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【東京宝島体験レポート】父島編(後編)「楽しい自然保護」を世界に発信!“父島みらい会議”とは

ころも

こんにちは、LIGメディアディレクターのころもです!

前回の記事では、父島に約15年住んでいたシェフが営む東京・江戸川橋のレストランを訪問し、父島産食材の魅力や島にゆかりのある人たちのつながりについてご紹介しました。

さてこの後編では、東京宝島事業における父島のプロジェクトの一つである「父島みらい会議」を取り上げます!

東京宝島とは
東京にある11の島(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島、父島、母島)の総称。これらの島々には、素晴らしい自然景観や海洋資源、特産品、歴史・文化という“宝物”があり、その魅力を広く発信するため、それぞれのブランドコンセプトに基づいて取り組みを進めている。父島のブランドコンセプトは「ありのままにいのちが輝く、別世界を生きる島」。

ここ数年、SDGsの影響もあって世界で環境問題に対する取り組みがフォーカスされていますよね。父島ではかなり昔から環境問題に対して独自の対策を取っているそうです。それを世界中に知ってもらおうと、なんとプロモーションビデオを作成しているのだとか!

とっても素敵ですよね! それが「父島みらい会議」の主な取り組みのようです。

そこで父島みらい会議のリーダーに、父島みらい会議の概要や島が直面する環境問題、プロモーションビデオの内容などについてうかがいました!

その前に……「おがさわらトラベラーズログ」のご紹介

東京宝島事業の取り組みとして、父島では「父島みらい会議」のほかに「おがさわらトラベラーズログ」のプロジェクトも進めています。そちらについても簡単にご紹介します!

▼「おがさわらトラベラーズログ(おがログ)」とは?
東京の都心部から南に約1000㎞離れているが、空港がないため来島するためには約週1便の定期船「おがさわら丸」で約24時間かかる船旅が必須である父島。「おがさわらトラベラーズログ(おがログ)」とは、東京都でありながら海外のように遠い父島への“パスポート”をコンセプトに、来島者向けに制作されたトラベラーズノート。

島内で訪れた宿や店、体験したアクティビティを記録していくことで、オリジナルの旅の記録帳が完成する。一部の店では、おがログを提示することで割引を受けられる特典も。2021年1月に制作費を募るクラウドファンディングを実施し、目標額を超える212万円を集めて運用に至る。その後はコロナ禍の状況を鑑み、現在はプロモーション等の取り組みを休止中だが、定期船おがさわら丸のコロナ対策として実施している席数制限が解除された後に、運用の継続を予定。

本題の……「父島みらい会議」のご紹介

▼人物紹介:深澤Bovie 丞さん
父島みらい会議リーダー。小笠原自然観察指導員連絡会会長。小笠原のベテランガイドで、宿泊施設「シャンティバンガロー」の経営のほか、シーカヤックツアーや自然観察ツアーを行う「シャンティボビーズ」を主催。隙あらばサーフィンに繰り出している。

▼「父島みらい会議」とは?
父島が抱える課題の解決や理想の島作りに向けて、それを実現するための具体的な活動を考える有志のグループ。おがログ同様、東京宝島事業で父島が進める活動の一つ。

「父島のみんなは何を考えているんだろう?」コロナ禍で始めた島のみらいを考える活動

ころも:はじめまして、よろしくお願いします! 深澤さんはベテランガイドということですが、父島で生まれ育ったんですか?

深澤さん:いえ、僕は移住者ですね。東京の下町で生まれ育ち、30年ほど前にドルフィンスイムを目的に父島に来て、そのまま居着いてしまいました。

ころも:ん? そのままって、旅行で来て帰らなかったってことですか?

深澤さん:そういうことです(笑)。海が今まで見たことのないくらいキレイで、島で出会った人たちもみんな素敵ないい人で、人生で初めて「ここに住みたい!」って思ったんです。ちょうど専門学校卒業後に勤めた会社が合わず辞めたところだったので、身軽でした。

ころも:思い切りがいい(笑)。でも離島って仕事と住居が限られているので、その確保が大変だと聞きます。

深澤さん:それがたまたま映画の撮影でミュージシャンのジュリアン・マーレー&ウェイラーズが来島していたんです。僕、昔から大ファンで! それで運よく彼らの移動車の運転手を務めることになったんです。
 

ころも:それはめちゃくちゃラッキーですね!

