「接合点が増えると組織は変わる」なぜPR TIMESのオフィスは自慢したくなるのか

「接合点が増えると組織は変わる」なぜPR TIMESのオフィスは自慢したくなるのか

小田直美

小田直美

こんにちは、ライターのおだんです。エンジニア好きが高じてWeb業界專門のライターをしています。

世界有数のアニメーション会社のピクサー・アニメーション・スタジオでは、社員の創造力を発揮させるためオフィスを好きなインテリアで飾るように推奨しているそうですが、日本のIT / Web企業でも、社員のアイデアやコミュニケーションを活発にする経営戦略の1つとしてクリエイティブなオフィス環境が注目を集めています。

企業のプレスリリース配信サービスを手がけるPR TIMESは、2016年2月に利用企業数が12,000社を突破し、急成長を遂げているPR会社です。2016年1月にオフィスを赤坂から南青山に移転した同社がこだわったのは「接合点のあるオフィス設計」だったといいます。

今回のインタビューでは、エンジニアの宇佐見さんとサービス&カスタマーリレーションズの室田さんにオフィス移転プロジェクト後の社内コミュニケーションについてお聞きし、代表の山口社長にはコミュニケーションを促進するチームづくりについてお話を伺いました。

ユーザの声をリアルにすぐ届けるためにはカスタマーサポートと開発の「距離」がカギ

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Poole:アイコン_PRTIMES様03 人物紹介:宇佐見 英美子
デザイン系/情報系の学校を卒業後、WEB制作会社にて、WEBデザイナー、イラストレーター、プログラマーとして幅広くお仕事をさせていただく。その後、サーバーサイドやフロントエンド、Flash/FlexのRIAやiOSアプリなどの開発に携わり、現在もエンジニアとしての道を直進中。
Poole:アイコン_PRTIMES様01 人物紹介:室田 遥
1989年5月生まれ。追手門学院大学卒業。大学卒業後、携帯ショップ店員として勤務。その後、システム会社に転職、業務効率化システムのアプリプランナーとして勤務。2015年2月よりPR TIMESに勤務。サポートデスクとしてお客様からの問い合わせ対応や、プレスリリースのコンテンツチェックなど行う。

 
― 御社はカスタマーサポートとエンジニアの席が近いと伺いましたが、どういった連携が生まれていますか?

宇佐見:サービス&カスタマーリレーションズが近くにいることで、不具合のご指摘も含めてお客様のリアルな声がすぐに聞こえてくるんです。これが受託開発の現場だとエンジニアは作って終わりですが、自社サービスの開発現場に終わりはありません。
「新しく追加された機能が役に立った」というような声をすぐに聞けると、エンジニアにはありがたい体験ですね。

 
― たしかに物理的に近ければ情報共有がスムーズそうですね。他にはどういった連携を?

室田:宇佐見さんが入社してからはじまったのですが、開発チームよりリリースメールを出してもらい、新機能の詳細を共有してもらっています。

というのも、過去に新しく追加された機能をサービス&カスタマーリレーションズ側で知らなかったことがあって。自社のプレスリリースを見て「あれ? なんか新しい機能が追加されている?」と、そこで初めて気がついたこともありました。これではお客様からお問い合わせがきたときに対応できないと、すぐに開発チームに「どうなっているのですか?」と聞きにいきましたね(笑)

宇佐見:細かいことでもちゃんと共有したほうがいいなと思うんです。だから、新しく実装した機能や不具合修正の詳細までも、定期的にサービス&カスタマーリレーションズへメールで共有するようにしています。あとはお客様からシステム不具合のお問い合わせがあったとき、サービス&カスタマーリレーションズから開発チームに調査依頼を出してもらうようにしていますね。

 
― サービス&カスタマーリレーションズと開発の連携が密になると、次から次へと開発側へのタスクが増えていきそうですが、実際はどうですか?

