BTS(防弾少年団)のスゴさを再検証!良質なコンテンツを発信するために大切なことは?ARATAさんにインタビュー

BTS(防弾少年団)のスゴさを再検証!良質なコンテンツを発信するために大切なことは?ARATAさんにインタビュー

平林 享子(きょうこ)

平林 享子(きょうこ)

ARATA DANCE SCHOOLARATAさんに、BTS(防弾少年団)が世界的に大成功している理由や背景を詳細に解説していただきました!

エディターの平林享子(きょうこ, @cloverbooks)です。BTSにハマってから、BTSのすばらしいコンテンツのおかげで生きる楽しみが増えました

BTSにハマるとどうなるの? という方は、こちらのARMY(ファン)の記事をどうぞ!👇

BTSって本当にすごすぎて感動がとまらない! どうしてこんな尊いダンスボーカルグループがこの銀河系に爆誕したの!? BTSがBTSたる所以(ゆえん)は!? などなどあらゆることを知りたくなります。なかでも、

●BTSが世界的な評価と圧倒的な支持を集めている理由は?
●現代において最良のコンテンツを発信するためにBTSに学ぶことは?

今回はこのナゾに迫るため、BTSなどのダンス解説動画で注目を集める振付師・ダンサーでK-POP業界についても詳しいARATAさんにインタビューしました! 「BTSのダンス解説動画」にもいろいろありますが、とりわけ深い分析と的確な言語化力でダントツの人気を誇る「ダンス業界の御意見番」的存在のARATAさんにたっぷりお話を伺いました!
 

ARATA(アラタ)さん
ダンサー、振付師のARATAさん

 

ダンサー・振付師・演出家・YouTuberとして幅広く活躍中。K-POP、J-POPなどアーティストのダンス解説で大人気のYouTubeチャンネル「ARATA DANCE SCHOOL」を主宰。チャンネル登録者数は22万人を超える(2021年10月時点)。
YouTube  ARATA DANCE SCHOOL 
Instagram  @moreseaman 
Twitter   @SeamanArata

BTSが世界的な支持を集める7つのポイントを解説

▲BTS「Dynamite(ダイナマイト)」のダンス・プラクティス動画をアラタさんが専門的に解説。
引用元:[CHOREOGRAPHY] BTS (방탄소년단) ‘Dynamite’ Dance Practice

 
きょうこ:ARATAさんの愛あふれるダンス解説が大好きです! ご自身もダンサー・振付師としてエンターテインメントビジネスに関わり、K-POP業界にも詳しいARATAさん、今回はARATAさんが考える「BTSが世界的に大人気の理由」と「BTSに学べること」について聞かせてください!

ARATA:ポイントは7つあります。順番に説明しますね!

①コンテンツのクオリティが高い

BTS (방탄소년단) ‘Permission to Dance’ Official MV
出典:HYBEの公式YouTubeチャンネル「HYBE LABELS」
 
ARATA:まず、なんといってもコンテンツのクオリティが高い。楽曲・映像・パフォーマンス、世のなかに出ていくすべてのコンテンツがことごとく良質。歌もダンスも、アーティストとしての振る舞い方も、なにもかも圧倒的にクオリティが高い! ってことが第一にあります。

BTS (방탄소년단) ‘Dynamite’ @ America’s Got Talent 2020
出典:BTSの公式YouTubeチャンネル「BANGTANTV」
 
去年、「Dynamite」を30回くらいテレビで見たんですが、ひとつとして同じステージはなかった。何度見ても新鮮なパフォーマンスでした。それは、つねに新しい感動を届けるために、衣装もヘアスタイルも歌い方もダンスもすべて、過去のパフォーマンスと被らないように周到に準備して、新しいコンテンツとして届けてくれるということ。そこに僕たちは知らず知らずのうちに惹かれているんだと思います。

②コンテンツの量が多い

▲「Butter」のカラオケバージョン(BTS (방탄소년단) ‘Butter’ in 노래방)のメイキング映像。
出典:BTSの公式YouTubeチャンネル「BANGTANTV」

