皆さま、こんにちは。メディア事業部のまゆです。
最近は自分のモチベーションをコントロールするのに少し悩んでいます。そこで色々と調べている内にとても参考になる演説を見つけましたので、その内容をシェアさせていただきます。
今回、その演説を行ったのはダニエル・ピンク氏。アメリカの作家で、ビル・クリントン政権下のロバート・ライシュの補佐官を経て、1995年から1997年までアル・ゴア副大統領の首席スピーチライターを務めた経験を持つ方です。ちなみに現在はフリーエージェントを宣言して、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの記事や論文を執筆しているそうです。
少し長いため、今回は一部分を抜粋してお送りします。
ロウソクの問題
1945年にカール・ドゥンガーという心理学者が行動科学の実験で取り扱った問題です。彼は被験者を部屋に入れて、ロウソクと、画鋲と、マッチを渡して、こう言います。
「テーブルに蝋がたれないようにロウソクを壁に取り付けてください」
このように言うと、多くの人は画鋲でロウソクを壁に留めようとしますが、上手くいきません。マッチの火でロウソクを溶かして壁にくっつけるというアイデアを思いつく人もいますが、それも上手くいきません。
でも、5分か10分すると、大抵の人は解決法を見つけます。このように。
鍵になるのは「機能的固着」を乗り越えるということです。最初にあの箱を見て、単なる画鋲の入れ物だと思った(機能的固着)でしょう。
しかしそれは別な使い方、つまりはロウソクの台にすることができるのです。これがロウソクの問題です。
ロウソクの問題にインセンティブを加えた場合
続いて、サム・グラックスバーグという科学者が、このロウソクの問題を応用した実験をご紹介します。この実験でインセンティブの力が分かります。
彼は参加者を集めてこう言いました。
「この問題をどれくらい早く解けるかを時計で計ります」
そして1つのグループには、この種の問題を解くのに一般にどれくらい時間が掛かるか、平均時間を知りたいのだと言います。
一方、もう1つのグループには報酬を提示します。
「上位25パーセントの人には5ドルお渡しします。1番になった人は20ドルです」
ちなみに、これは当時の物価としては悪くありません。十分なモチベーションになる金額です。
さて、このグループはどれくらい早く問題を解けたのでしょう?
実際には、インセンティブを加えないグループと比較して平均で3分半余計に時間がかかりました。インセンティブがあるほうが3分半長く掛かったのです。
インセンティブを与えることで、思考は鈍くなり、クリエイティビティが阻害された、ということになります。
この実験が興味深いのは、この結果40年に渡り、何度も再現されたことです。
成功報酬的な動機づけは、状況によっては機能するが、ときには上手く行かなかったり、害にすらなることもある、という証明になります。
ロウソクの問題とやる気のメカニズム
以上のことからダニエル・ピンク氏が主張するのは、高いパフォーマンスの秘訣は報酬や、その対極としての罰ではなく、見えない内的な意欲にある、ということです。これからそれを証明する3つの具体例を紹介します。
20パーセントの時間
Googleが導入していることで知られる「20パーセントの時間」は、エンジニアが仕事時間の20パーセントを何でも好きなことに使うことができる制度です。
時間、タスク、チーム、使う技術、すべてに自主性が認められます。これはすごく大きな裁量ですよね。そしてGoogleでは、Gmail、Orkut、Google Newsなど、新製品の半分近くがこの20パーセントの時間から生まれたそうです。
完全結果志向の職場環境(Results Only Work Environment:ROWE)
さらに過激な例では、「完全結果志向の職場環境(Results Only Work Environment:ROWE)」と呼ばれるものがあります。アメリカのコンサルタントたちが考案したもので、実施している会社は北アメリカに10社ほどあるそうです。
ROWEでは、人々にはスケジュールがなく、好きなときに出社できて、勤務時間という概念もないので、極端には出社しなくてもかまいません。ただ仕事を成し遂げれば良い(完全結果志向)のです。
ROWEを実施すると、ほとんどの場合で生産性は上がり、雇用期間は長くなり、社員満足度は上がり、離職率が下がったとのことで、これは自主性を重視した新しいビジネスモデルと言えます。
Wikipedia
今ひとつピンと来ない、という人に向けて、ダニエル・ピンク氏はこう問いかけます。
ほんの10年前に、経済学者のところへ行って、こう聞いたとしましょう。
「世界的な百科事典を作る2つのモデルを考えたんだ。営利目的のものと、非営利のもの、対決したらどっちが勝つと思う?」
10年前、この地球上のまともな経済学者で、Wikipediaのモデルが勝つという人は 1人もいなかったでしょう。
自分自身のためにやる、あるいはそれが重要なことだからやるというようなモチベーションこそ、結果として良いパフォーマンスにつながることがわかります。
最後に
人がお金で動く事が理由にならないとしたら、何で人は動くのか。大変勉強になりました。
ではでは失礼します。
参照元:『やる気に関する驚きの科学』ダニエル・ピンク
字幕付きの動画では詳しく解説されているので、興味のある方はぜひご視聴下さい(約18分あります)。