室田:過去はそうでしたね。ちょっと前までは、なにか不具合があったら私が宇佐見さんのところにいって「ねぇねぇ、宇佐見さんこの不具合なんだけど……」と直接話しにいくような感じだったんです。これではサービス&カスタマーリレーションズチームで共有してわかりそうなことまで、エンジニアに質問してしまい余分な工数がかかってしまっていました。

宇佐見:いまは各チームのリーダーが一旦情報を集約して、タスクの優先順位をつけてから開発するような体制になっています。開発側の私も入社したばかりのころは、サービス&カスタマーリレーションズの人から頼まれるとつい優先してやってあげたい気持ちが出てしまって。

 
― 開発を内製している企業には “あるある” の悩みですね(笑) 社内で仲が良かったりすると、なおさら手を貸してあげたくなる気持ちはわかります。

室田:以前勤めていた会社では、システム部門が地方にあったので、何かお願いがあっても電話やメール、FAXしか方法がなくお客様の要望を上手く伝えるのが困難でした。でも、PR TIMESには宇佐見さんみたいに話しかけやすいエンジニアさんがいるからこそ気軽に質問できちゃう環境なんですよね。

宇佐見:“エンジニア=話しかけられたくない” といったイメージが強いのか、恐るおそる聞きにくる方がいるのですが、「もっとウェルカムなのに!」と、つねづね思っています(笑)

「ストリートビューで自慢しています(笑)」内装を載せるプレスリリースは滅多にない

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フリースペースのキッチンカウンター

 
― 別の部署ともコミュニケーションを取りやすい雰囲気がありますが、なにか秘訣があるのですか?

室田:サービス&カスタマーリレーションズと開発にかぎらず、違う部署同士とも積極的にコミュニケーションを取ろうとする流れはPR TIMESの社内全体であります。オフィスが新しくなってからできたフリースペースを「ガーデン」と呼んでいますが、新しく入社した人向けに「ガーデンランチ」というケータリングをとってランチをする会もありますね。

宇佐見:そうそう。入社した人が所属するチームだけじゃなくて、全社員参加していいランチ会なんですよ。普段はあまり仕事で関わりがない人とも「美味しいね〜」ってケータリング楽しみながら「今どんなことしてるんですか?」って話したりします。

 
―カフェのようなくつろげる雰囲気で、人に自慢したくなるオフィスですよね。

室田:移転したときにPR TIMESで配信したプレスリリースにはストリートビューが入っているので、私はそれを見せて知人に自慢しています(笑) 仕事柄すべてのプレスリリースに目を通していますが、オフィスの移転を知らせるプレスリリースで内装の写真を載せているケースは滅多にないですよ。移転先の住所とビルの外観をお知らせするのが一般的なので。

PRTIMES様_記事02

 
― これまでもインタビューで様々な企業を訪問させていただきましたが、ここまで居心地がいいオフィスはあまりなかったです。

室田:そうかもしれないですね。実際、前のオフィスにはこういうフリースペースはなく、お昼にお弁当を持ってきて自席で食べても休憩した感じがしませんでした。例えばお昼にお弁当を持ってきて自席で食べていたので、休憩した感じがしなくて。デスクでも会議室でもない場所があると、仕事中でも気分転換ができるので嬉しいです。

 
― 仕事の生産性も上がりそうですね。他にはどのようにフリースペースを活用していますか?

室田:月2回開催される「ガーデンナイト」という、お酒を飲みながらプロジェクタで映画を観たりゲーム大会をするイベントがあります。普段接する機会がない人とも話せるし、「今日はビール飲んで帰ろう!」って、参加する人が多くて毎回にぎやかです(笑)

宇佐見:エンジニアが優遇されがちなイスも、うちは全員同じ良いイスを入れてくれていて。正直いって相当な金額がかかっていると思いますが、良い環境だからこそ仕事がんばろうって引き締まる想いになります。

「僕がこうしたいと言うことはあまりない」会社の未来は社員が集まることで決まっていく

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Poole:アイコン_PRTIMES様02 人物紹介:山口 拓己
東京理科大学卒業後、山一証券、コンサルティングファームを経て2006年に株式会社ベクトルに入社し、取締役に就任。2007年、株式会社PR TIMESを立ち上げ、2009年に代表取締役社長に就任。プレスリリース配信サービス「PR TIMES」をはじめ、デジタル領域におけるPRを幅広く提供している。

― オフィスの環境について、代表の山口さんにもお話を伺っていきます。新しいオフィスを作るうえでコンセプトのようなものはあったのでしょうか?

