「不倫の悩みはまわりに相談できない」ユーザーファーストが変えた組織とコンテンツ|メディア工房

「不倫の悩みはまわりに相談できない」ユーザーファーストが変えた組織とコンテンツ|メディア工房

新川 五月

新川 五月

こんにちは、LIGライターズの新川五月です。

占いコンテンツの老舗である、メディア工房。メディア工房の占いコンテンツ事業は、PCとモバイル向けのコンテンツや性格診断などができるアプリ、そして直接相談できる電話占いなどがあります。

さまざまな占術を扱ったコンテンツも多彩で、なんと創業以来、300件以上の占いコンテンツをリリース。世の中に様々な占いコンテンツがある中、「メディア工房が提供するのは、運勢占いといったどこにでもある占いではなく、もっと具体的な悩みをもっている方に使っていただくもの」と主張するのは、占いコンテンツ事業部マーケティングチーム次長を務める徳永真一さん。

今回は、徳永さんと制作の現場で指揮をとっている飯野絢子さんにお話を伺いました。この1年で社内体制も大きく改変し、よりよいコンテンツの提供を目指しているメディア工房では、どんな変化があったのでしょうか。

徳永真一 徳永真一
占いコンテンツ事業部マーケティングチーム次長。大学在学中から卒業後にかけて大学におけるIT活用促進を目的とした新規プロジェクトの立案を実行。その後医療関連のIT企業の企画職、IT系ライター等を経て、現在株式会社メディア工房のマーケティングチーム次長としてコンテンツのプロモーションを担当。
飯野絢子 飯野絢子
課長。2012年入社。モバイルコンテンツのプロモーション・マーケティング業務を経て、現在は新規プロジェクトの立案、進行を行う。

 

誰にも言えない悩みを解決するために決断の後押しをするのが「占い」

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― 占いコンテンツを制作される中で、いちばん大事にされているのは何ですか。

徳永:「ユーザーファースト」という考え方です。

周囲には相談しづらい悩みがあるとき、例えば転職を考えているが、両親に相談すれば辞めとけと言われるだろうし、職場の同僚にはもちろん相談しにくい。転職エージェントに聞けば、営業的な意味合いでも転職を進められることがわかっているというようなケースがあります。相談する相手によって回答も予測できてしまうときに、弊社のコンテンツを使っていただくことで、決意を新たにしてスッキリしていただく。または、なるほどこういう見方もあるのかと選択肢の1つにしていただく。

そうして悩みを解決していただくことを第一目標としています。例えば、最近の人気なものでは、「バケモノ能力者∞育代」や「キセキの的中力に涙がとまらない!花凛のスピリチュアルタロット」などのコンテンツがあります。

 
― それが重要と考えられたきっかけは?

徳永:これだけの数を作っていると、どういったコンテンツが市場で売れるかはだいたいわかってきます。利益を優先すると、そればかり作ることに。しかし、それではユーザーのもっとも多い悩みにしか答えられないですし、ほかの占いサービスとの差別化もできません。結果的にユーザー離れが起こってしまう。

そのことが売り上げ上で明らかになってきたのが1年程前。そこで、試行錯誤はあったのですが、私たちのやるべきはユーザーの多種多様な悩みを解決することで、そこを追求しようということになりました。

以来、組織改変や制作フローの変更を行い、ユーザーが本当に何を望んでいるかをPDCAで検証しながら今の体制に至りました。

 

PC、モバイルチームを統一。一丸となってユーザーニーズに答える

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— まず、組織はどのように変わられたのですか。

徳永:PCとモバイルでデバイスごと2つの組織に分かれていたのですが、“占い”というくくりで企画も制作も1チームに統合しました。おかげでユーザーニーズに応じた、さまざまなコンテンツを作れるような体制になりました。

デバイスが異なるともちろんユーザー層も販売形態も異なりますが、悩みやそれを解決する占い自体は共通のはずなんですね。だからPC、モバイル別々にやる必要はないと。

 

