デジタルシネマ時代の今、フィルムで映画を見ることはなくなるのか?映写技師に会ってきた

デジタルシネマ時代の今、フィルムで映画を見ることはなくなるのか?映写技師に会ってきた

misaki

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こんにちは、エディターのmisakiです。

先日、SNSのタイムラインに『Popcorn』というサービスリリースのお知らせが流れてきました。

1895年に映画が誕生してからおよそ1世紀。デジタル技術によって、誰でも映画館をつくれる時代に!!!! 

と、映画の見方も多様になってきましたが、そもそもデジタル技術が導入される前、映画作品を上映するためにはフィルムと映写機が必要でした。

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一般社団法人日本映画製作者連盟の統計によると、2015年12月時点で全国にあるスクリーン数は3,437つのうちデジタル設備が整っているのは3,351つ。

つまり、国内でフィルム映画を見れるスクリーンは100を切っているんです!!! 

2006年デジタル設備が備わったスクリーンは96スクリーンだったので、この10年で映画におけるデジタル化はすさまじいスピードで進んでいることに。2013年には富士フィルムが撮影用・映画上映用フィルムの生産を終了。2020年までに世界の映画館の80%がデジタルシネマになるという予想も出ています。

日本からフィルム映画館がなくなる前に、この目でみたい……。というか、まだフィルムで映画を上映することにこだわり続けている映画館はあるのか。映写技師さんはどんな思いで映画をまわしているのか。

そう思ったわたしは重い腰をあげて、Googleに打ち込んだのです。「フィルム 映画館」と。

フィルム映画にこだわる横浜の映画館「シネマノヴェチェント」へ

検索したところ、フィルムの映画をまだ上映している……どころか2015年に開業したばかりの映画館が横浜にあると知り、話を聞きに行くことに。

 

場所は、横浜にある映画館「シネマノヴェチェント」。京急線戸部駅・相鉄線西横浜駅から徒歩10分のところにあります。
 

看板には「日本一小さい映画館」という文字が!! 席数はわずか28席、1スクリーンの映画館のようです。

 

そして、この方が「シネマノヴェチェント」オーナーの箕輪克彦さん。

休みの日は映画館で4作品はしごするほどの映画好きで、好きな映画を聞くと『タワーリング・インフェルノ』や『ポセイドン・アドベンチャー』、『ジョーズ』などのパニック映画と答えてくれました。

もともと川崎のシネマバーで11年間フィルム映画を上映し、2015年に横浜へ移転したばかり。今回は、箕輪さんにフィルム映画をまわし続ける思いをお聞きしました!

映画上映の舞台裏・映写室は戦場だった

— そもそも、フィルムってどのようにまわしていくんですか?

箕輪:今、フィルム上映で使われているのはワンロールの映写機といってね。ワンロールだから上映前にセットしたら、そのまままわし続ければいいんだけど、ワンロールじゃなかった頃は2つの映写機を使っていた。

1時間半ものの映画だとフィルムが5巻必要だったから、大体1巻が15分くらいかな。1970年代前半までは、1時間半の映画にフィルムが9巻必要だったんだよ。1巻あたりが10分たらず。10巻だったとすると、9回フィルムを切り返さなくちゃいけなかった。

 

— ということは、上映中は映写機につきっきりになるんですね。

箕輪:そう。大変だったよ。フィルムのロールが終わる3コマくらい前に、次のフィルムに切り返す合図の「パンチ」があいているんだけど、1秒24コマだから3コマだとまばたきしていたら見逃すんだよね。1巻目から2巻目に切り返すタイミングがうまくいけば、画がつながってみえるしくみだった。

映画って本編がはじまる前に「10,9,8,7……」という数字が入っているんだけど、タイミングを見計らっているうちにどんどんコマは流れていくし、切り返しがうまくいかないとスクリーンに新しいフィルムの「10,9,8,」っていうのが出てしまう。最初はよく失敗して、お客さんに迷惑かけていたね(笑)

1巻目のフィルムが映写し終えたら、すぐ次のフィルムの準備をはじめる。だから映写室は戦場だった。

フィルムの重さは、映画をつくった人たちの重み

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— デジタルが主流になっている今、箕輪さんはフィルム上映にこだわる理由を教えてください。

