Webサービス開発、あるよ
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2019.04.03
#1
Editor's note

「LIGブログってそもそも何なの?」1年間運営をやって考えたこと(Editor’s note #1)

中野 慧(ケイ)

こんにちは。LIGで編集者として働いているケイ(@yutorination)です。

僕は2018年2月に入社してすぐ、この「LIGブログ」の運営責任者をやることになりました。今回は約1年、LIGブログを運営してみて感じたこと、「そもそもLIGブログとは何なのか?」ということについて書いてみたいと思います。

「LIGブログ」って何? という疑問

毎月500万PV、オウンドメディアの成功事例として知られる「LIGブログ」。

しかし当初の僕は「LIGブログ」とは何なのかを、あんまりわかっていませんでした。記事広告も載ってるのに、なんで「ブログ」なの? Webメディアじゃないの?  と、当初は思っていました。

でも、社長のゴウさん、役員、数多くの社員と話し、昔むかしの記事もたくさん読んで、1年間実際に運営し、理解を深めた今の段階では「LIGブログ」でいいのではないか、と思っています。

LIGブログは「サラリーマンブログ」

「LIGブログって何なんだろう……」

そんな簡単なようで難しい問いに思いを巡らせていたあるとき、ブロガーのイケダハヤトさんの、こんな記事に行き当たりました。

サラリーマンのブログが超つまらない理由:あるいは資本主義の攻略法。 : まだ東京で消耗してるの?

ここでは、「LIGブログはそこそこ頑張ってるしそこそこ面白いけど、結局サラリーマンブログだから限界は見えている」ということが指摘されています。エントリから一部を引用してみます。

サラリーマンは「守るもの」があります。だから、つまらない。

会社員であるあなたが文章を書くとき、あなたは「こんなこと書いたらやばいかも」という恐れが頭をよぎります。そしてあなたは、結論を変え、文末のエッジを落とし、「笑い」と「愛」でお茶を濁すのです。ああ!

守るものがある立場からは、もう「面白いもの」は生まれてこないんです。

そう、LIGブログはそもそも「LIGの社員が1ヶ月に1本、その月に学んだことや考えたことを書く」という社員ブログ=サラリーマンブログなのです。

そして、「サラリーマンブログは攻められない」ということこそが、LIGブログが抱える本質的な問題だ、と言われているわけです。

LIGブログの5つの目的

当時、イケハヤさんの記事を受けて、社長のゴウさんがこんなアンサー記事を書いています。

この記事ではとてもわかりやすく、LIGブログの目的が5つ挙げられています。

  1. 【教育】自分たちの学んだことや技術を、記事としてアウトプットをしよう
  2. 【営業】自分たちのやれることを伝えて、仕事を貰おう
  3. 【採用】一緒に働きたいと思ってもらえるような情報を発信しよう
  4. 【収益】ブログで直接収益を上げよう
  5. 【ファン】上記4つの活動を通じて、LIGのファンをつくろう

・・・・・

LIGブログには7000ほどの記事がありますが、すべて無料で読むことができます

これは冷静に考えるとすごいことです。

新聞・雑誌などのマスメディアは基本的に、広告+購読料というモデルで運営されています。無料で読めるWebメディアの場合は、バナーや記事広告などの「広告収入」に依存しますので、毎月数百万レベルのPVを稼がなければ、それ単体では運営者の月給すら捻出できません。

たとえば、かつて菊池良さんが書いたこの記事のまとめ部分に、非常に重要なことが書かれています。

「Webメディアを運用しよう」「Webに記事を配信しよう」となっても、予算がありません。原稿料は記事1本につき2000円が相場でした。

それでは取材ができません。

そう、広告のみに収益を依存しているWebメディアの場合、予算の都合上、取材すらできないのが普通だったのです。

しかしLIGブログの場合、「教育」「営業」「採用」「ファン」という、広告収益以外の4つのメリットをグルグルと回し続けているからこそ、ときには取材ベースのリッチなコンテンツも作れて、今に至るまで運営を続けることもできているのです。

基本的にこれまで雑誌・書籍と、その延長線上の有料Webマガジンに関わってきた僕からすれば、「無料で読める」という状態を確保しつつ、ビジネスとしても回せているのは素朴にすごいことだと思うのです。

社員ブログが担うべき「役割」?

さて、LIGブログはイケハヤさんのいうとおり社員ブログ(=サラリーマンブログ)です。

では社員ブログの本質とは何でしょうか?

少しスケールを広げて考えてみたいと思います。

そもそも、インターネット以前はマスメディアしか情報の巨大な流通網を持っていませんでした。

しかしインターネットが出てきて、マスメディアでなくても情報発信できるようになり、そこで出てきた新しいメディアが、社員ブログでありオウンドメディアでした。

そして「日本社会」という文脈において、社員ブログが革命的であった点はもうひとつあります。

日本では普通、組織に所属しているサラリーマンの場合、自分の意見をなかなか情報発信できません。会社名を名乗って個人でTwitterアカウントなどを持っている人は、だいたいプロフィールのところに「個人の意見であり会社の意見ではありません」といったことが書かれています。サラリーマンの身分を背負って発信するのはすごくハードルが高いのだと思います(山本七平が言うところの「空気」、阿部謹也が言うところの「世間」のプレッシャーがそうさせるのでしょう)。