深澤さん:ほんと、夢のような仕事でしたね。その後は初めてドルフィンスイムを事業として始めたサーフショップで働くことになり、そこの寮に入れたので仕事も住居も確保できました。そこでシーカヤックに出会い、仕事を覚えて独立しました。

ころも:もっといろいろ聞きたいんですが……本題の「父島みらい会議」について教えてください。会議はいつごろ立ち上がったんですか?

深澤さん:実は、もともとは違う集まりだったんです。当初僕たちは宝島事業の活動として「環境保全プログラム」の開発を進めていました。これは私が携わるNGOで、以前から企業向けに行っていた島の生態系をベースに体験し学ぶツアーの拡大版です。

ところが活動を始めて1年ほど経ったころ、新型コロナウイルスが流行。島外から人を集める企画は実現が厳しくなりました。それで「父島みらい会議」に内容を変え、再始動したんです。
 
写真提供:東京宝島HPより

ころも:ピンチから始まった企画だったんですね。父島みらい会議はどんな活動をしているんですか?

深澤さん:島民が考える父島の魅力と課題、そして思い描く未来について実際の数値データや他の地域の事例などを参考にしながら話し合っています。常任メンバーは7〜10人で、観光や宿泊、商品販売など業種はバラバラです。2020年9月に第1回会議を行い、その後は1〜2ヵ月に1回集まっています。

ころも:今まで島の未来について話し合う集まりってなかったんですか?

深澤さん:もちろん仲の良い友人たちと話す事はありますが、色々な業種の人たちと、今の生活の中での改善点や島の未来について、きちんと向き合って議論する機会はほぼなかったですね。だからずっとそのきっかけがほしいと思っていたんです。

ころも:それで環境保全プログラムの代替としてスタートしたんですね。実際に話し合ってみて、どんな意見が出ましたか?
 

深澤さん:それが意外にもみんな考えている方向性は同じだったんです! 例えば一つの課題として出たのが、島で生産された食材が内地には輸送されるのに島内ではあまり流通していないこと。島外からの食糧輸送は週1便の定期船に頼っているため、何かトラブルが起きて船が来れなくなると途端に困ります。

また、来島者にも島の食材を存分に楽しんでもらいたいという気持ちも大きいです。そのためには、どうしたら島内の自給率と流通手段を高められるかなどの課題が浮かび上がってきました。

ころも:前回の取材で父島の野菜や魚をいただきましたが、すごくおいしかったです。でも島ではあまり買えないとは、知りませんでした。

深澤さん:あとは文化の伝承の問題ですね。父島に最初に住み着いたのはハワイからやってきた欧米系住民とハワイアンの人たちで、島には先住民的伝統文化がありません。これから自分たちでそれを創って継承していかなければという想いも、みんな共通していました。

ころも:いざ口にしてみたら、みんな考えていたことは同じだったと。

深澤さん:あ、でも共有したのはネガティブな側面だけじゃないんですよ。父島の魅力も洗い出しました。例えば「来る者拒まず、去る者追わず」というあり方です。よく地方は閉鎖的とか、よそ者に冷たいとかいいますよね。でも父島にはそれがまったくないんです。私が30年前に移住したときも、みんなすぐに受け入れてくれました。「ボビー」というアイランドネームまでもらいました。

ころも:アイランドネーム、かっこいいですね! 先日お話をうかがった「ボニンアイランドシェフ」のオーナーも「父島は誰でもウェルカムだ」とおっしゃってました。父島の大きな魅力ですね。

父島オリジナルの環境対策「シュッシュコロコロ」って?PVで世界に発信!

ころも:今、プロモーションビデオを制作されているとお聞きしました。これはどういった経緯があるんですか?

