こんにちは。デザイナーの花ちゃんです。
みなさんは「UI/UXデザイン」ってなんだと思いますか? 使いやすく目的を達成しやすいデザインのこと? それとも、ユーザーのより良い体験をデザインすること?
私自身LIGのデザイナーとしてUI/UXデザインに携わることが多いのですが、UI/UXの捉え方は幅広く企業によってもさまざま。他社のデザイナーさんはどんなふうに向き合っているのか前々から気になっていました。
それなら直接話を聞きに行こう!(ついでにお土産として役立つノウハウもいただいちゃおう!)
ということで、みなさんにも有益な情報をお届けすべく、個人的に気になっている他社のデザイナーさんやUI/UXに強みを持つ企業さんに突撃インタビューすることにしました。
記念すべき初回は、元LIGデザイナーのゆうこさんが働かれている総合コンサルティング会社・アクセンチュアさんに突撃インタビュー!
▲広大な執務スペース。カフェコーナーにはバリスタさんもいました。
こちらの圧倒的大企業感あるアクセンチュア・イノベーション・ハブ東京にて、IMJチームでアートディレクターとして活躍されているゆうこさん、そしてIMJのブランディングを担当されている下田さんにお話を聞いてきました。
アクセンチュア株式会社 アートディレクター/デザイナー 木村 優子さん株式会社LIGなど複数のデザイン事務所を経て、Web/アプリUI/グラフィック/DTPなど、幅広い領域のクリエイティブを経験。2021年、アクセンチュア株式会社に入社し、資生堂のアートディレクション/デザインを担当。現在は、デザインだけでなく企画/プランニングも行う。旅が好き。 |
アクセンチュア株式会社 シニアマネージャー 下田 達さん広告系デザイン事務所を経て2006年、IMJに入社。紙媒体を含めた全体的なアートディレクション、UI設計が重視される大規模サイトやECサイト、フォトディレクションが重視されるプロモーションサイト、企画力が重視されるコンテンツ・キャラクター作成など様々な領域の企画/クリエイティブディレクション/アートディレクション/デザインを経験。こう見えてマイホームパパ。 |
入社早々、難易度の高いプロジェクトに大抜擢
――LIGにいた頃から変わらず、明るく楽しそうでよかったです。いまはどのようなお仕事をされていますか?
ゆうこ:2021年の7月からアクセンチュア/IMJでデザイナーとして働いています。ビジョンや目的の言語化などの戦略フェーズからアサインする機会が多く、上流工程から案件に携わっています。
最近は企画やプランニングにも携わらせてもらえるようになり、日々新しいことにチャレンジできている実感があります。領域もWebやアプリに限らず、サイネージ、VR、動画など、幅広いです。あとは、クライアントが世の中の誰もが知る大手の会社がメインということも特徴だと思います。
――ゆうこさんの社内での評判はいかがでしょうか?
下田:入社されてからいろいろな案件を矢継ぎ早にお願いしてきましたが、抜群の安定感でどの案件も求める期待値を理解し、それを超える活躍を見せてくれています。
ベースのデザイン・クリエイティブ力が高いことはもちろんですが、とくにLIGさんで鍛えられた既成概念に囚われない提案力とそれを伝えるコミュニケーション能力の高さはクライアントからも評価が高く、IMJ内でも提案案件があると必ず指名が掛かるほど欠かせない存在になってくれています。
――さすがです! そんなゆうこさんが活躍されている「IMJ」とはどのような組織ですか?
▲ゆうこさんとともに働いているIMJデザインチームのメンバー。
下田:IMJはアクセンチュアの中で、「つくる」ことに特化したグループです。ただ、純粋な制作ということだけでなく、プロジェクトになにが必要か考え、つくり、実現し、育てていくという幅広い意味でのつくることに強みを持っています。
- ▼アクセンチュアIMJについて深堀り
- アクセンチュアには、ストラテジー & コンサルティング、ソング、テクノロジー、インダストリーX、オペレーションズという5つの領域があり、IMJはそのうちの戦略を実行する部隊である「オペレーションズ」という組織に属している。IMJでは「BOOST IT. つくる力で、すべてに飛躍を。」というスローガンを掲げており、現在新メンバー絶賛募集中!とのこと。👉アクセンチュアIMJ/RECRUITページ
――大手のクライアントさんが多いとのことですが、これまでどのような案件を担当されてきたのでしょうか?
ゆうこ:最近だと、資生堂Webサービス「ワタシプラス」 オンラインショップのトップページリニューアルを担当させていただきました。私も以前から利用していたサイトのため、機会をいただけて身の引き締まる思いでした。
▲毎日のキレイに役立つ資生堂のWebサービス「ワタシプラス」。お店の情報、オンラインショッピング、化粧品や美容の情報など、さまざまなコンテンツがある。リニューアルにより売上・SNSでの反響ともに大幅アップ。
――オウンドメディアの成功例としてよく聞くメディアです! どんなことを意識してデザインされたのですか?
