こんにちは。エディターのケイ(yutorination)です。先月(2018年4月)は「音声入力」を活用した原稿作成について書いたのですが……
音声入力時代の原稿作成、あるいはテキストの危機について
音声入力はあくまでもツールにすぎません。記事を書く際にもっとも重要なのは当然、「中身(コンテンツ)をいかに充実したものにするか」ということですよね……!
今回は、コンテンツを充実させるための企画書作成から当日の段取りまでを解説したいと思います。
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目次
「インタビュー」に挑戦して読まれる記事をつくろう
独力で「面白い記事」「読まれる記事」を書こうと思っても、自分に中身(最近ではよく「コンテンツ力(りょく)」と言われたりします)がなければいい記事は書けないですし、そもそも駆け出しのライターが自分の意見ばかり述べたとしても「お前誰やねん」という話になってしまいます。
悲しいことに、権威主義的パーソナリティ(E.フロム)の多いPoisonなこの世界では「何を言うか」よりも「誰が言うか」がすごく重視されてしまうんですね。
じゃあ、ちゃんと中身もあって、読者に読んでもらえる記事にするためには……?
そう、すでに何らかの実績のあるクリエイター、研究者、評論家、ジャーナリスト、芸能人といったスペシャリストに取材を行って記事にする、というのが近道になります。
すでに実績のあるスペシャリストは中身(コンテンツ力)をしっかりと持っているので、往々にして独力でもよい記事を書けてしまったりします。しかし、さらにそこに「インタビュアー」という変数が加わると、その人の持つコンテンツに違う角度をつけることができ、「より多面的なものの見方」を読者に提示することができます。
これがインタビューをやることの付加価値だと僕は思っています。
というわけで、「中身のある記事がうまく書けない」という人には、ぜひインタビュー企画に挑戦してみてほしいと思います。
……また前置きが長くなりましたが、今回はテキストコンテンツ作成の基本となるインタビューのやり方、当日の段取りについて書いてみようと思います。
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そもそも何が「よいインタビュー」なのか?
いきなり本質論からいきたいと思います。
何が「よいインタビュー」なのか?
一言でいえば、それは「付加価値があること」だと僕は思っています。
「付加価値」という言葉はいろいろな意味に解釈できます。まず簡単に思い浮かぶのは、「似たようなインタビュー記事と内容のカブリがないか」ということでしょう。当然、すでに出ている取材対象者へのインタビュー記事は「◯◯(取材対象者名) インタビュー」でググり、ひととおりチェックしてカブリのないようにしておく必要があります。
それに加えて、著作がある人であれば著書を読む、TwitterやFacebook、ブログがあればそれも時間の許すかぎり読みます。
ひととおりインプットを終えれば、必ず「自分がその人に聞いてみたいこと」が出てくるはずです。実際の現場では、その「他の媒体では聞かれていないこと」「その人が思っているはずだがまだ自覚的に言語化できていないこと」を念頭にインタビューを進めればOKでしょう。
さて、ここまではある種当然のことです。
ふたたび「付加価値があること」という本質論に立ち戻ってみると、もうひとつ「付加価値をつける方法」があることに気づきます。
それは、インタビュアーの「その人らしさ」を出すこと。
出版、Webメディアなどのテキストメディア業界ではよく「インタビュアーはできるだけ黒子に徹しろ」「存在感を消せ」「石ころ帽子でも被ってろ」ということが言われます。読者からすれば取材対象者の話が読みたいのであって、インタビュアーの意見はノイズでしかないと考えられているわけです。
しかし本質論で考えると、「取材対象者の意見だけが読みたい」のであれば、その人の著書やSNS、ブログを読むだけでいいはずです。読者に付加価値を提供するためには、「それまでとは違う角度をつける」ことが重要なのであり、であれば当然「インタビュアーの意見をぶつけてみる」こともひとつの選択肢として考えられていいはずです。
もちろん、インタビュアーの意見ばかり載っていてはバランスが悪くなってしまうのですが、とはいえインタビュアーの存在感がゼロでは逆にその記事に付加価値がなくなってしまいます。単にライターや編集者のパイセンたちが言っていること(=存在感を消せ)を鵜呑みにするのではなく、本質論から出発してどういうバランスが最適かを考えておく必要があると思います。
どうしたらインタビューがうまくなる?
