こんにちは! よーこです。
仕事をしているとどうしても逃れられないのが、資料(ドキュメント)作り。上司やクライアントから「何か違う」と言われたり、制作途中で「あれ、何作ってるんだっけ」となってしまったり、PowerpointやKeynoteなどを駆使して必死に作成するも「この資料、なんかパッとしないな」と感じたり……。そういう経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
そんな「ドキュメントをもう一歩ブラッシュアップさせたい」というみなさんに、「デザイン」の観点からドキュメント作成のポイントをお伝えするイベントを開催しました。
(今回は、LIGが運営するWebクリエイタースクール STUDIO上野 by LIGの主催イベントです。)
登壇者紹介
ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー/ 佐藤好彦氏 ウェブなどのメディアのデザインやプランニング、コンサルティングとともに、デザイン関連の書籍や雑誌の執筆も手がけている。著書に『デザインの授業 目で見て学ぶデザインの構成術』『フラットデザインの基本ルール Webクリエイティブ&アプリの新しい考え方。』『ビジネス教養としてのデザイン 資料作成で活きるシンプルデザインの考え方』など。その他、共著多数。東京造形大学非常勤講師。 |
株式会社メタ 取締役 / 佐藤丈公氏 大手監査法人にて、各種法定監査、M&A・組織再編にかかるフィナンシャルアドバイザリー業務、事業承継支援業務に従事。2016年1月に独立。 組織経営全般の支援、組織開発支援、人材の育成制度の構築・運用支援、事業計画策定等コンサルティング業務を提供。上記業務に継続従事するとともに、業界・専門性・学問領域に捉われない研究開発に注力している。公認会計士、税理士。 |
デザイナー・POLAAR/カワセタケヒロ氏 コンセプター、グラフィックデザイナー。浅草橋のデザインスタジオ・POLAAR(ポーラー)主宰。FabLab Nagano外部アドバイザー。高校在学中に世界保健機関(WHO)の準会員NGO・国際医学生連盟日本支部でウェブマスターを担当。都内制作会社数社を経て2011年に独立。CI計画、UXデザイン、グラフィック、Web、映像など、ブランディングに関する設計・制作を中心に活動中。 |
ドキュメントデザインのキホン
「ドキュメントをデザインする」というと、「ドキュメントに入れるべき内容(コンテント)は何にしようか?」「具体的にどういう見せ方にしようのか?」と手っ取り早い解決策を求めてしまいそうになりますが、その前に取り組むべきことが別にありました。
コミュニケーションツールとしてのドキュメント
組織開発コンサルタントの佐藤丈公さんから伺った、ドキュメント作成に入る前におさえておきたいポイントは「根回し」。言い換えると、必要な人と必要なコミュニケーションを取り健全な関係性を作ること、だそうです。
私たちに身近なドキュメント=上司への共有や提案事項・クライアントへ提案する資料は「情報を伝えるという目的」を持ってつくられるもの。また、「なぜその情報を伝えるのか」というコミュニケーションの元々の目的は忘れられがちです。ドキュメント作成者の一人よがりになってしまっては、これら2つの目的を逃してしまうこともしばしば。
ドキュメント作成の目的を意識しながら、作成のプロセスに「内容や伝え方の確認」=「根回し」というコミュニケーションを加え、効率よくドキュメント作成ができる良い環境をつくっていきましょう! ということのようです。
- ポイント
- 「伝わる」を意識した資料作りのプロセスには「コミュケーション」=根回しが不可欠。
「根回し」って具体的にはどんなこと?
