成長のカギは「オーナーシップ」にあり LIG x ナイルが語る、DX推進における組織づくり

成長のカギは「オーナーシップ」にあり LIG x ナイルが語る、DX推進における組織づくり

Yu Mochizuki

Yu Mochizuki

LIGは、2022年にDX支援企業へ生まれ変わり、2023年は支援拡大に向けてさらなる進化を遂げていきます。引き続き、LIGブログでもDXにまつわる情報を積極的に発信していきますので、ご期待ください!

LIGの代表 大山が業界のオピニオンリーダーと対談を繰り広げる連載企画の第4回目は、ナイル株式会社の代表 高橋 飛翔さんが登場! ナイルさんとLIGはともに、2007年創業であり事業内容、組織規模がとても近い企業です。また、昨年、両社はコーポレートブランドをリニューアルしており、共通項の多い会社でもあります。

そんな両経営者に、DX事業への進化の過程や組織づくり、経営スタイルの変化に関するお話を伺いました!

高橋 飛翔
ナイル株式会社 代表取締役社長
1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中の2007年、ナイル株式会社を設立。多様な産業のデジタル化をテーマに、インターネットを活用して顧客企業のビジネスを支援するマーケティングDX事業を展開する。さまざまな事業を支援する過程で自動車産業に変革の余地を見出し、2018年より自動車産業DX事業を開始。「幸せを、後世に。」をミッションに、巨大産業のアップデートに取り組む。

産業のなかに潜む課題を解決する


ーー本日はよろしくお願いします。まずはじめに、ナイルさんの創業のきっかけを教えてください。

高橋 飛翔(以下、高橋):私が大学2年生の時(2007年)に、ナイルの前身となるヴォラーレ株式会社を起業しました。当時の私は東大に在籍していて、周りにはさまざまなバックグラウンドを持った学生がいました。並々ならぬ努力をして入学した人がいれば、特別勉強をせずとも生まれ持った才能を活かして入学してきた人など、教育の背景は人それぞれ。そういった背景を知った時に、今後、少子高齢化が進んでいく日本で、人の能力を解放できる(発揮できる)ようなサービスが必要になってくると感じたんです。

具体的には、地方など予備校や塾が行き届いていない環境でも、インターネットを通じて教育サービスを提供することで、教育格差をなくし、学習能力を発揮しやすくなる。さらに発揮した能力を高めていくことで、将来の日本の人的資源の最大活用にも繋がるだろう、と。そこで、大手予備校よりも大幅に安価な金額で、さまざまな授業を受けることができるWeb予備校のサービスを立ち上げました。今でいう、“教育のDX”のようなことをやりたかったんです。

大山:Web予備校はまさに今ニーズが高いサービスですが、とても早い時期にやっていたんですね。

高橋:早すぎました(笑)。当時は今ほどインターネットが普及していなく、そもそもターゲットとなる人たちがWebでサービスを受ける環境が整っていなかったんですよね。

そのサービスは一定数のお客様にご利用いただいたのですが、自分たちの力不足を感じて、事業をピボットすることに。Web予備校のサービスを提供していくなかで得た、デジタルマーケティングの知見を企業様に提供したことが、今のマーケティングDX事業の始まりです。

大山:ナイルさんは、以前はSEOのイメージが強かったですが、近年はデジタルマーケティング領域全般の支援を行っているのですね。

高橋:SEO支援によって事業拡大してきましたが、SEOはあくまでデジタルマーケティング活動のいち手段でしかありません。我々のマーケティングDXの本質は、お客様の売り上げ・利益をあげることであり、そのために、あらゆる手段を尽くしながら、最適化していくことです。そういった意識で支援し続けてきたことが、近年の事業拡大にも繋がっていると思います。

しかし、決してデジタルマーケティングの支援だけをやっていこうと思っていたわけではありません。大学生のころに教育事業を立ち上げたように、産業のなかに潜む課題を見つけ、インターネットを通じて解決していくことに取り組みたいという想いがずっとありました。

