LIGはWeb制作からスタートし、現在はDX支援を軸に、システム開発、Web制作、デジタルマーケティング支援などの事業を展開しています。その背景には、社会の変化、ニーズの変化、組織の変化など、さまざまな要因があります。
近年は急激な社会の変化から、事業の見直しや新規事業の開発に目を向ける機会も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「事業開発・事業成長」をキーワードに株式会社識学の代表 安藤広大さんとLIGの代表 大山による対談を実施! 識学は創業からわずか3年10ヶ月で上場し、展開するサービスは3000社以上の企業に導入されてきました。「新しい事業」はどのように生まれ、成長し、世の中に広まっていくのか。識学の成長過程を辿りながら、新規事業の推進方法を探っていきます。
安藤広大 株式会社識学 代表取締役社長 1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモを経て、ジェイコムホールディングス(現:ライク)のジェイコムで取締役営業副本部長等を歴任。2013年「識学」という考え方に出合い、講師として数々の企業の業績アップに貢献。2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために株式会社識学を設立。2019年、マザーズ上場を果たす。 https://corp.shikigaku.jp/ |
常識を疑うことでヒントが見つかる
ーー本日はよろしくお願いします! まず、安藤さんと識学の歩みについて教えてください。
安藤広大(以下、安藤):識学は、福富謙二さんが考案した理論「意識構造学」からとった造語であり、20年以上前に提唱された組織運営理論です。
私と識学との出会いは、2013年にまで遡ります。当時の私は、ジェイコムホールディングス株式会社(現 ライク株式会社)に在籍し、子会社の取締役営業副本部長を務めていました。ちょうどそのときに、識学と出会いました。試しに学んでみると、これまでの社会の常識とまったく違うことを感じ興味を持ちましたね。
大山:具体的にどんなところが違うと感じましたか?
安藤:一般的に、組織運営は国語能力が重要だと言われてきました。人の心を読み取ったり、人のモチベーションを奮い立たせるといったアプローチですね。しかし、識学では組織運営を物理や数学のように捉え、明確な答えがあるものだと定めています。個々の状況や思いではなく組織の仕組みに注目し、課題や問題の原因を論理的に捉えていくものです。
大山:当時は、識学が今後の世の中で求められるだろうと予感していたんですか?
安藤:半信半疑でした。今後必要になるだろうとは思っていましたが、事業として成り立つイメージは湧いていなかったですね。その後、独立してある企業の顧問として参画することになり、そこで識学を試したことが事業化へのきっかけでした。
大山:半信半疑の状態から事業としてやっていけると判断された、一番のポイントを教えてください。
安藤:参画してまもなく営業部を任され、識学のロジック通りに組織マネジメントをおこないました。すると、3ヶ月後に事業部の業績が急激にあがったのです。社員は決してサボっていたわけではありませんが、今までの組織マネジメントよりも優れた手法であることがわかりました。
ブレイクスルーのきっかけは“標準化”
大山:可能性が確信に変わったんですね。そこから、本格的に事業をスタートしていくのですか?
安藤:はい。営業部の改善をきっかけに、顧問を務めていた企業で識学を全体展開することになりました。理論を多くの人に伝える必要があったので、マニュアルを作成。マニュアル化したことをきっかけに、他の企業へもサービスを販売することになりました。すると、数社の企業様が導入してくれ、いい反応が得られたんです。そこで、2015年の3月に会社を設立し、本格的に事業をスタートしました。
大山:マニュアル化はとても大切ですよね。私自身、マニュアルを含めた“仕組み化”はビジネスモデルの一部になるほど重要だと思っています。LIGでは、社内の仕組み化を推進すべく「仕組み化表彰制度」というものを新たにはじめました。小さなことでも、業務に関わることを仕組み化した社員を称えようというものです。日頃から社員一人ひとりが仕組み化する意識を持つことで、事業や会社の成長につなげていきたいと思っています。
安藤:過去にも、識学を広めようとさまざまな手法がとられてきましたが、再現性のないものだったんです。コンサルの業務は属人化しがちですが、マニュアルがあることで社員が共通の言葉でサービスを伝えられるようになりました。
すでに存在していた理論を体系化し、早い段階でマニュアル化したことは、事業拡大のポイントでしたね。
大山: 「型」 を作ることで再現性が生まれ、事業拡大へとつながっていったのですね。マニュアルによって社員全員の認識を統一できると思いますが、さらにサービスを伝えるうえで工夫したことはありますか?
安藤:お客様のQ&Aへの理解を深めることを徹底しました。
たくさんのお客様にサービスを案内していると、いただく質問がパターン化されていきます。そこで、社員にお客様から出てくるQ&Aを記憶させることを徹底しました。約600のQ&Aをつくり、社員全員が同じQとAを言えるようになることで、サービスへの理解度が深まり、お客様にも魅力が伝わるようになりました。
大山:私自身も、営業マンの理解度によってサービスの魅力が伝わらず、契約につながらないというケースを日常的に見てきたので、とても参考になります。
安藤:我々もそういったケースはゼロではないです。しかし、限りなく属人的な部分をゼロに近づけることがビジネス拡大のうえでは重要だと思います。
サービスが世の中で受け入れられるために
大山:サービスが広がっていくなかで、懐疑的な意見を持つ人も出てくると思います。世の中に受け入れられるために工夫したことはありますか?