「根回し」って一体……というと、簡単にいえば「直接に聞いちゃう」ということだそう。
具体的には、作成のプロセスのなかに上司やクライアントなど最終的な提出者を巻き込むこと。ドキュメント作成の途中であっても、可能な限り頻繁に、方向性や情報精度を確認しつつ、段階的な合意形成を行うということです。
例えば、作成の前段階ではドキュメントに入れるべき情報は何か、見せ方はどういうイメージかを確認する。それをもとに資料の原型を作り、作成途中で方向性の確認を行うことで作り手と受け手のズレを軽減することができます。
これは一見当たり前のことのように思えますが、コンサルティング先の企業・組織でもおろそかにされていることが多いとのこと。どうしても、ドキュメントの内容(コンテント)に注力してしまいがちですが、内容やどのような伝え方にするのかは、ドキュメントの作り手と送り手の関係性によって変わってくる、どちらかというと内容よりもそれ以外の部分(プロセス)が重要なのでは。意識的に「作成の途中でのすり合わせ」を行うことで、おろそかになりがちなプロセスと伝えたい内容のバランスが保たれることで「伝わるドキュメント」を作ることに繋げられるのです。
デザインの力を使ってまとめる
ドキュメント作成に取り掛かる際にポイントとなるコミュニケーションを学んだところで、次に実際の資料作成についてデザイナーの佐藤好彦さんから教わりました。
デザインの力を使ってまとめるポイントは「情報を分類し、暗示させること」。
私自身もよくやることですが、いきなり見た目を意識しながら作成してしまいがちです。
それ以前にやるべきことは、まずドキュメント情報(要素)を整理し、整理したものをデザインの構造と一緒にする、とのことでした。
トランプ型情報整理方法で考える
佐藤さんから教わった方法は、情報の分類、そして情報の優先順位を強弱の軸で考える方法。情報を整理したあとは、文字(レイアウト)・色・配置というデザインの構造の軸に置き換えていくことができます。
(まず机の上にバラバラに置かれたトランプを、色ごとに分類します。)
トランプは4種類(ハート、ダイヤ、スペード、クローバー)と13種の大小サイズがありますよね。ここでの佐藤さんからの提案は、「トランプの分類のように、情報を整理してみよう」ということでした。
- 分類の軸:情報をグループ化して分類
- 強弱の軸:情報の優先順位や重要度
情報が頭のなかにするっと入ってくる状態をイメージする
情報を整理できたら、揃えて並べるてみると……不思議なことにそれぞれにルールがあるような、なにか意味があるような感じがしてきます。
そこに以下の要素を付け加えると、みるみるわかりやすくなります。
- 配置(レイアウト)
- 文字(フォント)
- 色
この要素を加えれば、情報を深く読み込まずとも「デザインでなんとなくそう感じる」という印象を読み手に伝えることができるんです!
具体的には、以下の手順で整理していくことが重要だそうです。
- 配置(レイアウト)は無作為な状態から分類し、揃える
- 文字はフォントで分類し、太さで強弱をつける
- 色は色相で分類を示し、トーンで強弱をつける
レイアウト
情報を揃えたり、繰り返したりするとルールになります。また関係性のあるものをまとめると情報が繋がります。
- レイアウト
- 色
- 書体
- 装飾の具合
を揃えると、情報をまとまった形で表現することができるのです!
文字(フォント)
フォントに関しては、質の高いシンプルな書体=「ゴシック」と「明朝」の2書体を使ってみましょう。
書体選択のポイントは、ファミリーがあるもの(同じフォントで太いものから細いものまであるもの、幅が違うものなど)。ひとつのドキュメントのなかにむやみに違うファミリーのフォントを混在させるよりも、ファミリーの関係にあるフォントを使い分けるほうが不自然なデザインになにりくいので、便利だそうですよ!
- ポイント
- 分類:ファミリーの関係にあるフォントを使い分ける
- 強弱:文字の太さ、大きさで示す
色
色合いを明るさ・鮮やかさでまとめた概念として「トーン」という考え方があります。色のイメージの目安として使い、トーンを揃えて色合いを変えたり、色合いを揃えてトーンを変えるという2つの手段があるとのことです。
- 分類:トーンを揃えて色相を変える
- 強弱:色相を揃えてトーンを変える
まとめると、情報を整理する→情報を分類し強弱を考える→デザイン構造で表現する、という順番でドキュメントを作っていきます。そうすると読み手に伝えたいことがスムーズに伝わるようになるんですね。
二部:実際のドキュメントから学ぶ
それでは、実際のドキュメントを使ってデザインを学びましょう。
機密保持契約書を読みやすくしてみよう
よく見かける契約書などの書類。みなさんはこういう書類に違和感を感じたこと、ありませんか?
大事な書類なのに、どこが大切なのかがわからない。各項目の内容がイマイチ入ってこない……。
こうしたドキュメントへの改善提案を、デザイナーのカワセさんに見せていただきました。
いかがでしょうか? 改善前よりぐっと見やすくなっていますね。
カワセさんの改善提案のポイントは以下のとおり。
- 字の太さの使い分けによる強弱の表現
- 行間(本文と箇条書き部分間)を適切に加えることによる見やすさの向上
- 段落の付け方を統一し、どの項目が同じ関係にあるかを整理
文字の表現を変えたり、テキストの置かれる位置をずらして揃えたりすることによって、読みやすさが一気に向上していますね!
スクリーンに投映するツール、どう使う?
