みなさんこんにちは、コワーキングスペース「いいオフィス by LIG」の管理人をしているはるちゃんです。
近年、都市から地方に移住する「UJIターン※」が注目され、地元を離れて東京で働く人の将来の選択肢として身近なものになりつつあります。
私も富山県出身で大学から東京に出てきているのですが、帰省するたびに富山で暮らしたいという気持ちが大きくなっています。でもそこでちょっと気になるのが、「地方での働き方」です。現在東京のベンチャー企業で働いている私が、地方に移住したらどんな風に働けるんだろう……?
そんなことを考えていた矢先、あるご縁があって富山県高岡市のコワーキングプレイス「COMSYOKU」のマネージャーさんとお話しする機会をいただきました。これからの地方での働き方や、コワーキングスペースが担う役割についてお話を聞いてきたので、ぜひさいごまで読んでみてください!
目次
「COMSYOKU」について
「COMSYOKU」は、昨年の2018年8月に富山県高岡市にオープンした北陸最大級のコワーキングスペースです!
快適なワークスペースはもちろん、大きなキッチンやスタジオも完備しており、多ジャンルのクリエイター、デザイナー、経営者、インストラクターなど、さまざまなスキルを持った人たちが集まります。そんな人たちが出会い、相互に貢献し合えるクリエイティブなコミュニティづくりの場として、富山でも注目されています。私もずっと気になっていたスペースなので、当日までHPを見ながらわくわくしていました(笑)。
ということで今回は、富山県でいま一番勢いのあるコワーキング・COMSYOKUのマネージャー大坪さんにお話を伺いました!
COMSYOKUマネージャー 大坪史弥さん
- プロフィール
- グリーンノートレーベル株式会社 所属
1989年、富山県射水市出身。2012年、求人広告会社に新卒で入社。2015年に退職し、Uターン。2017年7月、地域交流センター企画(現GNL株式会社)入社し、氷見市IJU応援センター(みらいエンジン)のマネージャーとして勤務。その後、COMSYOKUの立ち上げを担当。働きながら通信制大学で建築を学ぶ社会人学生。趣味はサウナ。
生まれ育った富山にUターンしたきっかけとは?
はる:私、大坪さんと同じ富山県立高岡南高校の出身なんです! 高校時代の思い出ってありますか?
大坪:個人的に「万里※」がめちゃめちゃエモい。高校時代の友達と会うと、いまでも話題にあがります。
※ 「万里」とは、富山県立高岡南高校にある校舎と校舎をつなぐ橋。万里の長城に似ていることが名前の由来。
はる:懐かしい……! 卒業アルバムの仲良しグループの写真は「万里」で撮ったのを覚えています(笑)。高校を卒業したあとは、首都圏の大学に進学されたんですか?
大坪:横浜市立大学に進学しました。卒業後は新卒でリクルートジョブズという求人広告会社に就職して、静岡県で求人広告の営業や派遣スタッフの募集などの仕事をやっていました。3年弱働いて、2015年の1月に富山にUターンしました。
はる:Uターンを考えたきっかけはなんだったんですか?
大坪:僕の場合、ポジティブな理由じゃないんですよ。実は母親が亡くなって、実家に親父と介護の必要なばあちゃんしかいない状態になってしまって。家族が心配でしたし、キャリアの転向も考えてた時期でもあったので、富山に戻ることにしました。
はる:そうだったんですね。Uターンを決めてから仕事をやめて、実際に帰ってくるまでどのくらい期間がかかったんですか?
大坪:富山に帰ることを決めてからは、約2週間でもうこっちに住んでましたね。ずっと静岡にいる意味もなかったので、すぐに行動しました。
はる:は、はやい……! 帰ってきてからは、何をされてたんですか?
大坪:すぐに動いたわりには長い間、人生の迷子でしたね。ばあちゃんの介護しながら、国立大学受験しなおしたり、大工さんの職業訓練校に行ったり、通信制の芸術大学に入学したり。よくわからない仕事もたくさんしました。県内のダムにコピー機を搬入し続ける仕事とか、木材をダンボールに詰め続ける仕事とか、スマホの初期設定をし続ける仕事とか。
そんな生活を2年くらい続けていたんですが、介護していたばあちゃんが亡くなったこともあり、フルタイムで働こうかなと思ってWantedly経由で今の会社に応募をしました。2017年の7月に入社したので、もうすぐ2年になりますね。
COMSYOKUの立ち上げと、運営する上で大事にしていること
▲エントランスにある、おしゃれな黒板
はる:今の会社には、もともとコワーキングスペースの運営をするつもりで入社したんですか?