僕は大学生のときにライティングや映像制作などを始めたのですが、インタビューコンテンツを作りたいと思っても、どうやればいいのか最初はまったくわかりませんでした。なので、とりあえず最初にやったのは『インタビュー術!』や『インタビューの教科書』といった一般のインタビューノウハウ本を読むこと。
もちろんこれらの書籍は参考になりましたし、当然参考にすべきなのですが、一番学びがあったと思うのは「インタビューのうまい人の取材についていくこと」。
自分は取材対象者に質問しなくてもいいのですが、「対象にどんなことが聞きたいか」をリストアップしてから現場に行き、雑用などをこなしながらも「自分がインタビュアーになったつもりで」「自分だったらどうする?」をつねに考えつつ観察していました。
そうすると「自分も質問してみたい……!」というオーラが外に漏れ出ているのか、収録の終わり際に「何か聞きたいことある?」と話を振られて質問する機会をもらえることが多くなりました。単に「インタビューに同席してれば何か自分にもスキルつくかな」などと甘いことを考えていてはダメで、「自分だったらどうするか」をつねに考えておくマインドが重要なのだと思います。
インタビューの事前準備は何をすればいいか
まためちゃくちゃ長くなっていますね。ここからは駆け足で、実際のインタビューの企画立案から収録、アフターケアまで、気をつけておきたいことを書いていきます。
企画書を書く
インタビューを申し込む際に送る企画書には、媒体特性や目的などを明記し、インタビューの主要なテーマをひとつ、そして具体的な質問案を3〜4項目記載しておけばOKでしょう。PDFにしてメール添付で送るのが丁寧ですが、場合によってはメール本文に書くだけでも大丈夫です。
ちなみに学生であれば「◯◯という学校の授業の課題で〜」とか「学生メディアをやっていて〜」という非常にライトな動機でも著名人に取材を受けてもらいやすいです。学生の特権はフル活用しましょう。ただし、「どこどこの学生が取材に来たけどすごい失礼な感じだった」という話はめちゃくちゃよく聞くので、けっして先方に非礼のないようにお願いします。
インプット
これはすでに書きましたね。当然、下調べは重要です。ただし「全部必要なインプットを終えてから企画書を出す」だと時間がかかりすぎるので、「主要なインプットを終えたら企画書を書いて提出→取材日までに残りのインプットを行う」だと時間のロスが少ないです。
アウトラインを書く
企画書に書いた主要テーマと質問項目3〜4個に加えて、取材日までにインプットをすべて行って質問したい項目を大量に書き出しておきます。ただし大量に書き出すとカブリも多いので、三日三晩寝ながら考えて取材日前日までには7〜8個にまで精査しておき、インタビューの流れのアウトラインを作っておきましょう。
録音機材を2つ以上用意する/スマホの空き容量、充電状態を確認する(←地味に超重要)
録音機材に関しては、今はiPhoneの「ボイスメモ」などのスマホアプリが非常に優秀なのでICレコーダーがほとんど必要なくなりました。とはいえどんなトラブルがあるかわからないので、スマホで録るとしても最低2台あったほうがいいです。なければ「枯れた技術」ICレコーダーの出番です。
「電池切れや容量不足で全部を録音できなかった!」というのは若者が犯しがちなミス。あとでパイセンにものすごい怒られます。事前に充電を完了し、かつ空き容量もよく確認してから取材に臨みましょう。
実際のインタビューはどう進めればいいか
ここからは実際のインタビュー時の流れを説明します。
アイスブレイク
取材対象者にお会いしたら、きちんと挨拶と名刺交換をするのは大前提。そこからいきなり収録に入るとお互い緊張してしまうので、まずは雑談を交わすのがよいと思います。天気のことや来る途中の道順で感じたこと(例「武蔵境っていい街ですよね〜。こないだドラマの『電影少女』にも駅前の図書館が出てきてましたよ!」etc)、取材場所にあるモノなど、話題はなんでもいいです。
それと、雑誌やフリーマガジン、学生新聞などであれば見本誌を持っていくのはマストなので忘れないようにしましょう。
改めて媒体説明
すでにメールで送ってあるのですが、改めてきちんと媒体概要・取材目的を説明します。僕はなぜか媒体説明をするときが一番緊張するのですが、要は「慣れ」です。最初はスムーズにできなくて当たり前、数をこなせばうまくなると思って気楽にいきましょう。ちなみに媒体説明はその後のインタビューの流れにも影響するので、雑談フェーズからしっかりと切り換えて、真剣なオーラを出しながら行います。
まずはアウトラインどおりに聞く/アウトラインから逸れたときこそいい記事になる
実際のインタビュー収録の段になったら、「じゃあ今からレコーダーを回します」と断ったうえで録音をはじめ、これまでに練ってきた質問案を順番に聞いていきます。
ここで注意したいのは「想定していたアウトラインから逸れることを恐れない」ということです。むしろアウトラインから逸れたときこそ、その内容には価値があると考えたほうがいいと思っています。
経過時間をつねに気にする
ただし、「アウトラインから逸れるのがいい」といっても、つねに時計を見て経過時間を計ることを忘れないようにします。残り時間が半分以下になったときは、いったんアウトラインに戻るように会話を導いていくのがよいでしょう。
「経過時間を気にする」というのは「原稿にしたときにどういう構成にするかを考えておく」ということとほぼ同義です。「このあたりの話は導入に使おう」「ここは中盤の盛り上がりに」「ここは締めにしよう」ということを頭に思い描きながら話を聞きます。1時間なら1時間のインタビューの内容を、どれぐらいの長さの原稿にするか、どんな構成にするのかを考えてインタビューを進めるのが、よい原稿作成のための第一歩です。
メモはする? しない?
