「従業員がお客さまを連れてくる世界へ」変革する送客の仕掛け人はネイリスト | 株式会社スピカ

「従業員がお客さまを連れてくる世界へ」変革する送客の仕掛け人はネイリスト | 株式会社スピカ

小田直美

小田直美

「写真投稿で集客できる仕掛けを」僕らはスモールB(ビジネス)で取っていく

2011年4月30日にリリースしてから3年後、ゆめみからはじまったネイルブックの新規事業開発チームは、株式会社スピカとして独立することが決まります。

國府田
チームメンバーのみんなに、独立のことをどう思うか聞くと「いいね!」って言ってくれたのが本当にありがたかった。独立と同時に、ベンチャーキャピタルからの出資を受けることができて、使える予算も数倍になって。おかげで、iOSアプリだけだったネイルブックのAndroid版をリリースできたり、打てる手がすごく増えました。
川端
一方で、もう守ってくれるところがないから、自分たちでやらなきゃいけないっていうプレッシャーは、前よりも大きくなりましたね(笑)

独立後、スピカはB to E to Cのビジネスモデルを実現するため、機能の追加を進めていきます。そのためにポイントとなったのは「ネイリストが、いかにモチーベションを高くもって利用してくれるか」を追求することでした。

川端
もともとネイルブックって、単純にネイル写真を共有するだけのサービスでした。でもB to E to Cの“E(エンプロイー)”が目立たないと、このビジネスモデルは成り立たなくて。それで、ネイリストが自分でデザインしたネイルの写真を投稿して、サロンの集客に繋げられる仕掛けを考えたんです。

作りたかったのは、ユーザーからネイルブック、ネイルブックからネイリスト、ネイリストからユーザーっていうB to E to Cの自然な流れです。サロンで施術したユーザーが、写真を投稿するとき一緒にサロン情報を登録するっていう。

國府田
そうすると、今度はその写真がWebにコンテンツとして出るので、SEOが効くようになる。ネイリストが自分のサロンを検索すると、公式HPより上にネイルブックのコンテンツが出る。こんなふうに、相互が営業し合うような送客の仕組みを作っていったら、ネイルブックは自然と口コミで伸びていきました。

ユーザーがネイルサロンを探すサービスの市場には、テレビCMでもお馴染みの大手企業が先行しています。そんな競合に対して「戦わずして、成長できる戦略を描いている」と國府田氏は話します。

國府田
某サービスはサロンが掲載料を払って、Webやアプリに情報を載せる仕組みで成り立っています。僕らがリーチしたいのは、もっとユーザー発信のコンテンツ。特にネイル業界はマンションで個人サロンを開業している方が多いので、その人たちが一番のターゲットになります。
大手さんは、大きいB(ビジネス)。僕らは、スモールBを取っていく。競合さんが取っていないところを取るので、対象が棲み分けられて、直接戦うことはまずありません。

サービスを伸ばすのは人だから、まずは人の成長ありきで。B to E to Cを確立して、世界に示していきたい

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リソースを最小限に抑え、細かいPDCAを繰り返すことによって、着実にサービスを伸ばしてきたスピカ。ダウンロード数が100万回を超えたネイルブックの今後の成長を、どのように考えているのでしょうか。

國府田
僕はサービスってメンバーのアウトプットの結果であると思っています。サービスをいかに伸ばすことができるかは、メンバー個々の成長ありきで考えるべきなのかなと。
なので、目標を立てるときは1.2倍ぐらいにストレッチして、あとは自分たちの思うように行動してもらいます。やり方を間違えることも多いけど、一回失敗を経験して立ち直ったとき、人ってガーンと一気に伸びるんですよね。

成長させるためのマネジメントについて「やり方までは、指導しない方針でいる」という國府田氏。その理由を「やり方くらい自分で考えたいって、僕自身が思っちゃうタイプなんですよね」と説明します。

國府田
目標の数値や、効率的なプロセスよりも評価すべきなのは「いかにチャレンジしたか」に尽きると思います。やるべきことを自分の判断で、きちんとやったかどうか。
例えば、エンジニアの開発環境って新しいものはどんどん取り入れるべきだと思うんですよ。新しいトレンドで新しいことにチャレンジしたい人が、仕事のやりがいを感じられる環境でいたいですからね。

独立して1年が経ったスピカは、2015年2月に株式会社ペロリが運営する女性向けキュレーションメディアの『MERY』との業務提供を発表し、自社がもつネイルコンテンツの活動領域を拡大させました。今後スピカは、どのようなビジョンを実現させようとしているのでしょうか。

國府田
実現したい未来は、2つあります。1つは、B to E to Cのビジネスモデルを、美容師とかスタイリストとかの美容業界で横展開していくこと。これからは、企業主体の世界からもっと個人事業者に比重が移ると考えています。そういう時代に先駆けて、うちがB to E to Cを確立して、世界に示していきたい。
もう1つははネイルブックで世界に出ていくこと。日本のネイルアートは進んでいて、世界から注目もされていますからね。まずは、日本できちんとモデルを確立させてからだと思っているので、やるなら1年後とか2年後かな。

ネイルがもつコンテンツの力で、グローバル展開を見るネイルブックが目指しているのは、あくまで“送客”の仕組みを作り、成立させることです。その確立に向けて、スピカのチャレンジは続きます。

國府田
ネイルブックの利用者がすごく増えてきていて、やっとネイル好きのユーザーに、自分たちのサービスを見てもらえる状態になりました。そろそろサロンへ送客する仕組みづくりに向けて、本腰を入れてやっていくフェーズに移ってきたと思っています。
それに向けて、今は新しいアプリを作っていて。そのアプリを使うことで、ユーザーはネイルブックに登録されているプライベートサロンを検索して、予約までをできるようにします。

こうやってサービスに送客力をつけていって、さらにユーザーと登録サロンを増やしていくのを、今年1年は精一杯がんばっていくつもりです。

社内ベンチャーからスタートしたスピカは、限られた資源を“小さく早く”活用することで、最小限の成功体験を積み重ね、サービス拡大に向けて着実に歩みを進めてきました。

國府田氏が見据える未来は、あくまで“B to E to C”のビジネスであり、つまりは“現場の人”と呼ばれてきた従業員が主役になって、サービス運営の集客を担うような世界を作ることです。ネイル業界に留まらず、個人ビジネスを救うスピカの仕掛けが、送客の流れを根本から変えてしまう日は、一歩ずつ近づいてきているのかもしれません。


furture_bnr

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「エンジニアに萌えるお姉さん」として年間3,000人が訪れるテック系イベントスペースを運営し、企業のファンづくりを務めた。2015年からフリーランス編集者。IT・Web系企業のPR・採用事情を取材している。

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