大坪:いや、入社当時コワーキングスペースの運営の計画はありませんでした。入社後は県内の自治体から委託された事業のプロジェクトマネージャーをしていました。
で、入社から1年ぐらいしたら、食品スーパーの2階にコワーキングスペースを立ち上げるというお話をいただき、お前行ってこいってことでコワーキングスペースをやることになりましたね。
はる:おお……いきなりコワーキングの運営側に回るのって大変ですよね。スペースを運営していくにあたっての、COMSYOKUさんのコンセプトについてぜひ詳しく教えてください。
大坪:COMSYOKUって、COM(混じる、コミュニティー)とSYOKU(色・食・職)で2つに分かれていて。起業家もフリーランスも企業人も一緒に集い、仕事や趣味で繋がれる「クリエイティブな働く場」をコンセプトにしています。
これが表のコンセプトではあるんですけど、実は個人的に目指している裏のコンセプトがあって。それが、「なるべく富山県でさみしい人がいなくなるように」です。富山って偶然誰かと出会うことが少ないんです。車移動が基本だし、知らない人同士がだべったりできるところもあまりなくて。Uターン後の初めの2年間、僕自身誰にも相談できず、孤独で、辛かったので、そういう思いをする人が少なくなればいいなあ、と思って運営しています。
はる:ふむふむ、フリーランス同士のつがなりだけでなく、組織とのつながりも生まれるスペースを目指していらっしゃるんですね。利用者さん同士のコミュニケーションが生まれるようなしかけには、どんなものがありますか?
大坪:ひとつは、「つながるボード」ですかね。いきなり知らない人に話しかけるのは抵抗がある方も多いので、自分のできることとやって欲しいことを書いてもらって、話題作りをしています。あとは、会員さん専用のSNSグループもあるので、そこで交流を深めてもらっています。
ほかにも、月に2回お食事会も開催しています。お手伝いしてくれている人で管理栄養士の子がいて、毎回身体にいい料理を作ってくれるんです。
はる:それはいいですね! いいオフィスでも月に1回、会員懇親会をやっています。お酒を飲むとコミュニケーションが弾みますよね!
大坪:それが、富山県は車移動なんでお酒は難しいんですよ……。酒と飯があれば仲良くなれるのはわかっているんですけど、そこができないのは郊外立地の弱点ですよね。
▲オープンスペース内に設置されている、つながるボード
COMSYOKUを富山で続けていく意味とは?
▲オープンスペースでお話をする大坪さんと会員さん
はる:弊社も広島でコワーキングを運営しているんですけど、地方で、そして富山でコワーキングをやっていくのって難しいですか?
大坪:けっこう厳しいですよ。まずコワーキングって何だろう? という方が多いですし、仮にその概念がわかったとしても、コワーキングの主な利用者であるフリーランスやスタートアップの数が少ないです。今後増えていくだろうけど、まだ時間がかかると思います。
ただ、絶対この事業はやらなきゃいけないなと思っています。というのは、県内企業でブランディングやマーケティング、デザインといったクリエイティブな分野に力を入れていきたいという企業は多くなってきています。一方で地方にはそういった専門人材がまだ少ないですし、採用も難しいという現状もあります。そういうときに自社で採用、雇用するのではなく、COMSYOKUにいる人に頼む、相談するみたいなことを気軽にできる環境ができれば、地方の人材不足っていうのも解消されるのではないかと思っています。富山県が一歩ジャンプするためには、絶対続けていかなきゃいけないことだと考えてます。
はる:なんか……すごいかっこいいですね!! 実際、富山県内の会社さんとCOMSYOKUの会員さんを繋げることは始めてらっしゃるんですか?
大坪:まだ少ないんですけど、事例はあります。たまに、こんなことできる人いませんか? って、企業の方がいらっしゃったりするんですよね。地場の企業でも、代理店に頼むんじゃなくて、デザイナーさんと直接やりとりしたいところも徐々に増えつつあるんです。そういう案件が出てきたら、お繋ぎしています。
ただ、今は会員さん同士をつなぐ方が多いですね。あと大事なのは、僕たちで案件を作ることだと思っています。うちの会社も少数でやっているので、依頼として会員さんにお願いもしています。最初は自分たちから始めることで、それが見本になると思うので。
はる:そういうのってワクワクしますよね! ちなみにコワーキングは、何名で運営されていらっしゃるんですか?
大坪:今COMSYOKUは僕と、アルバイト2名で回しています。でもだいたい僕がいますね(笑)。
オートロックなので正直スタッフいなくても回るんです。でもそれってうちのやりたいことじゃないので、スタッフを置いています。コワーキングスペースでも、無人運用で場所貸しメインのスペースもけっこうあると思うんですよ。それじゃないと収益立たないのはわかるんですけど、やっぱりつながりを大事にしたいですよね。
はる:うんうん。いいオフィスも、もう4年以上やっているんですけど、昨年の移転お別れパーティーのときに、新旧の会員さんが80名近く集まってくれて、本当に嬉しかったんですよ!