 
ARATA:そして、コンテンツの量が圧倒的に多い。ミュージックビデオ(MV)に限らず、オフショット的なもの、日常のダイアリー的なものも毎日大量に提供されます。BTSの公式YouTubeチャンネル「BANGTANTV」には、舞台裏やオフの姿などのコンテンツが頻繁にアップされますし、サプライズ的なコンテンツも常に企画されている。V LIVE(動画配信サービス)でも人気番組「Run! BTS(走れ!バンタン)」があったり、メンバーがファンと気軽におしゃべりする生配信があったり、つねに新しいコンテンツが配信されていく。

K-POP全体にいえることですが、あらゆる出来事をコンテンツにしていくんですね。MVやテレビ番組の収録など、いろいろな現場でカメラを回している数が多くて、BTSはとくに現場に入るスタッフの数がものすごく多いんです。あらゆるものをコンテンツにするために多勢のスタッフが動いていますね。

③高いビジュアル力

▲BTSがアンバサダーを務めるLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)の2021年秋冬メンズのスピンオフショーに出演。その動画を見てのARATAさんのコメント動画。
引用元:Men’s Fall-Winter 2021 Show in Seoul with House Ambassadors BTS | LOUIS VUITTON

 
ARATA:あとにも先にも、顔がカッコいい。これが実はすごく大事なことなんです!(笑)。イケメンだからこそ、人は惹かれる。非現実的なほどの圧倒的なビジュアル。
そこは見逃せないと思いますね。

④コンセプトとストーリーとファンダム

▲「불타오르네 (FIRE)」(2016年)のダンス・プラクティス動画を見ながら、V(テテ)のダンスについてARATAさんが解説。防弾少年団時代はストリート系のヴィジュアル、歌詞が多め。
引用元:[CHOREOGRAPHY] BTS (방탄소년단) ‘불타오르네 (FIRE)’ Dance Practice

 
ARATA:BTSはもともと「防弾少年団*」という名前でデビューしました。社会的な偏見や抑圧といった「銃弾」から人々を守り、自分たちの音楽や価値を守りたいという意味が込められています。またBTSファンの愛称はARMYですが、ファンがBTSを護衛し、応援するという意味。アーティストとしてのコンセプトをはっきりと打ち出して、ファンとのあいだに強い連帯感を育んで、広大なファンダム*を築くことに成功しています。

防弾少年団:2013年6月13日に、7人組ヒップホップグループ「防弾少年団(バンタンソニョンダン Bangtan Sonyeondan)」としてデビュー。2017年には世界進出を意識して「BTS」が正式名称に。BTSは「防弾少年団」の頭文字をとったもの。
 
ファンダム:「fan」に「領地、集団」などを意味する「dom」が付いた言葉。熱心なファンたちによって形成される世界、カルチャーのこと。

そしてスタートしたときから、BTSの存在にも音楽にもストーリー性を持たせています。あらゆるアプローチで、BTSという「物語」をエンターテインメントとしておもしろくしている。わかりやすいものだったり、考察が必要なものだったり、大きな物語の中に小さなエピソードがたくさんあって、いろいろなところに伏線が張ってある。そこに対してファンであるARMYたちも「物語」の参加者となって、BTSとARMYの絆を実感しながら、その物語を楽しむという仕掛けになっています。

僕はそれを体験型エンターテインメントに近いと思ってます。ディズニーランドやUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のように、その世界観のなかに自分が入っていって、その世界のなかでおこるイベントを堪能する。そうした体験に対してお金を払うというビジネスモデルですが、BTSはそうした体験型エンターテインメントをオフラインだけではなく、オンラインで目指しているんだと感じます。

そのうえでBTSのコンテンツは、他のダンスボーカルグループよりも熱狂できる、感情移入しやすいコンテンツになっているので、世界的に評価されているんじゃないかと思います。

⑤優秀なメンバー

▲2018年、ユニセフのグローバル・サポーターであるBTSがNYの国連本部に招かれた際のRMのスピーチ。
出典:日本ユニセフ協会 UNICEFJapanNatComのYouTubeチャンネル

 
ARATA:BTSのメンバーは頭脳明晰、賢い方たちなんだなということは、彼らのコミュニケーションを見ているとすごく伝わってきます。きれい、カッコいいだけではなく、知性と教養あふれる側面があるからファンの方たちも興味が尽きないんだと思います。