ゆうこ:企業側が推したい情報を前に出すのではなく、実際に商品を買っていただくユーザーにとって必要な情報を最優先に見せることを一貫して意識していました。
オンラインショップのページでは、メインとなるユーザーはリピーターなので、検索窓をページ上部に大きく設置したり、これまでなかったブランドエリアを設置したりすることで、ユーザビリティの高いサイトを目指しました。
また、縦に長くなりがちなECサイトですが、見てほしい情報を的確に伝えるために、項目を洗い出して優先順位を付けることで情報を削ぎ落とし、縦に長くなりすぎないよう気を付けました。
――ブランドエリアを見て「このブランドも資生堂さんだったんだ」と思いました。上流工程から携わっているとのことですが、どんな流れでデザインに落とし込んだのでしょうか?
ゆうこ:まず前段階として、ページごとのアクセス分析、エキスパートレビュー、ユーザーテストが実施されました。私はそれらの情報をもとに競合分析を行いながら、As is(今の現状)とTo be(今後あるべき姿)を明確にし、ワイヤーフレームに落とし込んで情報設計を行いました。
――エキスパートレビューとは何ですか?
ゆうこ:UIUXのスペシャリストによるレビューのことです。目的を達成するために効率よく動ける画面設計になっているか、専門家がユーザーの立場に立って課題を洗い出してくれています。
――デザイン前の分析や検証にかなり時間をかけているのですね。
ゆうこ:しっかり要件定義を行うことがプロジェクト成功の鍵だと実感しています。それにつくったあとの運用にもかなり力をいれているんです。
このページは、いつ、どんな人が、どのくらいの割合で購入して……というように詳細な数値を出してくれるので、成果が見えやすく、つくり手としてもモチベーションに繋がります。
アクセンチュアの案件では、数十人、場合によっては数百人単位でチームを組んで動いているので、いろいろな視点が入ってくるのが面白い点だと思います。
- ▼アクセンチュアのデザイン領域について深堀り
- デザイン分野だけでもサービスデザイン、コミュニケーションデザイン、コンテンツデザインとアクセンチュア内でさまざまあり、メンバーのタレント性も豊か。
――それだけ多くの人が関わっていると、意見がぶつかったりしないのでしょうか?
下田:議論は前向きに進むことが多いですね。「こういう視点もあるよ」「じゃあこういうときにはこっちのほうがいいかも」というように一つの意見をブラッシュアップさせていきます。
ゆうこ:さまざまな分野のスペシャリストの方々の意見が聞けて、それらを取り入れながらデザインしていけるため、良い刺激になっています。
――お互いがプロとして尊重しあいながらつくり上げていっているんですね!
今の時代の「伸びるコンテンツ」とは
ゆうこ:「PiCKFUL」という資生堂のメディアサイトの担当もしたのですが、記事のアイキャッチはライターさんに撮影してもらうこともあります。
実はつくり込んだ美しい広告物のような写真よりも、スマホで撮影したようなカジュアルな写真のほうがクリックされることもあるとのことで、それは今までの私にはない視点でした。
▲資生堂が独自の視点でピックアップしたビューティー情報を取り揃えたメディアサイト。「これまでにないわくわくするような新しい価値観」を目指し制作。
――たしかに、資生堂さんといえばキレイめな印象がありますが、全体的に親しみやすいポップなデザインになっていますよね。親しみやすいほうが伸びる傾向があるのでしょうか?
ゆうこ:場合によるので一概にはいえませんが、PiCKFULにおいてはリニューアル前と比べてUU数、PV数ともに昨年を大きく上回っています。
――きれいなデザインを追求してしまいがちですが、ユーザーがなにを求めているのか、という視点も常に持っていなくてはなりませんね。
ゆうこ:自分の思う正解が正解とは思わないようにして、本当にユーザー目線に立てているかをより重視するようになりました。
下田:大事なのは自分が使っているシーンが想像できるかということではないでしょうか。たとえば大理石でつくられた背景などだと画的には映えるかもしれないですが、一般家庭にある景色ではないので実感が持ちづらいですよね。つくり込んだデザインであっても、それが身近なものとしてイメージできるものであれば問題ないのかなと思います。
――意識が変わったことで、デザインの方法でなにか変わったことはありますか?
ゆうこ:これまではつくり込まれているクオリティの高いサイトに目が行きがちでしたが、最近は「Amazon」のような多くの人に利用されているサイトを参考にすることが増えました。大手のサイトは、公開後も多くの仮説と検証を重ねてユーザビリティを高めていることから、UIUXの参考にさせてもらっています。
――たしかに。「Amazonを参考にしています」ってかなり説得力のある説明ができそう。初心者の方にも参考になる情報ですね。
ビジネスやユーザー体験に密接に関わったクリエイティブづくり
――UIUXがメインテーマということであらためて伺いたいのですが、そもそもUX(ユーザー体験)をどのように捉えていらっしゃいますか?