大山:その想いが2018年1月にスタートした「おトクにマイカー 定額カルモくん※」に繋がっているんですね。

「おトクにマイカー 定額カルモくん」…マイカーが欲しい個人消費者向けの車のサブスクリプションサービス。自動車探しから料金シミュレーション、審査お申込みまでネットで完結し、非対面でマイカーを手に入れることができる。

高橋:そうです。自動車産業は、言わずと知れた日本の巨大産業であり、日本経済を支えていますが、近年は、自動運転、電気自動車などによる産業全体が構造改革の波にさらされています。また、個人が所有する自家用車のマーケットにおいても、シェアリングをはじめとした大きな市場環境の変化が予想され、時代のニーズに即したサービスが求められています。

そこで我々のようなスタートアップが参入し、新しい車の持ち方を提案することで、自動車産業の課題解決に繋がると思い、自動車産業DX事業を立ち上げました。

オーナーシップの変化が組織拡大を促進

大山:SEO支援からマーケティングDX事業の進化、そして新規事業のスタートとともに、2021年には総額50億円超の大型の資金調達を実施されました。資金調達前後で、経営のスタンスに変化はありましたか?

高橋オーナーシップに対する考え方が変わりましたね。資金調達をしたことで、さまざまなスキル・経験を持った人材が入社してくるようになり、社外の投資家においても、プロフェッショナルな人との関わりが増えました。ある領域においては、自分よりも秀でた人と仕事をすることが多くなりました。

すると、いい意味で、組織における創業者のオーナーシップが低下していくんですよね。オーナーシップは強ければ強いほど良いとも言われますが、創業者のオーナーシップが強すぎるとトップダウン型の組織になりすぎて良い人材が入ってこないという側面もあるので、実はオーナーシップには適切な強さがあるのではないか、と思うようになりました。

大山:深いお話ですね。もともと、オーナーシップに対してどんな意識を持っていましたか?

高橋:昔は、オーナーシップを強く持ちすぎていたと思いますね。結果として、社員への権限委譲が進まない時もありました。しかし、資金調達を通じて、自分以外の株主が増えていくなかで、より客観的に自分を見ることができるようになり、それまで抱いていたこだわりが緩和されていきました。すると、権限委譲を大胆に進められるようになりグロースの確度も加速。

2022年には、経営チームは常勤取締役を含めて総勢10名を超える体制になりました。それに伴い、経営における重要な各種テーマごとに経営組織を分割し、迅速かつ合理的な議論を実現する仕組みとして「N-GEARS(エヌギアス)」という制度を創設。経営の一極集中から多極分散へ移行を進めています。

最近は、全社の経営会議以外の事業部ミーティングなどでは、私が話をする機会を減らし、各事業のCOOがスピーチをする機会を増やすようにしています。すると、みんなの意識がCOOに向くので、自然と彼・彼女たちのプレゼンス(存在感)も高まっていきます。

大山:事業責任者への権限委譲を意識的に行っていった、と。結果、組織のボトムアップにも繋がっていきますよね。

高橋:社長がいなければ会社がまわらない、という状態は脆弱な組織だと思います。社長が先頭に立たずとも、ナイルという組織が人を引きつけていけるエンジンになっていくことを目指しています。

挑戦が生まれる、環境づくり

大山:ここまでお話を聞いていて、ナイルさんにさまざまなバックグラウンドを持った人材が加わり、組織が拡大していく様子がとてもよくわかりました。DX推進における組織づくりで大切だと思うことはなんですか?

高橋:ポテンシャルのある人材を抜擢し、適切なミッションを掲げて推進していくこと。そして、専任化することが大切だと思います。ひとりの人間にできることには限りがあるので、別事業と兼務することはおすすめしません。

大山:人材は大きな鍵を握りますよね。LIGでは、DX支援へ事業方針を転換していく過程で、コンサルタントの採用を強化しました。一方で、なかなか採用がうまくいかず、DX事業の推進を社内の人材に任せるケースもありますが、既存事業や組織のバランスが崩れる可能性もあります。人材のアサインについて、意識していることやポイントはありますか?