— 社内の反響はいかがですか。

徳永:いいですね。もともとPCとモバイルをなぜ分けるのかという疑問の声はありました。以前は、先にモバイル用に作ったコンテンツを、数カ月後にPCコンテンツとしても作り直して出していたのですが、それではその都度、同じ内容のものに制作や企画のコストがかかっていました。

無駄なコストが減った今は、次の新しい企画制作にあてることもできとても有意義です。

飯野:「なぜPCとモバイルが分かれているのかという疑問」を会社が解決してくれたのは、現場としても私たちの要望が通った、叶えてくれたと感じていますね。モチベーションは上がっています。企画を一緒にしてより精度の高いものをお客様に提供していけるというのは、非常に前向きな変更だったと思います。

 

環境は整った。現場の空気感のよさがコンテンツにも現れる

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— 制作のフローも変わったということですが。

徳永:これまでは、社内調整に工数がかかっていたので、承認や確認のフローを効率・短縮化して、制作の重要な部分に時間をかけるようにしました。だから、基本的に任される部分は増えています。一旦承認が下りたら、後でヒックリ返るようなこともなくなりました。

以前は、ギリギリになって「やっぱりこうじゃない、ああじゃない」と議論が出てやり直すこともありましたが、制作初期の段階で時間をかけてOKが出たら、その通り作ることに専念できるようになりました。

飯野:おかげで社内の空気感もよくなったし、チーム内でも意見がよく出るようになったと思います。以前は締め切りに追われて、言葉は悪いですがリリース直前にデスマーチのようなことが起こっていました。

ただ、デスマーチをくぐり抜けたコンテンツは、どこか突貫で作った感じがユーザーにも伝わるので売れ行きもよくないんです。これは事業部として学んだことだと思います。
 

— 反対に現場の空気感がいいとヒットにつながるということは?

飯野:感覚的になってしまいますが、現場が楽しんで作っていると楽しさがコンテンツに出ると思います。

徳永:言い方は悪いけれどテンプレ的に作ろうと思えば作れますが、ファンの方や好きな方には一発でわかってしまいます。そこに、どれだけ作り手の思いやこだわりを詰め込めるかというところが大事だと思います。

 

落とし穴を掘って、そこに人が落ちたら嬉しい!そんな人が活躍している(笑)

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— 御社では、どういった方が活躍されていますか。

徳永:実際にやった結果を見て、自分が思った通りになったらヤッターと喜ぶ、ダメだったらダメな理由を考えて次こうしてみようと考えられる人。例えば、落とし穴を掘って、そこに人が落ちたら嬉しいと感じられるような(笑)、言い方が変ですが、そんな人が一番楽しんでいますね。

飯野:仕事を楽しめる人ですね。実際に笑い声のたえないチームが良い企画を作り出しています。もちろんチームによって個性の差はあります。黙々と作るチームもあるし、喋りながらブレストで作るチームもある。スタイルはさまざまですが、楽しめる人が活躍しているなと。

徳永:プロモーションの分野ではベースが数字なので、数字ベースで物事を組み立てて判断することに喜びを得られる人が向いていますね。ユーザーが何を求めているか、市況やアンケート、ログの数字から推測して仮説を立てて実施・検証して、次はこうしようと考えられる人ですね。

 

ニュースや統計には出ない社会の深層や人間探求ができる醍醐味

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— メディア工房で働く意義というか、他社にはないやりがいや働く醍醐味は何でしょうか?

徳永:“生”な悩みに触れられることですね。ニュースや統計には出てこないような深い部分−−皆が何に悩んでいるのか、何を解決したがっているのかを知ることができるのは非常に興味深いでしょうし、やりがいがあると思います。

占いは、競合他社が何百とあるような世界ではありませんが、これだけ日常に浸透して、かつ人間の悩みや人生にダイレクトに関わることができるので、人間が何を考えているですとか、社会全体の動きを絡めて知りたいという人にとっては非常に面白い世界だと思います。
 

— 普段は明かさないような悩みを打ち明けるという意味では、人間探求の面白さ。そういうことを肌で感じられると?

