【東京宝島体験レポート】新島編(前編)世界最“香”峰!?美しい自然と個性豊かな魅力に溢れた島

【東京宝島体験レポート】新島編(前編)世界最“香”峰!?美しい自然と個性豊かな魅力に溢れた島

ツマミ具依

ツマミ具依

ーー島国、日本。

突然ですが、問題。日本はいくつの島から成り立っているでしょうか?

6,852島です。

想像以上に多くはありませんか?(ちなみに人が住んでいる島は約400島です)

この膨大な数のなかで、あなたがこのページにアクセスして新島に巡り合えた奇跡。新島とはどんな島なのか、ライターのツマミ具依がレポートします。

※事前にPCR検査で陰性結果取得のもと、感染拡大防止に努めて撮影・取材しています。

東京宝島として繋がる11の島々

と、その前にご説明させていただきたいことが1つ。この記事のタイトルにもある、「東京宝島」とはなんなのかということ。

「東京宝島」とは、東京にある11の島々(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、父島、母島)の総称。東京都によるプロジェクト「東京宝島事業」で、地域の人と連携して島々の自然や特産品、歴史文化といった“宝物”の魅力拡大に取り組んでいます。
東京宝島のバナー
東京宝島HPはこちら
 
つまり、「それぞれ異なる魅力を持つ11島が“東京宝島”の名の下、繋がって盛り上げていこうぜ!」ってことなんです。例えるならば、お笑い界でいう若手芸人が言い出した「第七世代」的なやつです(たぶんちがう)。

今回はその「東京宝島」の一つである新島の紹介です。本記事では前編として新島ならではの見どころやどんな島なのかをご紹介し、後編では東京宝島事業として新島が取り組んでいるプロジェクトの様子をお届けします!

東京から約35分で行ける島、新島


さてさて、その11島のうちの新島なんですが、

  • 東京からの距離……約150km(だいたい静岡市と同じ)
  • 島の大きさ……約23km²(だいたい品川区と同じ)
  • 人口……2052人(だいたい檜原村と同じ)

ちなみにすぐお隣の島、式根島も含めた「新島村」の人口は2,547人(※)

です。

アクセスは、東京の竹芝から高速船で約2時間30分か、調布から飛行機で約35分、海と空のどちらからでもアクセス可能。大型船でのんびり行く方法も。気温は、年平均気温17.7度。8月が平均27.4度、2月が平均9度(※)で、“常春の島”と言われているとか。ちなみに新島の隣には式根島があって船に乗ればおよそ10分で行ける距離なんですよ。

出典
※:東京都新島村ホームページより

東京→新島へ。特殊な飛行機ルール


ということでやってきたのは、調布飛行場。一日3~4便、新島への飛行機がここから出ています。島といえば船で行くとばかり思っていたので移動からワクワクです!

いつもの飛行機と違うことといえば、小型機のため荷物料金が小刻みに上がるところ。5kgまで無料で超過1kgごとに260円プラスされる方式です。あとチェックイン時に体重を記入する欄があるのでちょっとビビりました。一瞬サバを読みそうになったのを正直に申告します。
 

飛行機、小っさー! プライベートジェットサイズでちょっとセレブっぽいな!?

座席数は19席。扉の前に乗客が集まると「〇〇さま 1列目の××です」と口頭で呼ばれて一人ずつ搭乗します。これも新鮮。
 

離陸すると、ワクワクはガクガクに一変。やばい。ぐわんぐわんする。機体が小さい分、風の力をもろに受けてる。お願いだから早くついてくれ……と窓の外を眺めて酔わないように必死です。
 

ジェットコースターに乗ったときの内臓が浮くあの感覚に耐えること35分。新島空港に着きました! いや、笑っちゃうくらい風強いな。

参考までに、約10,000円(時期によって変動)の高速ジェット船は所要時間約2時間30分。飛行機の料金は片道14,400円ですが、約35分で着くのでかなり時短できますね。ちなみに帰りの飛行機は安定していたので、いつもぐわんぐわんしてるわけではないようです。

案内してくれる島の方

今回、新島を案内していただくのがこちらのお二人~!

