体脂肪率一桁台の原稿を書くチカラ #03 インタビューの作法 & 記事の書き方

体脂肪率一桁台の原稿を書くチカラ #03 インタビューの作法 & 記事の書き方

ヒロアキ

ヒロアキ

こんにちは、エディターのヒロアキです。

「お前は手ぶらで戦争に行くんか」

以前勤めた編集プロダクション会社の社長の言葉でして、取材の基本である「インタビュー」の作法を言い表しています。そう、インタビュー取材は 事前準備がすべて。そこで成功するか否かが決まってしまうと言っても過言ではありません。

今回は、そのインタビュー企画の取材作法と執筆法について、具体的にご紹介していきます。

 

 

必ずやらなきゃいけない事前準備

道具はもちろん、リサーチだって大切な準備です。プロのライターを目指すのであれば、完成図までイメージしたうえで臨みましょう。

 

1, 準備しておくアイテム一覧

IMG_0043

 
・ノート & ペン
・録音機(レコーダー)
・腕時計
・名刺

最近はスマートフォンでも録音できるので、それで代用しても問題ないかと思います。ただしスマホを使用する際は、着信やメール受信音を遮る「機内モード」にすることを忘れずにおきましょう。

腕時計は、さりげなく取材時間をチェックするうえで必要なもの。もちろん名刺もマストです。事前に取材申請していても、どこの誰かわからない人相手に気兼ねなく話すなんてことはできませんからね。必ず忘れないよう、財布に数枚忍ばせておくのも良いテです。フリーランス(もしくは目指している)ライターはオリジナル名刺を作成しておきましょう。

ノートとペンも基本ですね。最近はノート PC でそのまま書き留めるという方も多いかと思いますが、手書きとデジタルデータでは、取材時のマナーはもちろん、そして原稿の温度感にも差が出てきます。これについては後ほど詳しくご説明しますね。

 

2, 著名人なら過去のインタビュー記事を読んでおく

IMG_0014

情報が溢れかえっている現代において、ちょっとした著名人であれば、何がしかの情報がネット上に載っています。その著名度合いが高くなれば、雑誌に掲載されたインタビュー記事や自身の著書を出されていることも。なるべく直近のものには目を通しておき、

 
・その記事(著書)が面白かったかどうか
・どんなところが面白かった(面白くなかった)か
・自分が思い描く人物像
・自分だったら どんなことを聞くか

について 書き留めておきましょう。

 

3, 一般人なら あらかじめ SNS 確認を

IMG_0017

著名人のような情報が出回っていない一般の方を取材する際は、Facebook や Twitter などの SNS で露出していないかチェックしましょう。それすらも情報がない場合は、編集部から与えられた情報をベースに、投げかける質問をなるべく多くイメージしておきましょう。

 
IMG_0021

こちらは『レディスバイク』(株式会社クレタ 刊)という女性ライダー専門誌で私が取材(撮影 & 執筆)を手がけたページ。取材したのはハーレーダビッドソンに乗る女性で、もちろん一般の方が対象。彼女らのライフスタイルをフィーチャーすることが目的の企画です。

当然掘り下げるのは「ハーレーダビッドソン」。ひとくちにハーレーと言ってもタイプや年式でまったく異なるものばかりなので、カテゴリーごとに区分して「なぜ新車ではなく中古車を選んだのか」「ツーリングバイクではなくスポーツバイクを選んだ理由は」「その選んだバイクでどう遊んでいるのか」「なぜこのカスタムスタイルを目指したのか」などなど、ハーレーを買う(買った)という原点からひとつずつ細かに聞いていきます。そうすることで、その人のライフスタイルの方向性が見えてくるので、そこからさらに話を膨らませていく……という手法を用いています。

著名人でなくとも、取材対象となる人には必ず企画とリンクするポイントが必ずあり、そこを掘り下げることでインタビュー取材に広がりを持たせられるのです。

 

4, 掲載される媒体の体裁を再チェック

IMG_0044

掲載される媒体からペルソナ(読者)を想定し、「その読者層がもっとも興味を持っていること」「読者の立場だとどんなことが知りたいと思うか」を具体化させていきましょう。同じ取材対象者(インタビュイー)でも、掲載される媒体によって見せ方も変わってくるからです。

 

5, 質問項目をつくる

IMG_0034

項目2「著名人なら過去のインタビュー記事を読んでおく」に出てきた 自分ならどんなことを聞くか を具体的に書き出す作業です。編集部が意図するところ(企画)から外れることなく、ライター独自の切り口を編み出す作業です。最低でも 1 〜 2 つは準備し、あらかじめノートに書き留めておきましょう。

 