大坪:すごい素敵ですね、そういうときにやっててよかったって思いますよね。それが醍醐味ですし、それを目指して頑張ってるっていうのもありますね。
▲大きなキッチンスタジオもあり、ここから交流が生まれることも
今後の地方での働き方と、COMSYOKUの役割
はる:さいごに、大坪さんが考えている現状の地方での働き方と、今後の働き方についてお伺いしたいです。
大坪:富山って、正社員比率がトップクラスに高いんです。これを称賛する声は多いですし、安定した雇用があることは素晴らしいことだとも思います。ただ、ひとつの組織に正社員として勤めることだけを良しとされるのは違うと思っていて。
フリーランスだけど組織の一員のように働く。会社員だけど社外の個人と一緒にチームを組んでサービスを作る。もっといろんな働き方があっていいように思いますし、そのほうがイノベーションが起きやすいと思います。
はる:たしかに、富山でも多様な働き方がもっと認められるようになると、私も移住に踏み切りやすくなりますね。
大坪:これから地方の働き方がどんな風に変わっていくのかなあって考えたら、企画職とかマーケとかデザイナーとか、クリエイティブな仕事が増えてくんじゃないかな? って個人的には思ってます。今どこの地方も、インバウンド需要の獲得や新たなニーズの喚起のために、自分たちの製品や観光商品のリブランディングをしっかりとやっていかないといけないっていう意識が高まってきますし、それをやってくれる人を求めてクリエイティブ職の採用や依頼は増加すると思います。
とはいえ、繰り返しになりますが、地方はそういった人材が不足していますから、地元での採用や依頼だけでなく、都市圏からリモートでマーケだけ関わるみたいな兼業人材が増えていくんじゃないかと。で、ノウハウが地方にたまりはじめると、地方の中小企業で内製化が進んで新しい雇用が生まれるかもしれない。なので、地方と都市の働き方の境界線がなくなってきて、ぬるっと一緒になっていくんじゃないかな〜と考えています。かなり希望的な見方ですが、いい方向に変わっていきそうな気がしています。
はる:フリーランスの人でいろんな地方回って仕事していらっしゃる方も増えてますしね! そういう人たちがちゃんと、地元の困っている会社さんと繋がれる場所になったらいいんですよね、きっと。
大坪:そうそう、今全国住み放題サービスも出てきましたし、どんどん人材の流動性は高くなると思っています。たまに都市圏の大企業の方が、地方とのコネクターを探しにいらっしゃったりするようにもなりました。
はる:おお、それは変わってきている証拠ですね! それではさいごに、Uターンを考えている人に一言メッセージをお願いします!
大坪:UターンとかIターンを考えている人って、少なからず「都落ち」みたいなイメージを持っていると思うんですよ。都会で夢破れて、みたいな。僕みたいにネガティブな理由で帰ってきた人はとくにそうかもしれません。でも実際帰ってきたら地方は案外チャンスに溢れていると思います。 ただ、何事も自分で動かないと生まれないので、自分が作る! くらいの感覚でいることが大事です。ぜひ、どんどん自分で動いてみてください!!
はる:今回は貴重なお話をたくさんいただきまして、ありがとうございました!! また帰省したときはお声をかけさせてください……!!
▲笑顔が素敵な大坪さん、ありがとうございました! これからも仲良くしてください!
「COMSYOKU」のInformation
営業時間 | 9:00〜21:00 |
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ビジター料金 | 1h/500円 1day/3,000円 |
月額料金 | デスク会員 15,000円〜 ※プランによって利用範囲が異なりますので、詳しくは公式HPをご覧ください。 |
場所 | 富山県高岡市戸出町4-3-28 大阪屋ショップ戸出店2F |
地図 | |
Webサイト | https://comsyoku.net/ |
さいごに……
地方での働き方にまったくイメージがつかなかった私ですが、大坪さんとのお話をとおしてたくさんのヒントをいただきました。ぜひこの記事が、UJIターンを考えている方の働く不安を、ちょっとでも解消できたら嬉しいです。
もっと詳しく聞いてみたいという方は、ぜひ大坪さんに会いに「COMSYOKU」へ遊びにいってみてくださいね!
また、現在いいオフィスでは全国でフランチャイズ(FC)店舗を募集しております。地方でのコワーキングスペース運営に興味を持たれている方は、ぜひご連絡ください!
それではまたいいオフィスで! はるちゃんでした!