
原稿力アップの秘訣!初心者が知っておきたい校正のポイント13
こんにちは、エディターのヒロアキ(htanaka0725)です。
2017 年 1 月に掲載した「原稿力アップの秘訣!初心者が知っておきたい校正のポイント13」にて、【実践テスト】トラップ満載の校正課題 を載せておりました。今回はその解答と解説です。
原稿力アップの秘訣!初心者が知っておきたい校正のポイント13
LIG 社内向け ライター塾では、編集長のせぶや、すみー、よーこ、りゅうせい、新メンバーのまりなに、30 分という時間制限を設けたなかで挑戦してもらいました。正解率は 40 〜 60 %といったところ。思いのほか難しかった? でも結構みんな検討してくれましたよ!
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こちらが前回の記事でお出しした課題でした。
LIG 社内向けライター塾では、30 分という時間制限を設け、PC でのリサーチを OK というルールの中で取り組んでもらいました。「まだやったことない」「ちょっとやってみたい」という方はぜひ挑戦してみてください!
それでは解答です!
合計 21 箇所、トラップを仕込んでおりました。以下、解説してまいります。
単純に表現について疑問を抱けるかどうか。「絶景を描く」ってつい使ってしまいそうな言葉ですが、そもそも「絶景」というのは自然が生み出した景観を指すものがほとんどで、人間の手によるものはまずありません(例外:万里の長城など)。完全に NG ではありませんが、「別の表現方法が好ましいのでは?」という注意を持つ方がベストと言えます。
そもそもここのテキスト、「絶景を描く国」というのも変ですよね。「国」は「描かない」ですから。
「絶景を描く国」と「絶景スポット」、この近さで同じ言葉がカブっているのはプロとして NG 。別の表現を用いましょう。
数字チェックは基本ですね。絶対的な根拠にしてはいけませんが、Wikipedia を見ただけで
という誤りを発見できます。
直近の事象や歴史上明確な数値が記されているなら合わせるべきですが、「一億年前」や「 7000 万年前」のように確認のしようがない数字に関しては、「約」や「ほど」を入れておくのがベターですね。
赤字を入れる際に根拠となる情報ソースがない場合は、「どこの情報を根拠とするか」と書き手(ライター)に問いかけておきましょう。
上記と同様、
です。言い切れる数字でなければ「約 1800 メートル」などがベターですね。
と、ずっと「だである調」で続いてきた原稿が「ですます調」に。ここも編集者やライターなら必ず気づかねばならないポイントです。
上記の「ですます調」のカブりに気づいただけで読み流しちゃうとアウト。「なかでも見逃せないのが」に「日本人としても見逃せない」と、「見逃せない」がカブリです。
という言い回しからこの第 4 段落が始まるわけですが、実はそれまでに「神聖な地」という内容が一切入っていないのです。そもそもタイトルが「神々の息吹に触れる旅」なんだから、どのスポットにも同テーマの逸話があって然るべき。いわゆる記事の大軸を問うチェックポイントです、間違いなくツッコみましょう!
文中で「モニュメント・バレー」と入れていますが、このページ上段の写真には「モニュメントバレー」と入っています。
違いは、「・」(ナカグロ)の有無。固有名詞の表記は統一せねばなりません。
基準にすべきは、その固有名詞に該当するオフィシャルサイト。モニュメント・バレーやグランド・キャニオンだと アリゾナ州政府観光局 日本語サイト などですね。
表記ルールは各メディアが持ち合わせているはずなので、それに準じて修正しましょう。特に表記ルールがなければ、書き手(ライター)に対して「どっちで揃える?」という疑問出しをしましょう。
「記念碑のような巨石が〜」から「〜その壮大さに心を打たれる」まで、8 行にわたって一文化されています。これはちょっと長すぎますね。
というように、ただ短くするのではなく、それぞれの一文の主語や述語を明確にした書き換えをしましょう。
「インディアン」の語源は諸説ありますが、直訳すると「インド人」となります。これはインドを目指して未開の土地(アメリカ)にたどり着いた開拓者が、その地で初めて遭遇したネイティブアメリカンをインド人と勘違いしたことに由来します。差別用語というには行き過ぎではありますが、近年「ネイティブアメリカン」という呼び名が一般化してきているので、どちらかと言えば「ネイティブアメリカン」と書き換えた方が得策です。前後を読んでみても、「インディアン」という呼称を必ず使わなければいけないわけでもなさそうなので。
指摘を入れる際は、エンピツ書きで注意喚起というところですね。
つい読み飛ばしてしまいがちな言葉にも気をつけましょう、という意味で盛り込みました。
「何百年という月日をかけてシンショクされたナバホ砂岩」
という一文から読み解くと、ナバホ砂岩は「水がしみ込んで損なわれた物」ではありませんし、どちらかと言えば「削られてきた」「食い込んできた」ものですから、後者の「侵食」が適していると言えます。
便利な世の中なもんで、Google マップを使えばスポット間の時間を算出することができます。その他、Web 情報はもちろん観光系情報誌を見れば有名スポット間の所要時間は記載されているもの。そうしたなかからいくつか当たれば、グランド・キャニオンからセドナまで 1 時間で行くのは不可能だとわかります。どれだけ早くても 2 時間は要します。これは明らかな誤りですね。
さほどおかしく思えないところですが、「で?」としか言えない表現と言えます。言うなれば、 “ベターではあるけどベストではない” 。「具体的な別の表現法を使っては?」「ここに 2 行近く費やすなら、別の部分を肉厚にしては?」といった提案型の指摘を入れるのが良いでしょう。
固有名詞は少し調べればすぐにわかるので間違えないようにしましょう。「ババスパイ族」は誤りで「ハバスパイ族」が正しいです。
「ヒッピー文化って 1960 年代だっけ?」と疑問を抱くことがポイント。調べてみると、厳密には 1960 年代後半から 1970 年代にかけて 。今の書き方だと 1960 年代全般になっちゃうので、修正するとしたら ’60 年代後半 または ’60 年代後半から ’70 年代 など。
「注目を集める街となり」「名を馳せるようになる」と、「なる」カブリです。
ただの悪口ですね。この表現が必要な文脈になっていればいいのですが、この書き方じゃなくてもいいのなら、書き換えるようにしましょう。
グランド・キャニオンは、アメリカの「北西部」ではなく「南西部」です。ここ、取り組んだ 5 名中で 2 名しか気づいていませんでした。キャプションだから見過ごしてしまった? でも記事内の文字に変わりはありません。チェック!
第 1 段落で「アリゾナ州とユタ州」とあるのに、第 4 段落で「アリゾナとユタ」と、なぜか「州」の有無が見受けられます。ここも統一すべし。
と、数字を断定しないための「約」と「ほど」が混在しています。ここは「約 900 年前」か「 900 年ほど前」のどちらかで OK です。
ご覧のとおり、「と言われる」がキャプション内でカブっております。
第 2 段落で「 1200 メートル」「 44 キロ」「 6 〜 29 キロ」と、距離を表す記述がありますが、統一するなら「キロ」は「キロメートル」ですね。「キログラム」と間違えられないようにも。
チャレンジしてみたという方、いかがでしたか?
私が仕込んだトラップ 21 以外にも「ここもかぶっているんじゃないの?」「ここの表現っておかしくない?」という箇所が見受けられたやもしれません。それも校正・校閲の練習と思って、思う存分ツッコんできてください! 「自分の原稿をチェックしてもらう」のと「他人の原稿をチェックする」のは、ライティングスキルを鍛えるうえで同じぐらいの効果があるもの。また新たな課題を作ったらご紹介しますね!