うぬらこんにちは!
カリカチュアの帝王、田中ラオウ(@raoutanaka)です。
今回は、画家の中島健太先生へのインタビューの模様をお届けいたします。
現役の、しかも売れっ子の画家の先生にお話を伺える機会はなかなか無いので、一般人が実はよくわからない【画家】という職業の実体を掘り下げてきました。
これから画家を目指したい人や、「画家って何やってるの?」という人まで、たくさんの方にぜひ知っていただきたい美術界のお話です。
▼今回の主役
画家:中島健太 1984年東京生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。白日会会員。日展準会員。 大学在学中よりプロのキャリアをスタートし、大学卒業直後の08年に開催された池袋東武百貨店の個展において、リーマンショック直後という最悪の景気の中、全作品を売り切る完売を記録、一躍美術界にその名前を知られることとなる。 09年には日本最大の公募展「日展」において初出品初入選にも関わらずグランプリに相当する特選を授賞。 14年には2度目の特選を29歳で授賞、20代で2回の特選授賞は昭和の伝説的作家小磯良平に並ぶ記録であり、日展次世代を担う作家として注目されている。 https://www.nakajimakenta.com/ |
美しいものはすでにこの世にある
写実的でやさしい空気感の女性像や海の作品がとても印象的ですが、中島先生が「画家として大事にしていること」はありますか?
僕は、美しいものはすでにこの世にあると考えているので、画家は、それをどう捉えて表現するかや、世の中にある美しさを見逃さずにいられるか、という「目利きとしての能力」が大事だと考えています。技術は画家として最低限あって当たり前のものを持っている程度で、自分が特段技術がある作家だとは思っていません。
これほどの技術が特別なものではないなんて、厳しい世界ですね。そのような世界で「プロ」と呼ばれるようになるには、どうすればいいんでしょうか?
簡単に言うと、百貨店や画商さんの取り扱いで定期的に個展が開けるようになれば、「プロ」としてのキャリアをスタートできた、ということになると思います。個展には、アーティスト発信のものとそれ以外のものがありますが、前者は芸能人で言えば、プロダクションに所属せずに個人で活動するようなものです。厳しいですよね。
中島先生は、何をきっかけにプロとしてのキャリアをスタートされたのでしょうか?
興味がある公募展に作品を応募してみたのがきっかけです。その作品がギャラリー関係者の目に止まり、個展のお話をいただきました。
そのあとは、個展を見に来てくださった画商さんや、評判を聞きつけた美術関係者の方が次の個展を企画してくださるという流れで、わらしべ長者的になんとか途切れずに来た感じです。
大学は「砂浜の上で泳ぎ方を教えてくれる場所」だった
プロの画家として続けていく「コツ」はありますか?
運を味方にすることです。
それには僕も強く同感します! ……が、もう少し具体的なお言葉をいただけたりしますか(笑)?
そうですよね、すみません(笑)。もう少し具体的に言うと、訪れたチャンスを「活かせるかどうか」、さらには「活かす準備を日ごろしているかどうか」が重要だと思います。
「活かす準備」とは?
技術がなくても、実践の場に飛び込んでみることです。泳げなくても浅瀬でガムシャラにもがいていると、沖の方から泳ぎ方を教えに来てくれる人が現れたり、沖に向かって引っ張ってくれる人が現れたりします。
たしかに、先生は美術大学の在学中からプロとしてのキャリアをスタートして、卒業後すぐに日本最大の公募展「日展」において、グランプリに相当する特選を授賞されていますよね。
僕は、大学は「砂浜の上で泳ぎ方を教えてくれるような場所」だと感じていました。でも、自分は、まず水に飛び込んで早くその冷たさに慣れようとしたタイプだったんです。気合先行で飛び込んだものですから、陸からは「あんな泳ぎ方ではどうせ沖まで行けないよ」という声が聞こえてくるような状況でした。沖に進んでいるうちに、それらの声は波にかき消されて聞こえなくなりましたけど。
卒業後、画家として食えるのは一学年で2人だけ
ほかの学生たちが砂浜の上で泳ぎを教わっているなか、ひとり海に飛び込むのは勇気がいることですよね。
大学に入ってすぐに父が亡くなったのもあって、誰よりも「絵で食えるようにならなきゃ」という危機感を強く持っていたんです。だから、美大生時代は、飲み会などにも参加したことがなかったですね。友達が全然いない、みたいな感じでした(笑)。
美大卒業者の何人くらいが、卒業後、画家として食っていけるんでしょうか。
一学年で2人くらいだと思いますよ。僕と一緒の時期に、果敢に海に飛び込んだ少数派の人たちも、10人のうち9人は溺れてしまいました。例えがちょっと残酷すぎますかね……(苦笑)。
日本の美術界や、画家を取り巻く環境は、今、どんな状況なのでしょうか。
環境としては、恵まれている方だと思います。百貨店で美術品を販売しているのは、世界でも日本だけなんですよ。週末に家族で百貨店に赴いていたかつての中間層と呼ばれる人々に向けて、販売が開始されたそうです。今は二極化が進んだおかげで、百貨店も以前よりは厳しい状況ですが……。生活の中に絵があるのは良い世の中だと思いますね。
みんなチャンスが何度もくると思いすぎ
そのような「いい」環境の波に乗って、溺れずに画家としてのキャリアを続けていくために大事なこととはなんだと思いますか?
ひとつアドバイスまがいのことを言うとすれば、「チャンスは一度きり」だと肝に銘じることです。
チャンスとは、今の自分の器よりも遥かに大きいスケールの話が舞い込むこと。そんなときに「自分にはまだ早い」とか「もう少し成長したら挑戦させてください」などと言って尻込みするような人は成功できないと思います。チャンスはもう二度とこないつもりで必死に掴みにいかなきゃダメだと考えています。
中島先生の生き様と覚悟を感じる話ですね。今日はとても興味深いお話をありがとうございました。
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