BTSのコンテンツにはオフショット、メンバーが日常のやりとりをするシーンもたくさんありますが、それらを見ていると、仲間内の雰囲気がとてもいいんです。ウソ偽りなく、メンバー間の信頼関係があって、本当に支え合ってるんだなっていう姿が見える。コミュニケーションが密にとれていて、同じだけの理解力をもっていないと到達しえないチームワークだと感じます。

世界的な評価という点でいうと、リーダーのRM(ナムジュン)は英語が堪能でBTSのブレーン(頭脳)でもあるので、彼の存在が世界的な活動を牽引している部分は大きいですね。英語がしゃべれることで、英語圏=グローバルな活動が可能になったわけですね。

⑥優秀な運営陣

▲経済学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」に掲載された、BTSとBig Hit Entertainment(現HYBE)の海外展開と成功に関する論文についてARATAさんが解説。
引用元:『Big Hit Entertainment and Blockbuster Band BTS: K-Pop Goes Global』

 

ARATA:それじゃあ①〜⑤までを誰が考えてやっているのかというと、BTSの所属会社である「HYBE(ハイブ、旧Big Hit Entertainment)*」が主導してるわけですね。

HYBE:2005年、作曲家・プロデューサーのパン・シヒョクさんがJYPエンターテインメントから独立し、Big Hit Entertainmentを設立。2013年、防弾少年団(現BTS)がデビュー。2020年、韓国取引所に上場。2021年3月、Big Hit Entertainmentから「HYBE」へと社名を変更。4月、アメリカ進出の基盤として「HYBE AMERICA」を設立。

BTSのメンバーはHYBEの運営陣を信頼してその方針に従い、事務所はメンバーの意向を尊重する。メンバーも事務所から大切にされていることに感謝している。というもちつもたれつ、お互いの信頼関係がしっかりとできているところが、これまでのK-POPの三大事務所*のアーティストたちとちょっと違うのかなと思います。それはパンPDこと、プロデューサーのパン・シヒョクさん*が、意図的に取り組んでいらっしゃるところなんだろうなと。

K-POPの三大事務所:韓国の三大芸能事務所とされてきたのが「SMエンターテインメント」「JYPエンターテインメント」「YGエンターテインメント」。近年は勢力図が変化し、YGエンターテインメントにかわりHYBE、そしてCJ ENMが入って「四強」といわれている。
 
パン・シヒョクさん:1972年、ソウル市生まれ。ソウル大学文学部美学科卒業。プロデューサー、作曲家、作詞家。芸能プロダクションHYBE(旧 Big Hit Entertainment)の創業者。2021年、HYBEの共同最高経営責任者を退任、取締役会長に就任。愛称はパンPD。

⑦ITに強い

ファンコミュニティプラットフォームWeverse
▲出典:Weverse
 
ARATA:運営陣が優秀なので、ITにも強い。HYBEは、ファンコミュニティプラットフォーム「Weverse(ウィバース)*」を運営していて、先行のプラットフォームであるNAVER運営の「V LIVE」と統合することも発表されています。

Weverse:Big Hit Entertainmentの子会社であるbeNXが2019年夏にリリースしたファンコミュニティプラットフォーム。現在はHYBEとNAVERが共同で出資するWEVERSE COMPANY(旧 beNX)が運営。

つまりエンターテインメントのグローバルなプラットフォーム企業になって、K-POPのファンコミュニティのマーケットを掌握しようとしているんです。HYBEがIT人材の採用に力を入れているという話もよく聞きます。

優秀な人材を世界中から獲得するためにも会社としての信頼や知名度が必要で、HYBEは2020年に韓国取引所に上場したし、2021年にはアメリカのイサカ・ホールディングス(ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデなど世界的な人気アーティストを抱える芸能事務所)を買収、というふうにグローバル企業としてどんどん拡大成長しています。

芸能事務所としてアーティストを育ててコンテンツを作る事業だけではなく、IT企業として新しい革命を起こそうとしているんだと思います。「検索ならGoogle、動画ならYouTube、アイドルとつながるならWeverse」みたいな、新しい規模のIT革命を起こそうとしてるんじゃないかなと。

というふうに、あらゆる方面で勝ちにきている戦略を見るにつけ、「やっぱり優秀だわ」と思ってる次第ですね。

きょうこ:確かに私もWeverseにめちゃ課金してます!