PowerpointやKeynoteなどのプレゼンテーションツール。みんなが使ってるからちゃんと使いこなせるようになりたいけど、うまく使えている気がしない――そう感じている人も多いはずです。カワセさんに、プレゼン資料のドキュメントデザインのコツも教えていただきました。
たとえば、とある製品の使い方の資料の1ページ。
このスライドは「会議を活性化させたい」という多くの人が抱える課題に対して、その解決策として「チェックイン・チェックアウトカード」という製品を提示したいのですが、このままだと「文字がいっぱい書いてある」という印象しか残らないですよね……。
伝えたいことをわかりやすく伝えるためには、以下のポイントに注意して改善していくのがオススメなのだそう。
- テキストの必要性はどうだろう?
- タイトルは必要だろうか?
- テキストに頼らない方法を考え、人の気持ちや行動を中心に作ってみよう
もともとテキストだらけだった使い方の資料を図解すると、こんな雰囲気に。
(「あ〜、ここにアイコン欲しいなぁ」と思ったとき、ノンデザイナーが無料で使えるまとめサイトを教えてもらいましたよ……!)
パワポやKeynoteの規格に縛られる必要って、実はないかも!?
また、カワセさんは、プレゼンテーションの際に「紙の規格サイズに縛られない見せ方も考えましょう」ということを提案されていました。
たとえば、私たちは「プレゼンしたい情報は何枚かのスライドに分けなければいけない」と思いがちですが、実はそんなことはないかもしれません。ひとつの画面にすべての情報をマッピングして、拡大したり縮小したりしながらプレゼンしてみてもいいわけです。
- ポイント
- 紙の規格サイズに縛られない見せ方も考えましょう。
色の使い方を利用する方法
色の使い方にも、注意したいポイントがあるといいます。たとえばこんな色の使い方。
ここで立ち止まって考えなければいけないのは……
- ポイント
- ・原色を使いすぎていないか
・流行色を使う (「デザイン 色 流行」で検索して調べる)
・30度の色相環を利用する
・流行色は、街を歩くときに様々なお店のウィンドウディスプレイを意識的に観察して参考にする
・流行色を知るための一番のヒントは、ファッションの世界でいま何が流行っているかを調べること
そこで、原色を抑えたり、黒文字を少し茶色っぽいものに変更したり、色味を調整してみると……
このようになります。
パッと見の印象が変わって、現代的な色使いになりましたね。
- ポイント
- ・読む人にどういう気持ちになってほしいのかを考えてチョイスしよう
・色彩を提案してくれるツールにヒントをもらって流行色を使ってみよう
・30度の色相環を利用する
イベントの中では、こちらのサービスが紹介されていました。
(とっても便利です…!)
フォントを使う方法
「え、フォントまで?」と思う人もいるのでは? 初期設定のままだったり、「これで良いか」くらいの感覚で選んでいる人も多いかもしれないのですが、実はちょっとしたコツがあるようです。
- ポイント
- ・読む人にどんな気持ちになってほしいかを考える
・Windowsにインストールされているフォントとしては游ゴシック・游明朝がオススメ
・その他に手軽に利用できるフォントとしては、源ノ角ゴシック・源ノ明朝がビジネスシーンでの利用に向いているのでオススメ(※)
(※)源ノ角ゴシックと源ノ明朝は、AdobeとGoogleが共同で制作したフォントで、オープンソースなので、だれでも無料で使用できます。デザインには癖がなく、ビジネスシーンでの使用に向いていますし、文字の太さとして、一番細いExtraLightから、一番太いHeavyまで7段階のなかから選ぶことができるので、情報に強弱をつけ、メリハリをつけることができます。また、文字数が多いので難しい人名を表示するときにも便利ですし、日韓中(繁体字・簡体字)にも対応しています。
フォントから感じるイメージを声に出して読んで再現しようとすると、気がつくことがあるそうですよ!
などなど、様々な事例に基づいたお話のなかで、繰り返し出てきたのは以下の言葉。
- ひとつひとつのフェーズをしっかり考える
- デザインは受け手に情報を届ける手助けをしてくれるもの。装飾で内容の薄さをごまかすのはNG。
この言葉は、私も耳が痛いところ。「作ろうとしているドキュメントは、誰に対して何を伝えたいのか」をつねづね考えていかないといけないんですね。
まとめ
読んだ直後から使える情報をゲットできたでしょうか?
そうなんだ〜と思うことも、やっぱりな、と思うこともあったかと思います。
さっそく明日からドキュメント作成に役立てていただけるとこれ幸いです。
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