安藤:まずは、PRを通じて地道に発信をしていきました。
当時、新しい広告手法だったタクシー広告にも早い段階からトライし、認知拡大のきっかけになりました。
また創業2年目には、出版社に識学の理論を熱心にプレゼンをしたことで、読者へのニーズを感じていただき、1冊目の書籍出版を実現。これまで6冊の書籍を出版し改善を繰り返してきたことで、最近出版した『数値化の鬼(ダイヤモンド社)』と『リーダーの仮面(ダイヤモンド社)』の2冊は累計発行部数が60万部以上と多くの方に読んでいたけるようになりました。やり続けることはとても大切です。
大山:自分たちが主体となって発信するばかりでなく、どう出版社やメディアを巻き込んで伝えていくか。外の視点で発信することも大切ですよね。
安藤:はい。しかし、それだけでは世の中の意識は変わりません。1社1社のお客様とのお取引でしっかり成果を出し、その成果を積み重ねていくことで、世の中の意識が変わっていったと思います。結果、創業時からお客様の紹介でサービスを契約いただくケースが多く、現在も約半数が紹介によるお客様です。
事業展開を通じて有用性を示す
大山:現在は、組織マネジメントのコンサルサービス以外にもさまざまな事業を展開されていますよね。どういった戦略で事業を展開していったのでしょうか?
安藤:我々の会社は、上場時の段階では売上のほぼ9割がコンサルサービスによるものでした。マニュアルがあるとはいえ、それぞれのお客様に寄り添い伴走していかなくてはなりません。よりビジネスを拡大をしていくにはストックビジネスの必要性を感じ、クラウド事業※をはじめました。
識学クラウド…組織の状態を分析し、改善・成長し続けるためのクラウドサービス。組織を成長させるための5要素「分析」「学習」「管理」「評価」「採用」の機能が含まれる。
その後、識学導入の機会を増やすためM&Aコンサルサービスをはじめました。M&Aの仲介では、新しい組織が生まれる現場に立ち会うことができ、自然と識学が広がっていきます。
大山:最近ではプロバスケットボールチームの経営もされているようで、こちらはどういった目的だったのでしょうか?
安藤:識学の有用性の証明です。
識学を通じて組織の成長を明確に示せる事業を考えていたなかで、プロバスケットボールチーム『福島ファイヤーボンズ』の経営に参画しました。
私は過去にラグビーチームで識学を試したことがあり、実際にチームが強くなり、成果も出たので「スポーツx識学」への可能性を感じていました。そこで、自分たちでスポーツチームの経営をしてみようと思い、注目したのがバスケットのBリーグです。バスケットは、サッカーなどに比べるとチームの登録選手が少ないので人件費を抑えることができ、室内スポーツであることから試合中止の可能性も少ない。加えて、B-Leagueは試合数も多いので、黒字化できる可能性を感じたんです。成果が出れば、識学のPRにもつながりますし。
大山:既存の事業が活きる分野を見出し、明確なシナジーを生み出しているんですね。組織マネジメントを点で捉えず、面で捉えているところはとても参考になります。事業展開のタイミングについては、どのような考えでおこなってきたのでしょうか?
安藤:既存のサービスで一定のマーケットシェアを獲得し、ある程度認知された状態で展開することを意識していました。マーケットに深く刺さった後の横展開は簡単です。たとえば、人材紹介であれば、識学+人材紹介独自性が生まれ、それだけで差別化になりますから。
識学を広めて社会を変える
ーーここまで事業の立ち上げ〜展開に関するお話を伺ってきました。あらためて、新しく事業をはじめるときに、安藤社長が最も大切だと思うことはなんですか?
安藤:「どのように社会を変えたいか」という思いですね。
私が事業をはじめた当初、世の中ではモチベーションを軸にした組織マネジメントが重要とされていました。しかし、そのアプローチで必ずしも組織は良くなるとは限らず、多くの企業が識学を導入しはじめ、世の中の認識が変わっていきました。社会で受け入れられている思想を塗り替えていくぞという思いをずっと持っています。
また、事業を推進・展開していくうえでは、理念はとても大切にしています。我々の会社の理念は「識学を広める事で人々の持つ可能性を最大化する」であり、「識学を広める」ためにどう貢献できるかを常に考えてきました。理念を軸に事業を展開していくことで、どんなときもブレずに意思決定をしてきました。
大山:LIGは一昨年に代表の交代があり、現在第2創業期を迎えています。まさに今、理念のリニューアルを行っており、改めて事業展開における軸を考えるきっかけになりました。今後はどのような展望を描いていますか?
安藤:直近では、エンタープライズ系の企業様への導入に力を入れています。大きな組織で成果を出して、日本の組織の在り方を変えていく。そして、識学導入企業で働く人を増やしていく。
識学に関わる人の数を最大化していくことで、理念の実現に近づいていきたいと思っています。
大山:今回の対談を通じて、安藤さんの社会を変えたいという思い、理念の実現に向かう姿を強く感じました。きっと、新事業をはじめる人たちの参考になると思います。本日はありがとうございました!