ARATA:HYBEさんは、時代の流れをちゃんと読んでいて、すごいところを狙ってるな、という印象ですね。

BTSに学びたい!良質なコンテンツの発信に大切なことは?

国家事業としての取り組み、映像カルチャーの醸成

▲BTSが出演する「2021 ソウル観光PR動画」。ソウル市名誉観光広報大使を務めるBTS。困難な状況を乗り越えるための掛け声「어기영차(オギヨンチャ)」を合言葉にソウルの観光スポットを紹介。
出典:VisitSeoul TV

 
きょうこ:それぞれのポイントについて、もう少し聞かせてください。①「コンテンツのクオリティの高さ」を実現できている理由や背景についてはいかがでしょうか?

ARATA:韓国は国家事業として映像コンテンツに非常に力を入れていますよね。映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督、2019年)がアメリカ・アカデミー作品賞を受賞*したこともその成果のひとつですね。

*第92回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を受賞。非英語作品の作品賞受賞は史上初めて。

BTSのMVは、参加しているクリエイターのレベルが高くて、しかもみんな若い。あとはお金のかけ方が、桁ちがいです。大規模なセット、照明の数、カメラの数、スタッフの数も多くて、1本のMVを作るために数億円をかけています。

いくら優秀な人材がいても、カルチャーとして育っていないと才能を発揮できないわけですから、韓国が国をあげて映像文化を育てて見る目を養ってきた功績が大きいと思います。要求されるレベルが上がっているので、作り手側のレベルも上がっていくわけですね。

▲「Butter」の振付制作に参加した、日本のダンスグループ「GANMI」のSotaさんにARATAさんがインタビュー。

コンテンツの二次利用、三次利用を視野に入れている

▲BTS「Permission to Dance」のダンス・プラクティス動画をARATAさんが解説。
引用元:[CHOREOGRAPHY] BTS (방탄소년단) ‘Permission to Dance’ Dance Practice

 
きょうこ:②「コンテンツの量が多い」についてですが、BTSは公式コンテンツだけでなく、ファンが発信する二次、三次がこれまた質も量もすごくて、それがさらにファンダムを拡大していく構造になってますね! 

ARATA:K-POPのコンテンツは最初から、二次、三次拡大を視野に入れています。たとえば僕がBTSの動画を引用してリアクション動画を作成してYouTube上で公開するとき、その動画は僕のコンテンツとして公開するのはOK、だけど再生されることによって生まれる収益はオリジナル音源の著作権管理団体へ入るシステムです。二次利用によってさらに収益が上がるビジネスモデルなので、制限するよりむしろ開放したほうが事務所やアーティストにとってメリットがあるんですね。

ところがJ-POPの場合、たとえばダンス解説のために「引用」すると、YouTubeでブロックされてしまうこともあります。日本は管理団体との取り決めのなかでYouTube上に流れる音楽に対する縛りが強いのが現状です。

日本の著作権法は、今のようにYouTubeで動画が大量に出回るという概念がなかった時代にできたもの。ところが時代が変わってしまった。その点で、K-POP業界は、二次利用を含めてファンにどんどん再生してもらって、お金はアーティストのところに入ってくる仕組みにしているので、マーケティング的には正解ですよね。

自己ベストを更新し続ける

▲BTSメンバーのなかでもダンスのうまさで双璧をなすJ-HOPE大先生とジミンちゃんにフォーカスし、ダンスの特徴をARATA流に分析。
 
きょうこ:③「高いビジュアル力」。ARATAさんが先日、「BTSのメンバーはつねに自己最高記録を更新し続けている」とおっしゃっていて、まさにそうだなと。

ARATA:自分を美しく見せることに対してつねに自己ベストを出そうとしてるんですよね。もちろん本人だけじゃなく、ヘアメイク、スタイリスト、支えているスタッフみんなの努力の賜物ですが。ヴィジュアルだけじゃなく、歌、ダンス、すべてにおいて自己ベストを塗り替えようとしている

きょうこ:だから感動が止まらない(涙)。そして④「コンセプトとストーリーとファンダム」体験型エンタメというのはすごく納得です! 先日「SOWOOZOO*」を見ていて、私たちファンもそのライブ空間にいてエレクトリカルパレードを見てるみたいな(笑)ディズニーランド感がありました。