深澤さん:話し合いを続けていくなかで、宝島事業として何か形になるものを作ろうという話になりました。そこで父島みらい会議の中で、小笠原の人々が取り組んでいる自然保護・保全の取り組みを島外や海外に発信し、知ってもらう手段としてプロモーションビデオを制作することにしたんです。

ころも:映像って発信力が大きいので、すごくマッチしている気がします。ビデオのテーマは何にしたんですか?

深澤さん:目指したのはハワイ州観光局が作っているプロモーションビデオです。ハワイの環境問題への取り組みにフォーカスしたものなんですが、それがとってもいいんですよ。父島の島民も環境問題に対しては独自の取り組みをしてきたので、それを世界に向けて発信することにしました。

ころも:環境問題は世界的にも大注目のテーマですよね。独自の取り組みということですが、具体的にはどんなことをしているんですか?

深澤さん:今回プロモーションビデオでは、二つの取り組みを取り上げます。一つ目が「シュッシュコロコロ」です。
 

ころも:「シュッシュコロコロ」?? なんかかわいい名前ですね(笑)。

深澤さん:親しみやすい名前ですよね。父島では自然環境保護・保全の観点から、外来種が大きな問題になっていました。外来種の虫や動物、植物が森に入り、固有種を捕食してしまったり生態系を固有種や在来種にとって好ましくない環境に改変してしまったりするのです。例えば猫です。

ころも:猫?? 猫が自然破壊につながるんですか?

深澤さん:人間が森に捨てたり、森で生活するようになってしまった猫が野生化し、鳥を襲うんです。そこで野猫を捕獲し、獣医師会に引き渡すという活動を続けてきました。ちなみに引き渡した猫は、その後飼い猫として新しい飼い主さんに引き取ってもらうシステムが出来上がっています。そのような活動や森の保全活動を続けた結果、以前は“幻の鳥”と言われていた「アカガシラカラスバト」の数が増え、頻繁に見られるようになりました。捕獲猫も幸せに余生を送れるようになり、鳩が安全に暮らせる環境も戻ってきました。
 

ころも:小笠原は世界自然遺産にも登録されていますね。その貴重な生態系を外来種から守って来たんですね。

深澤さん:はい。それで外来種対策として今、小笠原諸島で独自に行っているのが「シュッシュコロコロ」なんです。保護地域の森に入る前に、靴底などに木酢液を「シュッシュ」と吹きかけて外来生物の更なる拡散の防止。着ている服は粘着テープで「コロコロ」して、付着した植物の種子を取り除きます。簡単なことですが、これだけでも森を訪れた人たちが生態系を守ることにつながります。

ころも:ほんと誰でも簡単にできますね! これなら観光客も気軽にやってくれそう。

深澤さん:2004年に「アカガシラカラスバトサンクチュアリー」という場所に設置されたのが始まりで、今は森林生態系保護地域の指定ルート入口や一部の遊歩道にも、シュッシュコロコロセットと利用人数カウント装置が設置されています。

「楽しい自然保護」をやろう!簡単な取り組みだからこそ世界中の人に知ってほしい

深澤さん:プロモーションビデオで取り上げるもう一つの取り組みが「海洋ゴミ対策」です。今、世界中で問題になっていますが、父島も昔から海洋ゴミに悩まされてきました。

ころも:どのような種類のゴミが多いんですか?

深澤さん:レジ袋やペットボトル、プラスチック製品が多いですね。小笠原はアオウミガメの繁殖地なのですが、カメがクラゲなどの食べ物と間違えて食べてしまい、お腹からビニール袋が出てくることもあります。

ころも:それは大きな問題ですね……。
 

深澤さん:だからいろんなNGOが海洋ゴミの回収に取り組んでくれています。僕たち島民も日常的に海岸でゴミを拾っています。海洋ゴミ用のゴミ箱が設置されている海岸もあるんですよ。今回のプロモーションビデオではゴミの回収状況のほか、ゴミを再利用してアクセサリーを作っている作家さんも取り上げます。

ころも:海洋ゴミでアクセサリーができるんですか?