高橋:まず、我々はビジョンとして「デジタル革命で社会を良くする事業家集団」を掲げているので、一人ひとりが事業家としての意識を持つことを心がけています。また、成果を出したメンバーの異動希望を1年以内に100%実現する「フミダス」という異動奨励制度を実施し、「挑戦する」ことを積極的にサポートしています。事業家としての意識、挑戦する環境を作ることでDXをはじめとした新しい事業を推進するきっかけになっています。

そして、新しい挑戦をすること、組織のなかに新しい機能をつくることに、経営陣がコミットすることを強く意識しています。

大山:挑戦できる環境づくりは、とても大切ですよね。LIGでは、社内公募制度を積極的に実施しており、最近も入社1年目の新卒社員がフィリピン支社へ転勤するケースもありました。私自身の初めての起業が海外(ベトナム)だったので、海外挑戦への意識を強く持っています。今後は、新卒入社の社員が積極的に海外挑戦できるような環境をつくっていこうと思っているんです。

高橋:海外は飛び込まないとわからないですし、挑戦することで道が開けていきますよね。

15年ほど会社経営をしてきたなかで、「人の成長ってなんだろう」ということを常に考えてきて、「人は挑戦しなければ成長できない」という答えにたどり着いたんです。小さなことでもいいので、今までやったことがないことをやる、できるかわからないことをやってみる。すると、必ず何かフィードバックを得ることができます。できた理由・できなかった理由、新しい課題感の発見など得るものはたくさんあり、その一つひとつが人を成長させると思います。

大山:挑戦をすることで人が成長し、結果、事業の成長や新しい事業を生み出すことに繋がっていくのですね。

高橋:それに、挑戦がない組織では人が固着化して、各事業部のなかに決まったスキルの人材しかいない状況になります。するとイノベーションが生まれにくくなります。また、マネジメント層の固定が続けば、一般社員のキャリアの発展性がなくなり、別の環境を求めて退職していく。そのため、意図的に人の循環を生み出すことを行っています。

また、人だけでなく、同時に知の循環も大切なこと。ナイルは、どの事業部でもデジタルマーケティングが重要な役割を果たしているので、「ナイル横断ウルトラナレッジ」と言うマーケティングに関する知のデータベースを構築しています。社員全員がナレッジを投稿・閲覧できる状態にすることで、知見の分散化を防いでいます。

あらためて大切にしたい“顧客理解”

大山:ここまで、組織づくりを中心とした社内の取り組みに関するお話を聞いてきました。DX支援事業への転換や資金調達に伴い、お客様への向き合い方に変化はありましたか?

高橋:大型の資金調達をしていくなかで、資金をいかに効率的に使っていくかは大きなテーマでした。一歩間違えれば、会社が傾く可能性もある。権限委譲を進めているとはいえ、資金の使い道は、CEOがしっかりとコミットしていく必要性を感じていました。そのために、今まで以上に自身の事業家としてのレベルをあげなければと思い、さまざまな起業家や事業家、マーケティング業界の有識者の方々と会う機会を増やしながら、知見を交換してきました。

そこで、あらためて立ち返ったのが、顧客理解の大切さでした。企業は、売上・利益を追い求めるからこそ、商品やサービスを提供することが最優先になり、顧客が置き去りにされてしまう。顧客が望んでいない方向に流れていかないよう、顧客に向き合うことをより一層意識するようになりました。

大山:私も“顧客”と向き合うことは社会人になってからずっと大切にしてきました。新卒で、アパレル企業のユナイテッドアローズに入社し、人事部に配属され、役員の近くで仕事をしてきたなかで、飛び交う話題の多くは“お客様”についてでした。現場の販売員から役員まで、全社員がお客様を一番に考えていたことがとても印象に残っていて、私のビジネスにおける礎になっています。顧客理解の大切さを組織に浸透させるために、どんなことを行っていますか?