*SOWOOZOO:2021年6月13日、14日に開催されたデビュー8周年記念のファンミーティング「BTS 2021 MUSTER SOWOOZOO(小宇宙)」。ソウルにある蚕室総合運動場の野外ステージで行われたライブは、Weverseでライブ配信され2日間で133万人が視聴した。

ファンを巻き込んで共感の渦を拡大する

▲BTS「Butter」のダンス・プラクティス動画を見ながらARATAさんが解説。
引用元:[CHOREOGRAPHY] BTS (방탄소년단) ‘Butter’ Dance Practice

 
ARATA:国境を超えて、言語・カルチャーの壁も超えて、世界中の人たちの満足度を高めるって大変なことだと思うんですよ。そして現代人は忙しいので、可処分時間が限られている。「漫画を読むか、それともBTSのYouTubeを見るか」で迷ったときに「漫画を読む」となったらダメなんですよ。どんな漫画よりも、どんなゲームよりもおもしろい体験、感動できる体験を提供し続けないといけない。そのためにはやっぱり、つねに自己ベストを塗り替えて、最良のコンテンツをありえないほどの量で届けて満足度を高めていかないと、選ばれ続けないんですよね。

ぼくもエンターテインメント業界に身を置いてどうやってお客様に楽しんでいただくかを考えている側の人間なので、BTSをはじめK-POPの方々は本当に参考になりますね。

きょうこ:まったく飽きさせないのがすごいです!

ARATA:テレビ番組を見終わった瞬間に「このワクワクは!?」「もう1回見たい!」ってなりますよね。するとすかさずTwitterにBTSメンバーの「きょうはありがとうございました!」みたいな出演後のコメント動画が流れて、YouTubeに出演したシーンがアップされて、舞台裏を写したオフショットが出て、それにリアクションするファンたちのコンテンツもワーッと流れてきます。

感動を何度も追体験できて共感できて、満足度が長続きする。味の長いガムみたいな感じで(笑)、いつまでも楽しめる。導線の確保がうまいんですよね。ファンがその導線をたどれるように、あらかじめレールをちゃんと敷いている。

きょうこ:実は周到に設計されてる……ってことで⑥「優秀な運営陣」なんですね!

ARATA:僕らは無意識にやっているようで、運営側が敷いたレールの上を動いているだけ、という(笑)。

優秀な運営陣ってことでいうと、BTSのメンバーは超多忙でプライベートがほとんどない状態なので、だからこそオンの状態でいかに満足できるかっていうところを、運営側がすごく手厚くフォローアップしてるんだろうなって思います。

仕事での満足感が高くないと、オフでのストレス発散に逃げちゃうとかってあると思うんですが、BTSのメンバーは、オンの部分で精神的に満たされ、リラックスできたり楽しんだりできるので、仕事のストレスがたまらないようになっているんだろうなと。

きょうこ:「走れ! バンタン」とかを見ると本当に楽しそうに遊んでいて、ファンも素の状態を見れて嬉しいという両得なんですが、それも運営陣がよく考えているんですね……。

人間性の高さが伝わってくる

▲BTS「Permission to Dance」公式MVを見ながらのARATAさんのリアクション動画。
引用元:BTS (방탄소년단) ‘Permission to Dance’ Official MV

 
きょうこ:⑤「優秀なメンバー」については?

ARATA:いつもARMYたちのことをまず第一に考えて、ファンとのコミュニケーションを大事にしている。本当にファンの方たちに会いたいし、ファンの方たちを信頼してるんだなっていうウソ偽りのない誠実さが画面越しに滲み出ているから、ファンの人たちも安心して好きになれる。

トレーニングしたら、そういう人たちになるのかというとそうではなくて、そういう人たちが集まった、ということだと思います。もしひとりでも性根の悪い人がいたら、もう成り立たなくなってしまうので。

だからBTSは、この7人の奇跡的な組み合わせがもたらしたものだと思います。

そして、もし誰かがこのバランスを崩すようなことをしてしまったらチームとしては失墜してしまう、ということに対して、ちゃんと自分の頭で考えられる頭脳とプロ意識をもっているメンバーなので、大丈夫なんですよね。

きょうこ:この7人だったからBTSの成功は可能だったわけで、再現性はない?

