【イベントレポート後編】日本と中国のSNSトレンドをおさえる!ホットリンク社主催「SOCIAL MEDIA HOURS」に参加しました!

【イベントレポート後編】日本と中国のSNSトレンドをおさえる!ホットリンク社主催「SOCIAL MEDIA HOURS」に参加しました!

Mako Saito

Mako Saito

こんにちは、LIGのマーケターのまこりーぬ(@makosaito214)です。

今回は2020年10月28日におこなわれたホットリンク社主催のオンラインイベント「日中SNSのメガトレンドをおさえる「SOCIAL MEDIA HOURS」」のレポート後編をお届けします!

第三部は豪華メンバーによる特別セッションです。日中それぞれのトレンドが知れるのはもちろんのこと、どの国においても変わらない “マーケティングの本質” も垣間見える内容でした。ぜひぜひ、お楽しみください!


▼レポート前編はこちら

第三部:「日中マーケティングのツボ」顧客インサイト・カスタマージャーニー・ブランド考察

モデレーター:チーターデジタル株式会社 副社長 兼 CMO 加藤 希尊氏WPPグループに12年勤務し、化粧品やITなど、14業種において100以上のマーケティング施策を展開。2012年よりセールスフォース・ドットコムに参画し、AIやクラウドを活用したワントゥワンのカスタマージャーニーの実現を啓蒙。2014年にマーケターのネットワークである『JAPAN CMO CLUB』を立ち上げ、現在も組織のFounderとして活動。2019年12月より、ゼロパーティデータの取得と次世代のロイヤルティマーケティングを事業ドメインとするチーターデジタルを経営。

加藤:みなさんこんにちは、第三部のモデレーターを務めます、チーターデジタルの加藤と申します。ここから「日中マーケティングのツボ」というテーマの特別セッションを始めていきたいと思います。

最初にパネラーのご紹介です。第一部の濱野さん、第二部のいいたかさんに加えて、長瀬 次英さんにもご登壇いただきます。よろしくお願いいたします。

 

登壇者:長瀬 次英 氏1976年、京都府綾部市生まれ。中央大学総合政策学部国際政策文化学科卒業。 2000年、KDD(現・KDDI)に入社。その後、J. Walter Thompson Japan、ユニリーバ・ジャパンなどを経て、2014年にインスタグラムの初代日本事業責任者(BDL)に就任、日本におけるインスタグラムの収益モデルを確立した。続いてロレアル日本法人で初代CDO(最高デジタル責任者)に就任、その後もエンターテインメント会社LDH JAPANの執行役員兼CDO等を務め、デジタルシフトを牽引。2019年には自ら会社を設立した他、同時にコスメブランド等の顧問やアパレルブランドのCEO、ブランディングカンパニーのCSO(最高戦略責任者)を務め、それらを同時平行させるパラレルワーキングを実践している。 初の書き下ろし書籍『マーケティング・ビッグバン インフルエンスは「熱量」で起こす』が発売中。

長瀬:いろいろやりすぎちゃって、肩書がなくてすみません(笑)。よろしくお願いいたします。

 

加藤:本日はこちらの図の①〜④に沿って進めていきます。1つめは、日中間の消費者のインサイトの違いをどう分析するのか。2つめは、「GAFA」ではなく「BATH(バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)」が牛耳る中国メディアの活用方法。3つめは各国で有効なアプローチ方法について。そして4つめは我々マーケターが施策を実行する上でどんな素養を身につけておかなければならないのか、というお話です。

①消費者行動の変化

加藤:ではさっそく最初のテーマに入っていきます。「消費者行動の変化」のなかで企業はどのようにブランドコミュニケーションをとっていくべきでしょうか。まずは長瀬さん、お願いします。

 

長瀬:情報が溢れた結果、やっぱり自然と情報リテラシーが上がってきていますよね。インフルエンサーがなにか紹介しても素直に受け入れなくなってきている部分があります。「これギフティングでしょ?」みたいな。僕だけではなく、マーケティングの仕事に携わっていない方でもこうした目を持ってきています。

第一部・第二部でもありましたけど、やっぱりそこで「口コミを信じる」っていう傾向は如実に強まっていると思います。だからこそインフルエンサーは商品開発段階から巻き込むようになってきていますね。ただギフティングして影響力を与えてにわかファンを作るのではなくて、本当にブランドを愛してもらおうという活動へと変わってきている。この方向性は日本中国問わず結構同じなのかなと思っています。

