「日本のヤクザ取材で学んだ」ふたりが見てきた奇妙な世界 | ヨシダナギ × 丸山ゴンザレス

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ナッツ

ナッツ

「日本のヤクザ取材で学んだ」危険な状況での振る舞い方

丸山ゴンザレス_2

 
— 危険だったこと、思いがけないハプニングはありますか?

ナギ:アフリカにいくと虫がいるんですね。あるとき、指の中に水ぶくれができて、その中に小さなイクラみたいなものが入ってたんです。「なんだ、これは」と思ったら、虫の卵だったんですよ。産みつけられちゃって。そしたら翌日また違う指にできちゃって。自分で針で取りました。

丸ゴン:すごいなぁー、僕、虫系はないですねー。食べるくらい(笑)

ナギ:あとは、わたしはひとりで行くので、どこでもセクハラに遭うんですよ。笑えるセクハラのお話をすると、バングラデシュへ行ったときにホームステイさせてもらって。その家の主がハビブルという人で、警察官で奥さんも子どももいるから大丈夫かと思って泊まったんです。
それで寝ているときに寝苦しいなと思って目が覚めたら、大の字で寝ている私の上にハビブルが大の字で重なってたんです。一応、ヒジでガンってやったんですけど、無言でいなくなっちゃって。翌日も何も言ってこないし、なにも起きてないから「まぁ、いいか」と思って。

丸ゴン:なにも起きてないですけど、嫌ですよね(笑) そういうのを避ける方法とかあるんですか?

ナギ:インドとかは、笑ったり愛想を振りまいちゃいけない。とりあえず露出しない。胸元を隠すようにしたり。
インドの寝台列車に乗ったときも、わたし含めて6人の部屋だったんですけど、ハビブルみたいなやつがいたんですね。挨拶しても無表情で。それで怖いなと思いつつ、寝てたら乳に違和感を感じて。そのハビブルみたいなやつが顔だけそっぽ向きながら、わたしの服の中に手を入れてるんですよ。
深夜で騒ぐわけにもいかないので、上に寝ていた友人のアフリカ人のシーツをひっぱたら、ドンキーコングみたいに騒いでくれました(笑)

丸ゴン:アジア人はネチッコイんですよね、親戚のませたガキみたいな動きしますよね(笑)

 
— 丸山ゴンザレスさんは間合いのとり方がうまいなと思うのですが、いかがですか?

丸ゴン:女性のバックパッカーの人は、相手との距離をゼロにするのがうまいですよね。ナギさんみたいに旅先で知り合って遊びにいくとか、僕しないですからね。距離をとってるのも、別れやすいようにするためです。取材者として対象に接するのは、その場限りでおさめるべきだと思っているんです。

友人として来たわけではない、異物として入っていって、異物として出ていく。そういう距離の取り方を心がけています。仲良くなると聞きづらいこともあるじゃないですか、年収とか今後の暮らしとか。 “友だち” に聞かれると嫌なんですよ。だから僕は友だちにはなれないし、ならない。むしろ、なんでナギさんは仲良くするんです?

ナギ:わたし寂しがり屋なんですよ、だから仲間が欲しい。結構、飛行機の中での出会いも多くて。指の毛を抜いて遊んでたら、「手伝うよ」ってバングラデシュ人が話しかけてくれたり。

丸ゴン:いろいろおかしいですよね?

ナギ:彼ら(毛を抜くのが)うまいんですよ!

丸ゴン:(笑) 僕はですね、これは象徴的な話なんですけど、ビンボーな生活を覗きたいんですよね。ヤンゴンのスラム街にいったときも、明らかにお金がない生活をしている人たちがいるわけです。それで何してるんだって聞かれるんで「ここの人たちの生活を知りたい」と言って家に行かせてもらって。
取材のときの僕の一つのルールとして、同情はしない。取材で行っている以上、僕は謝礼なり何なり対価を支払うから。そのときも客がきたということでジュースを出してもらうんですけど、その家の子どもたちはジュースなんて想像の産物なんですよ。見たことがない。でも、こちらも出されたからには飲みたくなくても飲むんですけど、子どもたちはジーッと見てくるんですよね。それでも気にしない。

 
— 貧しい家族とかではなく、悪そうな人たちへはどうアプローチするのですか?

丸ゴン:弟分とか子分的な立ち位置で入っていくんです。「へへっ、旦那」みたいな(笑)
自分は誰の下につくのかって大事なんですよね。その辺の子どもたちが話しかけやすいからって子どもと話していたら、「こいつ、ガキンチョと話すヤツなのか」って思われてナメられちゃう。だからこそ、ボスにぴったりくっつく。そして「ボスの客」として振る舞う。側近とも仲良くしない。

そういうのをどこで学んだかというと、日本のヤクザの取材で学びましたね。「紹介してやるよ」と言われても、その人がどういう立場にいるとかを分かってないと、紹介してもらっても意味ない。上から入っていかないと下が見えないんで。
なので、こういう距離をゼロにするパターンでは、取材が終わるときが大変で。「じゃあ」とぶった切って逃げ去らないといけない。この先も取材すると判断したときだけ繋がるようにしていますね。
なのでジャーナリストはひとつのルールだと危険で、いろいろなパターンを持っていなくてはいけないなと。

日本は日光や京都だけじゃなく、代々木や初台がある。海外も一緒。

よしだなぎ_ポストカード

 
— 最後に一問一答的な形で、事前に集まっている来場者からの質問を。まず、「普段はどういった生活をされているんですか」とのことで、おふたりいかがでしょう?

丸ゴン:仕事というとつまらないですけど、仕事になりそうなことをやってますね。新宿を夜中フラフラしたり、新大久保の街娼を見て、「いまは何系の子が立っているのかなぁ」とか。ナギさんはお洒落なカフェとか行かないんですか?

ナギ:日本にいるときは引きこもってます。基本、人と会うのが嫌なんですよ。一回外に出た帰りじゃないと、お店とかも入らないんです。

丸ゴン:えっ? あー、まぁ何となくイメージ通り。

 
— 次に、「異性の趣味を教えてください」という質問が多いですね。

丸ゴン:趣味でいうと、外国の方やハーフの子が好きですね。

ナギ:わたしはアフリカ人には性的魅力は感じないんですよ。

丸ゴン:そうなんですか? てっきりあるのかと思ってました。

ナギ:そう思ってる人が多いようなんですが、私にとって彼らは恋愛対象ではないですね。私のタイプは蝶野正洋さんなんで。

丸ゴン:えっ、そうなの?! 会場ザワついてますよ(笑)

 
— 最後に、今後の展望を教えてください。

丸ゴン:危険地帯だけじゃなくて、ちょっとした裏側というか。たとえば外国人が日本に来て、日光を見て京都を見て「日本ってこういう国か」と思っても違うじゃないですか。六本木もあるし、渋谷もあるし、池袋もあるじゃないですか。
逆に僕が行く危険地帯とかスラム街の人たちも同じようなことを思っているので、海外の代々木とか初台とか、そういうエリアに該当するようなところを取材していきたいと思ってます。

ナギ:(展望は)ないです。今日はありがとうございました。

丸ゴン:えっー?! まぁ、ヨシダさんも取材されてますけど、今後フィールドを広げていっても、民族を取材するんですか?

ナギ:そうですね、裸族を撮っていきたいです。

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北海道生まれ、ナッツです。文章書いたり、写真撮ったり、撮られたりしています。好きな映画監督はウディ・アレン。がんばります。■ 個人ブログもやってます。

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