てるさん(左)
新島の地域コーディネーター。出身は荒川区で、21歳のときに手にした求人情報誌の「東京脱出」のコーナーをきっかけに、父島ではじめての離島暮らしを経験。新島生まれの奥様との結婚を機に21年前に移住。本名は「西胤輝之進(ニシツグ テルノシン)」、かっこよすぎる。

あつとさん(右)
新島出身。小5から素潜りを得意とし、シュノーケル、EFR一次救命処置、水難救助員などの資格を保有。現在は西表島でエコツアーガイドをしている。23歳とは思えない知識量と落ち着きの持ち主。

よろしくお願いしまーす! 

新島ならではの魅力たっぷり。名所はココだ!

新島を語る上で外せないスポットやグルメをご紹介します!

見惚れすぎに注意!羽伏浦海岸


絵にかいたようなビッグウェーブがザバーン! 約6.5km続くロングビーチの羽伏浦海岸は、新東京百景にも選ばれた新島の景勝地。美しいエメラルドブルーの海に目も心も奪われます。

icoサーフィンの大会が行われるほど、サーファーにはたまらない波になっています。
icoこの波に乗りたい! って、サーフィンやったことないですけど、そう思わせる魔力がありますね(ギリギリまで近づきたい……)。

icoぎゃー! 波に飲まれる~!! すごい迫力!
ico(言わんこっちゃない)


羽伏浦海岸の正面には3階建てのメインゲートがありました。シンメトリーで美しい白亜の建物が、バックの海にとても映えて最近だとInstagramの撮影スポットになっていたり、ブライダルの撮影にも使われているそうです。
 

ちなみに飛行機から見た羽伏浦海岸は「え、ここ日本だよね?(キレイすぎ)」ってなりました。

島のあちこちにあるモヤイ像


前浜海岸通りを新島港方面へ進むと、たくさんのモヤイ像が並ぶゾーンが現れます。異国の空気が漂う光景はちょっとユニーク。1970年代に元新島観光協会会長の故・大後友市さんが島おこしをしようと発案したそうで、新島には150体ほどのモヤイ像があります。

注意したいのがモ“ア”イ像ではなく、モ“ヤ”イ像。モヤイというのは、日本語の動詞である「催合う・最合う(モヤウ)」から来ていて、「助け合う、人とつながる」という意味が込められているんだとか。
 

こちらが一番有名な“看板モヤイ”。どこかで見覚えがあるような……?

ico渋谷駅前のモヤイ像ってあるじゃないですか。実はあれも新島のモヤイ像なんですよ。
icoえ! 西口の喫煙所横にあるやつですよね!?
icoそうです。新島が静岡県から東京都へ移管されて100年を記念したとき、新島が渋谷区へ寄贈したものなんですよ。岩をまるごと渋谷へ持っていって、そこで彫ったらしいです。
ico渋谷とつながっていたとは、ぐっと距離が縮まりました。ちなみに、渋谷みたいにモヤイ像前で待ち合わせってしますか?

icoうーん、どちらかというと、後ろのピラミッドのほうに集まりますね。モヤイ前って言われてもたくさんありすぎて「どれ?」ってなるんで。
ico特殊な状況すぎる。

モヤイ像は、新島で採れるコーガ石(抗火石)という石材からできていて、こうした石像や外壁など新島ではいろんなところに利用されています(このあともたくさん登場します)。
 

こちらはコーガ石の採石跡地。立ち入り禁止の看板までコーガ石でできている!
 

コーガ石の採石跡地周辺はサバゲー会場にも利用されたこともあるらしく、まさに雰囲気ぴったりですね。

近隣諸島を見渡せる石山展望台

 

先ほどの採石場を抜けた先には青い海が広がる展望台。
 

眼前には式根島や神津島など近隣の島々が望めます。
 

石山展望台は昔コーガ石の採石場の一部だったらしく、そこらに大小さまざまなコーガ石が積み重なっていました。

こんなパワフルな写真も撮れるぞ~! ちなみに展望台までのトレッキングコースもありますよ。 

新島らしさがいっぱい。コーガ石で作られたHostel NABLA


ここでコーガ石を使って作られたお宿をご紹介。今回の滞在でお世話になった「Hostel NABLA」さん! こちらはコーガ石の建物を改装したゲストハウスで、新島の魅力をぎゅっと詰め込んだようなところ。