加藤:消費者の情報リテラシーが上がっていくなか、どういうコンテンツが広がりやすくなっていますか? まずは日本の市場環境について、いいたかさんお願いします。

いいたか:コンテンツのディストリビューション方法は本当にさまざまで、僕らがお手伝いしているのはまさにそこなんですが、大前提として、いいものじゃないと広がらないと考えています。

消費行動自体は大きくは変わっていなくて、なんなら元に戻っているだけかなと。インターネットが登場したことで「Yahoo!にトップバナーを出せば商品が流通して購買につながる」といった多様性が生まれていましたが、結局いまは元に戻って、「詳しい人に聞く」っていう行動がインターネット上で起きているだけなんですよね。井戸端会議がSNSになっているだけです。

加藤:では中国の市場環境について、濱野さんいかがでしょうか?

 

濱野:消費者の情報リテラシーが上がっている、という傾向は世界同時に起こっていると思います。しかし中国だとやはりグラデーションがありますね。地域差も年収差も大きいので、まだまだインフルエンサーがおすすめしているものを買いたいというユーザーもいます。

情報リテラシーの高い人たちがよりリアルな情報を自らとりにいっている、という傾向も世界共通だと思います。購買に影響を与えた口コミってどんなものなのかを調査してみると、おもしろいことに、ブランドストーリーに対して共感した口コミが購買と密接につながっているんですよ。長瀬さんの著書にもありましたけど、「熱量」って大事だと思います。誰が言うのかっていう人軸と、熱量。この2つですね。

加藤:ありがとうございます。では長瀬さんに戻るんですが、いままでのご経験のなかで人軸や熱量の重要性を示すような事例にはどんなものがありますか?

長瀬:商品サービスについてどの情報が一番信頼できるかでいうと、やっぱり作っている人が出している情報ですよね。ロレアルやユニリーバでは開発者やブランドマネージャーが前に出て、ブランドについて熱く語るみたいなことをやっています。社員一人ひとりがブランドを愛して発信しているかどうかに、これから差が出てくるんじゃないかなって思いますね。

加藤:濱野さん、中国でも開発者が前に出るという傾向はあるんでしょうか?

濱野:ありますね。私は「EGC」って呼んでいるんですけれども、Employee Generated Contents はめちゃくちゃきていると思います。

たとえば百貨店の美容部員の方々が自分たちのブランドを熱量持って語るライブ配信でモノが売れるとか、BtoBであっても社長や一次生産者が顔を出してライブコマースをやるという動きが広まっています。その人たち自身がインフルエンサー化していく、みたいな動きがもっと生まれてくるといいんだろうなと思いますね。

②効果的なメディアの使い方

加藤:生産者が語るストーリーが重要、じゃあそれをどういうふうにメディアに乗っけて発信していけばいいのか? ということで、ここから2つめの「効果的なメディアの使い方」というテーマ入っていこうと思います。いいたかさん、まずはいかがでしょうか?

 

いいたか:プロダクトによって変わっちゃうので難しいところですよね。ホットリンクを例に挙げてお話ししますが、我々は自分たちの顧客がいる場所に対してアプローチをかけてコンテンツを作っています。それこそ昨日は日本食糧新聞社さんで講演してきたんですが、我々のマーケットがそこにあるところであれば無条件で登壇します。大量の情報を流すマス的な考えよりも、本当にそこに買ってくれる人がいるのか? という視点でアプローチするほうが正しいのかな、と考えていますね。

加藤:長瀬さんは昔からメディアとお付き合いがあると思うのですが、いかがでしょうか?

長瀬:僕自身マスメディアをすごく多用していたので、テレビも新聞もラジオも長らく関係性を築いてきました。でもこれからは関係性を築く対象がインフルエンサーというか、自分のブランドをすごく愛してくれている人たちになると思います。この人たちを大事にしながらコミュニティを作っていって、そこを一つのメディアとしてビジネスをしていく。そんな動きが大きくなっていくんじゃないでしょうか。

加藤:この辺はまさに中国が進んでいると思うんですが、企業がインフルエンサーを抱えることについて、濱野さんはどう思われますか?