ARATA:ないと思いますね。

きょうこ:やっぱりBTSは奇跡、必然、運命なんですね🌈✨ ウヨニアニニカ(偶然じゃないから)♪

ARATA:ほかのK-POPグループを見てもわかるんですが、どんなに歌がうまくて実力と人気があっても、スキャンダルが出るとすぐにテッペンから落ちてしまう。テッペンを維持し続けるのが難しくて、維持してるだけだとファンは飽きてしまうので、右肩上がりに成長、進化しないといけない。BTSのメンバーは、どんなにいそがしくても毎日1時間は歌の練習をするとか、人間としてすごすぎるんですよね。

きょうこ:じゃあ、BTSみたいなボーイズダンスグループを作りたい! と思っても、教育して後からなんとかなる部分と、ならない部分があるんですね。

ARATA:最近はアイドルのオーディションでも、その人の人間性をめちゃくちゃ見て最終メンバーを決めていますよね。どんなにビジュアルがよくても、人間性を正しく保ってクリーンに活動できるかってところを事務所は見ています。

BTSのみなさんは、めちゃめちゃ謙虚ですね。少しでも天狗になったり調子に乗ってるような感じが伝わったら、ファンが離れてしまうことをよくわかってらっしゃるというのもありますが、彼らの見ている世界が広くて、もっともっと高みをめざしているからこそ、現状には満足してないんでしょうね。

もともとBTSの目標として、世界で活躍できるアーティストになる、というのがあります。それこそジャスティン・ビーバーさんとかクリス・ブラウンさんとかブルーノ・マーズさんとか、自分たちがふだん聴いているアーティストたちと同じレベルに立たないといけないとなると、ちょっとやそっと持て囃されても満足できるわけがない、ということだと思うんですよね。

きょうこ:はぁ……めざすところが高いから、いつまでたっても謙虚なんですね。

ARATA:自分たちよりも圧倒的に歌がうまい人たちがいるっていう。ブルーノ・マーズさんってめちゃくちゃ歌がうまいじゃないですか。

ARATA:こういうテッペンの人たちと同じ土俵で闘うんだという意識が強いと思います。

ARATAさんがダンス解説をする理由

▲「ARATA DANCE SCHOOL」チャンネル登録者数11万人記念、「Dynamite」フリースタイルダンス動画。
 
きょうこ:BTSについての分析、すごく勉強になりました! ありがとうございます!

さてここからは、ARATAさん自身のお話をお聞かせください。ARATAさんのダンス解説動画がこれまた、やみつきになるコンテンツで恐るべし! なんですが。

ARATA:好きなことについて言葉にすることで、自分の中で感動を反芻しているところがあって、そんな僕の独り言をみなさんが聞いてくださっている、みたいな状態だと思います(笑)。その(好きなアーティストについてファンが夢中で語っている)光景が、みなさんと重なる部分があったりして、共感性の部分でつながってると思うんです。

きょうこ:そもそもARATAさんがYouTubeを始めたきっかけは、ダンスを教えている中学生たちに見せる教材用だったとか。

ARATA:生徒たちに「どんなダンスを踊りたい?」って希望を聞いたら「K-POP」という答えが返ってきて、僕もK-POPは昔から大好きだったので、それじゃということで教え始めました。最初はダンスレッスンの教材として使えるかなと思って、自分が踊って見せているレッスン動画を撮影してYouTubeにアップしていました。だからチャンネル名も「ARATA DANCE SCHOOL」なんです。で、あるときから「座学」ということでK-POPやJ-POPのダンスについて解説する動画を始めたら、思いがけず、たくさんの方に見ていただけるようになったんです。

きょうこ:ARATAさんは1992年生まれとのことで、BTSのメンバーとも同年代ですが、人生何周目? という達観したコメントに大御所感があります!

ARATA:大口叩いてすみません!(笑) 僕はあわよくば「ダンス始めませんか?」という立場の人間で、ベースに「よかったら、踊ってくださいませんか?」という気持ちがあってダンスの話をしているんです。「ダンス、楽しいよね!」って伝えたいし、「踊ってみようかな」と思ってもらえたらいいなと思っていて、そういうスタンスでやっています。

見ているだけだと簡単そうに見えても、実際に自分で踊ってみると、アイドルの方たちのダンスがすごい! ってことがよくわかるんですよね。
 

▲BTS「내 방을 여행하는 법(Fly to My Room)」に合わせてフリースタイルで踊る動画。ARATAさんの専門はストリートダンスの「ポップ」。ロボットダンスをベースに全身の筋肉を弾くような動きに特徴があり、パントマイムや即興的な要素も取り入れているそう。
 
きょうこ:まさにダンスの伝道者✨ その観察眼や分析力はどうやって身につけたんですか?