よく「取材中はきちんとメモをとろう!」派 vs.「いや、メモなど取らずに話に集中すべきだ!」派が、血で血を洗う争いを繰り広げています。僕の結論は「どっちでもいい」です。ただ、アシスタント的に取材同行する若者であればメモは取ったほうがいいでしょう。
というのも、その若者にとっては取材内容ではなく「取材のやり方」を学ぶことが主目的になるので、漫然と眺めるだけになることを防止するためにも、集中して観察し、気づいたことをとにかくメモしておくほうがいいと思うのです。なので「メモをとる」は少なくとも「若者」ポジションのときには有用です。
でも、慣れてきて自分がメインインタビュアーとして話を聞くのであれば、メモをとるよりも話に集中したほうが、よい内容が録れます。というか話に集中しているとメモを取っている暇なんてないんです。
ただし僕もちょっとしたメモはとります。取材対象者が長く話しているあいだにツッコミどころや「ここをもっと掘ったら面白い」という箇所が必ず出てくるので、その「アウトラインになかった新しい質問」を単語レベルでメモしておくのです。
「ずっと取材対象者のターン!」のときに話をさえぎって新しい質問を投げてしまうと、せっかく話してくれている部分の掘り下げが中途半端になってしまうのですが、とはいえ頭にパッと浮かんだアイデアはすぐにメモしておかないと話に夢中で忘れてしまいます。
なので、気になった点を「新しい質問」としてメモしておいて、「ずっと取材対象者のターン!」が終わったらその質問を投げます。要は「内容の要約メモはとらないけど、フラッシュアイデアはメモする」ということです。
なぜこういう発想になるかというと、僕の場合、インタビュー記事作成の際には「全文ベタ起こし」を前提としているからです。あとで文字起こしすることが前提になっていれば、取材中にメモをとる必要がないんですね。(なぜ文字起こしを重視するかは前回の記事に書きましたので、そちらをご参照いただければ幸いです)
インタビューが終わったら
「駆け足で」といいつつ、さらに長くなってしまったので、またユーザーや社内の人間から苦情をいただくことになりそうです……。さいごにインタビュー後のアフターケアについて書きます。
原稿がいつぐらいに送れそうかを伝える
別れ際に「6月上旬ぐらいに原稿をお送りしようと思っています」と、スケジュールのめどを伝えます。これは取材対象者へのリスペクトでもありつつ、自分たちにプレッシャーをかける意味合いもあります。とはいえその予定が遅れる場合もあるので、最低でも原稿を送る1週間程度前には再度、取材対象者に連絡しておくのがよいでしょう。相手の方も作業の想定がしやすいので、気持ちよく仕事をしてもらえると思います。遅れたうえに突然原稿を送ってしまうと悲しいことが起こるので、気をつけて!
おわりに
今回はインタビューについての考え方、実際の段取りについて書きました。インタビュー収録が終わったらさっそく文字起こしにかかりますが、その際には前回書いた「音声入力」のやり方が参考になると思います。
そして文字起こしができたら、あとは野となれ山となれ……!!
といいたいところですが、原稿を整形して仕上げに持っていかないといけないですよね。ひとまず言えるのは「文字起こしをなるべく正確にやり、かつそれをよく読もう」ということです。言葉の端々にいろんなニュアンスが隠れているので、それを何度も読み、しっかりとニュアンスを拾って内容を完全に理解すれば、おのずとよい原稿ができあがるものです。
というわけで、「事前準備や基礎的な部分を決しておろそかにしない」ということが重要だと思います。以上の点を頭に入れて、よいインタビュー記事をつくっていきましょう!
(おわり)