濱野:KOLはマネジメント会社が束ねていて、間に広告代理店が入ってお客様とやり取りをするのが一般的だったんですが、このエコシステムは最近崩れてきています。いわゆる中抜きが当たり前になってきているんですよね。やっぱり間にはさむと熱量が伝わらないじゃないですか。我々も広告代理事業をやっているので自己否定になるんですけども、これからはブランドとファンがどれだけ直接つながれるか、という世界に移行していくと思います。

ただ一方で、ブランドが伝えたいことと消費者のニーズをどうつなげるのか、というコミュニケーションデザインにおいては代理店の介在価値があると感じています。ブランドが持っている熱量そのままで消費者を巻き込めればいいんですが、実は消費者に刺さっていない、みたいなところって結構あるんですよね。その調整がいますごく求められていると思います。

 

長瀬:これはブランディング論になっちゃうんですが、ブランドって結果的に受け手が作るものですよね。なのでファンの中から自分が一番理想とするブランドストーリーを語ってくれているユーザーを見つけて、そことタイアップなりなんなりで動きを広げていくことが重要だと思っています。

これらを実現するためにはやっぱりコミュニティマネジメントが必要ですよね。ファンといつでも連絡がとれる状況にしておいて、「おっしゃっていたこと、創業者の意思と合っています!」みたいなコメントを返してあげる。こうした細かいことをやっていかなきゃいけません。

濱野:我々の場合ソーシャルリスニングの技術で熱量の高いユーザーを割り出し、その人に直接DMを送ることもあります。さらには口こんでくれている顕在層のアカウントを掘り下げて分析して、近しい属性の潜在ユーザーに熱量を語っていくことが重要かと思いますね。

加藤:まさに僕自身もそういったところを研究しています。海外のVANS様の事例なんですが、数百万人規模のファンコミュニティから熱量が高い人を分析してみたところ「最初に買ったVANS」に思い入れがあることがわかりました。そこで「みなさんが最初に買ったVANSを教えてください」と呼びかけたところ、投稿がものすごく増えて。最近ブランドから離れてしまっていた人たちも呼び戻して購買につながりました。熱量がどこにあるのかを探す、というアプローチはSNSに向いていると思いましたね。

長瀬:あとはリアル、オフラインがポイントになると思います。熱量ってリアルが一番伝えやすいじゃないですか。最近中国も店舗を増やしているブランドが多いですし、日本もそうなっていくんじゃないかと思います。

濱野:大変共感します。たとえば某大手化粧品会社の最近急速に伸びているブランドはこの3年で直営店を一気に広げていて、そこでのオフラインコミュニケーションから実際に熱量の高いファンを作り出しています。オフラインの価値ってこれからまた高まってくるでしょうね。

③有効なアプローチ方法

加藤:それでは「消費者への有効なアプローチ方法はなにか」という3つめのテーマでお話を進めていきたいと思います。長瀬さん、いままでに熱量がグッと上がった事例があれば教えていただけないでしょうか。

長瀬:ライブ感は必要ですよね。アイドルってInstagramでもTikTokでもYouTubeでも見れるんですけど、まぁライブに行きたいですよね。アイドルに限らずアパレルでもなんでも、ライブコマースとリアルなライブ、この2つを使って消費者の盛り上がりを作れるかどうかは大事だと思います。LDHはこの辺すごく上手ですね。いまリアルのライブができなくて大変ですが、動画を投稿してファンの熱量を維持していると思います。

加藤:濱野さんの周りだといかがでしょうか?

 

濱野:マクロでいくと、いま中国でやっている『W11』みたいなお祭りは、そこに全員の視線が向くのでやっぱり熱量が上がりやすいですよね。こうしたイベントを作り出すのは中国はうまいと思います。お祭り的に盛り上げるのはいいたかさんも上手ですよね。

ミクロでいくと、たとえばBAKE様で『ザクザク』というお菓子を店舗で買うと直後にプロのカメラマンが写真を撮ってくれるという施策が成功しました。BAKEのWechatをフォローするとその写真がダウンロードできる動線になっていて、そこからデジタルで拡散が生まれたんですよね。ついシェアしたくなるような、消費者の心をくすぐるようなコト体験を作り出すことが熱量につながる気がします。

加藤:非常に有効な施策ですね。いいたかさんの周りでアプローチに成功している会社の事例はございますか?

いいたか:現在オリオンビール様を支援させていただいているんですが、今年の夏に「#ボクの町のオリオン」というハッシュタグでトレンド2位になったんですよ。多分「#エア沖縄」とか「#沖縄行きたい」という言葉だときっと自分ごと化されなかったと思います。自分ごと化することによってハッシュタグのつけやすさが増しているんですよね。こうした設計はすごく重要だと思います。

④実行するための組織・素養

加藤:いままでお話に出てきていたような打ち手を実現する上で、どうやってマーケターが組織を作っていくのかについてディスカッションしていきたいと思います。いいたかさん、オリオンビール様のような企画はどうしたら生まれますか?