 

それを裏返すと、LIGブログの強みは

「サラリーマンなのに『空気』を読まず、『世間』に囚われず、楽しく自由に情報発信している」

というところに尽きるのではないかと思っています。

そこではマスメディアほど情報のレベルを揃えることはできませんが、だからこそ可能な表現や問題提起もたくさんあるはずで、かつ、最初は拙くとも成長する姿を見せることがコンテンツとしての大きな魅力にもなるはずです。

だからイケハヤさんの言うように「LIGブログがつまらない」のならば、それは「サラリーマンブログだから攻められない」のではなく、「サラリーマンブログだからこそできることがあるのに挑戦していない」ということによるのではないか、と思うのです。

LIGブログをマスメディアと同じようなものとして考えると、どうしても「情報のレベルを揃えたい」という欲が強くなります。内容が薄かったり、広報的にちょっとどうかな? と思える記事が上がってきたとき、僕のような編集者が内容の補強をしたり、角を丸くしたりしてしまいがちです。

しかし「社員ブログ」の本義に立ち返ると、ある程度は社員同士で考えの幅があったり、記事ひとつひとつのクオリティに高低があっていいはずです。

もし仮に「社員ブログ=会社の意見なので完璧に編集しなければいけない」のであれば、絶対に毎回編集がガッツリ入り、役員チェックを通し、社長のチェックも通して、会社の総意として出さなければいけません。しかしそれは果たして社員ブログなのでしょうか?

「人権侵害をしない」「コンプライアンス違反をしない」といった最低限の部分をクリアしていれば、そのなかに意見の幅やクオリティの高低があっていいし、あるべきだと僕は考えます。

LIGブログは「遊んでいる」ように見えるかもしれませんが、LIGで働いている人たちはすごく仕事に真面目な人たちです。そんな社員たちが「サラリーマンでも、もっと楽しく自由に、遊び心をもって発信していいんだ」というのを実践する場所なのだと思っています。

まとめると、「LIGブログの社会的意義や価値」は、

  • サラリーマンなのに「空気」や「世間」に囚われず楽しく自由に情報発信する
  • 最初は拙くても成長する姿を見せる
  • それを他の会社や個人にも真似してもらう
  • それがめぐりめぐって、個人が組織に所属しながらも、もっと自由に情報発信できる世の中になる

ということにあるのではないかと思っています。

社員ブログという「枠」のなかで最大限クリエイティビティを発揮してほしい

もう少しだけ議論を進めると、LIGブログでは、会社に所属したまま、ある程度の縛りがある中で、どこまで自由な表現ができるかということにチャレンジしてほしいということを、個人的には思っています。

僕はよく「アイドル映画」の話をします。

たとえば大林宣彦という映画監督は、自分でオリジナルの映画を撮ってもおもしろいけれど、『時をかける少女』のようなアイドル映画を撮らせたらおもしろい人だったりするわけです。最近でいえば『天然コケッコー』『マイ・バック・ページ』の山下敦弘監督も、『リンダ リンダ リンダ』や『もらとりあむタマ子』のようなアイドル映画を作ると、とてもおもしろい。

 

要は「アイドル映画を作ってください」という制約のなかで、最大限クリエイティビティが発揮されることはけっこうあるのです。逆に「制限がない中で自由に面白いものをつくってください」と言われてしまうと、若干パワーダウンしてしまったりします。

LIGブログの「社員ブログ」という縛りは、そういうクリエイティビティを引き出すための「枠」であり、LIGブログというものは「会社組織に所属したまま、どれだけ自由な表現に挑戦できるか」をめぐるゲームなのだと思います。

ゼロから成長していくのがネットの、社員ブログのコンテンツとしての楽しさなのであって、最初から完璧なものはディズニーやピクサーがやればいい。僕らはディズニーでもピクサーでもありません。

個人と会社の意見に多少のずれやクオリティの高低があってもいい。だけど大枠の中で向いてる方向は一緒であってほしい。その方向性を大まかでいいから揃えていくというのが、おそらく社員ブログの運営者に求められることなのではないでしょうか。

そしてもうひとつ、やや今回書いた本筋からは外れてしまいますが、すごく編集に力を入れた記事と、書き手の自由にやってもらう記事があってよく、そのメリハリをつけるということも、運営する上ではとても重要なことだと思っています。

▼僕がめっちゃ力入れてライティング&編集し、PR記事制作チームのバンビさん&ガクさんと密に連携して作った記事です。大ボリュームですがめちゃんこ面白いと思ってるので、ぜひ読んでみてください!

一旦のまとめ

こういった1年間の振り返りを、これから連載形式で少しずつ出していこうと思います。僕はこの連載名を「Editor’s note」としました。これは日本語でいう「編集後記」のことです。

かつての尖った雑誌にはだいたい、「巻頭言」「編集後記」というものがありました。そこには編集者たちのキリッとした宣言や、ゆるいこぼれ話が書いてあって、読者として楽しみに読んでいたことを思い出します。今回はだいぶ真剣な話を書いてしまいましたが、ちょっとしたコラム的な内容も書きたいと思います。

もしよければ、こっそり楽しみにしていただけたら、とても嬉しいです。それではまた。

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