6, 完成図を想定したシミュレーションを

IMG_0022

「媒体」と「質問要項」がまとまれば、どんな記事として世に送り出されるのかをシミュレーションしましょう。雑誌なら「 サイズ / フルカラー or モノクロ / ページ数 」、ウェブなら「 ページ数 / 写真点数 / スクロール無限(文字数制限ある or なし)」などをあらかじめ編集者から聞き出しておき、近しいと思われる同媒体の過去記事フォームを見て、完成図をイメージします。これは同連載「#02 紙媒体での原稿の書き方」でも述べましたが、完成図から見える 起承転結 が描けていないと、インタビュー取材そのものもブレてしまいます。

 

取材時に必ず抑えるべきポイント

取材が始まれば、あとはどこまで掘り下げられるか を突き詰めるのみ。現場の温度感を下げずに、盛り上げつつも こちらが狙った方向へどう誘導できるか。そのポイントをまとめました。

 

1, ノートの冒頭に取材テーマを書いておく

IMG_0030

質問項目と同様ではありますが、取材において絶対にブレてはいけないのがテーマ、記事の背骨です。話が盛り上がって、あらぬ方向に向かっていく……なんて取材も珍しくなく、それで時間を浪費してしまうこともしばしば。ライター自身が「しまった、方向性を見失っていた」とならないために、これはノートの一番上に書き留めておきましょう。

 

2, インタビュイーから目を離すな

DSC_7546

ヒアリング内容をメモしていると、当然目がノートに落ちるかと思います。しかし、取材で話を聞きに来ているからには、必ず相手の目を見なければなりません。通訳を介した外国人インタビューなどで、インタビュアーが通訳に向かって話してしまう なんてことがあります。インタビューあるあるですが、これってインタビュイーに対して失礼なこと(特に、目を見て話さない相手を信用しない外国人って多いですから)。取材時は必ず相手の目を見ましょう。

「じゃあ、どうやってメモを取るんだ」

答えはカンタン、ノートを見ずにメモを取る技術を身につけることです。いわゆるノールック メモ、手練れの新聞記者なら必ず身につけている手法です。

 
IMG_0036

これは、私の取材ノート。正直読めたものではありませんが、私自身は自分の字なので読めます。取材ノートは人が読むものではないので、字が汚かろうが書き方がむちゃくちゃだろうが、自分が読めて、取材時の話を思い起こせられればいいのです。取材前に、試しに一度練習してみてください。割と書けるものですよ。

 

3, プロフィール情報はマストで抑える

IMG_0040

あらゆる媒体に情報が出ている著名人なら不要ですが、一般人もしくは知られていないその道の著名人だと、改めて聞き出しておきましょう。一般人取材のときは、

 
・名前
・名前の読み仮名
・住所
・連絡先
・出身地
・生年月日

は必ず押さえます。「名前」に関しては、漢字の間違いがないよう ご本人に直接ノートに書いてもらいます。読み仮名も踏まえ、読みにくい(難しい)漢字ならその場で確認します。上記を基本に「キャリア(学歴、職歴)」「趣味」「座右の銘」「尊敬する人」などで広がりを持たせにいきます。「なぜこの人を尊敬しているんですか?」「どうしてこの言葉が胸を打ったんですか?」と展開できますからね。

 

4, 話の途中で引っかかったキーワードは見逃すな

IMG_0046

ヒアリング中、必ず出てくる 気になるキーワード。「え? それってどういうこと?」と興味をかき立てられるひとこととでも言いましょうか。

「気持ち良く話してくれているインタビュイーの流れは遮らない」が私の取材流儀なので、そういったキーワードが出てきたときは「ふんふん」と聞き流しつつも、すぐさまノートに書き取っておきます。で、話が落ち着いたところで「そういえば、さっき話に出た ●●●● ってひとことなんですが……」と話を戻すのです。

 

5, 取材時間のチェックは忘れずに

IMG_0050

インタビュー取材で話が盛り上がるのはいいことですが、当然ながらインタビュイーにも都合というものが存在し、あるタイミングで「あ、じゃあこの辺で」って打ち切られることも珍しくありません。そんなときに記事の要となることを聞けていないと、どれだけ盛り上がったとしても取材としては大失敗。取材の流れをコントロールするのもライターのスキルのひとつです。

良い方法は、取材前にあらかじめデッドライン(取材の終了時間)を押さえておくこと。たとえ相手が「今日はヒマだから、いくらでも付き合うよ」と言っても、自分のなかで一時間と設定して、時間をコントロールしながらポイントを押さえていきましょう。そうしておけば、結果的に執筆する原稿にも締まりが出てきます。

 