 

いいたか:エージェンシーとブランドで意見が異なると思うんですが、その商品をめちゃめちゃ知ることしかないと思いますね。僕は昔からオリオンビールが大好きでずっとお仕事したいと思っていたので、企画はとても考えやすかったです。他のメンバーもお客様の商品はめっちゃ食べまくったり、お客様の店舗に足を運んだりしています。自分ごと化って知識だけでどうにかできるものではなくて、体験がなにより大事なんですよね。なので数多くの体験をしている人こそマーケターの素養があるのかな、と思います。

濱野:長瀬さんの本にも書かれていますが、やっぱりなにより「現場感」は大事ですよね。私も最近ようやく久しぶりに中国に行けたんですが、メディアやデータをたくさん見ていてもやっぱり感じ方が違うんですよ。現場視察をして初めて気づくことってあるんですよね。

僕は2つの「KKD」のミックスこそがマーケターに求められる素養だと思っています。KKDとは、「経験・勘・度胸」と「客観的・科学的・データ」の略です(笑)

加藤:KKD(笑)。長瀬さんからもぜひ現場感についてお話を伺いたいんですが、現場感はマーケティングコミュニケーションにどう活きていますか?

長瀬:良い例よりも悪い例のほうが明確なんですよね。現場にいくと熱量が低いってすぐにわかりますし、さらにはお客様がそれを体験しちゃうんですよ。これはもう会社がお金と時間をかけて教育やトレーニングをして熱量を上げるしかありません。経営者自身が熱量が低いなんてもってのほかです。現場にいくと問題点が見えるんですが、洗いざらい取り組んでいくと結局は人の問題、組織の問題に行き着くんですよ。

ロレアルグループのトップはいろいろな国の現場をしっかり見るんですよね。ドラッグストアに行くわ百貨店に行くわSNSのコメントも見る。そんな大変なこと現場に任せればいいじゃんって思うんですけど、それでも現場に行って「スタッフが嫌な顔をしたように見えたけど大丈夫?」と声をかけてくれるんですよ。トップがここまでやっていると、やっぱ現場もしっかりやらなきゃってなりますよね。

 

加藤:本日はいろいろなお話が聞けましたが、時間になりましたので最後にみなさんから一言ずつメッセージをいただければと思います。

長瀬:今後ブランドは消費者とダイレクトにつながり、長期的にコミュニティを動かす必要があります。これは「これだけ投資すれば何ヶ月後にこうなるよね」という予算の組み方では実現できません。企業は「お客様とどうやったら関係を作れる体制になるのか」を考え、お金と時間をかけるしかないんじゃないかと思います。

いいたか:やっぱり顧客を知ることがどこの国も重要なのかなと思いました。マーケターってつい顧客を知った気になりがちですが、小手先ではなく本当の意味で顧客を知る。あっさりした話になっちゃいますが、これに尽きるのかなと。

濱野:ポジショントークをすると、やっぱり「サーチインサイト」が大事です(笑)。もちろんこれが本質だと思っていますよ。あとは、開発者や創業者の顔が見えるブランドになろうということを、本日あらためて学ばせていただきました。

加藤:熱量、現場感、KKDなどいろんなキーワードが出たセッションでしたね。KKD、ぜひ覚えて帰りましょう(笑)。みなさん本当にありがとうございました!

さいごに

中国のマーケティングについて、ソーシャルメディアの活用方法について、非常にたくさんの知見が得られたイベントだったのではないでしょうか。

顧客の声に直接触れよう、現場にでて熱量を感じよう。今回のイベントのメッセージをしかと受け止め、私も引き続きお客様のところへ取材にいこうと思います!

以上、まこりーぬがお届けしました!

 
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Mako Saito
Mako Saito LIGブログ編集長 / 人事部長 / 齊藤 麻子

1992年生まれ。2014年九州大学芸術工学部卒業後に採用コンサルティング会社へ新卒入社。法人営業から新規事業推進、マーケティング業務に従事したのち、2018年にLIGへ。2023年にLIGブログ編集長、2024年に人事部長に就任し、現在は自社のマーケティング・人事業務を担う。副業ではライターとして活動中。あだ名は「まこりーぬ」。著書『デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング』(日本実業出版社)

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