箕輪:僕の場合、見て育ったものがフィルムだったから、フィルムで映画を見続けたいと思って。まぁ自己満足のためだね。

今、多くの映画館でかけているソフトって、たとえば「TSUTAYA」でレンタルするのと同じようなソフト。それって、家でも見れるじゃない。映画館のアイデンティティーは、フィルムにあると思うんだよね。フィルムの映画は映画館じゃないと見れない。それが今日の映画館の存在意義なんじゃないかな。

 

— お恥ずかしながら、フィルムとデジタルの区別がつかないです……。

箕輪:むしろデジタルに目が馴染んだ人のほうが、フィルムの質感がわかると思うけどね。デジタルの方がクリアな映像であることは間違いない。フィルムは粗い。それで僕は育ってきているので、クリアなビデオが進化したようなものを見せられても、「はい、これが映画ですか」と言えないんだ(笑)

だって物体がないんだもの。CGもそうだけど、そこに物体がない。今映画を上映するためのソフトって、手でパリって壊すこともできるもろいもの。フィルムは燃やさない限り、なかなか消えないからね。フィルムの重みは、映画をつくった人たちの重みなんだよね。

時代に流されずに、フィルムをまわし続けたい

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ー 今後、日本ではフィルムの作品はなくなっていくんでしょうか。

箕輪:日本の監督で、今もフィルムにこだわる人はほとんどいないんじゃないかな。今もフィルムで撮っている監督で代表的なのは、山田洋次とか北野武くらい。

フィルムで撮るのはコストがかかるから、後ろ盾がないといけない。それに、デジタルだとブレもなく撮れるし、テイクを何回も重ねられる。フィルムはやればやるほど、フィルムが消耗してコストがかかるというネックがあるから、よほどお金とこだわりがないと、フィルムは選ばれないかもしれないね。
 

ー 映画の本場、アメリカも同様ですかね?

箕輪:デジタル化ののろしをあげたのはアメリカだけど、向こうは未だフィルムにこだわっている方はたくさんいると聞いているね。だって、『スター・ウォーズ』もフィルムだし、『バットマン』もフィルム。

しかも、向こうは70mmのフィルムがかけられる映画館やシネラマ映画館が未だある。1000人規模の劇場でも平日に半分は席が埋まるっていってたよ。アメリカでは映画が大衆娯楽でもあると同時に、芸術なんだよね。

日本は生産性をあげるため、合理的な道を選んできた。映画を娯楽としても文化としてみせるのも放棄したんじゃないかな。デジタル化はこれからもどんどん進んでいくんだろうね。僕はそういう風潮に流されたくないから、フィルムをまわし続けているだけなんだけど。

 

— 映画館以外での映画の楽しみ方が増えていますが、どのように感じられていますか?

箕輪:それで楽しければいいんじゃないかな。僕がなにかを言える立場じゃない。ただ、映画は生物だから、上映されたときに見てほしい思いはあるね。映画はその時代を映すものだから。

あと、自分で探すってことが、映画の究極の楽しみじゃないかな。人がおもしろがっているものを見に行くだけだと、自分の嗜好性がみえなくなる。

映画って結局自分をうつす鏡だから。自分が何を好んで、何を好まないか。映画をとおして、自分が意識していないものだとか、だんだんわかっていくんだよ。でも、そのためにはヒット作だけじゃなく、いろんなジャンルを見なくちゃね。線引きすればするほど、自分を狭めてしまうことになるから。

それが映画を見る醍醐味だと思うよ。

取材を終えて

映画の見方はもちろん、映画をつくる側、上映する側にも変革をもたらしたデジタル技術。

データであれば、安価にコピーでき各映画館に簡単に配布可能、映写技師も不要となり人件費が削減できるなど、コスト面においても作業効率面においてもメリットづくし。デジタル映画、スクリーンが増え続けるのもうなずけます。

しかしながら今回箕輪さんからお話を聞き、フィルム映画を愛する方がいなくならない限り、フィルム映画をまわす映画館の灯りはなくならないと感じました!

フィルム映画は、名画座やミニシアターなどで上映されているとのこと。最近映画館で映画を見ていない、フィルム映画を見てみたい方はぜひ、足を運んでみてください!

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地域活性の仕事にたずさわった後、LIGへジョイン。 主に外部メディアの運用を担当しています。 映画と旅とエビが大好物です。

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