高橋:ナイルでは、顧客インタビューを積極的に実施しています。実際にお取引のある顧客にお時間をいただき、インタビューを通じて生の声を聞くことで、本質的な理解につなげています。そうすることで、売上や利益に意識が向かわないよう、意図的に立ち帰る時間を作っています。経営者だけが顧客理解を訴えるのではなく、社員全員が意識することが大切ですから。

大山:まさにそうですよね。我々も定期的にお客様の声を聞く取り組みをしており、お取引前はもちろん、納品後の声も大切にしています。CSアンケートを通じて、弊社の対応や納品物に対する声を吸い上げることで、より良い支援に繋がるヒントをいただいています。納品をしたら終わりではなく、そこが新しいはじまりになりますから。

自分たちが考えているお客様の課題と、実際にお客様が抱えている課題は必ずしもイコールではありません。お客様の生の声に課題の本質、解決のヒントが隠れている。それを継続して収集していくことが、本当の顧客理解に繋がっていくと思っています。

DXで産業、企業の革新をサポートする

大山:事業の拡大とともに、ナイルさんは2022の7月にコーポレートブランドをリニューアルし、新しいスタートを切っていますね。LIGも近しい時期にCIのリニューアルを実施し、ロゴやコーポレートサイトを刷新していたので、とても親近感を感じていました(笑)。

高橋:このお話をいただいて、あらためてLIGさんのHPを見たらガラっと変わっていてびっくりしました(笑)。以前は、「おもしろブログ」というイメージを持っていましたが、その要素がまったく感じられないサイトになっていて、変化を感じました。

ナイルは、SEOの会社やApplivの会社というイメージが強く、DXと言うワードが紐づいていなかったんですよね。そこで、「トランスフォーメーション=変わっていく」ことを、ロゴで表現しました。


(参照:NYLE BRAND SITE

2つの“矢”をモチーフに構成されたNのシンボルは、「本質を射抜く力」と「変革を起こす力」を象徴しています。そこには、社会の課題や顧客インサイトを正確に捉え、よりよい方向へと変えていく意志が込められています。

大山:とてもかっこいいロゴですね! まさに、自社が変わり、世の中を変えていく存在になっていく、そんな力強さを感じました。CIをリニューアルすることは、会社が変わることを世の中に発信し、会社全体の意識も変わりますよね。

ここまでさまざまなお話を聞いてきましたが、最後にナイルさんの今後の展望を聞かせていただけますか?

高橋:日本の経済を成長させていくためには、企業の底力をあげていかなければなりません。
大企業が新しい産業を作ったり、中小企業やスタートアップが新しいビジネスを生み出すことに、日本人全員が当事者意識を持って取り組まなければいけません。

そこで重要になってくるのが、DXです。

ナイルは、マーケティングやテクノロジーを強みに、別分野との掛け合わせにより新しい事業をつくり、日本の企業・日本の産業のデジタル化に貢献していきたいです。そのために、私たちの知見が活かせる新しい産業分野を探索すること、そして、見出した産業分野に対して深化していくことを意識しながら経営をしていきたいと思っています。

大山:既存の強みを活かし、他分野と掛け合わせをすることで、独自の価値提供ができるようになりますね。近しい境遇だからこそ、とても共感できる話ばかりでした! 本日はありがとうございました!

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アパレル企業にて販売員を経験後、編集プロダクションにて、エディターとしてのキャリアをスタート。雑誌編集、アパレルブランドや商業施設の販促物・Webコンテンツ・店頭装飾物・ビジュアル制作などに関わる。2020年7月にLIGに入社し、さまざまな企業のオウンドメディア支援に携わる。2022年7月より広報チーム所属。

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