徳永:世の中のニュースにユーザーの悩みも影響されます。例えば、今年初めは不倫のニュースが話題になりました。そうすると、ユーザー間でも同じ傾向の悩みが増えるんです。ニュースを見て、漠然と心に抱いていたものが「私はどうなっちゃうんだろう?」と不安になる。でもテーマとして気軽に相談できる内容ではないから周りの人には言えない。
 

— 社会の事象に、こんなに影響を受けている人がいるんだと。

徳永:影響というか、こんなにたくさんいるというのは生々しく感じますね。まさに統計や消費動向からは見えないところ。人間に興味のある人は、学ぶものがあると思います。

飯野:占いは太古の昔から人が頼ってきたもの。それこそ普遍的なものから“今日の12星座占い”のような日常的なものまで。弊社の仕事の中では、ユーザーの悩みの根幹も知れるし、それに向き合うためには悩みを解決する側として、どういった形でアプローチしていくかという点も勉強できる部分もあるのかなと。

徳永:弊社は、そこは厳密にやっています。単なるエンターテイメントではなく、占術の歴史や先生固有のロジックに基づいた内容をいかにコンピュータ上で表現していくか。テクニカルな部分にも力を入れています。

 

誤解を恐れず言うと、心に1つ闇を持っているくらいの人がいい

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— これから貴社で働きたいと思っておられる方へのメッセージはありますか。

徳永:悩んでいる人がいい。何も悩みのない人は逆にユーザーと向き合うことができないと思うので。誤解を恐れず言うと、ちょっと影があるといいかなと(笑)。普通の人で能天気に見えるけれど、実は闇を抱えているような人のほうがヒット企画を作れるかもしれません。

飯野:どんなタイプでも馴染みやすい環境だと思います。多種多様な人間を受け入れられるからこその占いだとも思うんですね。そういう意味では寛大な会社。みんな“素”をさらけ出している人も多い。

美少女フィギュアを机に並べたり、ジャニーズの追っかけをしたり、普段はなかなか言えないこともオープン。本当に隠し事がなくて、ありのまま自分を受け入れてもらえる空気は社内全体にはあります。

 
— そういった個性が、いろんな企画に生きてくる?

徳永:私たちはコンテンツ屋で、人が使うコンテンツというのは、結局、そういう個性から、人からしか生まれてきません。自然にポンッと出てくるものではないので、大事にしていきたいですね。

インタビューを終えて

メディア工房では、今年度から半期ごとの社内表彰制度がはじまりました。数字面・アイデア面で最も輝かしい功績を出したチームや個人を讃える“MVP賞”、数字にかかわらず素晴らしい取り組みをした“スピリット賞”。さらに“新人賞”や、最もまわりのチームメンバーから感謝されていた方への“ありがとう賞”などユニークな賞も。よいコンテンツに対して、ユーザーからの反響に加え、社内でもしっかりその功績を評価していくための制度です。

お話にもあったように、体制が新しくなったことで、制作の現場ではより活躍しやすい環境が整いつつあります。また、福利厚生面でも、育休・産休をとる女性社員も多く、最近では2回目の産休に入った社員もいるそうです。

過去には、業績の低迷から社員の離職が続いた時期もあったそうですが、現在のメディア工房は、コンテンツにおいてはユーザーのニーズにこたえるユーザーファーストというコンセプトを掲げ、そして社員のニーズにこたえる環境・組織づくりを経て、さらに飛躍のステージにあるのだなと感じました。

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秘書の仕事から広告業界に転職して10数年、現在はフリーランス。インタビューが大好きな、コピーライター兼ライターです。インタビュー術の講師もしますが、取材前にわかるとハードルが上がるので隠しています。

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