動になります。

間接的か or 直接的か

学生の勉強では、学んだ知識の活かし方が不明な場合もあります。知識を身に付けても、その人の立場によっては、社会で役に立たないこともあるでしょう。

しかし、社会人では、自分の仕事に役に立つことや将来のキャリアにプラスになることを勉強しますよね。つまり、勉強そのものが、仕事や社会の課題解決につながるのです。

答えが変わらない or 時代によって答えが変わる

学生の勉強では、時代が変化しても答えが変わることはほとんどなく、決まった答えがあり続けます。

しかし社会では、トレンドや技術が進化すると、次々に新しい問題解決法が出てきます。そのため、勉強すべき内容・ターゲットが変化し続けます。

社会人が継続的に勉強するために

ここまで、学生の勉強と社会人の勉強の違いを話してきましたが、そもそも、なぜ人は社会人になっても勉強をするのでしょうか? 人は働くうえで、「成功したい、高収入を得たい、イヤなことはしたくない……」など、さまざまな欲求や目的があると思います。

人の欲求や目的を叶える方法が勉強です。

まずは、目的を明確にする。そのうえで、勉強を継続していくためのポイントをお伝えします。

走り出す前に、好きなことは何かを考える

勉強をはじめるときには、今の自分の姿を見つめることが重要です。世の中の動きやトレンドに影響されて、すぐに走り出すことは簡単ですが、走り続けるのは簡単ではありません。

そこで、走り出す前に、どこに向かって走るかを考えることが大切です。

人には、好きなもの・嫌いなもの、興味があること・ないこと、得意なこと・苦手なことなど、さまざまな判断軸があります。「好きこそものの上手なれ」という言葉があるように、人は好きなことのほうがモチベーションが上がるし、上達も早い。社会人のように、満点がない世界では、苦手をなくすことに注力せずとも、成果を出すことはできます。むしろ、得意なことで、200点や1,000点を目指すことで自分にしかできない成果を生み出すことができるのです。

モチベーションを維持する

勉強をするうえで、モチベーションを維持することはとても大切です。仕事のすべてが好きではないけれど、できる限り好きな要素が多いほうが、モチベーションを高く保つことができるでしょう。

私自身は、プログラミングをするうえで、「どんなものを作るか、どうすれば良いものになるのか」を妄想することが好きです。また、コードを書いてバグで思い通りに動かないことがあっても、間違えを見つけて修正していくことで、正しく動くようになる。そういったパズル的な楽しさもプログラミングの魅力だと思います。

このように、自分なりの好きな要素を見つけることがモチベーションに繋がります。

そのほかにも、希望を見つけることもモチベーション維持には大切です。この方法を続けることで、魅力的な仕事を担当できるかもしれない、成果が出て給料が上がるかもしれないなど、漠然とした希望もモチベーションの源になるでしょう。

時間をつくる

社会人になって勉強をするうえで、仕事とプライベートの両立に悩む人は多いしょう。そのときに大切なことは、仕事における業務時間のコントロールをすることが大切です。

仕事をしていると自身の仕事に直接影響がないものの、気が付けば時間を取られている業務は意外に多いのではないでしょうか。特に自分が発言する機会がなく任意参加の会議になんとなく参加していたり、SNSを眺めたり……自身の業務に直接関係ないことをしている時間をいかに削るか、が大切です。また、スケジュールを組むうえでは、自分の「フルパワー+α」で業務時間を見積もることをオススメします。

プライベートと仕事の両立については、こちらもご覧ください。

組織における環境づくり

企業によっては、勉強を独立した活動として捉える傾向があります。その場合、社員は仕事だけでなく勉強もやらなければいけないという、心理的負担を感じてしまうケースがあります。それに、上司から促され、仕方なく実践する受け身な勉強では知識は身に付きません。

そのため、業務にとってプラスとなる勉強は仕事の一貫として設定するなど、会社がフォローアップすることが大切だと思います。

アウトプットをする

Web上で情報収集をしたり、本を読んだり、勉強会に出席するなど、知識のインプットにはさまざまな手法があります。しかし、そこにたくさんの時間をかけても、必ずしも他者より優秀な人材になれるわけではありません。つまり、インプットの量は差別化要因にはならないのです。

そこで大切なことが、アウトプットです。

アウトプットをすることはハードルが高く、心理的障壁が生まれやすいものです。面倒だし、慣れてないうちは恥ずかしさもあるでしょう。はじめは、クオリティにはこだわらず、まずは誰かの目に止まるものを出すことが大切です。そして、繰り返していくことで、次のような変化が起こっていきます。

アウトプットを繰り返す→習慣化し苦にならなくなる→アウトプットのクオリティが上がる→見る人が増えていく→見てくれる人に有益な情報を届けようと、他人と差別化するようになる→アウトプットが評価されるようになる→その道のプロフェッショナルになっていく

このように、繰り返していくことで、アウトプットの最適化が起こるのです。

まとめ:勉強を続けることで人は変わる


みなさんは新しいことを勉強するうえで、今よりもポジティブな状態に変わりたいという思いを少なからず持っているでしょう。しかし、勉強をする前は「自分はきっと変わらないだろう」と思い混んでいることが多く、その思い込みが変化を止めている原因でもあります。

アウトプットを含めて勉強を継続していくことは、目的の達成へ近づくことはもちろん、「人間の可塑性(かそせい)」を引き起こします。

可塑性とは…固体に力を加えて弾性限界を越える変形を与えたとき、力を取り去っても歪(ひず)みがそのまま残る性質。

人は、自発的に変わることは難しいですが、置かれた環境に合わせて変化していきます。勉強を継続していけば、自然と新しい自分に変わり、思いもよらぬ未来に導いてくれるでしょう。

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アパレル企業にて販売員を経験後、編集プロダクションにて、エディターとしてのキャリアをスタート。雑誌編集、アパレルブランドや商業施設の販促物・Webコンテンツ・店頭装飾物・ビジュアル制作などに関わる。2020年7月にLIGに入社し、さまざまな企業のオウンドメディア支援に携わる。2022年7月より広報チーム所属。

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