人・アイデア・テクノロジー・モノを最適な形で組み合わせ、クリエイティブやデザインの力によってクライアントの課題解決や新たな取組みをサポートする株式会社ワンパク。さまざまな企業のコーポレートブランディングからサービス構築など、戦略からアウトプットまでワンストップで手がけています。
社員数が25名という少数の制作会社でありながら、大手クライアントと直接取引を行い、戦略・企画などの工程からプロジェクトに関わることも多いというワンパクの理念は“「心」と「体」にHOTをつくる”。つまり、“まっすぐに自分と向き合い心から喜び、腹を立て、悲しみ、楽しんでいた感覚や感情を大切にする”ことです。では、そのような理念のもとに生まれるクリエイティブとは、どのようにつくり上げられていくのでしょうか。「いいものをつくりたい」と語る同社の取締役である原氏に、同社の仕事における考え方、そして今後の方向性についてお話を伺いました。
人物紹介:原冬 樹氏 グラフィックデザイン、エディトリアルデザイン、パッケージデザイン、CD-ROM、Webサイトなど様々なクリエイティブ業務にデザイナー、ディレクターとして従事。2008年1月にクリエイティブプロダクション1PAC. INC.を設立。東京インタラクティブ・アド・アワード入賞、グッドデザイン賞受賞など。 |
「つくる」ことがゴールじゃない。エンドユーザーに価値をどう届けるか
今まで最も印象深かったクリエイティブについてお聞きすると、意外にも「これ、すごいでしょ!っていうものはない」と答える原氏。
- 原
- 僕たちはつくったものに対して「僕たちの作品」とか「僕たちのもの」っていう感覚をあまりもっていません。前段からコミットして「いいものをつくる」っていうのは、どちらかというと「クライアントのビジネスにきちんと貢献したい」っていうことなんです。
それに、クライアントも含めたチームで構築していくので「僕らがつくった! すごいでしょ!」っていう感覚は希薄なんです。賞とかもクライアントが出して取れたものはありますけども、自分たちが賞狙いでつくるとかっていうことはありません。そういう姿勢だからこそ“これ”って仕事がないんですよね。
基本的には「つくる」ことが目的っていうよりも「エンドユーザーの方たちにどう届けられるか、社会や市場にどう影響があるのか」ってところを大事にしたいと思って、日々、取り組んでいます。
制作物はあくまでもクライアントの課題解決やユーザーへ影響を与えるための手法の1つであると考えるワンパク。そして、検討過程ではクライアントを巻き込んだワークショップが重要になるそうです。
- 原
- 例えば、コーポレートブランディングのプロジェクトの場合、企業として一貫したメッセージとそれを的確に伝えるためのアプローチが必要不可欠です。ですが、クライアントが大きい企業だと組織が事業部ごとに縦割りだったりしますよね。そうなると、事業部間ごとに問題や課題となる視点が異なる場合が多いので、企業全体としてアウトプットすること自体がとても困難な状況になってしまう。なので、客観的な視点として問題や課題の擦り合わせから、僕たちの方でファシリテートさせていただいてプロジェクトを進めることが多いです。
ですが、この課題意識を擦り合わせるのは序盤戦です。そこで抽出された課題をベースに企業として「何を伝えていくべきか?」「どのようなアプローチをとっていくべきか?」さらに解決策へ向けて具体的な検討を重ねていきます。
このプロセスに大体、3ヶ月間、長い場合だと6ヶ月間ぐらいかけてプロジェクトを進行していくんです。もちろん、それらを不満に思うクライアントさんも存在します。でも、対面のコミュニケーションで定期的にワークショップを開催し、検討と議論を重ねることで育まれるプロジェクトメンバー内での共有事項は最終成果物において、とても重要な拠り所になります。
このようなヒアリングには、制作のメンバーも同席するそうです。一般的にはディレクターがクライアントにヒアリングを行う印象がありますが、制作メンバーを同席させるのはどうしてでしょうか。
- 原
- お客様の温度感を対面で感じて、言語化できないところを汲み取ることが大事だと思っています。もちろん「言語化して、共通認識をもつ」ことが前提のお話ですが。でも、言語化されるまでのプロセスや検討などを対面で伝えてもらった方が、後々の制作物に活かせると思って。だから、なるべくワークショップには参加してもらうような体制をとっています。
僕たちはスタープレイヤーがいる会社ではないので、集合知で仕事をすることが多いです。逆にいうと、尖ったアイデアが出にくいんですけれども、クリエイティブとして尖ったものを大事にしているわけではないので。クライアントや企業、その先にいるエンドユーザーの方たちを見て「何が大事なのか」「何を届けたら、その会社として成果が上がるのか」っていうところをきちんと見極めます。それに対する手段として、デザインやテクノロジーをふさわしい形で落とせるようにやっていきたい。