宿泊者や島の人と交流できるカフェスペースのほか、バーベキュースペース、バルコニーなど楽しみ方はいろいろ。あつとさんのお母さまが経営していて「次の世代が生活できるように仕事をつくろう」という思いから生まれたそうです。
 

全室ドミトリーで、新島の海をイメージさせるブルーと白を基調としたおしゃれなデザイン。座っても天井に頭がつかないベッドサイズにするなど、コンパクトながらも随所にホスピタリティを感じ、宿で過ごす島時間も快適に過ごせますよ。

パワースポット 十三社神社


さて、名所のご紹介に戻りましてお次は「十三社神社」。13の神様が祀られている十三社神社は6世紀末に建てられた古社。伊豆諸島最大規模の境内となっており、パワースポットとしても知られています。社殿横にはソテツが茂り、ちょっと南国風なのが興味深い。
 

境内にはさまざまな末社があり、コーガ石でできたものもありました。神聖なオーラに心が洗われます。

歴史を感じる 流人墓地・長栄寺


その昔、島流しの流刑地だった新島には、流人墓地があります。墓石はやっぱりコーガ石でできていて、白い砂は羽伏浦海岸の砂浜のもの。江戸時代から約200年の間に、1,333人以上が流されたといわれています。

ico墓地と聞くと写真を撮るのに気が引けるかもしれないですが、観光地なんで大丈夫です。
icoあ、私、普通に撮ってた。


この変わった見た目のお墓は、なんだと思いますか? 正解は、酒樽と徳利。生前好きだったものを流人仲間が形にしたもので、酒好きだったみたいです。ほかには茶碗とサイコロで賭博好きの墓がありました。センスあるな~。

icoそうそう。小学生のときに墓守り当番っていうのがあったんですよ。
icoえ、なんですかそれ!
ico新島小学校で代々六年生がやっている当番で、上木甚兵衛っていう、読み書きそろばんを教えたりして島に貢献した流人のお墓を掃除したり線香上げたりしてました。
icoさすがに酒や賭博好きのお墓じゃないか。

新島の個性豊かなグルメを紹介

すごいぞ、くさやの里

「新島のソウルフード」と聞いて、期待が高まるなかやってきました。
 

icoくさやの里……? 強烈なにおいの、あの「くさや」ですか?
icoはい。新島の一番有名なグルメといえば、くさやです。実は新島が発祥地なんです。
icoええー! 知りませんでした。
ico以前は、バラエティ番組の罰ゲームで「臭い」をネタに取り扱われるケースも多かったのですが、島の人たちにとっては江戸時代から続く伝統食品。なので最近は『世界最“香”峰』として売り出し中なのですが、あまり浸透してませんでしたね(笑)
ico『世界最“香”峰』……! なかなか忘れがたいネーミングですけどね!
ico以前くさやは各家庭で作っていたのですが、町全体がくさやくさくなってしまったので、民家がないところへ一か所にまとめたんです。それがくさやの里です。島の人は大好きで、僕も新島を離れてからも定期的に送ってもらってます。
ico口の中が“牧場”になりますけど、味は“極上”なんでご安心を(笑)

新島の食文化にカルチャーショック! くさや未体験の私ですが、本場の地でデビューさせていただきます!
 

くさやの加工場へ、おそるおそるお邪魔。今回特別に見学させていただきました。各社のくさや、こちらでまとめて加工しているそうです。

むわ~~~ん

ico(聞いてたとおり、ぼくじょーのニオイだ……。感染対策のマスク、グッジョブ)

icoニオイ? もう慣れたわよ。けれどシャンプーしても髪の毛のニオイが落ちなくって困っちゃうわ。
ico大変な労働環境だ……。


素材はアオムロアジという魚で、一般的なアジより細長くて脂身が少ないのが特徴です。くさやは、くさや液が脂で弾かないように脂身が少ない魚が向いてるんだそう。

意を決して、くさやに挑戦! ありがたくいただきます!
 

icoあれ……? (思ってたより)おいしい! 匂いにビビっていたけど、味は香ばしくて匂いほどキツくはないんですね。噛んでも噛んでも味がずっと濃い~!
icoどう? もっと食べますか?
icoえ、
icoどんどんいいのよ
ico……。
icoココならタダだから、ほら
ico……ありがとうございますっ!!!!