掘り起こす力の養い方

why

端的に言えば、日々の鍛錬に他なりません。ライターとして、というよりはクリエイターとして必ず身につけておきたい習慣とも言えます。

要は「好奇心を高め続けること」で、具体的な取り組みとしては 日常に対する「なぜ」を持ち続けること です。

 
なぜ 彼はこの本に興味を持ったのだろう。

なぜ こんなところに記念碑が建っているのだろう。

なぜ あの人は醤油ラーメンではなく豚骨ラーメンを好むのだろう。

なぜ なぜ なぜ……

いわゆる 想像力の刺激 で、何気ない日常に「なぜ」と疑問符をつけ、自分なりの答えを導き出すことを習慣化していくのです。これによって、取材時に自分のアンテナにかかる言葉が格段に増えてきます。それが結果的に、成果物である記事に深みをもたらすことになるのです。

ライターにとって、最大の敵は「無関心」。「僕は興味ないんで」ではなく、興味がないこと自体に疑問を抱き、それを解消するためにあえて挑んでみる、という姿勢を持ち続ければ、間違いなく自身の世界観が広がってくることでしょう。

 

読み応えのあるインタビュー記事の書き方

熱量のこもった記事は、読み終えたときに明確な印象が残り、シェアする気持ちを強く刺激します。企画内容に左右されることもありますが、そうした不確定要素に頼る前段階の基礎を抑えるようにしましょう。

 

1, 取材から間を空けずに執筆に臨め

時間が許すならば、取材を終えた直後から執筆に取りかかりましょう。理由は明白、取材で得た情報の鮮度と熱量を失う前にアウトプットするため です。執筆への着手は、早ければ早いほどいいです。

 

2, 手書きのメモだけで書く

ノートに書き留めた内容だけで原稿が書けるようになるのがベストです。ノート PC などでまとめたデジタルデータだと 同じフォントサイズの文字が羅列する無機質な情報でしかありませんが、その場で書き取る場合、「お、これはこの取材でキーになる言葉だな」と思ったら、自ずと文字が大きく(太く)なったり、丸囲みをしたりと、ただの文字以上の情報がそこに込められます。そういった躍動感やライブ感が、結果的に原稿に反映されるのです。

 

3, 文字おこしは時間の無駄

上記の「手書きのメモだけで書く」に関連しますが、録音機はあくまで保険として使うにとどめ、ノートの内容だけで記事をまとめましょう。

 
1, 取材時の集中力を高める
2, メモだけで執筆する方がコスパが良い
3, 熱量をキープできる

などがその理由。いわゆる「文字おこし」(テープおこし)という作業がありますが、そこに費やす労力と時間は相当なもので、フリーライターという立場から見れば時間の無駄。あらかじめ記事の背骨やテーマが明確ならば、「聞かねばならないこと」「聞き取らねばならないこと」は当然ながら確立しており、それをしっかり押さえていれば どんなインタビュー記事でもテーマから逸れることなく組み立てられます。録音機は、万が一の確認用ぐらいで使うようにしましょう。

「文字おこし」されたテキストは ライターにとって非常に有り難い存在ですが、そのまま利用しちゃうとただの議事録 になってしまい、熱量はもちろん 読み物としても失格。諸刃の剣な「文字おこし」は扱い方を間違えませぬよう……。

 

準備の是非が「読み応え」の差となって出る

DSC_7982

取材はナマモノなので、どれだけ事前に準備をしていたとしても、思い通りに進むとは限りません。それでも、軸がある取材とない取材とでは、成果物になったときに大きな差となって表れます。

その差とは、読み応えがあるか否か

インタビュイーの話したことを一言一句間違わずにまとめてあっても、読み物として面白いかどうかと聞かれれば 答えは否。ライター自身が抱いた「聞きたい」「伝えたい」という情熱がこもっていないと、読者の心を打つことはできないのです。それぐらい、原稿にはそのライター自身のキャラクターがもろに投影されます。その情熱を湧き上がらせることはもちろん、取材そのものに深みを持たせ、他とは違う原稿を生み出すために、この事前準備が必要なのです。

ぜひこの内容を参考に、独自性の強い 読み応えあるインタビュー取材 & 記事作成に取り組んでみてください。

では!
 

関連記事



 

この記事のシェア数

関西生まれのチャラフォーエディターです。 バイク関係や旅行関係などの媒体編集者として15年以上やってきました。 アメリカやヨーロッパ、アフリカ、アジア、中国などいろんな国に行きました。 愛車はハーレーダビッドソンとホンダ リトルカブ。 なんでもサッカーに例えて話そうとする悪癖あり。 後悔は少なめのMy Life。

このメンバーの記事をもっと読む
体脂肪率一桁台の原稿を書くチカラ | 7 articles
デザイン力×グローバルな開発体制でDXをトータル支援
お問い合わせ 会社概要DL