こんにちは! コンサルタントのミキです。
前回の記事では、「今こそデザイン思考が必要とされる理由」というテーマでデザイン思考についてご紹介しました。テクノロジーの目まぐるしい変化に加えて、コロナの影響もいまだ終わりが見えず、まさに来年にはビジネス環境がどうなっているかわからない現状だからこそ真価を発揮するものがデザイン思考であると考えています。
しかしそんなデザイン思考についてご紹介はしたものの、こうした思考法であったり方法論について語られるとやはりどうしても「結局それで何ができるの?」「結局机上の空論で、実際に現場で使えるの?」「一部の人が祭り上げてるだけで、実際は役に立たないんじゃないの?」というふうに考えてしまうのが人間の性というものではないでしょうか。
そう思われるのもごもっともだと思います。私自身も最初に書店で目にしたときは興味はそそられるものの何ともいかがわしいような、半信半疑でページを開いたのを覚えています。
そのため今回はデザイン思考が実際のビジネスの場で活用され、その成果が明らかといえる代表的な事例のご紹介ができればと思います。
事例①:Apple社のiPod
デザイン思考を学ばれている方に「デザイン思考が活用された代表的な事例は?」と聞くとまず最初にあがるのがApple社の代表的な製品であるiPodではないでしょうか。
いまや時価総額で世界最大の企業まで上り詰めたApple社の大きな転換点としても語られるiPodですが、その開発において活用されたのがデザイン思考なのです。
iPod開発の裏側として多くのメディアでもインタビューなどが記載されているが、当時の開発体制は人間工学や心理学者やデザイナーなど様々な領域の専門家が35名ほど集まって組成されていたということです。そして何より驚くことに市場にインパクトを与えた製品の開発期間が11か月程度であり、その短期間の間に100を超えるプロトタイプが作成されたとのことです。
当時はソニーを代表とするMP3プレイヤーも市場に出始めたころで、そこに対してデザイン思考ならではのユーザー観察から新たなコンセプトを得られた点が大きな分かれ目になったといわれています。具体的にはユーザーの多くがCDからPCに音楽を保存し、それをプレイヤーに移すという作業を面倒に感じており、そこからPC内の音楽と自動同期させる仕組みが考えられたとのことです。
事例②:P&GのBRAUN
マーケティングやイノベーションにおける世界的なリーディングカンパニーとして知られるP&Gも2000年には「イノベーションコストは増加しているものの、R&D(研究開発)の生産性は上がらず、売上が減少しつつあるイノベーションベースの成熟企業」として自社を評するに至っていました。
そこから「Consumer is Boss.(消費者が上司である)」という顧客中心主義を明確化し、顧客の声を第一とする会社分化を醸成して社内外から多数のアイディアを集めました。
そのような活動の中で電動歯ブラシの専用充電器の使いにくさや、ブラシ交換を忘れてしまう点などに注目し、充電のしやすさやブラシの交換アラート機能などによりユーザーの信頼を獲得し一躍不動のブランドを築いたのがBRAUNです。
事例③:任天堂のWii
日本におけるデザイン思考を取り入れた代表的な事例としては任天堂のWiiをあげることができます。当時はゲームにより子供と親との関係が悪化したり、子供がリビングで過ごす時間が減ってコミュニケーションが疎かになるなどといった社会的な問題点が取り上げられていた。
そのような中から「家族で楽しめるゲーム」というコンセプトが生み出され、そこから誰にでも使いやすいコントローラーの設計や、リビングで邪魔にならない本体デザインなど多くのプロトタイピングを経て開発がすすめられました。
まとめ
デザイン思考というフレームワークのみだと実感が持ちにくく、どうしても縁遠く感じてしまいがちな面もあると思います。実際の企業での活用事例としての製品や開発者の人々の取組が見えると少なからず身近なものに感じていただけたのではないでしょうか。
また今回はプロダクトデザインに事例が寄ってしまったので、次回にでもデザイン思考を活用したサービス開発という面でもご紹介ができればと思います。