下田:「ユーザー体験」には狭義と広義の捉え方があって、フェーズによって観点が変わってくると思います。
たとえば新しいサービスやビジネスを考えるときには、「ユーザーの生活にどんな影響を与えられるか」という広義のユーザー体験について考えていきます。ターゲットとなるユーザーがどんな生活を送っていて、企業としてどんなことに貢献できるのか、それがある程度定まってきたら今度はたとえば通勤時間の過ごし方など、だんだんユーザー体験の深堀りが行われていきます。
最終的にサービスが出来上がったら、実際に使ってみてこのボタンがわかりにくいから改善していこうというような「サービスを使い始めるところから使い終わるまでの一連の体験」という狭義のユーザー体験に絞られていくイメージです。
――大変わかりやすいです。もう一歩踏み込んで伺わせてください。ユーザー体験をよりよくすることも大切ですが、一方で企業の利益を生み出すことも考えなくてはならないですよね。ユーザー体験とビジネスを両立させるためにはどうしたらよいでしょうか?
下田:難しい点ですよね。弊社の場合は、ユーザー体験とビジネスどちらかに振り切ることなく両者を深く考えていくためにも、ビジネスの成功にはなにが必要なのか戦略から考えて、それをカタチにし、体験として届けるまでを一貫して行っています。
たとえば新しいサービスを構築する際も、そもそもそのサービスは必要なのかを考えるところからはじめます。企業の現状を踏まえ、現在の社会情勢やユーザーの傾向・ニーズなどさまざまなデータ分析から、サービスが受け入れられる土壌はあるのかを検討していきます。
――よりユーザーに寄り添ったクリエイティブをつくるには、徹底したデータ分析が必須になってくるのでしょうか?
下田:データ分析ありきというよりは、ビジネスとしてどういうことをやるべきで、どういうユーザー体験をつくっていけるのかが重要で、そのためにしっかりとした市場調査やユーザー調査で土台をつくっています。
データ分析からすぐにクリエイティブに結びつくような「=」的なものではなく、データ分析をもとに仮説と検証を繰り返して、サービスや体験が生み出されるというイメージです。
――ちなみに調査や検証ではどんなことをおこなっているのですか?
下田:100名以上のユーザーインタビューを行い、サービス検証も4回ほど繰り返し、スクラップ&ビルドを繰り返し1年以上かけてサービスデザインをしていくようなケースもあります。最終的には初期の形とは大きく違った形でローンチしたケースもありますね。
――まさに万全の状態で世の中に届けられるわけですね!
下田:もちろん、時間をかけて練り上げてローンチしたサービスでも、想定どおりにターゲットに利用されない場合もあります。そういった場合もつくって終わりではなく、きちんとサービスが機能するように、なにがうまくいっていて、なにが引っかかっているのか、データをもとに検証、改善を繰り返していきます。
サイト改善でお困りのデザイナー必見!今日からできる分析法
――「なにがうまくいっていて、なにが引っかかっているのか」ってどうやって導き出したらよいのでしょうか……? サイト改善でなにからはじめたらよいのかお悩みの方に向けてぜひアドバイスをお願いします!
ゆうこ:すぐに取り入れられる手段として、競合調査があると思います。より多くの人に利用されているサービスからヒントを得ることが多いですね。
スマホで見たときの画像のサイズ感や、どういう文言でCVに誘導しているか、メインコピーの文字数やトンマナ、文言も「商品の特徴」なのか「惹きのあるコピー」なのか……などなどかなり細かいところまで見ていきます。
――たしかに、すでに検証を重ねているであろう競合のデザインを参考にするというのは改善の近道になりそうです。
ゆうこ:参考を集めるコツは、ページ内の要素を分解して、パーツごとの参考を集めることです。ビジュアル部分、UI部分というように要素を分解すれば、同業以外の幅広いジャンルのサイトも参考にできるのでおすすめですよ!
下田:要素分解に関連しますが、ゾーニングといってLPを構成する要素がどんな配置をされているかに注目してサイトを見ていくと、どういう構成になっているのかわかりやすくなり参考にしやすくなると思います。
――要素を分解すれば競合以外のサイトも大いに参考になりそうですね! ちなみに「勝ちパターン」のようなものはあるのでしょうか?
下田:はじめからこれが正解というものはなくて、仮説検証を繰り返して、徐々にカスタマイズをしていくというのが基本の流れになると思います。
たとえばヒートマップをみて「なぜかここだけポツポツクリックされている、この情報に興味があるのかもしれないからもっと厚くしてみよう」というふうに。
ある程度LPの定形は存在しますが、サービス特性もさまざまですしLPが投下される場所によってもユーザーの熱量が変わってきたりするので、「こうしたら勝てます」というのは難しいんですよね。
――ユーザーがなにを必要としているのか、その答えはユーザーにしかない、ということですね……! お二人ともありがとうございました!
さいごに
さまざまな領域のスペシャリストが協力し合いながら、クライアントのビジネスと密接に関わって、サービスとともにユーザー体験をつくっているアクセンチュアさんならではのクリエイティブづくりについて、お話を聞くことができました。
余談ですが、アクセンチュアさんといえば、コンサル! ロジック! なイメージで、取材が決まった当初は戦々恐々としていたのですが、お話ししてみるとみなさんとてもフランクで、インタビューも和やかな雰囲気で進めることができました。ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございました!
UIUXのプロに突撃インタビュー企画、次回の取材もお楽しみに! 花ちゃんでした。
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