ARATA:これもダンスで培ったものです。ぼくはポップポッピンとも)というジャンルのダンスをやってるんですが、まわりには世界大会に日本代表として出場するようなすごい友だちがたくさんいて、そんな人たちと一緒に練習するんです。

サークル(円)になって、ひとりずつサークルの真んなかに出て踊る。めちゃめちゃ緊張するんですけど、「いまの自分が踊れるダンスはこうなんだよね」というのを出していく。見ている人たちは、いい動きに対して「それめちゃくちゃいいね」と言い合う。もちろんダンスの世界にも、ダンスバトルのように勝ち負けを競う空間もあるんですが、その場を離れたら、一緒にダンスしてセッションして楽しいねっていう空間があって。

うまい人たちって、ダンスに優劣をつけないんです。それはなぜかというと、自己ベストを更新することが大切で、比べる対象が自分自身だから。過去の自分よりももっとよくなろうとしている。で、ダンスがそれほどうまくない人のダンスを見ても、ちゃんとそのいいポイントを評価してくれるんですよ。「うわ、その動きやばいね」とか言ってくれたり、それを自分のダンスに取り入れたり。

他人を認める、他人のいいところを純粋に「いいよね」って言い合える環境がまずあって、そこに「その動きってどうなってるの?」という分析だったり、「自分はこういうふうに考えてこの動きにした」と言語化する力も自然に養われていく。そういう環境のなかで、まわりから教えてもらった部分が大きいですね。

きょうこ:ARATAさんのダンス解説に愛とリスペクトがあふれている理由がよくわかりました! 最後にもうひとつ、動画の編集をすべてスマホでやっているって本当ですか?

ARATA:はい。YouTuberさんはパソコンで編集する人が多いと思うんですが、スマホだと移動中とか少し空いた時間とかに編集できる。道端でも電車の中でも、どこでも編集できるのがいいんですよね。僕は「Videoleap(ビデオリープ)」というアプリを使ってます。スマホさえ持っていれば、どこでも撮影して編集してアップロードして、とスマホですべて完結するので便利ですよ。興味がある人はぜひ使ってみてください!

まとめ

今回は、BTSの魅力と、現代において最良のコンテンツを発信するために大切なことについて、ARATAさんからたっぷりお話を伺いました。

あらためて、BTSって本当に偉大!

そしてARATA先生はダンスの妖精

これからも私たちをすばらしいコンテンツで楽しませてください!

現場からは以上です。きょうこでした。

追記:BTSの人気の理由や背景をもっと知りたいアナタへ

浅田彰さんのBTS解説@J-WAVE「RADIO SAKAMOTO」

あの批評家の浅田彰さんがBTSを熱く語っている! BTS白熱教室!

2021年11月7日に放送されたJ-WAVEのラジオ番組「RADIO SAKAMOTO(レディオ・サカモト)」で、批評家の浅田彰さんが1時間にわたって韓国の歴史・社会背景をふまえ、深い考察にもとづいたBTS評論を展開。その文字起こし全文が「RADIO SAKAMOTO」Webサイトに掲載されています。

それにしても、浅田さんの口から「ジミンが……」「テテが……」と熱く語られていることに不思議な感動を覚えましたわ。

▼J-WAVE 「RADIO SAKAMOTO(レディオ・サカモト)」
https://www.j-wave.co.jp/original/radiosakamoto/program/top.htm

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平林 享子(きょうこ)
平林 享子(きょうこ) エディター / 享子 平林

エディターのきょうこです。「コンテンツマーケティングを極めたい」「さまざまな業種のサービス・商品のオウンドメディアに携わりたい」と思い、LIGへ。目標は「100歳まで元気に現役エディター」です。趣味は、占い(西洋占星術)、アンチエイジング、料理、ワイン、ゴルフ(ずっと初心者)です。ご贔屓賜りますようお願い申し上げます。↑この写真の設定は「リグ屋旅館の女将」です。

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