深澤さん:はい。「おがログ」チームメンバーの方が、海洋ゴミのプラスチックなどでアクセサリーを作って販売されています。ただゴミを集めるだけでなく、再利用しているところまで紹介したいんです。

ころも:環境問題ってちょっと難しくてとっつきにくいイメージがあったんですが、シュッシュコロコロも海洋ゴミ回収やアクセサリーづくりも、適度に肩の力が抜けていてすごく親しみがわきます。
 

深澤さん:そこがポイントなんです。環境問題って解決するのは簡単ではないので、ついつい難しく考えてしまいがちです。でももっと手軽にできることってたくさんあるんです。「シュッシュコロコロ」なんて、子どもたちは楽しんでやってくれます。

ころも:あ〜なんかお互いにキャッキャしながらコロコロし合う様子が思い浮かびます(笑)。でもそれが島の自然のためになっているんですね。

深澤さん:僕たちが目指しているのは「楽しい自然保護」です。それをこのプロモーションビデオを通して日本や世界に知ってもらいたい。

ころも:「楽しい自然保護」ってすごくステキです! みんなに受け入れてもらいやすそう。

深澤さん:日本でも世界でも、環境を守る取り組みをしたいと思っていても、何から始めたらいいのかわからない人って多いと思います。その方たちがビデオを見て「これなら自分たちにもできそう」と思って行動を始めてくれたら嬉しいですね。難しいことから取り組むよりも、楽しんでできることから始めることが最初の一歩に繋がります。

“人”こそが観光の目玉。楽しく健康に過ごす人たちが暮らす魅力的な島へ

ころも:プロモーションビデオはいつごろ完成予定ですか?

深澤さん:2〜3月に撮影を予定していたんですがコロナ禍で撮影隊が父島に来れなくなってしまったため、4月にあらためて撮影をするつもりです。5月の完成を目指しています。

ころも:完成したらどこでどのように活用されますか?

深澤さん:そこは今検討中です。でもYouTubeでは公開するつもりです。世界に向けて発信するので英語でナレーションを入れて、日本語の字幕をつけます。

ころも:めちゃくちゃ楽しみです。深澤さんは東京宝島事業やみらい会議を通して、どのような学びがありましたか?
 

深澤さん:島の人たちの考えている方向性がとても近いとわかったことが一番の収穫ですね。みらい会議=生活主義というはっきりした方向性も見えてきましたし、ほかの島の人たちとも話せて、父島の魅力も再発見できました。

今、みらい会議は限られたメンバーしかいませんが、今後発展させてもっと多くの島民に参加してもらいたい。宝島事業以外のところでも続けていきたいですね。

これまで父島の観光の目玉といえば、イルカやクジラといった海のスターたちでした。でもこれからの時代は、そこに住む“人”が観光客を呼び込む目玉になると思っています。僕はみらい会議を通して、健康で明るく、安全安心で楽しい島を作っていきたい。そういう島には、自然と人が惹きつけられて観光客も集まってくると思います。

ころも:楽しく環境問題に向き合い、明るく過ごす人たちが住む島。私も本気で行きたいです。

深澤さん:ウェルカムですよ。ぜひいらしてください。

ころも:ありがとうございます! プロモーションビデオの完成も、楽しみにしています。

楽しく生きて楽しく自然保護、それが父島らしさ

都心部から1000㎞離れていて、週1回の船でしかいけない。父島って興味はあるけど気軽には行けなくて、ちょっと未知の場所という感じがしていました。でも今回お話をうかがって、島の人たちが向き合っていることや考えに触れることができて、すごく親近感がわきました。

楽しく生きる、楽しく自然保護に取り組む。

父島らしさがあらわれていて、本当に魅力的です。プロモーションビデオの公開を通して、島の外はもちろん、世界にも父島を知ってもらいたいと思いました。

今は現地に行けなくても映像から、食べ物から、父島を体験することができます。父島に興味を持った方は、ぜひいろいろ調べてみてくださいね!

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