こんにちは、ライターのツマミです。
さて、前回の記事で新島の名所を紹介してきましたが、後編となる本記事では東京宝島事業の一環で新島が取り組む“ベロタクシー”プロジェクトについてご紹介したいと思います。
この取り組みは、東京宝島のプロジェクトによって始動し、住民ドライバーがベロタクシーと呼ばれる乗りものを使って島を案内することで、来島者が島民と触れ合いながら島の宝物である「ヒト・モノ・コト・バ」に出会えるという画期的な取り組みです。
今回は乗車体験するとともに、導入までの過程やそこに込められた想いを聞きました。
※事前にPCR検査で陰性結果取得のもと、感染拡大防止に努めて撮影・取材しています。
目次
ベロタクシーってなに?
ベロタクシーとは、自転車版の人力車のような乗り物。前方がペダルを漕ぐ運転席で、後方に1人乗せられます。電動付きアシスト自転車と同じようにペダルを漕いで走らせる仕組み。
島内を周遊するベロタクシーの新島体験プランは、1回5,000円ドリンクつきで、十三社神社、羽伏浦海岸、新島港の桟橋の主に3つコースがあります。体験プラットフォーム「aini」から申し込みが可能です。
案内してくれる島の方
前編でもご紹介しましたが、改めて新島を案内していただくお二人をご紹介。
- てるさん(左)
新島の地域コーディネーター。出身は荒川区で、21歳のときに手にした求人情報誌の「東京脱出」のコーナーをきっかけに、父島ではじめての離島暮らしを経験。新島生まれの奥様との結婚を機に21年前に移住。本名は「西胤輝之進(ニシツグ テルノシン)」、かっこよすぎる。あつとさん(右)
新島出身。小5から素潜りを得意とし、シュノーケル、EFR一次救命処置、水難救助員などの資格を保有。現在は西表島でエコツアーガイドをしている。23歳とは思えない知識量と落ち着きの持ち主。
ベロタクシー乗車体験
ベロタクシーの時速は10kmほど。のんびりとしたスピードと穏やかな島の空気がシンクロします。さえぎるものがないので、島の風や空気を肌で感じられるのも気持ちいい~。
一般的に島は坂道が多いのですが、新島は比較的平らな地形なのでベロタクシーが可動できるんだとか。
島の人の話をいろいろと聞けるいい機会でもあり、新島の日常や歴史を感じることができますよ。
コーガ石の通りを抜け、空港横の道をまっすぐ突き進むと、ゆっくりと羽伏浦ブルーが見えてきました。
羽伏浦海岸へ到着です。車で行けばあっという間の道も、ベロタクシーならじっくり味わうことができますね。
羽伏浦海岸の青い海にベロタクシーの黄色い車体がとても映えて、写真をたくさん撮っちゃいました。ベロタクシー体験記念の写真撮影スポットとしてぴったりですね!
特別にベロタクシーの運転も体験させてもらいました。スワンボートのように脚を伸ばしてペダルを漕ぐとゆっくり車体が動きます。踏み込むと少しアシスト機能が働くような仕組み。面白い! アクティビティ的な魅力があったので、参加者が運転体験できるようにゴリ押ししておきました。
夕暮れどきなら、新島港の桟橋コースがおすすめ。ベロタクシーなら夕日の黄金の輝きにゆっくり浸れるでしょう。
新島の課題解決と未来
ベロタクシー体験を終え、宿に戻ってきた一行はお二人に「ベロタクシー」を活用したプロジェクトについてインタビューさせていただきました。
でもダメなものを目くじら立てて批判してもしょうがないじゃないですか。そこで解決方法として、ライドシェアでのモビリティサービスを検討してたんです。島の人がクルーとして自家用車で送迎できたら、二次交通の課題が解消されるのではないかと。
ベロタクシーがぴったりな理由
ですが、いきなりライドシェアを訴えても島の人にはあまりピンと来ないと思うので、理解を得られるためには段階が必要になる。だからベロタクシーは収益化が目的ではなく、きっかけづくりに有効だと考えています。
宝島プロジェクトでは、毎週火曜日にウラシマ会議と名付けてフランクに話し合っていて、そこでベロタクシーの新しい活用方法なども検討しています。最近は、PR映像をつくってベロタクシーの認知を広めようと取り組んでいて、これからいろんな可能性があると期待しています。
ベロタクシーで出迎えてサプライズに使ったり、足腰の弱いおばあちゃんを送迎したり……。村長も「通勤で使おうかな」なんて言ってくれました。リップサービスですが(笑)
同じ島でもこんなに違う
でも、土地が大きいので集落が点在して、どこにどんな人が住んでいるのか全然わからないんです。新島は、顔がわかる関係で距離が近くて優しい。土地の大きさで、こんなにも人間関係が変わってくるんだって衝撃を受けました。
新島の未来を担う若者
温暖化の影響で捕れる魚の種類が変わってきているんですが、漁業ではなじみの魚しか扱わないので、せっかくおいしい魚もあるのにもったいないなと思っていて。ガラスアートをやっている友人も賛同してくれているので、一緒に副業でやることを考えています。
ほかにもメディア展開とか、やれてないことっていっぱいあるので、新島の魅力はもっと開拓できると思っています。
お土産にはやっぱり……
いよいよ、お別れのときです。お二人は新島空港まで見送ってくださいました。最後まで温かいおもてなしがありがたいです。
最後までくさや押し! くさや未経験でしたが、すっかり思い出の品になりました。
“ちょうどいい島”の意味
新島は、アットホームな雰囲気や豊かな自然がまとまっていて、コンパクトシティならぬ“コンパクトビレッジ”でした。インタビューで聞いた「ちょうどいい島」というフレーズがじわじわと腑に落ちるようになりました。
そして、今回つきっきりで案内してくれたお二人。取材先だけでなく、食事や移動時間も共に過ごすことで、観光面だけでなく、新島の穏やかな暮らしや和やかな雰囲気も感じさせてくれました。そこにビジネスライクな印象は一切なく、とても真心を感じるものでした。これはきっとお二人に限ったことではなく、環境が人をつくることを考えると、新島の風土を表しているように感じます。
ベロタクシーに乗れば、そんな観光名所や住民の人柄がまるっとわかっていただけるはず。新島に行ったときは、ベロタクシーから島の魅力を体感してみてくださいね。