山口:“接合点” を増やしました。仕事をするうえで必ず関わる人以外では、同じ年齡・性別・同じ地域や趣味といった同族の人はコミュニケーションが取りやすい関係にあります。しかし組織の人数が増えてくると、いずれにも接点のない人が出てくる。そういう人が接触する機会としての接合点をなるべく増やしたいと考えていました。

 
― 建築物の空間設計のような観点ですね。移転にあたってプロジェクトメンバーを募ったそうですが、どのように進めていったのですか?

山口:プロジェクトに参加してくれる人を募集して、年齡も性別もバラバラの3名で編成しました。創造力やコミュニケーションを増やす環境づくりを目指していたので、この移転プロジェクトにはエンジニアが絶対に必要で、彼を中心に決めていくよう進めたんです。

 
― 「ガーデンナイト」の映画鑑賞も、そのエンジニアさんが映画好きだったことから動画配信サービスの契約をしたそうですね。山口社長の希望は通さなかったのですか?

山口:僕が「会社をこうしたい」っていうのはあまりないんですよ。例えば入り口の近くにあるコーヒーカウンターもメンバーの1人が作りたいと申し出たものです。そのときに私が聞いたのは、「これを会社に流行らせることができるのか?」ってこと。コーヒーカウンターがあるだけでは接合点は増えません。設置するだけではなく、運用面も含めてやりきれるのかどうかを考えて、やりきれるのではあれば入れようと。

ハンモックも同じで、本当はもっと大きいフルサイズのハンモックが欲しかったみたいですが、まずはハンモックを使いこなせる会社になれるかどうかを試してからにしようと伝えました(笑)

 
― 設備が充実しても社員に使われなければ価値がないということですね。接合点が多いと、組織の雰囲気はどんなふうに変わると考えていますか?

山口:目標をもっている人を見ると、自分の気持ちも熱くなったりすることがありますよね。同じコミュニティのなかで、感情や文化を多くの人と交換できるといっしょに働く意義や会社にいる意味を見いだしやすくなるのではないかなと。

ただ会社が何をやりたいかは試行錯誤しながら変化していいと思っています。はじめから目標が決まっていて、その通りに働いてもらえますか?とするのは本望ではないので。

 
― そうなると、会社の方向性や未来は誰が決めていくべきなのでしょうか?

山口:誰でもない多くの社員です。その多くの社員が会社を使って自分の目標を達成できたらいい。その過程で、会社の方向がよりいい方向にいけばそれが一番理想的です。

目標をもっている社員がPR TIMESの場所や資産を使ってその目標を達成できたら、それがまた新しいPR TIMESの目標の一部に組み込まれると思っているので。

 
― PR TIMESは、それぞれの目標を成長させていく場所であるということですね。最後に仲間になってほしい人にメッセージをください。

山口:自立(律)した人ではないでしょうか。主体的と自分を律する、2つの意味で。会社は学校と似ています。1人で勉強するよりも、多くの人が同じ場所に集まってコミュニケーションを取りながら行動したほうがより大きく成長できるのではないでしょうか。

インタビューを終えて

別々におこなったインタビューにもかかわらず、山口社長がコンセプトに掲げていた “接合点” を、宇佐見さんと室田さんは “コミュニケーション” と言い換えて、繰り返し言葉にしていました。自分の場所は、自分でつくる。そう考える人たちが集まったPR TIMESは、誰が図らずともチーム全員が楽しく働くための場所として、居る人とともに成長していくのでしょう。


furture_bnr

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「エンジニアに萌えるお姉さん」として年間3,000人が訪れるテック系イベントスペースを運営し、企業のファンづくりを務めた。2015年からフリーランス編集者。IT・Web系企業のPR・採用事情を取材している。

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