アレンジ豊富 明日葉


新島にはほかにも名産がありますよ! 摘んでも明日には葉を伸ばすことで名づけられた明日葉は、暖かい気候の新島で通年採れる食材。

こちらの明日葉と島のりパスタは、「新島親水公園 れすとハウス」さんでいただきました。爽やかでさっぱりした味わいで美味しかった~。ほかにも明日葉のてんぷら、明日葉のスムージーなどいろんな料理にして愛されています。

焼酎もオススメ あめりか芋


砂地で稲作ができない新島で、古くから重宝されていたというあめりか芋。名前の通りアメリカをルーツとした白いさつまいもです。農協で販売していたこちらのあめりか芋のアイスは、甘さ控えめのスイートポテトのような大人の味でした。

ちなみに、都立新島高校の三年生は毎年あめりか芋を栽培していて、その育てた芋が後に自分たちの成人式で芋焼酎になって贈呈されるんだって。粋なお祝い(2022年から成人が18歳になるから贈呈のタイミングが変わるかもしれないですね)!

新島旅のしめくくりには

新島ガラスで思い出をかたちに



新島はアートの島でもあります。コーガ石は、高熱で溶かすと透明感のあるオリーブ色のガラスに変化します。これが「新島ガラス」です。新島ガラスアートセンターでは、国際ガラスアートフェスティバルが開催され、海外の有名な作家も訪れるそうです。

吹きガラス体験ができたみたいですが、現在はコロナで中止に。今回は、グラスのドローイングに挑戦してみました。
 

icoまず、紙にイラストを描いていきましょう。その下絵をもとに、ガラスにトレースします。
icoうーん、どんな絵を描こうかな……。よし、決めた!


下絵を油性ペンで写し、その上を電動の彫刻ペンでなぞると、ガラスの表面に白い線状の傷がついてイラストが徐々に刻まれていきます。難しくないので誰でもできそう。それにしても優しいグリーンが美しい。

かれこれ30分経過……。
 

icoできました!! くさやグラスです! 新島の思い出を刻みました。
icoこんなリアルなくさやを描く人は初めてです。

海原を一望できる 湯の浜露天温泉


1日のしめくくりには温泉! ということでやってきたのは、これまた海外のような見た目の湯の浜露天温泉。料金はなんと無料! それでいて更衣室やコインロッカー、シャワーの施設もあるなんて有能すぎます。

icoほぼパルテノン神殿じゃないですか! なぜこんなデザインに?
ico当時、地中海風の雰囲気がブームだったみたいです。それと、特産のコーガ石は新島とイタリアのリパリ島でしか採れないと言われていて、そこからヨーロッパのイメージがきたという背景もあります。

残念ながら、パルテノン神殿風の風呂にはこの日お湯が入っていなかったので入れず……。着替える前にチェックしたほうがいいかもです。
 

パルテノン神殿風の温泉以外にも、大小6つの湯があったのでその一つに入ってみました。

あぁ~大海原に囲まれて自然と一体化していく~。このままずっと入っていられるなぁ。温泉は、湯冷めしにくいナトリウム塩化物泉でぽっかぽか。身体の芯まであったまります。

icoここの眺めが好きなんです。付近に浮かんでいる無人島が見えて、島にいるなって感じます。


入浴は水着着用になっているので忘れずに。もし水着がなくても足湯がありますよ。

夕日×海×温泉のコラボレーションにはもう誰も敵いません。

結論、どんな人でも楽しめる

新島観光、ポテンシャル高すぎいいい! 絶景の海、新島ガラス、ヨーロピアンな天然温泉とキラキラなコンテンツに対して、くさや、流人墓地、モヤイというディープコンテンツも多数あり。こんなに振り幅の大きい観光地もなかなか珍しいです。

バラエティ豊かで、いろんな趣味嗜好の人を受け入れてくれる土壌がありました。どっちも楽しみたいタイプの私は大満足です!

後編は、宝島プロジェクトの「ベロタクシー」から、新島の課題と未来に迫ります。

新島についてもっと知りたい方はこちら

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